発表から丸一年以上たちまして、やっとこの、期待するなというほうが無理なゲームが発売されました。
近所の深夜1時まで開いているレンタルビデオ店付属のゲーム屋さんに、僕の12時までのバイトが終わってからすぐに駆け込んで「売ってください」とすごみ、無理やり手に入れて参りました。

家に帰ってみると、玄関先に大きなダンボール包みが。
改修にだしていたマイPCが、バイトのあいだに帰ってきていたのです。ああ、愛しのマイPC、きつく梱包されていて辛いだろうけど、ちょっと待っててね。2時間だけ先に時間をおくれ。
謝る気持ちもそこそこに、ソフトの包装をひっちゃぶいてGDロムを取り出し、自室の奥の棚の上で白く輝くドリームキャストに放り込みます。
電気街のゲーム屋のお験し版店頭デモで見たのと同じオープニングデモが流れ、僕の頭の中がぐるぐるとうねり始めます。なんでもないのに、何がなんだか分からなくなってきました。マニュアルを開く手つきもおぼつかない。つまり、興奮してるんです。

はじめは、プレイするのではなくゲーム画面のデモを見てみようと思います。さあ、誰と誰が出てきて、どんな戦いを見せてくれるのだ。
・・・ダルシムだ。そしてリョウ・サカザキだ。歴史に残るスーパーファイトの幕開けが、なんとまあ名指しがたき・・・。
いや、よく考えてみましょう。これはこれで、なんとも趣深い一戦ではないですか。それこそ、カプコンもSNKも総力戦の構えだからこそ、こういう組み合わせの戦いが起こるのです。そもそも、最近新作が出ないんですっかり忘れてましたけど、リョウは主役級のキャラではないですか。

最初にスタートボタンを押したとき、「お待たせ!」とか「よくぞこの時、この戦いに居合わせた!」とかなにかゲームファンに宛てたメッセージが出たらいいのに、なんて考えもむなしく画面はただのモードセレクトへ。
早速オプションで難易度を最低まで下げます。ええ、実は僕、ゲーム下手なんです。
その後、アーケードモードをはじめます。雑誌などで調べていたとおりに、グルーヴセレクト、キャラクターセレクト等など、順に選んでいきます。
このころになると、歴史的ゲームと相対しているといったような感慨よりも、目の前のゲームシステムとの戦いに神経が集中し出して、僕がいつも、どんなゲームをプレイするときにでも、まず考えてしまう「作り手との戦い」がはじまります。
画面のレイアウトひとつとっても、それは作り手の意思。ひとつボタンを押したときに、どんな反応が返ってくるか、それを踏まえて、プレイヤーをどんな心理状況にもっていき、最終的にどんな感動を与えるのか。そこまで考えて作れるのが一流でしょう。
「感動してください」という一文を読んで感動する人はいません。「泣け」と言われて泣くのは拷問です。
ゲームである以上は、本質的にはそのシステムで人を感動させ、泣かさねばなりません。演出もシナリオも二の次です。
で、このゲームの場合は、まずキャラセレクト画面を見ただけで、泣く人は泣きます。
カプコンのイラストレーターさんがSNKのキャラを、SNKのイラストレーターさんがカプコンのキャラを描いているのです。目新しいのに、どこか懐かしく、違和感があって、新鮮で、魅力的で、毒々しく、心に染みます。
なんだかもう、たまらんのです。

全体の雰囲気は、「スパ2的」と言って通じるかわかりませんが、とにかく、古めかしいという印象です。
画面演出なんかはもう、派手といえば派手なんですが、システムが地味なのです。
結局のところ、足払いの打ち合いで主導権を奪い、倒れた相手の頭上に飛び込んで連続技を入れ、受けるほうはそれを必死でガードしながら反撃のチャンスをうかがって、隙をみて足払いを繰り出す、といったような攻防がえんえんと続く感じ・・・なんていっても、僕みたいな格闘ゲームを下手の横好きでずっとやってるだけのプレイヤーの感想ですからあまり的確なものではないんですけど、とにかく、そういう、「スト2の進化形」みたいなゲームという印象です。
難しい技術がいらない分、僕は好ましく思いました。
だからこれはきっと、スト2以来格闘ゲームから離れてしまった人々を呼び込むための、盛大なお祭りなんでしょうね。昔のシステムだから、そのまんま遊べますよ、という。


なんとSNK、このゲームをカプコンと共同開発したのを最後に、ゲーム開発業務からは撤退するというもっぱらの噂です。
真偽の程はわかりかねますが、KOFシリーズなんかの開発チームはそのままカプコンに移籍して続きを作っていくんだとか。
そういう政治的な流れもあわせて考えると、この夢のゲームもなんだか生臭い要素があちこちにあるような気がします。夢の実現のために両社が手を組んだんじゃなくて、どっちみち無くなるんだから、せめて一番効果的な使い方をしよう、なんて企画会議で決まったんじゃないかなァなんて。
でも、だからといってこのゲームそのものの価値がゆらぐことはありません。
不知火舞と春麗の対戦前デモは、舞が春麗のコスプレをするという虚を突かれるものでした。
ルガールとさくらでチームを組ませると、「すべての格闘技を極めた私に、かなうはずが無い!」「へー、格闘技大辞典みたいですねー」なんて会話を交わします。
こーゆーの、大好きです。
よいキャラクター同士を、個性を殺さないように絡ませて、より面白いものを生み出す。そんな良質の同人活動のようなことを、責任を持ってメーカーがやってしまうんです。心置きなく、ゲラゲラ笑えるではないですか。
リュウとリョウをチームにすると、仲間なのに「一本やるか?」とか言い始めるんです。これですよ、これがクロスオーバーですよ。

カプコングルーヴのラスボスのギースのでたらめな強さとか、レシオ1なのに敵だと矢鱈に強いキングとか、ビッグベアのキャラが以外に弱くて拍子抜けとか、いろいろ予想外のこともありますが、そんなことにはめげずに、これから僕はがんばってゲームをプレイしてVSポイントをためて、レシオ4の隠しキャラクター達や、モリガンやナコルルを手に入れるのです。
もう朝なんですが、気にしちゃいられません。
では。


back