というわけで、毎月10日前後に、その月の月刊ニュータイプ誌に掲載されたFSSについての僕なりの読み解きをやる事にしました。
皆さんがFSSを読まれる時の参考にしていただければ幸いです。当然、このコーナーはすでに今月のFSSを読んだ方が読まれる事を想定して書きますので、未読の方はそれを覚悟の上で、読むか読まないかを決めて下さいね。



表紙

おそらく初公開、コーラス王朝の家系図です。”大帝”ディス・バイス・コーラス・ワンナインから始まる、コーラス王朝成立以後の、作者曰く「削りに削った」家系図だそうです。
この1ページだけでもワンコーナー書けちゃうくらいの内容の濃さなので、細かい事は又いずれ、追求を入れます。
ただ、謝罪と訂正を一つ。僕はこのHP上で何度か「アルル様=マロリー・マイスナー」説を掲げてまいりましたが。大嘘でした。すみません。完全に別人で、マロリー・マイスナー(マロリー・ハイアラキ)、アルル・フォルテシモ・メロディ・フォース、セイレイ・コーラスの三人で、暴風あばずれ3王女・・・もとい、麗しの風の3王女なんだそうです。これからの動乱の時代に、星団中で暴れまわるコーラス籍の三人なんだそうです。
このコーナーを定例にすることにした以上、これから、こういう訂正を何度も入れる事になるんでしょう。でも、ばりばり予断を入れていくつもりです。楽しいから。


最初の見開き

「見開き」単位で語っていく事にします。
まず、星団歴3010年の晩秋のフロートテンプルをバックに、控えめなタイトルコール。「ブラック・スリー」。黒い三人ですね。誰の事でしょう?多分、じきにわかります。
今回もお留守番のラキシスと、その退屈な姫様をあやす、道化師スペクター&ポーター。先月号ではキモノに身を包んで可憐にして妖しい美しさをちらっと見せてくれたラキシスですが、三年後の今号では、いつものように置いてけぼりを食っています。ごていねいに秋雨まで降って、寂しさを演出しております。カエルさんプリントの傘が可愛いです。
姫様の退屈、それは一大事とスペクター駆け寄り、「かくれんぼー」なる秘術で姫様をぱっと隠して、それを見ていたポーターの拍手とともにこのシーンは終わります。
いやいや、ちょと待って下さい。ラキシスが消えた、これこそ何にもまして一大事です。スペクターは「全能神ジョーカー」でありますから、ラキシスを消してしまう事くらいわけはないでしょうし、ひょっとしたらあまりに寂しそうなラキシスを見かねて、アマテラスの居場所、つまりこの後に登場するカラミティ星衛星軌道星団会議場に彼女を送ってあげたのかもしれません。しかし、スペクターが、そんな単純な心理で行動するでしょうか。彼は、FSSという作品全体の、とてつもなく大きな流れを見ながら、いつも行動しているふしがあります。そしてもちろん、一見何事もなさそうなシーンに重要な意味を持たせるのはこの作品の常套手段。今回、このシーンが一番重要であると僕は考えます。
現に、今号の後半は、スペクターの預言通りに城中みんな大サワギになっているではありませんか。


二つ目の見開き

舞台を星団会議場に移し、ぐぐっと大人になった、でも中身は以前のままの、ジャコー・クオン・ハッシュの登場です。
母親のイマラ・ロウト・ジャジャス、ミラージュの名門レオパルト・クリサリスとともに、星団会議に出席するアマテラスのお供について来たのだと思われます。また、他にも多くの人物が来ているらしい事がAKD貴賓室のざわついた雰囲気からわかります。おそらくAKDの外交官達でしょう。なんせアマテラスはデルタ・ベレン星一つ丸々の大統領ですから、外交交渉の規模もデルタ・ベレン内に存在する多くの国の分、相当な大きさになっているわけです。
ヤクザの若頭のような風体で、せっかくの美形の顔を歪ませまくって暴言を吐いて暴れまくるジャコーに、イマラの母ちゃんキックが炸裂、イマラの下着がモロ見えという、コミックス三巻でイマラを見た時からファンになっている僕にはたまらないサービスシーンがあり(下着のブランドが見分けられる人なら、きっともっと楽しいに違いない)、さりげなくイマラの過去、”アティアの鬼姫”と呼ばれた宇宙海賊時代が、三条という名の人物から語られます。いなせな喋りかたをするこの美女は、ジャコーが騎士団長(ジャコー曰く、組長)をしているイオタ騎士団の人物のようで、ついでに彼女の口から、すでにこの時代ジャコーが強天位を持っているということも告げられます。強天位でも避けられない母ちゃんキックおそるべし。
後、このページの見所は、「はう・・・」となったイマラの可愛さですね。「痛いでスゥ〜ッ」とママドア・ユーゾッタの口癖がジャコーに移っているあたりも、この二人の仲も続いているらしく気にかかるところですが、個人的には、三条の「香車のイヤリング」も素敵だと思います。すっかりナイスミドルになっているレオパルトの呟きもかわいいです。


三つ目の見開き

いきなり正装をしたヒューズレス・カーリーの登場。ミラージュレフトナンバー5番の彼女も、アマテラスのお供に来ているようです。この時代、裏メンバーであるはずのレフトの連中も、わりと表に出て活躍しているようです。コミックス九巻でも、ワックストラックスのマスターが最近見かけるミラージュの騎士の中に”スパーク”の名を挙げていました。知れ渡っているのは暗号名までみたいですが。
さて、このカーリーの着ている服、左前です。イマラが着ているのは同様のデザインながらほぼ左右対称の右前のもの。そしてレオパルトが着ているのは類似の意匠が凝らされた4つボタンのスーツ。おそらく、この三人でレオパルトを中心にして並ぶ事を考えてデザインされた服では・・・と思ったら、後で出てきたヌー・ソード・グラファイトも類似デザインの服を着ていたので、多分、この時代のミラージュナイトの制服なんですな、こりゃ。深読みしすぎました。ライトナンバー、つまり表ミラージュは右前、裏ミラージュは左前の制服なのでしょう。
錫華御前に呼ばれているということで、ジャコーは、カーリー、三条と共に部屋を出ます。おそらく、ジャコーがDr.ダイアモンドの新作MH、マイティシリーズのうちの一つの乗り手になるという件の話でしょう。途中、ドス(光剣)とヤッパ(実剣)の話が出てきますが、そうなるとチャカはMHってことになるのかも?冗談はさて置き、この見開きで最大のコマを使って花と点描をしょった美少女がいきなり登場します。セイレイ・コーラスです。コーラス・サードの長女君、コミックス二巻以来の登場です。ロンググローブにはしっかりサードの紋章が入っています。「くすくすっ!!」なんて笑うあたり、美少女キャラ好きのツボを押しまくりですが、タバコは吸うわ喧嘩は吹っかけるわの見事なヤンキーぶり。また見事です。ちなみに僕はショートカットの女の子に弱いという属性を持っているので、メロメロです。ファンクラブ作ろうかなあ。
セイレイはジャコーが強天位騎士であると聞いても怯みません。冗談と思ったのかもしれませんが、コーラス王家直系の第一子は強力な騎士であるとトビラに書いてあったので、彼女は本気で強天位騎士と立合える自信があったのかもしれません。
カーリーに本名を言い当てられて退散するあたりもヤンキー気取ったお嬢様っぽくてイイ感じですが、タバコのポイ捨てはいけないと思いました。
このページの背景をよく見ると、エープ騎士団、フィルモアの紋をマントに付けた人物、そしてクバルカンの騎士らしき人物も見えます。アマテラスが呼ばれるほどの会議ですから当然なのでしょうが、ハスハ、フィルモア、クバルカンの三大国からもかなりの重要人物が来ていると推測されます。あと、ラストの、片手でジャコーを止めているカーリーの技量も、見落としてはいけないトコロでしょう。


四つ目の見開き

三条の、セイレイのヤンキーぶりに思わず組にスカウトしたくなったという呟きが楽しいです。そしてカーリーは元・コーラスのトリオの騎士だった事がわかります。トリオといえば、コーラスのエリート騎士団です。カーリーはその将軍であったとも、何かで聞いた事があります。そのまま、コーラス王朝メロディ家の話、そして先月号に出てきたアルルの話になります。コーラス王朝最強の騎士、という話と、今号の表紙の情報を合わせれば、ほぼ、彼女の正体は判明したといえます。まあ、そのアルル様がこれからどんな活躍をするのかというのが、一番興味があるところに決まっているわけですけどね。
気を付けたいのは二コマ目の、やっと真面目な表情をしてくれたジャコーのバストアップです。まだ少年の面影の残った色男ですが、その胸元には、先先月号でカイエンの元に現れたフィルモア・ファイブそっくりな傷痕が見えます。クリスティン・Vとママドア・ユーゾッタ同様、彼ら二人も少年時代に、カイエンに叩きのめされ、そこで天位を受けたのでしょう。
ここでちょっと気になる事を。どうも、歴代の剣聖というのは、天位を配って歩く慣習のようなものがある気がするのです。
デイモス・ハイアラキは、カイエンはもちろん、アマテラスにも天位を与え、シャフトにもそれらしい事をしたみたいですし、コーラスセカンドにも剣技「ブレイクダウン・タイフォーン」を伝えています。セカンドはエストにもマスターと呼ばれたほどの騎士ですから、これまた天位を貰っていたかもしれません。その時代時代の強い騎士を見つけ出し、一定数以上の天位騎士を生み出す事で、彼らは何かの秩序を作っているような気がするのです。ひょっとしてジョーカー星団の国家間のパワーバランスというのは、個人レベルでの名君や天位騎士の配置などで変化するのではないでしょうか。僕らの世界の感覚でいえばおかしな話の気もしますが、MH一機の差が戦争の勝ち負けにもつながってしまうようなジョーカー星団の話ですから、あながち妄想とも言えないと思います。例えば、今号の表紙にも、コーラス・フォースが騎士として動かなかった事が、魔導大戦から始まるジョーカーの動乱を押さえる事が出来なかった理由である、なんてことも書いてありますし。
さて、閑話休題。ジャコーのセクハラ発言でオチが付いた後、場面はアマテラスの部屋に移ります。
イマラとレオパルトの前で、アマテラスは”エイリアス(別体)”を出そうとしています。分身や、剣聖剣技”ミラー”とも異なる、実体を持たない別の体を作り出すというアマテラスだけが使える特殊なダイバーパワーのようです。AKDの魔導組織ダイバーズ・パラ・ギルドの長メル・リンスや、東(あがり)の君といった別体をアマテラスは使うようです。東の君というのは、多分八月号でナトリウム・シング・桜子の前に現れた謎の人物の事だと思います。胸に「東」って書いてありましたし。
アマテラスが急がないといけないような出来事が起こっているという、舞台は再びフロートテンプルの主塔玉座へ。(「朱塔」玉座かも)


五つ目の見開き

人通りの多い中央ロビーのような所に、三つの影が現れます。その瞬間気が付いたのは、裏ミラージュのリーダー、グリース・サリオン。さすが「LED」(最強)の二つ名を持つ騎士です。矢継ぎ早に支持を出し、城全体にS級アラートを出します。表ミラージュ全員にまで戦闘体制を指示出来るという事は、アマテラス不在の時は、完全に王としての権限があるのでしょう。ひょっとしたら、もう成人していて「斑鳩大兄王子」の名を持っているのかもしれません。
そして、自分直下の裏ミラージュには個別に命令を出します。ミューリー・キンキー王女には玉座回廊の警備を、ベクター・オービットとメイザー・ブロースは自分と一緒に玉座へ。そして、スパークが不在である事に「ぬかった!!こんな時に!!」と悔恨の情を漏らします。ここから、サリオンがこれほど取り乱すくらい、今回はとてつもない非常事態なのだということと、前々号で慧茄が言っていた通り、スパークがそれほど強力な騎士なのだということがわかります。「カラミティの陛下はとうにお気づきだ」のセリフ通り、この前のページの段階でアマテラスは敵の侵入に気が付いてエイリアスを作りはじめているわけですが、それに気が付けるサリオンもさすがです。彼は騎士であると同時にダイバーパワーも持っているので、そういう事もわかるのでしょう。この時サリオンのまわりに集まっているメンバーをよく見ると、メル・ズームもいます。カイエンが対戦を嫌ったほどの力を持つ彼女は、次号以降で活躍してくれるかもしれません。
さて、左のページに入って、黒いフードを被った三つの影が実体化します。これが今回のエピソードのタイトル「ブラック・スリー」になっているわけですね。この時点でこの三人の正体を示すものは、何も無いかと思いきや、よく見ると三人が胸につけているのは以前登場したディス・ボスヤスフォートがつけていたのと同じ紋章。ということは、この三人はザ・マジャスティック・スタンドの最大の悪役、ボスヤスフォートの手の者なのでしょう。ついでに、三人のうちの右側の女性らしいシルエットの人物の足元を見ると、大変美しい足首が見えています。美しい足首といえば、ファティマ・エストです。ただし、いくらなんでも足首だけでその正体を見切る事は出来ませんから、彼女の正体は保留としておきます。たしか、ボスヤスフォート陣営にはビューティー・ペールという強力な女性ダイバーがいたはずですしね。
往年の忍者マンガのような表現で、二人の騎士が現場に走り込んで来るところで、次のページへ。


六つ目の見開き

やってきたのは、ミラージュナンバー7番メル・アトワイト・リイ・エックスと、16番ステートバルロ・カイダ。「リイ様こやつらっ!!」「おのれ何やつだ!!」時代がかったセリフもしっくり来るような大立ち回りのシーンですが、次の瞬間粉砕されてしまうリイ!
通常、騎士とダイバーが戦う場合、勝つのは100%騎士であると言われています。反応速度の差で、騎士がダイバーを押さえてしまえるからです。ところがこのシーン、リイに出来たのは太刀をとっさに構える事くらいだったようで、不意打ちのように粉砕されます。あえて名前を付けるなら「ディスインテグレート(分解)」とでも言えそうな、残酷な攻撃魔法を受けて、バラバラになってしまったリイと、それを見て驚くステートバルロ。リイやステートバルロにとって、想像の範囲外の攻撃だったのでしょう。
この事から、この黒い三人の中心にいるつるりぬるりとした人物の正体はおおよそ、想像がつきます。不可能なはずなのに、なんなく騎士を殺傷せしめるダイバー。やはり、ボスヤスフォート本人でしょう。
ステートバルロの制止の声と打ち込みに反応して、その太刀を「ギシ!!」っと受止めた黒い三人のうちの右の人物。そのフードが「ドッ」と落とされます。


七つ目の見開き(最終ページ)

それは黒騎士デコース・ワイズメルでした。改定前のコミックス一巻に描かれていた黒騎士の装束に身を包み、胸には三つ巴の黒騎士の紋章、袖に輝く「EST」の文字。ステートバルロの打ち込みを一太刀受けた次の瞬間には、背中を貫いて仕留めてしまいました。アンチヒーロー、デコースの恐ろしいまでの強さが発揮されます。
「どけっ!どけどけっ!!」っとそこに遅れてやってきたのはミラージュナンバー12番のウラッツエン・ジイと17番のヌー・ソード・グラファイト。仲間二人の死体を前に、事態が把握出来ないまま剣を構える二人。ゴーズ騎士団の剣指南役を勤めるグラファイトと、ヴーグラ騎士団の筆頭ダッグナート・ボア・ジイ天位騎士を兄に持つウラッツエンは、黒騎士デコースを相手にどう戦うのか、といったところで次号につづいてしまいました。


まとめ

先月号は、沢山の謎をほうり投げて読者を混乱の渦に巻き込むような話でしたが、今号は一転、ストーリーを急展開させて読者を引き込む話でした。まあ、どちらにせよ、来月が待ち遠しい事は変りません。
改めて見返してみると、つるりぬるりとしたボスヤスフォートらしき人物は、彼のエイリアスなのかも知れませんね。驚異的な黒い三人の実力と、それを押さえる裏ミラージュの力が拮抗したところに、颯爽と現れたスパークがボスやんの首級を上げて見せ、ところがそれはエイリアスでしかなかった、ということろでこのエピソードは終わるのではないでしょうか。エイリアスが使えるのはアマテラスだけのはずなのに、というわけで、ボスやんの強さがクローズアップされるわけです。とりあえず、FSSには伝統的に「後だしが勝つ」という法則がありますので、スパーク大活躍は揺るぎ無いところだと思います。・・・まてよ、そういえば、後の時代に登場するというベルベット・ワイズメルなる騎士は、その姓からデコースの血筋なのは間違い無いのですが、スパークの血筋にもその名が出てきています。ということは、この二人の間に何らかの関係が発生するのでしょうか?恋愛から強姦(うわ)までいろいろと想像はできますが、どうにも早く真実を知りたい部分であります。
さて、以前にもコミックス六巻でフロートテンプルが混乱の渦に巻き込まれたことがありましたが、あの時はラキシスが気張って、事無きを得る事ができました。ところが今回は、そのラキシスが冒頭で消えてしまっています。ラキシスが出ていって、神の力で簡単に片を付けさせるわけにはいかないのか、それともボスやんには神すらも殺す力があるために、その姿をスペクターが隠さざるを得なかったのかわかりませんが、今回のエピソードに収拾を付けるための一つの鍵が、すでに失われているわけです。この条件下では、ラキシスが殺される事はありませんから、まあ、スペクターのウルトラCが炸裂したという見方が一番当てはまる気がします。
黒い三人の侵入に、その瞬間に気がついたのがサリオン、少し前に気がついたのがアマテラス、そして、そのずうっと前に気がついて手を打っていたのがスペクター、というわけですね。

後、黒い三人のうちの最後の一人はやっぱりエストなんだろうなと思います。「黒い」と言ってるんですから、「黒き死の女神」とまで呼ばれる彼女でなきゃ嘘でしょう。しかし、エストはこの後のモナークセイクレッドの時代にはアマテラス陣営に所属するはずですから、そんな彼女が今回どんな殺戮をフロートテンプル内でしてしまうのかといった辺りが、FSSの今後に繋がる見方、でしょうか。
きっと、今回のエピソードが来月号か再来月号で終わったら、コミックス十巻のための休筆期間に入ってしまうんでしょうねえ。出来たらその前に、ウワサされているログナーのエピソードってやつを読みたいものですが・・・(今回、彼は何をしているんでしょう?)。


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