Poem

元気でいますか?


スライドショーバージョンはこちらからどうぞ


「元気でいますか?」


Keiko Kanegami



“君”なんて
呼ばれたの
はじめてだったんだ

海沿いの小さなホテル
朝食は卵とクロワッサン
シャンパングラスのデザートは
フルーツにミントの葉

“去年と同じハッカの味だ”
二人して笑ったのに

“来年も来れるといいね”
二人して黙り込んだよね

線香花火
そっと のぞき込む あなた

指先ふるえて
ポトンと落ちた

引越の荷物をまとめていたら
引き出しの奥に
古いカセットテープ

ノイズまじりの
あの人の好きだった曲
あの人の色あせた文字

二度目のゴミ箱行きのあと
やっぱり 拾いなおしてる

あなたといると優しくなれる

友達にも
近所のノラにも
ゆうびんやさんにも
小さな花にも

あなたといると優しくなれる

彼女が“ごめんね”と
小さな花の枝をそっと折った

花の精がいるのなら
きっと 微笑んでる

あなたの好きになる人は
きっと 彼女のような人ですね

あなたの隣り

写真立てで笑ってる

今日を知らない

自分が悲しい

忘れようとしているうちは

忘れられやしない

手をつなぎ歩く公園
夕映えが二人を染める

少し冷たい風
肩寄せあえば
ボート漕ぐ 腕の強さ 想い出す

もうすぐ駅が見える
遠く灯かりがともる

帰りたくない

まだ 帰りたくないよ

広すぎる部屋に残されて一人

明日から“おはよう”が 言えないね

コーヒーをいれるのも最後だから

大きめのカップを選んでいた

もうすぐ さよならだね

あなた 笑わなくなったもの


もうすぐ さよならだね

私 泣かなくなったもの

眩しかった空の色も
輝いてた蒼い星も
二人のこと見つめてたね

優しかった春の日差し
せつなかった夕焼け雲
二人のこと包んでたね

二人だから出逢えたのね

スクリーンより
せつなく見えた横顔を
忘れないよう見つめてる

今日は楽しかったね

kissのための ハザード出した 送りオオカミ

公園のベンチ
降り出した雪をながめてた

夕日を映す水面
石ころ投げてはしゃいでた

ポケットの中でつないだ手
温かかった

はじめて 冬を好きだと思った


はじめての夜は波の音
月灯かりは海の上

重いサテンのカーテンで
怖いくらいに二人きり

誰にも言えない この恋は
誰にも知られず 終わるのですか?

 

一人より

二人が淋しいなんて

悲しいね

吸い込まれそうなほどの
満天の星

どちらからともなく
つないだ指先

あなたが
見せてくれる景色に
いつも言葉をなくす

せつなさに言葉をなくす

季節はずれの海辺を歩く

砂に一人の足跡残して

波しぶきさえ穏やかな午後

偶然逢う日が今日ならいいのに

友達が泣きにきた
ハンカチのかわりに
タオルを持って
泣きにきた


壁に寄りかかり
まっすぐ投げ出された足

"もう 疲れちゃった"と

一言だけだった

8月の青い空
ひまわり達が高く手を伸ばす
ボンネットをみがくあなた
水しぶきで小さな虹を作る

“ごめん”が苦手なあなたの仲直り
“ごめん”より嬉しかったりするから困る

逢いたかった!!
逢いたかった!!
逢いたかった!!

もう ギューッて感じ!!

デートしてるのに 他の女の子見てたり
ビデオの途中 寝ちゃったり
約束の時間 遅刻してばかりだし
"忙しい"が口癖で
友達が優先で
ケンカしても 追いかけてこないし
みんなに優しくて
逢わなくても平気で
歩くのが速くて
いつも いつも 待たされた

嫌いになるための 想い出の羅列
それでも 忘れられないという羅列

くだらないことでケンカをした

インスタントラーメン
“俺が作ったほうがうまい”だって

なんて 失礼な奴

つないだ手と手

ブンブン振って

まるで

幼稚園の遠足

“さよなら”したはずなのに

どしゃ降りの雨の中

立ってるなんて

ずるいよ

もう 苦しいのはイヤだよ

 

街灯の灯かりが滲んでゆく街
後ろ姿がもうすぐ見えなくなる
今頃 こぼれてくる涙
振り返るのは やっぱり 私だったね

出窓のすみに
ゴジラの人形

そんなとこ
好きだったよ

カッコ悪いとこ 見せて下さい

可愛くないとこ 見て下さい

風邪をひいて熱を出した夜
心配そうな顔がのぞき込む

コトコトとヤカンのお湯が沸く音
曇った窓ガラス

おでこにあてられた手の冷たさで
外の寒さが伝わってくる

ポンポンと布団を直されたら
なんだか涙がこぼれてきた
温かな冬の夜

ぶかぶかのセーター

あったかい

無言電話
受話器の向こうで
あなたの問いかける声

ごめんね
一人きりの夜
声が聴きたいだけだったのに
すぐに切るつもりだったのに

長い沈黙の後
“ごめんな”なんて
言わせてしまったね


真夜中のドライブ
フロントガラスが割れそうなくらい
ボリューム上げて
思いっきり歌う 彼女と私

"バッカヤロー!!"なんて
窓の外 怒鳴って
声を上げて笑った
声を上げて泣いた

恋を失くした 彼女と私

元気ですか?
私は元気です

元気ですか?
私は元気です

元気ですか?
私は元気です

何度書いても そこから先へ進めない

空の青さにさえ

あなたを想い出してしまう

同じものを見て

同じように綺麗だと感じた

あの頃に戻りたい

もしも 生まれ変われるなら
もっと早く
私を見つけてね

真っ白な雪のような
あなたに出逢うために生まれてきた
真っ白な私を見つけてね

友達とお茶をした小さな喫茶店
紅茶のシフォンケーキが
とても美味しかったこと
週末に読み終えた本で
泣いてしまったこと
近所のネコが
子ネコを5匹も産んだこと
抜けるような青空を
見せたいと思ったこと

話したいことがいっぱいあるんだ

静かな雨が奏でる 柔らかなメロディ
そっと瞳閉じて
涙もいつか 綺麗な虹を架けるなら
とても素敵なのに

いい恋をしてください

泣いたり
笑ったり
怒ったり
一生懸命 好きになってください

花に水をあげたり
添え木をしたり
お日さまをあててあげるように
恋を育ててください

いい恋をしてください

元気でいますか?

私は元気です

by Keiko Kanegami