PROGRAM NOTES
(各曲解説)
   
『第1部』

Black Star
ソロでのデビュー・アルバム「Rising Force('84)」に収録。同アルバム収録の「Far Beyond The Sun」とともに現在でもイングヴェイの公演で演奏される代表曲の一つ。オリジナルではアコースティック・ギターによるイントロから始まるが、今回の公演ではハープにより導入され、マルムスティーン登場前の“序曲”の如くオーケストラのみの演奏となる。

Evil Eye
「Rising Force('84)」収録。オリジナルではアコースティック・ギターとエレクトリック・ギターの共存の妙を聴かせるが、今回はエレクトリック・ギター・パートをマルムスティーン、アコースティック・ギター・パートをオーケストラが受け持つというアレンジがほどこされている。マルムスティーンの楽曲全般にいえるが、特にキメのポイントが多いこの曲ではオーケストラとマルムスティーンのアンサンブルが聴き所の1つとなるだろう。

Brothers
7枚目のスタジオ・レコーディング・アルバム「The Seventh Sign('94)」に収録。マルムスティーンのコメントによると、この曲は形式は別として「レクイエム(鎮魂歌)」ともいえ、クラシック的にいうと<lamentabile(嘆くように、悲しげに)>そして<cantabile(歌うように)>で演奏されている。オーケストラ・アレンジに姿を変えた今回の演奏では<molto(非常に)>の要素がさらに加わった演奏になることが予想される。

Trilogy Suite Op.5 より第一楽章
「Trilogy('86)」収録。マルムスティーンのコンサートにおいては頻繁に演奏されている代表曲の1つ。オーケストラにとってはオリジナルのテンポで演奏するのは至難と思われるが聴き所の1つではあるだろう。

Blitzkrieg
「Alchemy('99)」収録。マルムスティーンのヴィルトゥオーゾ的フレーズがふんだんに散りばめられているこの楽曲は、クラシックからの影響を感じさせながらも非常にアグレッシブで、管弦楽の範疇だけではこのフィーリングを表現するのはなかなか難しいと思わせる。その意味でマルムスティーンは見事なまでにクラシックとロックの融合に成功していると言えるだろう。






『第2部』

  マルムスティーン:エレクトリックギターと管弦楽のための協奏組曲
変ホ短調 作品1「ミレニアム」<世界初演>

Y.J.Malmsteen : Concerto Suite for Electric Guitar and Orchestra
in E-flat Minor Op.1 "Millennium"

T.Icarus Dream Fanfare
弦・管楽器とティンパニの掛け合いにより導入されたあと、ホルンが高らかにテーマを歌う。導入部が再現されるとギター・パートが切り込んでくる。ギター・パートは多くのアドリブを含み、インスピレーションを大事にするイングヴェイの考えが反映されている。

U.Cavalino Ranpante
オーケストラは4分の4のアレグロ・ヴィヴァーチェでボレロ風に始まり、2小節目からギターが6連譜の早いパッセージでそれに加わる。その後はモデラートでオーケストラはアドリブを含むギター・パートの伴奏にまわり、その後再現部を迎える。

V.Fugue
室内楽的かつバロック音楽的な曲調ではあるが、そこにイングヴェイは4声のコーラスを使用してオリジナリティーを加える。その扱いは、声部を細かく使い分けるなど慎重になされている。

W.Prelude To April
アコースティック・ギターに持ち替えられ、(スタジオレコーディングでは)短いソロを含む序奏風の扱いでアタッカ(間を空けず)で5曲目につながれていく。ここにも合唱が使用される。

X.Toccata
極小編成の室内協奏曲を想定したかの様なスコアであるが、イングヴェイのアドリブ・ソロ・パートを多く含み、静けさと熱さの共存に成功している。

Y.Andante
弦楽合奏に始まり、中間部では聴き所の1つであるフルート、オーボエ、チェンバロ、ヴァイオリンとギターによる長いユニゾンが展開される。イングヴェイのギターとオーケストラの各パートの緻密なアンサンブルが要求される。

Z.Sarabande
再びアコースティックに持ち替えてのこの曲は、小編成的なスコアになっている。また一方でティンパニは2名必要とされ、ワーグナーの曲の様な効果をねらうという小技?も披露している。

[.Requiem
アルバムではアレグロ、アダージョと分けて表記されているが、楽譜上では「レクイエム」に内包され、アレグロ・ヴィヴァーチェ〜グラーヴェ(荘重に)〜アレグロ・ヴィヴァーチェという表記で構成されている。「Brothers」のメロディが歌いあげられ、「Brothers」=「レクイエム」ということが証明される。

\.Vivace
クラリネット、チェンバロ、ヴィオラ、低弦楽器とギターのユニゾンで始まり、ギターの6連譜の早いパッセージを経て、ホルンが勇壮にテーマを歌う。この組曲がフィナーレに向かいつつあることを予感される。

].Presto Vivace
早いテンポでユニゾンにつぐユニゾン、4声の合唱が再び登場し、ブラスもあいまって盛り上がり、アタッカでフィナーレへと結ばれる。

XI.Finale
イングヴェイの音楽を創り出すこと、奏でることの喜びをそのまま表現したかの様なフィナーレは、もったいぶった部分を一切持たず、意外なほど唐突に終結を迎える。しかし、そこにイングヴェイの凝縮されたスピリットを十分感じることができる。