Poem

せつない気持ち



「せつない気持ち」


Keiko Kanegami



切なさという鈴が

胸の中

チリリと鳴りました

お風呂の中

鼻先までつかりながら

ベットの上

何度も寝返り打ちながら

ずっと

同じことばかり考えている

夏祭り

逢えるかもしれない

それだけで

着せてもらった藍染め浴衣

カラコロ笑う下駄の音

ノートを貸してくれと言われた

忘れたと嘘をついた

小さな花柄のノート

一晩かけて書き直した

遠く流れるピアノの音色

日差しが優しい

窓際の席

頬杖ついて背中を見てる

5時間目

飲みかけのジュース

平気で飲むなんて

勘違いするじゃないか

あの娘のこと

呼び捨てにしてた

修学旅行

みんなで撮った写真の

ずぅっと

ずぅっと

後ろに写ってたんだ

誰もいなくなった教室
空っぽになった下駄箱

はじめてのさよならは
卒業でした

「鏡ばっかり見ちゃって」と

お母さんに笑われた

親にも妹にも友達にも
誰にも見せられない
彼の前だけ
恥ずかしいくらい女の子

響き渡る花火の音

大歓声

首が痛くなるほど見上げた夜空

手をつないだまま

飛び跳ねてはしゃいだ

思いきりはしゃいだ

今日のこと「絶対 忘れない」って思った



はじめてのキスは
唇がカタカタ震えて
ほんの少し触れただけ

胸の中には
今まで感じた事のない痛み

人を好きになるって
なんだか苦しくて怖いよ


小雨が降り出してきて

ほんの少し肌寒くて

折りたたみの傘が小さすぎて

あなたの肩が濡れてしまって

まだ上手く話せなくて

傘を持つ手ただ見つめてた

スローモーションみたいな想い出

冷凍庫に住んでいる

あなたが作った雪だるま

何度も 何度も 何度も
帰り道
遠まわりして

駅の改札
下を向いたまま
「じゃあね」が上手く言えなくて

「電話するよ」って
ゆっくり
指がほどけていった

「おやすみ」って

電話を切る時

「プチッ」って

音を聞くのは

いつも 私なんだぞ

大きく手を振った駅のホーム

恥ずかしそうに

肩をすくめて笑ってる


きっと こんな瞬間に

大好きだってこと

ばれちゃうんだろうなぁ



天気予報みたいに

気持ちが揺れる


昨日はどしゃ降り

今日は快晴

毎日がお天気だといいのに



「絶対に来る」って待った二時間

「絶対に待ってる」って待たせた二時間


交差点の青信号で

駆け出した二人


言葉なんかいらない


バイクを止めた
海沿いのスタンド

砂浜の打ち上げ花火が
真っ暗な波の上
流れ星のように 音を立てて消えてゆく

はしゃぎ過ぎた二人が 無口になる
エンジンがかかる
腕をきつく回す

そして もうすぐ 夏が終わる



そんなに
どんどん
早く 歩かないでよ

そんなに
怒らないでよ

涙と鼻水で
グチャグチャになりながら歩いた街
すれ違う人たちの
視線なんかどうでもいい

「さよなら」が連れてきたものは
楽しかった想い出ばかり
笑った顔なんて想い出したらダメ
優しかった瞳も約束も
温かさなんか
想い出したらダメなのに
「さよなら」が連れてくるものは
楽しかった想い出ばかり

自由って

ひとりぼっちのことじゃないよね

束縛って

信じてないってことだよね


そんなに簡単に大人になんかなれないよ

髪を洗う
あなたに逢うためだけの
シャンプーの香り


長い坂道
街路樹たちが
星のドレスを着てる

「綺麗だね」

歩道橋の上
短いキスをした


ナイター観戦
勝利投手に声援を送るあなた

頑張ってる仕事の話

ビアガーデン
ビールを飲み干した時の顔

日曜日のボサボサ頭


あなたのこと もっと もっと 知りたい

優しい笑顔のあなたの写真

カメラに向けられた温かな瞳


こんな顔で笑ってたんだね

恋をしてたんだね


あなたの過去が苦しいよ

唇が意識してる

キスして欲しいって

唇が思ってる

忙しさに負けてしまう恋がある

終電の窓に映る
疲れた顔
もう 何日も逢ってない

たった一件だけ
留守電の点滅
たった一言だけ
「頑張れよ」

忙しさに負けない恋がある

追いかけるとか

追われるとか

そんな恋なら もう いらない

時間も場所も考えずに
涙は突然やってくる

TVを見ている時
歯を磨いてる時
電車の中でも
涙は突然やってくる

もう一度 頑張ろうよ

もう一度だけ 頑張ってみようよ


心を引き止める方法は見つからないけれど

涙ではもう引き止められないけれど


失いたくない

綺麗になんか終われない

白黒はっきりしなくていい

グレイのままでいい

一緒にいさせて

真夜中に突然
部屋の大掃除をした

涙がポタポタ落ちる床を
歌いながら
雑巾でゴシゴシ拭いた

心の大掃除ができるなら
何から捨てればいいんだろう

最後の恋っていつなんだろう



今朝 窓辺で見つけた

生まれたての葉っぱ

生まれてくれて ありがとう

ごめんね もう 歩き出すからね




笑ってる私が

好きだったでしょう?

短く切った髪
首すじに心地良い秋風

クラクションの音に
振り返ってしまった
いつもの待ち合わせ場所

いつの日か偶然があるならば
素敵な再会にしましょう


いつの日か


夕暮れの人波

ふと探している

あなたも

こんなふうに想い出して

たくさんのせつなさをありがとう

あなたに逢えたことを

あなたと過ごした日々を

心から誇りに思います

たくさんの愛をありがとう

by Keiko Kanegami