熊野市への抗議・要請する 

  

 

2015年11月7日

抗議・要請


熊野市長   河上敢二 さま
熊野市教育長 倉本勝也 さま

三重県木本で虐殺された朝鮮人労働者(李基允・「相度)の追悼碑を建立する会
第22回追悼集会参加者一同

 本日、わたしたちは木本トンネル入り口の追悼碑の前で22回目の追悼集会を開催しました。
木本町(現熊野市)でお二人を殺害したのは在郷軍人会や消防組などの地元住民の組織であり、その組織に出動を指示した木本町長はお二人の殺害に重大な責任を負っています。
したがって貴職らは地元行政機関の責任者として「事件」の原因を究明し、遺族に謝罪し、このような事件が2度と起きないような人権教育に真摯に取り組む責務があります。
私たちは会を結成した当初から、熊野市に対し、地元の行政機関として、この事件がなぜ起きたのかについて地元住民とともに考え、地元の歴史教育に積極的に取り組むべきであると述べてきました。そしてつぎのような課題を提起してきました。
1 『熊野市史』における「木本トンネル騒動」の記述で、地元の住民がとった行動を「誠に素朴な愛町心の発露」として弁護する文言があることを指摘し、この文言を削除すると同時に、『熊野市史』の記述全体を再検討すること。
2 お二人の追悼碑を建立するために、熊野市が土地を確保し建立の資金を市民から募って、追悼碑の建立活動に取り組むこと。
3 地元で「木本事件」を考えるための歴史教育・人権教育に積極的に取り組むこと。
4 「木本事件」の詳細を明らかにすること。

 しかし、熊野市は当初は我々の会と協力して上記の取り組みを進めるという方針を立てながら、中途でその取り組みを放棄しました。
1の課題については、熊野市は『熊野市史』の「誠に素朴な愛町心の発露」と言う文言の削除を約束しながら、削除要請通知を一部の『熊野市史』の購読者(主として、熊野市が『熊野市史』を寄贈した相手)に送っただけで、削除が実際に行われているかの確認をも誠実に行ってはきませんでした。
わたしたちが各地の公立図書館に所蔵されている『熊野市史』を調べたところ、実際に文言の削除がなされていない図書館が多数あることを確認しました。その後、わたしたちは文言の削除が的確になされているかどうかの確認を熊野市と熊野市教育委員会に求めましたが、いまだにその確認はおこなわれていません。
2の追悼碑の建立については、熊野市議会で了承がなされ、200万円の予算が計上され、なおかつ追悼碑の建立予定地まで確保しながら、碑文を作成する段階で、熊野市は追悼碑の建立そのものを拒絶するに至りました。
3の課題については、熊野市はこれまでまったく取り組む姿勢をみせていません。それだけでなく、熊野市の図書館に「木本事件」に関する資料コーナーを設けてほしい、という当会の要求を拒否し続けてきました。
4の「木本事件」の詳細を明らかにするという課題は、熊野市がかならず組織的に全力をあげて早急に進めなければならない課題であるにもかかわらず、熊野市は、現在にいたるまで、まったくなにもおこなっていません。

 22回目の追悼集会にあたって、わたしたちは以上のようなこれまでの熊野市の対応に強く抗議するとともに、あらためて以下の要求を行います。
1 『熊野市史』における「木本トンネル騒動」に記載された文言「誠に素朴な愛町心の発露」について、『熊野市史』の公的・私的な購入者に対する削除の通知を徹底していただきたい。また削除の通知をするだけでなく、なぜ削除するのかについての理由を明記していただきたい。
2 熊野市市議会は当初、追悼碑を当会とともに建立するために200万円の予算を計上しそれを可決したが、その予算は執行されていません。現在、その200万円がどのように扱われているのか、説明していただきたい。
関連して、新屋英子さんが熊野市に追悼碑建立の基金として渡された10万円がどのように処理されたのかについて説明をしていただきたい。
3 熊野市図書館に「木本事件」の資料コーナーを早期に設置していただきたい。設置しないのであれば、なぜ設置しないのかについての理由を説明していただきたい。
4 お二人がなぜ異郷の地で無残に殺害されるに至ったのかについて、地元の学校で、あるいは社会教育を通して、反省する機会を設けていただきたい。
5 昨年9月30日に熊野市の教育委員会の社会教育課に対して追悼碑の案内板を設置するように要望をしました。しかし、教育委員会からはいまだに回答がありません。早急に回答をしていただきたい。
6 「木本事件」の詳細を明らかにし、お二人が無残に殺害された歴史的社会的原因を究明する機関を設置し、「木本事件」の真相を明らかにする調査報告書を、わたしたちの会とともに作成・発行していただきたい。

昨年の追悼集会のあと、ほぼ同じ抗議要請文を貴職に送りましたが、回答をいただいておりません。ただひとつ、昨年9月30日に熊野市建設課を訪問し追悼碑の下のがけの危険個所について整備を要請したところ、この整備については調査と工事がおこなわれました。しかし、この工事の実施について、当会のほうには何の報告もありません。今年の9月になって当会が建設課に問い合わせて工事が実施されたということを初めて知りました。追悼碑の土地の管理者であり所有権者である会に対して、工事の事前連絡も事後報告もおこなわないまま工事を実施したのは異常な事態と言えます。

いずれにしても、上記の市民団体の要請を無視する態度はあきらかに行政の説明責任を放棄するものです。今回の6点の要望については、そのようなことのないよう、12月28日までにかならず文書での回答を求めます。