週末にかかるため、発売日がいつもより早かった今月号。もしや、と思って本屋に行ってみたのは正解でした。そして、平日の誰も家にいない日中にFSSが読めてラッキーでした。今月号を読みながら、てなしもは何度も恥ずかしいほど大きな悲鳴をあげるはめに陥ったのですから。
表紙
永野護が代表を務める会社、トイズプレスが扱う新商品「グレイトフルデッドのビーンベア」その他もろもろの広告的写真記事です。
海洋堂のファティマフィギュアやFSSマウスパッド、マグダルとデプレのフィギュアの紹介もあります。えらくポップでサイケな表紙であり、その次ページからの激しい展開をまったく想像させないものでした。
最初の見開き
ギニャ。
一目見て唖然。読めない文字が沢山目に飛び込んできます。場合によってはこれをすべて訳さねばならないかも、と想像しててなしもの意識が少し飛びましたが、何者かの呼ぶ声(後に正体判明)で我を取り戻し、まずは右端のコマから読みはじめます。
侵入者ボスヤスフォート(以下ボスやん)の一人語りは、一般的なダイバーの力が古のものよりもはるかに衰えてしまったことを説明します。次のコマ、話を聞かないグリース・サリオン王子(以下サリオン)は、ボスやんの攻撃が自分には見えず、ランドアンドスパコーン(以下ランド)には見える理由を、自分が持っているダイバーパワーのせいであると気が付き、自分がこの場では足手まといでしかないことを認識しています。最強のダイバーであるボスやんには、まわりにいるすべてのダイバーの心が読めてしまうのでしょう。まだ少年なれど騎士としての力は星団屈指であるはずのサリオンが、先月号でやすやすとボスやんに手玉に取られていたわけが、こうして説明されました。FSS作品内の戦闘において、「敵の先が読める」ことが何よりも強いということが、このシーンでも証明されているわけです。(例1:コミックス9巻登場の、スパリチューダが得意とした演算戦。例2:最強騎士の一人デコースの出足を、ファティマであるにも関わらず止めてみせたバ−シャ。)
これは、永野護氏が筐体を買うほどはまってしまったゲームセンターの対戦格闘ゲームの影響も考えられます。どんなに強力な技が使えるキャラクターで戦っていても、こちらの攻撃パターンを読まれてしまっては相手に勝てないということを、対戦格闘ゲームは体に教えてくれます。
さて、やっと3コマ目。いきなり部屋の扉を吹き飛ばして何者かが登場します。横文字で書かれた彼の発言は、おそらくドイツ語です。読めません。しかし、所々日本語が混ざっているのでそれを拾い上げてみると、「豆大福」「大福」「アズキ」「アンコ!!」・・・・・・???
それを見たサリオン、慌てて城内に緊急脱出命令を飛ばします。曰く、「デザートが食えずブチ切れた奴が来よった!!」次のコマの命令を受けている女性は、スパークかとも思ったのですが、ひょっとしたら以前にも名前の出てきたことのある「ホワイトリンクス」ご本人かもしれません。どうやら彼女が城内の連絡網を仕切っているようです。テレパシー能力に特化したダイバー、といったところでしょうか。同じコマの向こうの方に変な生き物がいますが、これは先月急成長したズームのように思えます。
左のページに入りまして怒り狂うドイツ語の主の姿がはっきりと姿を現します。バビロン国王にしてミラージュ騎士団司令、F・U・ログナー(以下ログナー)その人です。周りの人間の反応から判断して、どうやらログナーのドイツ語の内容は、食後のデザートに豆大福を食べようとしていたところに騒ぎが起こって、それが食べられなかったのでオレは頭に来ているゾ、といったところのようです。ジャーマンメタルでも聞きながら食事をとっていたのでしょうか。とりあえず翻訳をしなくてもストーリー理解に影響は無さそうですが、でもきっと、何か面白いことを言っているに違いありません。どなたか、ドイツ語に堪能な方がいらっしゃいましたら、部分的にでも訳しててなしもに教えてくださいまし。
「サリオン!Hau ab!!」とログナーが叫んで、ボスやんVSログナー戦闘開始です。多分、「どいてろサリオン!」くらいの意味なんでしょう。
二つ目の見開き
ボスやんが手下の変な生き物を呼びます。曰く、「バビロン王!私は君とマトモに戦うほどおろかではない」。今まで強敵と戦うことがほとんど無く、実力が不明だったログナーですが、最強のダイバーであるボスやんが戦いを避けたがるほどの騎士であるということがついに作中で判明しました。ついでに、ボスやんが失われたダイバーパワー、生命の様々なしくみを操る能力である「ルシェミ」の持ち主であることも判明します。あ、忘れてはいけません、フロートテンプルで何かあるとしゃしゃり出てくるアマテラスかあちゃん(以下ミコト)もひょっこり出てきました。
ログナー&ミコトVS変な生き物、ボスやん&ランドVSサリオン、と戦いの組み合わせが変わったところで次の見開きへ。
三つ目の見開き
ボスやんからいきなり放たれた衝撃波を避けられないサリオンを、ランドが体を張って守ります。それにしても、サリオンはかわゆいです。成長すると超絶美形の斑鳩王子になるわけですが、現時点でも、まんま美少女で通る顔立ちです。
ボスやんの正面に出現した光の玉。ついに登場したメル・リンス・ウザーレ・ターマ(以下リンス)です。外見はクローソーですが、その正体はアマテラスの別体です。それを見て憤るボスやん。アマテラスが本当の力(神の力?)を出せば自分なんて一瞬で消し飛ぶというのに、わざわざ別体なんぞを出してくるというアマテラスの余裕が、苛立たしいようです。そうではなく、ここに来たのはリンスの意志であり、すべてがアマテラスの余裕である、というような考えは間違っているとリンスは訴えますが、ボスやんは話を聞かず、相手をアマテラスそのものとして憤りを吐き出し続けます。この作品の大きなテーマの一つであるはずの、神にあがらう人間の苦悩の姿がそこにあるように思えます。実はアマテラスは悪であるという視点を持つことで、この作品はより深い解釈を可能にするのでしょう。それにしても、人の話を聞かない奴が多いなあ。
リンス=アマテラスが来たことで発憤したランドが攻勢に出ます。先月号で体を貫かれ吹き飛んだブローズも、まだ息があったようでランドの呼びかけに応じて動きます。
四つ目の見開き
この最初のコマを見たとたん、僕は全身の血が頭に上ってくるのを感じました。床に突っ伏して、カーペットをかきむしりました。しかしそれでもこらえきれず、僕は大声を上げて、飛び上がりました。ちくしょう!と、思い切り声を張り上げました。何たる不覚、何たる狡猾、何たる作者のアイデア力。
そこに描かれているのは、大きく張り出した両肩の装甲から無数のファンネルを打ち出す、人間サイズの戦闘兵器でした。尖ったくちばし、円筒形のアームガード、ローブのすそから見えるMHとは異なるデザインラインの脚部パーツ、そして腕に刻まれた「Q」の文字。まさかブローズが「キュベレイ」であったとは。
しばらく、のけぞるようにしながら、自分の太股を何度もたたき、奇声を上げる自分を、どうしても押さえることが出来ませんでした。
「機動戦士Zガンダム」がTVで放映されたのは、僕が小学校三年生の頃でした。キュベレイは、「Z」「ZZ」二作続けて登場した敵役、ハマーンカーンの搭乗した名MSです。そして「ZZ」の時には、ほぼ同デザインの「キュベレイMk2」が別口で登場し、僕はそれに乗っていた無邪気なクローン少女への募る思いが募りすぎ、いまだに自分の自転車にそのまま「キュベレイMk2」と名前をつけているという始末なのです。そんなキュベレイ。もう十五年も前から、自分の自転車をそれに見立てて、毎日のように親しんできたそのデザインが、まさかそのデザインの生みの親である永野護氏のマンガFSSに再び登場しようとは。先ほど、ログナーのドイツ語を見て飛びかけたてなしもの意識を、呼び戻してくれたのは、きっとこの「キュベレイ・デザイン」だったのにまちがいありません。こんなにいとおしいのですから。
ブローズがFSSに初登場したのは、コミックスだと6巻です。この頃すでにニュータイプ誌を毎月買っていましたから、おそらく最初に目にしたのはコミックス発刊一年前の93年のこと。およそ、7年前です。なんということでしょう、僕は7年もまえから、いとおしいそのデザインを目にしておりながら、それに気が付いていなかったのです。確かに、その頃のブローズの姿は今回登場したものとはずいぶんと異なっていて、かろうじて金属製の尖った指のデザインがキュベレイっぽく無いことも無い、といったところなのですが、それでもキュベレイはキュベレイです。その上、先月号を見返してみたところ、ブローズはその特徴的な腕部を大きく振りまわして「Q」の文字を何度も見せつけ、肩部や脚部もはっきりと公開しています。遅くとも、先月号の段階では、識別は可能だったのです。なあんとなく、「Q」の文字が気になったり、前腕部の装甲の形を見たことがあるような気はしていたのですが、まさかMSが人間サイズで登場し、体を貫かれて「ぐわっ!!」なんて叫ぶとは思いませんから、まったく気が付くことは出来ませんでした。ここ数年無かったほどの、完敗です。参りました。永野さん、一生ついていきます。
さて、そんなブローズですが、活躍はそこだけ。無数のファンネルを飛ばしてボスやんを撹乱しますが、おいしいところはランドに持っていかれます。機械の体であることを生かしてボスやんの火炎を無効化したランドは、その一瞬の隙に切り込んで、ボスやんの右腕を切り落とします。落ちた腕には、六亡星とヘビの入れ墨がありますが、何かの紋章なのでしょうか。ボロボロになったランドを気遣うリンスと、えらく余裕な感じのログナーをせかすミコトを見ながら、次の見開きへ。
五つ目の見開き
ログナーに襲い掛かる、ボスやんの変な生き物の怪光線を、霊体であるミコトが体を張って守ります。ドリフのコントのようにボロボロになって、肌も露に艶姿を見せてくださるミコトさまですが、さすが霊体、一瞬で衣服が戻ります。自分を守ってくれたミコトに対してまたもやドイツ語で何事かささやきかえすログナー。多分、「次の一発で終わらせます」みたいなことを言っているんだと思うのですが。
強く右足を横に踏み出し、体全体をひねって力をため出すログナー。その踏み込みだけで、床に亀裂が走ります。八極拳という中国拳法に存在するという「震脚」を思い起こさせる、すさまじい踏み込みです。リンスがその場に居る全員に注意を促します。星団最強剣技「マキシマムバスタータイフォーン(M・B・T)」をログナーが放とうとしているのです。M・B・Tは星団史上最強騎士といわれるマキシだけが使える技なのかと思っていましたが、やっぱりログナーも使えるみたいです。ログナーが、今回唯一の、ドイツ語でない言葉を叫びます。「Rock’n Roll!!」
六つ目の見開き
全身のひねりから生まれた強力な衝撃波が、ボスやんの変な生き物を襲い、破壊します。勢いあまって、お城の外壁も崩壊し、あたりは崩れはじめます。事前に城からの退去命令を出していたサリオンは、こうなることを予期していたのでしょう。
敗北を認めたボスやんが、以前にヤクトミラージュに乗ったシャフトを殺した時のように、去り際にサリオンの命を奪おうとします。サリオンは自由を奪われ何も出来ません。危うし、といったところで最後の見開きへ。
最後の見開き
サリオンに向かって放たれた「絶対零度」を阻止すべく、リンスが放った衝撃波ですが、一瞬間に合わず、絶対零度はサリオンに命中します。リンスの衝撃波もボスやんに命中しますが、サリオンこれまでか、と思ったところに、身を挺してサリオンをかばったログナーの姿が浮かび上がります。絶対零度によって瞬時に凍り付いたログナーの体は、すでに崩れはじめて、まさに弁慶の立ち往生の状態になっています。おそらく、このログナーはここで死んでしまうのでしょう。マジャスティク・スタンドの本格始動はマンガ内時間で20年後の3030年あたりからですから、生まれ変わった次のログナーは早くてもまだ20歳、僕らの年齢に換算するとまだ6〜7歳くらいですから、まあ、諜報活動ならともかく、まともな戦には参加できないことになります。その時代に、ここでログナーに命を救われたサリオンが代りにミラージュ騎士団司令となって活躍するはずですから、計算はばっちり合います。
ミラージュ全体にはかなり大きなダメージを与えながらも、金星クラスを落とせなかったボスやんが、ぼろぼろになりながらその場を去ります。去り際のセリフから、ボスやんのねらいの一つはラキシスだったことがわかります。2ヶ月前の予想通り、実際には今もスペクターの意図は不明ですが、スペクターに姿を消されたラキシスは結果的にこの騒動から身を守れたことになります。
そして最後の一コマ・・・・・・え、なにこれ?
羊水らしきものの中に浮かぶエンプレスのシンボルと、そこからへその緒が繋がった胎児と、それに触れようとしている手。多重積層装甲のような底面。直感的には、モラード・カーバイト制作の最高傑作ファティマ、「タワー」の現在の姿なのではないかと思うのです。しかし「タワー」は、コミックス9巻に二コマだけ登場した時には、まだ人の姿になっていない胎児でした。あれからマンガ内時間で17年ほどが経過しています。いくらジョーカー星団とはいえ、いくらファティマとはいえそれほど長い間胎児であり続けるということも無いように思えます。そして、それに触れようとしている手も、モラードの手にしては繊細過ぎます。これは女性か、ファティマの手のようにも思えます。手の甲には何かしら紋章が浮かび上がっているようですが、ここからも、僕にはなにも判別できません。急に時間が飛んだのでしょうか。過去、またはずうっと未来へ。それとも、これは別の何者かなのでしょうか。
まとめ
フロートテンプルが大混乱になりました、チャンチャン♪・・・先月号を読んだ時点で、こんな感じで終わるかと思っていた今月号の話でしたが、ふたを開けてみればどっこい、ここ一年くらいの連載の中でも一、二を争うような内容の濃い話でありました。例えば、アマテラスと、ソープ、リンスはそれぞれ別の意志を持っているというのも、かなり大きな話です。これまで、ソープとアマテラスに関しては、まず同一人格だと思われていましたが、再考証が必要になりそうです。また、最近登場した東の君も、ヨーンを監視していたシーンから解るように重要な人格みたいですから、要素として頭に入れておかねばならなくなります。
また、明かされたログナーの実力や、想像以上だったランドの剣技、そして僕が衝撃を受けたブローズのキュベレイ・デザイン。特にキュベレイ・デザインは、FSSワールドが、今後デザイン上だけでも他の永野作品、例えばガンダムワールドなんかと接点を持ちうるということを証明しているわけですから、下手をすればZガンダム・モチーフのMHやメッサーラ・デザインの人間なんかも出てきてしまうかもしれません。ブレンパワードすら可能性はあるわけです。いえ、ブレン・デザインは、LEDミラージュやサイレンの新装甲に採用された「積層装甲」という形ですでに登場しているんでしたね。
来月号からは今回のシリーズのエピローグが始まるようですが、そこで語られるのはどんなエピソードなんでしょうか。連載中断前というのは、かならず読者の度肝を抜きにかかってくるのが永野護のいつもの手法ですから、今回もドキドキしながら待たねばなりません。僕らの想像力を爆発的に膨らませてくれて、なおかつエンドエピソードとしてふさわしいものが提示されることと思います。また外れるかもしれませんが、僕の予想としては次期連載時に主役格になるはずのマグダルとデプレのエピソード、もしくは、マキシの誕生にまつわる、ミースとカイエンのエピソードあたりではないでしょうか。以前会議室の方で話の出ていた「バトンタッチ」の考えから行くと、ボスやんから「超帝国のザ・シバレース」繋がりでタワーに行くかも、とも思うのですが。
もう一つ可能性があるとすれば、今回はとにかくたくさんの登場人物がたくさんのエピソードと共に登場しましたから、そのほとんどの人物がもう一度づつ登場するようなわかりやすい「まとめ」をやるかもしれません。でもでも、完全な新キャラをいきなり出して、読者を混乱させて終わるかも・・・・・・。
とかく、妄想の種は尽きません。あな恐ろしやFSS。
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