サア、今月もやってまいりました、こどものくに現在唯一の定例企画、「読み解け今月のFSS」の時間です。
そんなにわかり辛くもなかったみたいなので、先回と同じく見開き単位で読み解いていく事にします。このコーナーを読んでいるのはほんの三四人だという噂もありますが、気にしないでゴー!



表紙

先月までの本編解説コーナー状態からうってかわって、今月はひさびさの作者の趣味のコーナーです。
永野護のすべてのデザインの根底にあるというドイツ戦車、そのプラモデルのお話。ロシアの戦車キットメーカーの話からはじまって、簡単な戦車キット史みたいなものが語られつつ、情熱がぶちまけられたコラムになっております。戦車のキットって、作るの大変なんだろうな・・・。
今年からの「ニュータイプ全ページカラー化」の恩恵を唯一受けていないと言われるFSSですが、表紙だけでもこうやってちょっと色が着いているのはお洒落で嬉しいですね。


最初の見開き

ヌーソード・グラファイト(以下ヌー)のつぶやき「こいつ・・・姫様のお披露目にいた・・・?」。さすがのゴーズとAKDの剣指南役を務めるヌーでも、1巻に登場した時のデコースとのあまりの変わりぶりに驚いている様子。あの時は、あんまり強そうに見えませんでしたからねえ。その向こうでは、ウラッツエンがリイの遺体に気が付いて、ちょっと大きなコマで回想シーン。どうやら、彼は特別リイと仲が良かった様です。一緒にいる赤ちゃんはリイの子供、おそらくパナール・エックスでしょう。間違っても、ウラッツエンの子供ではなさそうです。
カッと来たウラッツエン、ヌーの制止も聞かずに残像攻撃(ディレイアタック)でデコースに飛び掛かりますが、剣が流され、そして突然ウラッツエンの腹から出血!ヌーはウラッツエンに動くなと叫びます。腹の傷はデコースのストラトブレードによるもの。どうやら、ストラトブレードとは、デコースが人差し指一本で放つ極小の真空斬りのことだったようです。変則の二刀流で戦いながら、さらに同時でもう一本真空の剣を使えるとは、デコースやはりおそるべし。それを一瞬で見抜いたヌーもまたおそるべし。
そして、それを見切った上で、ヌーが仕掛けます。神速の踏み込みからまっすぐな打ち込みです。これもディレイアタックで、デコースはさすがに二刀を使って防ぎますが、肩まで衝撃は抜け、サングラスも吹っ飛びます。ところが次のコマ、デコースは剣を受けたまま回り込み、ヌーの膝を踏み折り、一瞬でとどめをさしてしまいました。腹の傷をさらしで応急処置したウラッツエンが驚いたところで次のページへ。


二つ目の見開き

ウラッツエン曰く、デコースの剣技には”型”がなく、それでいて相手の剣を受け流したり変幻自在に動けたりするのは、デコースの剣がとてつもなく重いからだとか。強いキャラが、何故強いのかちゃんと理由が存在しているあたりが、このマンガの素晴らしいところです。超一流の騎士であるウラッツエンが驚くくらいですから、デコースの剣はまさに常識はずれなんでしょう。それを操れるデコースの膂力もおして知るべし。(永野護の実家には、何本も日本刀があったそうで、その”重さ”を幼い頃から体で知っているからこそ、こういう設定が作れるのでしょう。古今東西を問わず、剣という武器の破壊力はだいたいその重さに起因するみたいですからね(スターウオーズは別)。剣の類の武器が出て来るマンガは数あれど、そこまで解って描いてる作者はそんなにいないのではないでしょうか。「ベルセルク」の表現は秀逸だと思いますが。)
サリオン王子からウラッツエンに、テレパシーで指令が下ります。デコースに対抗できそうな腕を持った騎士であるブラフォードとアイシャはカステポーに行っていて留守だから、勝てないのは解ってるけど、なんとかそこでしのいでくれとのこと。しかしまともに動けるミラージュは自分一人、しかも大量出血中ということで冷や汗が走ったところに、救世主登場!スパークです。しかし、ぶっとびもんです。重量30Kgの「ブリ」を持って、エプロン姿に、ごていねいに包丁まで持って現れます。数ヶ月前から「凄い騎士だ」と言われ続けていたスパークですが、よもやこんな姿で登場するとは・・・また作者にやられました。スパークの後ろに控えているのは、先月号でやられてしまったステートバルロ・カイダ(以下カイダ)のファティマ、カレちゃんです。手にした買い物篭には、大根、ねぎ、にんじん。ということは、スパークはぶり大根を作るつもりなんでしょう。この時期、一番美味しい料理の一つですね。
スパークはどうやら、毎週水曜日にはお料理教室を開いているようです。今日の犠牲者はたまたまカレだったんでしょうね。このコマのカレの驚きの表情は、自分のマスターが倒れているのを目の当たりにしているからでしょう。初登場にしてあっさりやられてしまったカイダですが、設定によると彼の真価はMHのコントロールの凄さにあるらしいので、大目に見てあげましょう。どうやらカイダは重傷を負ったものの生きているみたいですし、パートナーも無事なわけですから、近いうちにMH戦で汚名返上してくれるかもしれません。
左のページに入りまして、デコースとスパークの罵り合いがはじまります。どうやらこの二人は旧知の仲のようです。大変下品な発言をしながら、エプロンと、何故か上下の服まで脱いで下着姿になってしまうスパーク。しかし、表情を崩してすんごい顔をしているので全然色気はありません。「エストがほしい!」とデコースにおねだりするも断られ、「じゃ今晩のオカズは・・・」と包丁を持ち直して、ハートマーク付きで「君だーっ」と言った瞬間のスパーク、いきなり美人になってます。やはり慧茄の血筋、顔の造詣も素晴らしい。ちなみにこの時手にしている大きな包丁には「錫」の銘が付いています。のちに判明しますが、これは鈴華御前のうった包丁なんだそうで、なるほど、これならデコースの剣とも戦えるのでしょう。スパークは「刃物を持たせりゃ世界一」(4月号参照)なんだそうですから、こういう露骨な”刃物”の方が使い易いのかもしれません。
カレに指示を出しつつ、さっと分身をかましてデコースに襲いかかります!


三つ目の見開き

デコース、真剣な表情で小粒の汗を浮かべながら構えます。デコースの「慧茄のできそこない!!」という叫びに答えるがごとく、スパークは十二体分身からのリングスライサー同時攻撃二十四本!デコースの動きが止ります。まさに先代の剣聖慧茄の必殺技、ダブルヘキサグラムです。そして、慧茄と同じく、それをおとりにして後ろからスパークの攻撃がデコースに。一瞬の反応の応酬があり、お互いに傷を負って二人は離れます。しかし、重傷なのは明らかにデコース。先月あれほど強かったデコースに、互角以上の立ち回りです。デコースの「もーやだこの女ボクちゃん帰る!!」発言が出たところで、次の見開きへ。


四つ目の見開き

舞台は玉座回廊へ。ここを守るのは、まだ自体を把握しきれていないハインド・キル(以下ハインド)と、レフトナンバーのミューリー・キンキー王女(以下キンキー)&メル・ズーム(以下ズーム)です。先のとがった帽子がなんだか可愛いキンキーと、サワギが大好きで浮かれているズーム、そしてハインドの前に、FSSでは非常ォ〜に珍しい、肉感的な美女が現れます。彼女はバハットマ魔法帝国のビューティー・ペール(以下ペール)でした。・・・エストじゃありませんでした。また予想外した〜!ペールってもっと小物だと思ってたんだもん!しかしとんでもない大物だった事がじきに判明します。
過去、ラキシスにも噛み付いた事のあるズームが、何故かペール相手には恐れおののいていることも気にかかりつつ、ハインドの切り込みが横なぎにペールを一閃。しかしその瞬間大爆発!が起こって爆風をもろに受けたハインドは一発でぼろ屑のようになってしまいました。すぐに次の見開きです。


五つ目の見開き

壁際にこともなげに立っているペールを見たキンキー、とっさに謎の技(すぐに「十文字霞切り」と判明します。わお、某忍者マンガの技みたい)をかけて今度こそペールを倒した、と思ったらまたもや大爆発!その瞬間、キンキーの前に立ち、盾になって再び爆風を浴びたハインド!身を呈して乙女をかばう、まさに騎士の鑑と言えましょう。
コスチュームが吹き飛ばされたお陰で、やっとキンキーの姿を見る事が出来ました。アーリア系の美少女です。ハインドが身を呈してかばい、王家の王子であるサリオンを「サリオン様」と名指しで呼べるところから見て、やはり彼女はアマテラス王家に連なるものなんでしょう。手元の資料には以前から「王女」ってはっきり書いてあったんですけど、具体的にどうなのかっていうのは今までよく分からなかったんですよね。あ、まだ何もはっきりしたわけじゃないですね。
一方ズームは大変な事になっております。離れていたせいか、爆風は浴びなかったようですが、なんとペールに向かって「お母ちゃんやめてェ!!」ペールによって今までかけていた「成長を止める魔法」を解除され、あっさりズームはジャコーやヨーンやクリスティンと同年代の少女になってしまいました。今シリーズで大活躍中のこの百歳前後(地球の感覚ではだいたいハタチくらい)の年代のキャラクターが、また一人増えました。おなじダイバーということで、桜子あたりとのカラミがこれからあるかもしれませんね。


六つ目の見開き

さて、いよいよ玉座です。サリオン、ベクター・オービット(以下オービット)、ブローズの三人が到着すると、そこにはすでにつるりぬるりとした謎の影がいます。サリオンとて、後にヤクトミラージュ一機で星を一つ占領してしまう(らしい)ほどの騎士ですから、まだ子供である現時点でも並の騎士では無いはずですが、正体の分からぬ相手にはやはり警戒をします。相手の出方を見るために、オービットとブローズは捨て身の覚悟で前に出ます。オービットは高名な剣豪、ブローズは、どうやらミラージュナンバー3のランドアンドスパコーン(以下ランド)と同様に体を機械化した騎士のようです。
謎の影は自分の正体を明かします。やはりボスヤスフォート(以下ボスやん)でした。その襟元には、アトールの紋章が付いています。たしかこの男は超帝国の遺児であるという話ですから、この紋章を付ける資格があると言えるのかもしれません。しかし、最近出て来るキャラクター、みんなこの紋章付けてる気がするなあ。ブローズの体をあっさりボスやんの影のような防護膜が鋭く貫いて、最後の見開きへ。


最後の見開き

即座にブローズをサポートし、救出するオービット。しかし、そこに襲い掛かった魔法波が、無情にオービットの体を粉砕します。そしてボスやんの防護膜がサリオンの方に伸びてきたところを、まるではじめからそこにいたかのようなポーズで、目にも止らぬ早さで登場したランドが救います。飛び上がって避けようとしたサリオンの額にも、汗が浮かんでいます。・・・半ズボンのサリオン君かわいいなあ。おっと、失礼しました。このコ、すごい美形なんですもん。
さてここから、一巻以来久々に戦闘シーンに登場のランドが、ミラージュ・ナンバー3の腕をみせてくれそうです。ボスやんの、まるで自分が超帝国の星帝であるかのような発言もやたら気になるところでありますが、といったところで次号に続きます。


まとめ

先月号に引き続き、戦闘シーンがメインのサービス満点の回でした。それにしても、ミラージュ騎士団があまりにも弱く見えてしまって、不憫でなりません。来月号で巻き返しなるんでしょうか?ミラージュ騎士の強さの代名詞と言うべきログナー、アイシャの不在に加え、実力者ブラフォードも居ないといっても、レフトナンバーもスパークを除いてほぼ総崩れとは・・・。しかし、彼らはこの後、「モナークセイクレッド」において十分過ぎるほど恐ろしい騎士団の実力を見せ付けてくれるはずですから、たとえここでイメージが悪くなったところで、あまり関係無いのかもしれませんね。まあとりあえずは、カッコよく登場したランドと、いまだ無傷のサリオンの来月での活躍を期待しましょう。
MH戦はないのかも。デコースは「帰る」発言をしてしまいましたから、重装甲版のバッシュのお披露目はまだ先になってしまうのかもしれません。となると、ひょっとしてミューズのSSIクバルカンとの対決まで出番無しかも。この黒騎士と白騎士の対決は、連載再開後の目玉のひとつでしょうね、きっと。
さあ、来月号、この混乱にどう決着がつくのでしょう?やはりポイントはそろそろ登場するはずの、アマテラスの「エイリアス」なんでしょうか?


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