10月8日

春日井を夕方に出発。中央道をひた走り、長野へ。途中、駒ヶ岳SAでラーメン、姨捨SAで天ぷらソバを食べました。
姨捨SAは、長野インターのすぐ手前にあり、山から善光寺平を一望できる抜群のロケーションです。中央道を使って長野方面へ行かれる場合は、是非一度立ち寄ってみて下さい。特に、夜は素晴らしい夜景が見渡せることでしょう。
名物、どんぶりを覆うような大きなかき揚げの乗った天ぷらソバは、見た目以上に味がよく、ソバ処信濃の入り口にふさわしい一杯です。
JR長野駅前に、この旅行中の宿を定めて、初日は就寝。


10月9日

朝より、戸隠へ向けて出発。長野市街から「七曲がり」と呼ばれる、極端に蛇行しながら一気に1km以上も標高の上がる山道を通って行くと、その途中には、実が色づきはじめたばかりの林檎の木が沢山ありました。
まだ青い実ばかりの木もあるなかで、所々に赤い実のある様は、初秋の信濃を象徴する景色のように思われました。山々は、紅葉にはまだ1週間は早い、といった風情でしたが、いち早く色づく山ブドウの濃い赤と、林檎と同じ赤に塗られた林檎農家の屋根の色が、点々と山を彩っていました。
昼頃に戸隠に着いて、戸隠神社中社の参道にずらりと並ぶ戸隠ソバのお店の一つ、岩戸屋さんに入りました。あちこちのソバ屋の看板に「元祖」だの「本家」だのという字が躍っていますが、本当の元祖戸隠ソバは、この岩戸屋さんなんです。
元祖というだけではなく、ソバ通の間でも、ソバの味は一番、と言われているお店なんだそうです。ただし、今ではそんな事は無いのですが、一昔前までは、ソバつゆの味が甘すぎてソバの味が活かしきれていないと言われていたそうで、通はお好みのソバつゆを持参していたとか。
盛り一杯700円、天ぷらつけて1400円と、町角の立ち食いソバ屋に比べると良心的とは言い難いお値段に思われますが、ところがこっちは盛りが良心的で、立ち食いソバ屋の盛りソバの、倍はあろうかという大ざるが目の前に出てきます。長野の食べ物屋さんは、盛りがよくないと繁盛しないなんて言われているんです。もちろん、天ぷらも揚げたて!美味しそうだけどこんなに食べきれないよなんて思いながらも、一度箸をつければつるりつるりと食が進み、息継ぎをしたかどうかも思い出せないような勢いで、気がつけば目の前には空のざるがあった、という塩梅です。
膨れたお腹をさすっていると、後ろの席の新客さんから、「ざる大盛り!」と威勢の良い声が。老舗なのに、店員さんの愛想も良く、また来たくなるお店です。ちなみに、向かいの、「元祖!」とでっかく看板を出しているお店には、お昼時だというのに一人もお客さんが入っていませんでした。御愁傷様。

戸隠神社中社の前を横切り、僕の大好きな戸隠神社奥社へ。信濃の一番奥にある神社、ということは、本州の一番奥の神社ということでもあります。鬱蒼と茂る日本の原生林の奥に、突然現れる石畳の道。樹齢1000年を越えるような杉の巨木がびっしりと並んで左右を守るまっすぐな回廊を、2kmほど歩いていくと、それほど大きくはないお社がありました。祭神はタジカラオノ神。天照の岩戸隠れの折に、天の岩戸を押し開けた、強力の神様です。
今回は、時間の都合でそこまでは行きませんでしたが、その入り口で日本の”奥”の清浄な空気をたっぷり吸ってきました。
続いて向かったのは野尻湖。石器時代に、ナウマン象の狩りが行われたことで有名な湖です。幼い頃に一度来た事があったのですが、よく憶えていないための再来訪です。
ところが、意外につまらなかった。まだ気温の高い初秋の野尻湖は、レジャースポーツや観光客がひしめいており、期待していた博物館は、巨大なナウマン象やオオツノジカの骨は見られたものの、わりと低年齢向きに作られた展示という雰囲気。まあ、展示よりも、現在進行形で発掘作業が進められている学術的な場所なわけですから、こういうのもしょうがないかなと思いました。

その頃には、道々採っていた北信濃のこの季節の名物キノコ、「ジコボウ」が結構な量になっていました。同行のキノコ採りの名人(父)曰く、「今年は、よっぽど湿った、沢のふちのような所じゃないと生えとらんわ」だそうです。ここに生えてなきゃ日本中どこにも生えない、と言えるほどの穴場でも、思ったより採れないんだとか。これから採りに行かれる方は、参考にして下さい。
ジコボウは、信州唐松の根元に生えるキノコで、南信濃では、また違う名前で呼ばれます。本当の名前は「ハナイグチ」。松茸と類の近いキノコです。煮干しで取った出汁をベースにキノコ汁にすると、ぷうんと唐松の香りがして、信州人は秋になるとこれを探しにこぞって山に入るとか。確かに、道々キノコ採りと思われる駐車車両をやたらと見かけました。
長野市に住む祖父の家に持ち込んで、保存がきくように、一度茹でてから冷凍にしてもらいました。そのまま、夕食はみんなで中野へ向かい、今回の旅行のお目当ての一つ、福田屋へ。すき焼き、焼き肉、ちょっとした洋食なんかも食べられるバラエティー豊かなお店ですが、名物は、何といってもソースカツ重。普段は、卵でとじてある物しかカツどんと認めない僕ですが、このお店のソースカツ重は別格です。ご飯を敷き詰めたお重に、ジャガイモとピーマンのフライ、そしてソースに浸されたとんかつが乗っているだけ、というとてもシンプルな物ですが、これが、なんとも言えず柔らかくて美味しくて、絶品なのです。
お店の名前は、最近「すき焼き」さんと変ったみたいですが、地元ではまだまだ福田屋で知られています。信州中野にお立ち寄りの際は、一度お試しを。
長野市に帰ってきて、宿の部屋で急にデジタルデータが恋しくなり、持っていったワンダースワンをしばらく遊び、心安らかに就寝。僕のダメ度も、すっかり板に付いてきました。


続きは、明日の更新で。


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