「石原都知事の三国人差別発言」と「関東大震災朝鮮人
虐殺事件と木本事件」と「北朝鮮への食糧支援反対の声」
について思うこと  

  

 

本年4月、東京都の石原知事は、自衛隊の創立記念のあいさつで、「大きな
災害が起きたときは、三国人、外国人による大きな大きな騒じょう事件は想
定されるから、治安の維持も期待している。」という趣旨の発言をした。
ところで、1923年、その東京を中心として関東地域を襲った大地震は多く
の犠牲者を出したが、その災害のとき、「朝鮮人が井戸に毒を入れた。放火
した。」として治安維持の名のもとに戒厳令がしかれ、官民が一体となって、
6千人とも7千人ともいわれる無抵抗の朝鮮人を虐殺した。
そして、1926年、この木本事件では、朝鮮人に切り付けた犯人を逮捕し
ない日本の警察に不満を持つ朝鮮人労働者と、日本人の間にケンカが始まった
として、当時の木本町長の要請を受けた消防組と在郷軍人が、朝鮮人労働者の
飯場を壊し、二人の朝鮮人労働者を虐殺し、逃げる朝鮮人を銃剣で追いかけ、
木本から追放した。
歴史的事実として、治安とは、官の指揮のもとに官民一体となった武装集団が
朝鮮人民衆を襲撃する犯罪行為に他ならないといえる。
私が、熊野市行政の責任を追及するのは、当時ケンカは既に治まっていたにも
かかわらず、消防隊と在郷軍人をして武装させて、差別と偏見によって報復的
襲撃行為を組織しながら、「愛町心の発露である。」として、その行為を反省
しようとせず、今も、加害行為を認めず歴史認識を改めようとしない点である。
そして、このような犯罪行為が生み出されるのは、日本の近代国家建設時より、
深く刷り込まれた朝鮮人に対する差別と偏見と排外、そこから生み出される恐
怖観によるものであり、それが反省されることなく、今日まで引き継がれ、
この度の石原都知事の「三国人」差別発言を生んでいると捉えている。
それは、また今日の北朝鮮パッシングに見られる日本人の思想的な質でもあ
り、日本国内において、北朝鮮に対する批判的なマスコミ報道がなされると、
在日朝鮮人女子校生のチマチョゴリが切られるという悲しい事件が起こる。
さらに、今、北朝鮮では未曾有な食糧危機に陥り、多くの人命が奪われている
という状況があり、諸外国の政府やNGOは人命尊重という観点から食糧支援
に取り組んでいる。日本政府も、一時、取りやめていた米支援を再開したが、
それでも、圧倒的な日本国内の声は、北朝鮮の食糧支援に否定的である。食糧
支援に反対する意見の源流に民族差別拝外主義を見て取る。だからこそ、私は今、
微力ながらも、北朝鮮への食糧支援活動に取り組んでいる。私にとって食糧支援
とは、人命尊重の理念の実践はもとより、日本人の中に巣食っている朝鮮人に対
する差別排外主義との闘いである。
「石原都知事の三国人差別発言も関東大震災朝鮮人虐殺事件も木本事件も北朝
鮮への食糧支援反対の声」も根っこのところでは、日本人の差別排外意識に基づ
くものとしてあり、そういう意味において木本事件とは現在の問題であるという
のが私の認識である。

(2000年12月執筆)
(文責 竹本 昇)