「インタシティ」
「フォーカスライト」
「SSL」
「ニーヴ」

この四体のファティマを総称して、「4ファッティス」と呼びます。
ジョーカー星団最悪の戦闘兵器、モーターヘッド(以下MH)のコントロール補佐の為にDr.リチウム・バランスによって生み出された、生体コンピューター、人造人間。彼女たちは、その最初の四体です。
ファティマというのは、戦争の道具です。道具であるからには、その性能の良し悪しが重要です。これまでFSSという作品において、ファティマの性能というのは、そのファティマが成人した時に計られるという「パワーゲージ」によって比べられるものだと、僕ら読者は思っていました。例えば、Dr.バランシェ最後のファティマ「アトロポス」は、5つのパワーゲージすべてが3Aという超絶的なファティマです(平均的な騎士の能力が2Aなのですから、その凄さも解ろうというものです。アトロポスは、戦闘能力、MHコントロール能力等において、天然の騎士を上回っているわけです。)。ところが、そのパワーゲージ以上にファティマの能力を左右する要素があることが、「第五話 ザ・シバレース」の、エピソード4、「皇帝たちの操り人形」の中で、明らかにされました。
それは、「経験」でした。
長い戦闘経験等の蓄積は、性能差をも跳ね除け、能力に勝る敵に勝つことが出来るということを、そのエピソードの中で他でもない4ファッティスの一人「インタシティ」が証明し、また、いまだ描かれない後の時代において、星団のほとんどを手中に収めたアマテラスがただ一つ恐れたもの、それはその時代に敵方に所属していたファティマ「エスト」の豊富な戦闘経験であったといいます。
ジョーカー星団史上もっとも数奇な運命を辿ったファティマであるとされる「エスト」は別格としても、戦闘経験がファティマの性能の優劣に大きく関わるのだとすれば、もともとの彼女たちの性能が未知数なのではっきりとは判りませんが、星団歴2310年に作られた4ファッティスは、現在の連載中の時代である3000年代以降には、700年近い戦闘経験の蓄積によって、すでに並のファティマでは太刀打ち出来ないような非常に重要なファティマになっていると言えるはずです。
そして、その存在が明るみに出るやいなや、そのうちの一人はメインストーリーに絡み、一人は実はとっくの昔に作中に登場しまくっていた事が判明し、後の二人も年表中に名前の出るような主要人物達とドンドン絡みはじめ、その存在は到底無視出来るものでは無くなりました。
更に言うならば、ジョーカーに住む一般人の2倍以上の寿命を持つ(まだ確定したわけではありませんが)彼女たちは、歴史上の有名人物たちのパートナーとして、また、絶対無比の軍事兵器として、歴史が動くその現場に居合わせ続けているはずなわけで、彼女たちが、それぞれの時代に、何処で、誰と、何をしていたのかというのを整理する事は、難解なFSSの物語全体を理解し、これからの物語をよりスムーズに読み解いていくためにとても有益な事だと考えます。
その上もっと重要な事は、このFSSという物語は、ファティマという虐げられた人造生命体の種族が、「救われる」物語であるという大きな骨格を持っているという事です。最初のファティマである4ファッティスの生涯を辿る事は、FSSのストーリーの骨格に近づく事に他ならないはずです。

よって、これから、4ファッティスについて現時点(1999年11月8日)で判っている限りの情報を元に、彼女たちのパーソナルデータと、彼女たちに関係する人物の情報を、僕の憶測も含めつつ、簡単にまとめたいと思います。ただ、FSSが連載されている月刊ニュータイプ誌の新しい号がちょうど明日発売なので、いきなり近日中に改訂版の更新をしなければならなくなるかもしれませんが・・・。
(ふう。前置きだけでこんなにかかってしまいました。)



ファティマ「インタシティ」について

インタシティは、連載中ですでにお亡くなりになっているファティマなので、その生涯の最初と最後を明確に線引き出来る分、他の三体よりも足跡を辿りやすいです。
4ファッティスは、四人ともはじめに”純血の騎士”ナッカンドラ・スバースに仕えました。その後、それぞれに自分の「マスター」を選び、各国に散っていきました。彼女の最初のマスターは、ハスハの剣聖ビザンチンでした。星団歴2500年代にハスハで起こったミグノシア大動乱において、十ヶ国を相手に戦い、見事ハスハの大地を守りきったという、ちょんまげ頭のシブいおっちゃんです。ダグラス・カイエンやアマテラス、シャフト(げ!)等の師匠として知られる剣聖デイモス・ハイアラキの、さらに師匠にあたる人物で、アトロポスも使う剣聖剣技「飛燕剣」の生みの親でもあります。そんなビザンチンと共に、インタシティはハスハを守りました。
その後、彼女がどんな騎士にどのように仕えたのか、やはり詳しい事は定かではありませんが、彼女は星団歴2977年頃に、彼女の生みの親の子孫であるDr.バランシェの元に一時身を寄せ、そこで特殊な処置を受けます。インタシティとしてのデータをすべて隠し、無銘のファティマ「ハルペル」として、再び世に出たのです。それは、「最初のファティマ」として博物館に飾られるのではなく、生命の火が燃え尽きる最後の一瞬まで、一ファティマとして騎士の元に寄り添い続けたいという、彼女自身の願いをバランシェが叶えたものでした。
察するに、その直前まで、インタシティはハスハかどこかの博物館や研究所で、歴史に残るファティマとして、展示物同然の扱いを受けていたのかもしれません。
そして彼女は命尽き、彼女の身を案じてくれる騎士の手の中で、多くの優しい人々と、自分がかつて乗り込んだ二機のMHに見取られて、静かに息を引き取ります。星団史上、寿命で死んだ最初のファティマです。コミックス九巻に収録されているそのシーンは、何度読み返しても胸に込み上げて来るものがあって、目頭が熱くなります。
彼女がその昔守り切り、最後の瞬間まで仕えていたハスハ共和国&アトール聖導王朝は、これ以降、カイエンの息子、天位騎士デプレッサー・ビート(デプレ・ツェン・アトール)が守ります。デプレは剣聖ビザンチンのMHエンプレスを駆り、インタシティの最期を見取ったファティマであるコンコードをパートナーに、この地を守り続けるのです。そして、MHエンプレスはDr.モラード最後のファティマにして、最高のファティマであり、アトール聖導王朝最後の騎士でもあるという「タワー」に引き継がれます。それは、星団歴にして6800年のあたりの出来事であるといわれています。


ファティマ「ファーカスライト」について

フォーカスライトは、ファティマが「お披露目」をするようになってからも、ナッカンドラ・スバースに仕え続けました。騎士のことを「ヘッドライナー(天を取る者)」と呼ぶ事がありますが、その呼称はもともとスバースの個人的な呼ばれかたで、それが長い時間をかけて星団中に広がったのです。このことだけでも、この騎士の歴史上の影響力の強さをうかがい知る事が出来ます。
星団歴以前のAD世紀に生れ、何度も封印を受けながら長い時間を生き続けてきたスバースは、星団歴2499年に7000年にも及んだその生涯を終えます。その時、彼にはアラド・バスコ・スバースという娘がいましたが、彼女がフォーカスライトを継いだのかどうかは、定かではありません。フォーカスライトは、「純血の騎士」に仕えようとする強い意志を持っているという話なので、すでにその時代の人間の血が入ってしまったアラドには仕えなかったのかもしれません。
その後、彼女が仕えた相手としてはっきりしているのは、剣聖ダグラス・カイエンです。カイエンのパートナーである、バランシェファティマ38番「アウクソー」は、実はフォーカスライトであるらしいのです。カイエンは、バランシェがLEDドラゴンから貰い受けた「純血の騎士の受精卵」を、ファティマ「クーン」に着床させて産ませた、紛れも無い純血の騎士ですから、フォーカスライトが仕える条件に当てはまりますし、そのままの体では寿命が近いということを悟った彼女が、バランシェに頼んで複数の情報体を体に作ってもらい、別時代の別のファティマとしてカイエンに仕えたというのも、納得がいく話です。
さて、カイエンの没後、フォーカスライトが誰に嫁ぐのかについてなのですが、実は、手元にある資料がそれぞれ異なる記載になっていて、よく分からなくなっているのです。
ある資料には、カイエンの息子マキシが、アウクソーを継ぐとあります。しかし、手元にあるうちで最も信頼のおける資料である「FSSエピソードガイド」(角川書店刊、1997年)によれば、マキシのパートナーはSSLであるとされています。もちろん、マキシが二人供をパートナーにしていた可能性もあるわけですが、星団史上最強騎士と謳われる彼の、パートナーであるファティマが、そんなあやふやな事も無いのでは、と僕は考えるのですが・・・。
そして、フォーカスライトは後に、ラベル・ジュード(コーラス六世)の元に嫁ぐようです。しかしながら、その時の彼女の名前は「デルタ・ベレン」というものになっているそうです。そして、デルタ・ベレンは人の形をしていないファティマであるとも言われています。これはただの憶測ですが、フォーカスライトはいずれかのファティママイト(おそらくはカイエンの娘であり妻であるDr.ミース・シルバー)の手によって、エトラムルファティマへと作り変えられるのではないでしょうか。そして、ラベルのMHであるジュノーン・オクターヴ(ユニコーン、さらに別名ジャッジメント・ミラージュ)にあるといわれる二つのファティマルームに、クローソーとともにおさまるのではないでしょうか。
・・・まてよ。そういえば、ラベルとフォーカスライトが並んで立っているショットが、コミックス八巻の182ページにあったような。そうなると、やっぱりこの時代も彼女は人型のままなんでしょうか。
しかし、それ以前にフォーカスライトにはもっと大きな謎があるんです。それは彼女の名前です。「フォーカスライト」というのは、AKDの数代前の先祖の名前にあるのです。その名も「レディオス・フォーカスライト」。”純血の騎士”ナッカンドラ・スバースを前時代の皇帝から受け取った、AD世紀と星団歴を繋ぐ人物です。レディオスというのはアマテラスの一族の幼名で、ソープ君も使っている名前ですから、彼女がアマテラス王家の先祖に当たる事は間違い無いでしょう。また、「デルタ・ベレン」というのも、アマテラス王家の住む星の名前ですから、やはりこのファティマとアマテラス王家が無関係であるとは考え難いです。
はっきり言います。このファティマはまだまだわからない事だらけです。


ファティマ「SSL」について

SSLは、太陽王レーダー四世に嫁ぎました。何故にこの王が「太陽王」と呼ばれているのかはまだ定かではありませんが、こういう立派な呼称が付くくらいの名君だったのでしょう。レーダー王家といえば、もちろんフィルモア帝国です。カラミティ・ゴーダースに渡ったSSLがどんな活躍をしたのか、残念ながらこれもまだ詳しくはわかりません。
次に彼女の所在が確認出来るのは、臨終間際のインタシティの言葉からです。どうやら、SSLはバランシェの手によって封印を施されているらしいのです。そのまま普通に活動を続けていたら、インタシティのように寿命が来てしまいますから、冷凍睡眠のような延命措置をしているのかもしれません。何を待つために延命をしているのかは不明ですが・・・。
そして、剣聖マキシのパートナーとして、彼女は星団史に名前を大きく現します。駆逐型MHデストニアス(レッド・ミラージュB4、さらに又の名を暁姫)を駆ってわずか数十年の間に300機オーバーのMHを撃破する星団最強騎士、そのパートナーですから、その能力も計り知れません。
ただ、マキシは非常に若いうちに死んでしまうらしいのです。何らかの敵と戦い、ジョーカー星団に住む全ての生命の命を守って死ぬらしいのですが、その戦いをMHに乗らずにこなすという事もあまり考えられません。その際に、SSLも一緒に命を失うという可能性があります。しかしながら、SSLと上記のフォーカスライトは情報が錯綜していて、どの災難がどちらに降り注ぐのか、いまだにはっきりしませんから、SSLがどんな活躍をするファティマなのか、まだよく分からないというのが本当のところです。まさか、アウクソーみたいにもう僕らの前に姿を現している、なんてことは無いと思いますが(多分)。


ファティマ「ニーヴ」について

ニーヴは、初めてマスターを「選んだ」ファティマです。そのお相手はジェスター・ルース。ミッション・ルース(ボード・ヴュラード)の曾祖父にあたる人物です。まだトラン連邦は成立しておらず、レント国が独立国として存在していた頃の王様で、ナッカンドラ・スバースの娘アラド・バスコ・スバースを側室に迎えた騎士です。アラドとの間には二男一女を設け、そのうちの次男は後の剣聖、デイモス・ハイアラキであるというところからも、彼の騎士としての素質の高さがわかります。また、その長男や長女の血筋には、剣聖慧茄・ダイ・グ・フィルモアや、天位より上の小天位の位を持つオルオカン・ハリス、その娘で、ミラージュレフトナンバーのピッキング・ハリス(スパーク)、その更に子孫のベルベット・ワイズメル、そして連載にまだ二ページ出てきただけなのに話題性バリバリのマロリー・マイスナー(多分)等、とんでもない騎士が鈴生です。
しかしながら、ニーヴがいつ何をして、そしてこれからどう活躍するのか、それを示す資料は今のところ皆無です。ただ一つだけ判っている事は、SSLと同じようにバランシェの手によって封印されているらしいということだけです。
この「封印」というのが曲者で、普通この言葉を聞くと、どこかの研究室の奥深くにでも開かずの扉を作ってそこに冷凍睡眠でもしているのではないか、なんて思い浮かぶわけですが、ひょっとして、もっと意外なところに隠されているのではないか、なんて僕は考えます。長いことこのマンガのファンをやっていると、考えがひねくれてくるんです。
例えば、ハルペルやアウクソーと同じように、別のファティマの人格を植え付けて隠してしまうというのはどうでしょう。実は二人ほど、気になるファティマがいるんです。
一人目は、以前、慧茄に仕え、今(星団歴3000年代初頭)はフィルモア・ファイブ(ダイ・グ)に仕えている、バランシェファティマ5番のチャンダナです。その根拠はただ一点、「ボケた性格」です。冗談で言っているのではありません。チャンダナがちょっとボケた感じの可愛いファティマであることは、連載の11月号に(吹き出しの外の発言ではありますが)はっきりと描写されており、Dr.プリズン・コークスもそのボケぶりをいぶかしんで「バランシェの設計ミス」とまで言っています。そして、コミックス九巻103ページにおいて、ニーヴは「吹き出しの外で」ほえほえ、ふにら〜、すき〜、と、なんともボケた発言をしているではありませんか!(力説!)しかも、この発言は、そのコマの中の細かい文字で、その場に居合わせたアマテラスが聞いていることがはっきりと描かれています。ニーヴがこういう発言をしたという、れっきとした証人までいるわけです。これは、この二人が同一の精神を持つファティマであるという伏線ではないでしょうか?僕はこういう「ボケ子ちゃん」が好きなので、たまたまこのコマが記憶に残っていてチャンダナと繋がったのですが、他にこの事に気が付けた読者は一体何人ほどいるのでしょう?・・・とはいっても、ただの僕の思い込み、勘違い、見当違いかもしれないんですけどね。
さて、もう一人の気になるファティマは、同じくバランシェファティマの、チャンダナと僅か一つ違い、6番のニーム(ヴィンティン、弁天とも)です。根拠は、こっちも単純、その名前がニーヴに似ている事です。ニームのマスターは、強天位騎士ジャコー・クオン・ハッシュ。カイエンからシルバーナイトの称号を譲り受け、ミラージュ騎士団の騎士団外騎士としても扱われる非常に強力な騎士です。星団歴3000年前後の頃にまだ幼い少年ですから、ジャコーが活躍するのはまさにこれからなわけですが、そのパートナーであるニームは少なくとも50年以上前に成人しているファティマなわけで、バランシェの銘入りのファティマの、これほど古いナンバーのものが、それ以前に高名な騎士の元に嫁いでいないはずはなく、その素生が明らかになっていない以上、とっても怪しいファティマなわけです。ちなみに、ニームには三つの名前がある、なんて以前から作者はよく注釈をいれており、そのあたりからも、彼女がただのファティマではない事がうかがえるので、ニーヴの変わり身である可能性を強く感じるのです。
こうして考えてみると、この二人のナンバーが並んでいる事が、偶然とは思えなくなります。ひょっとして、どちらかがニーヴであるという、作者の謎かけなのでしょうか?もしくは、一人はニーヴで、もう一人はSSLなのかもしれません。となると、レーダー王繋がりでチャンダナの方がSSLなのかも・・・いや、そうなるとSSLまでボケ子ちゃんということになってしまう・・・。いやいや、そもそも4ファッティスに個性の差があったかどうか・・・。



と、いうわけで、こうして並べてみても、やっぱり謎だらけです。さあ、今月のFSSを読みましょう。
そこにはいくつかの謎の答えと、それに倍する数の、僕らが求めて止まない、新たなる謎が記されているはずです!


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