オヤジ祭り・3
昔、某ゲームコンテンツ内にあった小説(?)の再録もの。 その時の題名は『がんばれ、日本のお父さん』でした。 内容は支離滅裂ですが、まあ、お約束ってことで。
あるガード下のおでんの屋台。 そこで二人組みのサラリーマンが座っている。 「くっそー、なんで俺の小遣いより子供の小遣いのほうが多いんだ!」 男は手に持ったコップをテーブルに叩きつけて叫んだ。 「おいおい、そんなに荒れるな、コップが割れるぞ。」 「荒れたくもなりますよ!いいですか、娘の小遣いが月3万円で一家の長である俺の小遣いは月2万円なんですよ、 2万円ですとね、毎日昼飯に500円使っちゃうと、残りは5000円なんですよ! それで飲み代とかタバコ代とか差し引くとぜってー赤字になるんですよ、畜生! それでよぉ、せめて娘と同じ月3万円に上げてくれって言ったらあいつ、なんて言ったと思いますか? せめて二人目は私立に行かせたいからそんな余裕なんてないとか、ぬけぬけと言ってんだぞ、 俺は知ってんだ、あいつが近所の奥様連中と5000円もするランチを食べによく高級レストランに行ってる事をよ! おい、だれが金稼いできてると思ってんだ?俺だよ、俺!・・・世の中・・・間違ってるよ・・・。」 そこまでいうと男はコップを握り締めたまま テーブルに突っ伏して泣き始めてしまった。 「まあ・・・お互い辛いな・・・、私は月の小遣いは1万円だが毎日弁当を作ってくれるからな。」 「うう・・・ぐすっ・・・ぐすっ・・・。」 「まあ、たまに日の丸弁当なこともあるけどな・・・。」 「うっうっ・・・で、その『たまに』ってのはどれ位の頻度なんですか・・・。」 「・・・3日に1度位・・・かな・・・・・・。」 そこまで言うと慰め役だった男も涙ぐんできてしまった。 「でも・・・いいじゃないっすか、毎日弁当作ってくれるだけでも・・・ なんだかんだいって大切にされてる証拠ですよ・・・。」 「いや、この前、奥様連中の井戸端会議を盗み聞きしてたらな・・・ 『もう、なんで毎日帰ってくるのかしらねー、あの粗大ゴミは? それに土曜日曜も家でぐーたらしてないで会社行って稼いでくればいいのに、 そんなんだから出世できないのよ。給料を持ってくるだけが取り柄のくせしてさ。』 とかそれはそれは楽しそうに話していたんだ・・・。 土日に働いたところでこの不況の中、特別手当てなんか出ないのに・・・。」 「そんなんだったら、うちの娘なんてひどいですよ・・・ 『やだ、お父さん。オヤジくさいのが伝染るから近寄らないで!』 『えー!?お父さん先に風呂入っちゃったの、風呂のお湯取替えといてね!!』 『お母さんったら、お父さんの洗濯物とは別にしてって何回も言ったじゃない、あーやだやだ。』 ・・・・・・・うおーーーーー! だれがここまで育ててやったと思ってるんだー! 俺だー!俺が汗水流して働いてここまで育ててやったんだー! チキショー、俺は一家の大黒柱だぞ、家の中で 一番えらいんだぞ、バカヤローーーーーー!!!!!!!!!!!!」 「親の心、子知らず・・・だな。」 「昔はねぇ、娘と一緒にお風呂に入ったりもしてたんですよ・・・。 それでねぇ、俺の背中を流してくれながらね、 『あたし、おおきくなったらお父さんのお嫁さんになったげる』 なんて言ってたんですよ・・・、それが・・・いつのまにか・・・。 この前なんか男友達を家に連れてきて・・・、俺はあんな男との付き合いは認めんぞー! 少しはお父さんの娘を想う気持ちをわかってくれーーー!!!」 「まあ・・・そういうな・・・、子供達だって、いつかわかってくれる時がくるさ。」 「『いつか』っていつなんですかー?ねえ?ねえ?ねえ?ねえ?」 「あ・・・えーと、子供たちが親になった頃かな・・・。」 「いやだーーそんなに待てないーーーー!」 男、再び号泣。 もう一人の男もめそめそと泣き始めた。 「ぐすっ・・・そういえば係長・・・今度転勤なさるんですって。」 「ああ・・・一応栄転ということらしい・・・支店長を任されるそうだ。」 「うう・・・いいじゃないですか・・・支店長だなんて・・・で、場所は?」 「・・・・・・聞きたいかい?」 「・・・・・・一応。」 「・・・・・・・・・北○鮮。」 「・・・・・・へっ?」 「だから北朝○だよ、き・○・ちょ・う・○・ん。」 「・・・・・・それは・・・まあ・・・なんというか・・・。で、ご家族はどうするんですか。」 「ああ、最初は 『まあ支店長なんて、すごいじゃない。家族は一心同体、どこへでもついていくわ。』 なんて言っていたが、場所を聞いた途端、 『あなた、家族の絆は距離なんか関係ないわ、がんばっていって来てくださいね。』 と、こんな感じだ・・・。」 「悲惨ですね・・・。」 「私だって・・・私だって北○鮮なんて行きたくないんだ・・・。 これが遠まわしのリストラだってことも知っているんだ・・・。 でも家にはこれから受験を控えた子供が3人も・・・。」 「俺は・・・俺は係長を尊敬します、あなたはサラリーマンの、企業戦士の鑑です!」 なぜかそこで敬礼をする男。 「うん・・・ありがとう、そこで相談があるんだが・・・。」 「はい!俺にできることならなんでも!」 「実は部長がね、北朝○行きに際して、部下を一人パートナーとして連れて行けと言っているんだ。」 「へ・・・・・・?」 「そこで・・・是非君にお願いしたくて・・・。」 「い・・・いやだ・・・俺は北○鮮なんて行きたくねーーー!」 「そこをなんとか、君しか頼める人がいないんだよ。」 「やだーーー、地獄へは係長ひとりで行ってください!」 「向こうでは君は支店長補佐役、ゆくゆくは支店長だ!」 「いーーーやーーーだーーー!」 「あっちは空気がおいしいぞ!」 「空気なんて屁のつっぱりにもなりませんよーーー!」 ―――――数十分後。 「うっうっ・・・わかりました・・・地獄へでも北朝○でもお供します・・・。」 「わかってくれたか・・・、感謝してるよ・・・。」 「はい、二人で北○鮮の星になりましょう・・・。」 「うむ・・・。」 「そういえば係長・・・そろそろ終電の時間じゃないっすか?」 「ああ・・・そうだな、今日はこのへんで帰るか。」 「できれば帰りたくないですけどね。」 「そうも言ってられんだろう。」 そういうと男達は背中に哀愁を漂わせながら家路についた・・・。 そして・・・・・・ 「あなた!今何時だと思ってるの!?」 「い、いや・・・今度、栄転になるだろう、その打ち上げもかねてだな。」 「まったく、今日び飲み代だってバカにならないのに。・・・あ、そういえば今度あなたに一千万円の生命保険かけましたから。」 「へ!?」 「なんせあんな国に行ったら一生国外へは出られなくなるかもしれませんからね。私たちの生活の為です、当然よね。」 「そんな・・・まるで人を生贄みたいに・・・。」 「いっそのことあなたが拉致監禁されて死亡扱いで保険金がおりてくれる方がいいんですけど。」 「・・・・・・。」 「ただいまー。」 「・・・・・・。」 「た・だ・い・ま。」 「・・・・・・。」 「くぅうおらぁ、一家の大黒柱が帰ってきたんだ、お帰りぐらい言わんか!」 「っもう、うるさいなー、テレビの音が聞こえないでしょ!」 「な、なんだ、その態度は、いいか、そもそもだなぁ・・・。」 「ハイハイ、親父虫はとっとと消えてくださいな。」 「テメーーーッ、この親不孝娘が!!!」 「あら、あなた、おかえり・・・何、娘に対して切れてるのよ。」 「ぜぇ、ぜぇ・・・。」 「そういえば、さっき会社から電話があったんですけど。」 「電話?」 「あなた、今度北○鮮へ転勤ですって?」 「へ?それはさっき係長から言われたばっかりで・・・ってもう決定事項だったの?」 「あなた一人で何言ってるの・・・それより転勤の事、本当なの?」 「よくわからないけど・・・・・・多分。」 「そう・・・明日、保険会社に電話しなきゃ。一番高いコースがいいわね。」 「まて、俺は別に死ぬわけじゃ・・・。」 「ワーイ、お母さん、保険金おりたら私にも何か買ってー。」 「あなた、がんばって骨をうずめて来てね、できるかぎり保険金がおりるような失踪の仕方してくださいね。」 「てめえらーーーーーーーーーッッッ!!!」 オヤジ達の嘆きはだれにも届かない・・・。 FIN
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