レンタルビデオ店なんかで、知らないタイトルの映画を無造作に借りてきたとします。
「なんでこんな映画作ったんだ?」って思えるような作品に当たってしまう事もしばしばですが、時折、大当たりとも言えるような作品を見つけたりして、小躍りしてしまう事があります。「SFサムライフィクション」は、ちょうどそんな映画です。

SFというのは、サイエンスフィクションのことではなく、そのまま「サムライフィクション」の略称です。真面目な剣戟映画です。
はじめ、最近の若い監督さんが撮った剣戟映画だというあおりを見て、過去の日本映画へのオマージュ的な作品である事を想像したんですが、それは勘違いでした。問答無用に面白く、どこか懐かしく、そしてなんとも新しい映画でした。丁寧に作られた、過去の名作にイメージを頼ったりしない、独立した剣戟映画です。
主人公は生真面目で、その生真面目さゆえに可笑し味のある青年サムライです。藩の宝である将軍家から賜った刀を盗み、藩の役人を殺して逃げた剣客を追ってひたすら走ります。幼馴染の青年サムライ二人も一緒に走ります。じきに、ただ走る主人公を止めてくれる中年サムライと、その娘が現れます。それでも主人公は走ろうとします。宿敵の剣客も、生き急いで苛立ち、走ります。藩お抱えの忍者も走ります。馬も走ります。任侠も走ります。終いには、中年サムライも走ります。最後に、主人公は泳ぎます。

ストーリーを言わないようにこの映画を紹介すると、そんな感じです。
監督は、色々なミュージシャンのミュージッククリップを作っている人で、専門ともいえる音楽と映像との融合はもちろん、殺陣の見せ方や人物のちょっとした描写などに、非凡な才能を見せてくれます。
こういう当たりを引くことがあるから、知らない映画を適当に見るのはやめられません(ただ単に映画を知らないだけだという話もあります)。

とにかく、一度観たら、知り合いに教えてまわりたくなる映画です。というわけで、まだ観ていないのでしたら是非どうぞ。


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