FSSに登場する人々やファティマ達の身につける衣服や、幾多のMHや機動兵器、街や城の建造物に至るまで、全てのデザインは、作者の永野護氏自身が行っているそうです。
どのデザインを見ても、とにかく格好良いです。何かの模倣ではなく創造。引用はあっても、高度のアレンジが加えられています。
そのデザインセンスはキャラクタターの人格や歴史上の役割等をも含んだ「キャラクターデザイン」や、登場する全てのものの「名前」にまで及んでおり、作者の才能をこれでもかと読者に見せ付けます。
今回は、それらのありとあらゆる「デザイン群」の中でも、とりわけ僕の好きなMH、特にこれから注目のMHの、その名前をいくつか取り上げ、語ってみようと思います。

まずは、ハスハ共和国のATOLL(エイトール)の新規改良型・「ATOLLダンダグラーダ」。すでにATOLLには12種類の装甲パターンがあると発表されていますが、このダンダグラーダはそれらに属さない、新しいATOLLのようです。一説には宇宙戦用のMHであるとも言われていますが、現時点では、その開発にエンブリヨ隊のワンダン・ハレーのファティマ「ハルペル」が関わっていたということしか明らかになっておらず、登場が待たれるMHの一つです。なにせ、現在連載中のFSSのシリーズ、「ザ・マジャスティックスタンド(大君主の調律)」においての主役的な役割を果たす国家の新規MHなわけですから、作者も気合が入っているはずで、半端なデザインではありますまい。

続いて、皇帝レーダー8世が退位したばかりのフィルモア帝国。フィルモアといえば、ジョーカー中の泣く子も黙る「一つ目のサイレン」で有名な軍事大国でありますが、そのサイレンを指揮するための王用MH、プロミネンスが気にかかります。もちろん、フィルモアの王用MHならば、ハイランダー(フィルモアの国家全権代理騎士)に就任したクリスティン・Vがレーダー王より預かっている「V・サイレン(別名:ネプチューン)」が有名ですが、レーダー王家とは別のもう一つの王族、フィルモア王家専用のMHとして、この機体があるのだそうです。プロミネンスを駆るヘッドライナーは、どうやら次のフィルモア皇帝に即位するらしき、フィルモア・ファイブ。ジャコー(ミラージュ騎士イマラの息子で、ジョルジュ・スパンタウゼンからイオタ宇宙騎士団を、剣聖カイエンからシルバーナイトの称号を譲り受けた、後に強天位を取る熱血騎士)とも旧知の仲らしい彼は、「ザ・マジャスティックスタンド」の最中、動乱のハスハに武力介入をするらしいのですが、そこにクリスティン・Vやバキン・ラカン帝国の天位騎士アマドア・ユーゾッタらとからんで、どのような活躍をしてくれるのか、そのMHのデザイン同様、目が離せないのであります。
特に、フィルモアではMHの重装甲化が進んでおり、ちらりとだけ連載に登場した、試験運転中のアルカナ・サイレン(皇帝警護用MH)がとんでもない厚さの装甲を羽織っていただけに、プロミネンスもそういった戦車的カッコ良さを前面に押し出したデザインなのでは、と予想しております。

「ザ・マジャスティックスタンド」での悪役は、大魔道師ディス・ボスヤスフォートと三代目黒騎士デコース・ワイズメル率いるバッハトマ魔法帝国のバッハトマ黒騎士団、クラーケンベール・メヨーヨが大僧帝に即位したメヨーヨ四奉開経連合朝のメヨーヨ108金剛遊撃騎士団、AKDから盗み出したデータを元に新型MHを作ったコーネラ帝国のスケーヤ騎士団、アイオ・レーン天位騎士を擁するジャスタカーク帝国のジャスタ宮殿騎士団、さらには幾多の傭兵国家等が名を連ねます。そして、それぞれの騎士団の所有する主なMHは、バッハトマが重装甲版のMHバッシュ・ザ・ブラックナイト、MHアウェイケン、MHバルブガット、メヨーヨはMH姫沁金剛(きしんこんこう)、MHアシュラテンプルDD、スケーヤが傑作MHカン、ジャスタがMHグルーン、MHエルダグライン、MHシャクター、などなどなのでありますが、なんでもアシュラテンプルDDというのは、すでに四巻で登場しているアシュラテンプルとはまったく異なるデザインなんだそうで、そうなると重装甲版バッシュ以外は、すべて新登場、新デザインのMHということになります。悪役側だけですでにこれだけの数のMHが出演予定・・・・・・いったいどれほど大規模な戦争が描かれることか・・・。

さて、「ザ・マジャスティックスタンド」終了後には、いよいよ年表に記されているAKDによる星団大侵攻「モナークセイクレッド」が始まるわけですが、その時代になると、また多くのMHの存在とそのデザインが明らかになることでしょう。今のところ、僕はこの時代の情報をほとんど持っていないため、ただただ期待に胸を膨らませるばかりです。しかしながら、この時代以降に登場するという噂のMHの名前は、いくつか聞き及んでいますので、それを挙げていきましょう。

人気の高いトリオ・コーラス王朝は、ベルリンMK=2・ドラクロアと、4100年に登場するジュノーン・オクターブ(別名:ユニコーン)。ドラクロアは、最近連載の方に登場したドクター・ダイアモンドの設計したMHだそうです。ジュノーン・オクターブの方は、二つのファティマルームを持つMHであるといわれ、コーラス6世が乗り込んで、その時代悪の巣窟と化しているAKDを打ち倒します。

ミラージュマシンでも、いまだ未公開のMHはいくつかありますが、その中でも、古い年表に「とても美しいMHである」とだけ記されているゴウト・ミラージュと、7777年、惑星フォーチュン上で完成すると言われているLED・ミラージュ2あたりは、生半可なデザインや設定では無いことが容易に想像出来ます。


今回の資料はほとんどがコミックスに頼ったもので、トイズプレス社のFSS公式副読本、「クロニクル」や「キャラクターズ」を引用すれば、いくつかのMHはそのデザインが公開されているでしょうし、それに倍する数の未公開MHの名前も見付かることでしょう。それにしても驚きなのは、これら無数のMHのデザインのほとんどを、作者はすでに10年前に終わらせているらしいということです。全体のストーリーラインも、FSSマスターシナリオという原作小説のようなものが連載開始時には出来上がっていたんだそうで、とにかくこの作者は、確信犯的に物語を進めています。
この、「手のひらの上で踊る」感覚を突破するためには、作者の想像の上を行くしかありません。そういう意図を持って、今回はとにかくデザインが未登場のMHばかりを取り上げてみました。デザインの予想であの作者を上回るのはとても難しいことですが、名前や設定に関してならば、ここでこうして一度整理しておいたことで、いつか、何かはっと気がつけることがあるかもしれません。最近連載上で明らかになったファティマ「エスト」とMHバッシュの真実に関する伏線は、10年前に刊行されたコミックスの二巻から張られたものでしたが、いっぱしのFSSファンとしましては、これから作者が仕掛けようとしている(あるいはもう仕掛けられている)幾多の伏線のうち、いくつかにでも反応しておきたいものです。

※はなはだ頼りないですが、今回の内容に、てなしもの調べ間違いや思い違いなどによるミスがあるかもしれません。そういうものに気が付かれた方がいらっしゃいましたら、どうか会議室か、メールにてご一報をよろしくお願いします。事実確認のうえ、迅速に訂正いたします。


back