川崎市児童福祉審議会第2部会 議事録より(会員作成)
                          2001/02/02
                                      

 意見具申を策定した第2部会ですが、平成12年6月より開催され、その簡単な議事録と配布資料が市役所の情報プラザで公開されていますので、これを読みました。
 市の考え方、各委員の問題意識、意見具申には書かれていない論点など参考になると思いますので私なりに抜粋してまとめましたので、参考にしていただければ幸いです。

資料@〜Cはネット上では省略します、すみません。


●第一回議事(6月30日)
市(事務局)より、川崎市の保育の状況、少子化状況など基本的な事項を説明。
事務局(=児童部)から、「川崎市における保育課題」(資料@)を説明。

★市が、「近い将来には、子ども数が激減し、保育需要にも大きな影響を与える」「公立保育所の比率が高い本市においては、多様化するニーズに柔軟に対応しきれない状況であり、今後の運営形態等のあり方などを検討する必要があります」などと入口から結論を押しつけている様子がよく分かります。


●第2回議事(7月18日)
主な議題は待機児童の状況、認可保育所と地域保育園の役割・比較。

★市が待機児童の状況と地域保育園、おなかま保育室の状況を説明(資料A)したのに対して、潜在的な求職者を無視するのはよくないとの委員からの声。

B委員
潜在的な求職者を無視するのはよくない、多様な就労形態があるなかで、いろいろな保育があってよいのではないでしょうか。

部会長
この部会のあり方ですが、待機児童解消策として進めるのか、潜在的な需要を含めた考えを出すのか、どうしましょうか。

C委員
潜在的な求職者を含めて検討したほうがよいと思います。

部会長
部会としては、待機児童解消策と、潜在的な需要を含めたものとを検討することでいきたいと思います。
 

市から、「認可保育所と地域保育所の役割について」を説明。(資料B)
★委員から財政からだけ公立民営化を打ち出す市の姿勢に反発の声があがっているようだ

部会長
保育は本来どこが運営すべきかということであり、単に財政的なことだけで、公立・私立のどちらということは論じられない。

C委員
 川崎の公立方式を生かすべきで、一定程度の平均化はやむをえないが、園長に地域の特徴を生かせるような裁量を与えるといい。

D委員
 他都市では、園長は保育士ではない場合がまだあるが、川崎市では保育士が園長になる歴史が長い。

A委員
認可保育所と地域保育園の援護の費用が不平等なので、地域保育園の質を高めて援護の額を増やす必要がある。

部会長
 保育に欠ける側に立って、空き状況によって認可保育所、地域保育園にはいるというような不平等を平等にしていくことが必要だと思います。

B委員
子どもにどういう保育が必要なのかが重要ではないでしょうか。

A委員
一方に、入所できない児童が多いのに保育所を増やせない状況もあります。


●第3回議事(7月26日)

主な議事は保育行政のあり方について。
★企業参入や幼稚園の参入について以下の議論がされています。
部会長 
 鷺沼の「こども未来財団の駅型保育所」は5年経過していますが、どうなっていますか。
B委員 スタート時に比べ、社会の変化からか、余り積極的でなくなったと聞いております。
部会長
企業も営利目的だけで運営は困難だと思います。二次的な貢献や福祉的な貢献を目的にしての運営でないと継続は難しいですね。

部会長
企業参入は難しいようですが、幼保一元化ということで幼稚園の動向はどうですか。

事務局
 預かり保育の拡大を図っていますが、今後は児童数の減少から保育のほうへ参入してくるのではと考えています。

C委員
川崎市では、幼稚園の預かり保育に対して補助金はどうなっていますか。
 事務局 補助金の額はあまり出ていません。
 

★夜間保育、子育て支援センターなど

部会長 
夜間保育は、他都市の様子を見ると、延長の延長を各区1カ所程度の実施でよいようです。
A委員 延長保育に対する職員の採用の仕方のよっても、延長保育の内容も変わるのではないでしょうか。

事務局(露木課長)
川崎市では、延長保育に正規の職員が対応していますので、採用にあたっての保育士の資格の区別はしておりませんが、今後の採用方法についてもご意見をいただければと考えております。
(略)
部会長 支援センターの職員数は何人でしょうか。

事務局
子育て支援センターに2名、ふれあい子育てサポート事業に1名が当たっています。
公立では、地域支援事業を行っております。

部会長
横浜市は、地域支援事業をセンター園に非常勤職員を置いて実施しているようです。

事務局
 公立では、フリーの保育士がいて地域支援事業を行っております。


●第4回(8月2日)
主な議題−財政について、公立と民間について
 

★公私比率などの他都市との比較、公立保育園の運営

A委員
公立保育所の占める率が高いところで、他の都市の状況はどうなっていますか・
事務局
公立保育所の率が高いところは、一市を除いて概ね運営費が高くなっている状況になっております。
B委員
 国の運営費が、都市によって違うのはどうしてか。
事務局
 保育所の定員、受け入れ年齢構成等によって変わってきますし、保護者の収入が多いほど、保護者負担金が多くなります。
B委員
 所得金額は、東京、川崎、横浜の順になっています。

C委員
 高齢者1人に対する福祉に要する金額に比べると、全児童1人に、対する福祉に要する金額は少ないと思いますので、その数値を比較して示していただくとともに、少子化対策としては、もう少し多くできないのでしょうか。
B委員
 児童と高齢者の福祉を単純に金額で比較するのは困難ではないでしょうか。
部会長
 大阪の堺市の民営化の状況はどうなっているのでしょうか。
事務局
 その後の状況を把握しておりません。
部会長
 保育所の弾力化で、各保育所の独自性を持たせたほうが、地域に特色を持ったいろいろな保育メニューの実施が可能になるのではないでしょうか。

事務局
 公立保育所が一斉に事業を行うという方法は、限界があると思うので拠点方式も考えられると思います。
部会長
 民間と公立ということではなく、運営の仕方で費用がかからない方法がないでしょうか。
例えば、拠点保育所に予備保母や用務員を配置するとか。
C委員
待機児解消策として、地域保育園を積極的に位置づけるのであれば、これに対する補助と規制をきちんと検討すべきだと思います。


 ●第5回(8月31日)

4委員からの意見具申案の提案が出され説明される。各々有る程度担当をわけているようでもあるし、しかしダブっている部分も多々ある。

このうち、「川崎市の待機児童の現状と課題(素案)」というものは、興味深い内容を記載しているので資料Cとして添付する。
★興味深い論点は、(1)待機児童の傾向と背景を分析し、「保育枠を拡大しない限り、待機児童は今後も上昇傾向にあると予想」、(2)待機児解消策を採ることで「出産抑制を緩和する対策ともなる」、(3)認可保育園が増えない中で認可外保育園が増加しており、大和市の事件とも関連して川崎市もこうした危険と無縁ではない、(4)公立保育園で働いている経験の長い保育士の人的資源を有効に生かす方法を検討する必要があるとして、その検討のために「園長のみならず現場の保育士を中心とし、加えて働く親、専業主婦、市役所職員、学識者等も参加する研究会を立ち上げ」ることを提唱

 また、「川崎市児童福祉審議会意見具申案」と言われる資料は、誰が作成したものか定かではないが、(部会長か?)意見具申の大元になっているような資料であるが、意見具申よりもさらに踏み込んだ記載があるので、以下興味深い点を引用する。
 

★私立認可保育園の地域子育て支援
私立認可保育園の地域子育て支援例:
東門前保育園−図書開放、プール開放。川崎愛泉−園庭開放。木月−年長児体験保育、井田−園開放、体験保育、体験入園。野川南台−図書貸し出し、稲田−地域開放の盆踊り大会、龍厳寺−音楽会を地域に開放、ひばり−ひばりかんとりーくらぶ、柿生−講演会を地域に開放、すぎのこ−母親クラブと共催の「散歩会」、移動動物園や冬のおたのしみ会

幼稚園における預かり保育−平成11年度44の私立幼稚園で実施

認可保育園利用者の保育内容やサービスの満足度は、概ね高いといえるのであるが、必ずしも公立の保育所の満足度が高いともいえない。いくつかの項目(「急な残業時の対応」「保育士の数」「保護者配慮の行事日程」「毎日の散歩」「送迎時の保育士との会話」「保育時間」)では、私立認可保育所と地域保育所よりも満足度が低くなっている。これらの項目については特に、公立保育所内の前向きな検討が望まれるところである。

全国の政令指定都市の認可保育所の定員数と比較して、川崎市のそれはかなり低い。従って、今後は市内に私立認可保育所を増設整備することが望ましいと考えられる。

地域保育所は利用者のニーズに対応している面が多々あり、認可保育所が対応しきれない部分をカバーしている面がある。一方、生活空間の広さや、調査結果にはみられない保育費用の問題その他の問題も含んでいる。保育所の第一義的利用者である子どもにとって望ましい生活の場を提供するという観点から、援護対象の地域保育園の数を増やすよりも、地域保育園の長所を認可保育所に取り入れる工夫と、認可保育所を増やす努力をすることが望ましいと考える。

(おなかま保育室について)平成12年4月現在、保育室は18カ所で、229人の児童が利用している。定員は昨年度末261人であったから、空席が32人分ある。しかし、平成11年度末までに370人の受け入れを目標としていたのに対しては、定員を増加できなかった。そこで、本年度は予算上2カ所の増設が予定されている。利用者が定員に満たないのはどのような理由であろうか。

(親の勤務状況を分析した後)親たちがそのような勤務状況であれば「延長保育の充実」「急用時の柔軟な対応」の中身として、19:00よりも更に遅くまで保育をしてほしいという親の要望が起こることも不思議ではない。しかし、親のこの要望に応える保育サービスの充実を進めることは、子どもの生活を充実させることになるのだろうか、子どもの健全な成長・発達に寄与することになるのだろうか、大いに疑問の残るところである。子どもの権利条約の主旨に照らしても、子どもの健全な成長・発達にとって最善の策を講じる必要がある。保育所という集団生活の場での長時間の生活は幼い子どもにとって少なからぬ負担を強いるものであることに加えて、親に養育される時間の縮小という子どもの権利侵害にもつながるものといえる。子育てをする親の子育ての時間を十分に保証する勤務時間の体制づくりを、すべての企業に働きかけることは不可欠である。
 

現在夜間保育所は川崎区に1カ所だけである。子どもの生活にとっての望ましさを考慮しながら、他地区への新たな開設を検討する必要があろう。

 実際に子どもを保育所に預けた経験からその保育内容や保育サービスの満足度の回答をみると、「保育士のやさしい対応」に高い満足状況がみられる。更に「保育所内の異年齢の接触」「自然や高齢者とのふれあい」「避難訓練や交通安全指導」「多様な遊びの取り入れ」「毎日の散歩」「運動会の実施」「おやつや給食」「衛生管理」などにも高い満足状況を見ることができ、保育所の職員が専門性を発揮していることがうかがえる。
一方、「保育士の数」「保育室の広さ」(公立と地域保育所の利用者に不満が多い)、「園庭の広さ」(地域保育所の利用者に強い不満がある)、「遊具の充実」(地域保育所の利用者で満足度が低い)などは高い満足度とは言いがたい実状がある。保育士ひとりあたりの子どもの人数、子どもひとりあたりの保育室や園庭の広さ、遊具の種類や子どもひとりあたりの数など、利用者から見て不十分さを感じていることがうかがえる。
 

産休明けからの保育所での保育が一般的に適切かどうかの検討をおろそかにすることはできない。産休明けの乳児にとって適切な保育が保障されるような体制作りが根本的に必要なのであろう。
すなわち、家庭で、親の元での保育が基本ということになる。それが可能になるような体制づくりにより多くの精力が注がれるべきであろう。
それでも若干は必要な場合があろう。適切な対応のできる保育所と、研修を積んだ家庭的な保育ママや保育ヘルパーなどが有力な援助者になることができるのではないだろうか。
 
 

(公私の保育士年齢差について)公立は若い保育士を採用する余地がないこと、民間は若い保育士でないと人件費の支出が困難であることが最大の理由であると言われているが、表で考察したように、民間保育所では保育士の雑務も多く、労働過重の傾向にあり、人事の交代があるのかもしれない。今後、公私それぞれの保育士のタイムスタデイなどで検討する必要がある。(略)
 公立保育所では保育経験の長い保育士が多いので、低年齢児の保育には熟達している反面、年長児の保育には活力が不足し、活動的な保育内容が制限されるのではないかと懸念される。対照的に。若い保育士の多い民間保育所では子どもの養育領域のケアが不十分で、主任・園長の負担が大きいことが予想される。
 

(今後の課題として)
1)公立保育所を全国平均程度まで民営化する
2)公立保育所での経験年数の高い保育士を、より有効に活用する。
  具体案として子育て支援センターへの配属
  民間保育所への出向
  おなかま保育室、地域保育園などへの出向
3)公立保育所に若い保育士を採用し、保育士の平均年齢を引き下げ、保育をより活力のあるものとする。


●雑感(以上をまとめての感想)
入口から市が誘導しているのが明らかである。委員は個々考えがあり、特に今後少子化で需要が減るという市に同意している委員は少ないと思われる。しかし、結局は意見具申では市の意向に沿う形でまとめられている。
子どもの権利という視点が委員の意識としては一部有るが、意見具申からは抜けている。
保育の内容についても若干議論されているが、結局中身に踏み込んでいない。当事者の保育者・父母がいないことによる欠陥。
調査報告書のアンケート結果の分析が甘く、表面上の数値だけを見ているにすぎない。

                                         以上

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