この冬、WOWOWに注目すべきアニメが3本ほどあるので、簡単にご紹介いたします。

まず、毎週水曜夜7時からの、「風まかせ月影蘭」です。
先日までWOWOWで放映されていた「今そこにいる僕」という近年希に見るハードなアニメの監督脚本を手がけた、大地丙太郎氏の最新作です。
やたらに腕のたつ女剣士の月影蘭と、大陸生まれの拳法家ミャオ姐さんの女旅ガラス二人連れが、はびこる悪を退治する時代劇じたてのアニメです。何といっても魅力的なのは、悪漢との殺陣のシーンの工夫の練られたアクションと、主人公蘭の押し殺すような声質によって表現された、控えめな大人っぽい女性の表現でしょう。
時代劇をやる以上は殺陣に凝るのは当然ですが、痛快娯楽作品ならば能天気で元気な主人公、というような定石を外して用意されたと思われる蘭の性格は、虚を突かれると同時に視点の異なる面白味を感じさせてくれます。まるで、三船敏郎演じる椿三十朗に輪をかけたような、ぶっきらぼうを装っていながらいつのまにか騒ぎに紛れ込み、結果的に弱者を救うその行動は、油の乗った作り手の腕を感じさせてくれます。
現時点では第一話のみが放映済みですが、演出を手がけるのは「赤ずきんチャチャ」「アキハバラ電脳組」「十兵衛ちゃん」などでテンポのよいカット割りに定評のある桜井弘明氏であり、総作画監督に一部で有名なサムシング吉松氏の名前らしきものも見えます。大地監督の人脈健在、といったところでしょうか。
ところで、その第一話にさくらという名前の気立ての良い街娘が登場したのですが、作品内の演出とは関係なく、僕はそのキャラクターの動向に注目せざるを得ませんでした。まことに作品とは関係の無いことなんですけど、そのキャラクターを演じられていた声優さんが渕崎ゆりこさんという方で、「少女革命ウテナ」というアニメにおいて僕にトラウマ的なショックを与えた姫宮アンシーというキャラクターの声優さんだったんです。もちろん、キャラクターの外見や性格等の設定もまったく違いますし、本来ならば気にすることはないんですが、普通声優さんというのはキャラクターによって声質を使い分けたりするんですけど、なぜか渕崎さんは、この街娘の声をアンシーと同じ声質で演じられていたものですから、どうしても心に突き刺さってしまって、一人TVの前でもだえ苦しんでしまいました。
僕のお馬鹿な話は置いておきまして、作る作品がことごとく話題作になる大地監督の最新作ですから、この作品も見逃さないでいきたいものです。ちなみに、WOWOWですが、無料放送です。衛星受信施設があれば、未加入でも見ることが出来ます。

続いて、毎週木曜夜7時からの、「OH!スーパーミルクチャン」。
一見可愛らしいものの、よく見るとものすごく毒のあるデザインのキャラクター達が、不可思議なストーリーに乗って大暴れします。偶然時事ネタになってしまったきんさんぎんさんのギャグはちょっと毒気が強すぎた気もしますが、それは別にしても全編にわたるムチャクチャな登場人物たちのやりとりが、なんとも大笑いさせてくれます。
セリフを棒読みするようにとつとつと喋る主人公のミルクチャンは、声質は普通の女の子なのに、セリフはものすごく乱暴で、これまたなんとも魅力的です。消費者金融にお金を借りておいて、取りたての電話がかかってくると「きさまにかえすかねはね〜!」と受話器を叩き付けたりします。同居人のロボットがミルクチャンの乱暴な言動に注意をしようとすると、「このばかっつら〜!」と怒鳴りかえす始末。でも、あまりに可愛らしいデザインで、憎めません。
まったく絵柄の異なるキャラクターや実写まで作中に登場する、ごった煮のようなアニメです。制作はぴえろ。その昔押井守が在籍していた、能力のあるスタジオです。こういう先進的な作品が作れるスタジオは、やはり限られているのかもしれません。
あと、ちょっと古いアニメが好きな人なら、OPは必見です。
これも、無料放送です。

トリを勤めますのは、毎週日曜夜10時頃(週によって少々変わります)に絶賛放映中の「サウスパーク」です。
アメリカのとある田舎町サウスパークを舞台に、主人公の四人の小学生を中心とした奇想天外な大騒動が巻き起こります。かわいい切り絵の様な絵柄とは裏腹に、主人公達のまわりで起こるのはいつもジョークとブラックの境界スレスレの事件です。100歳を越えた祖父に自身の殺害を依頼されたり、親友でもある飼い犬が実はホモで矯正しようとしてもまったく効果が無かったり、主人公のうちの一人が自分に父親が無いことに悩んで登校拒否になってしまったり・・・・・・。
こうして挙げてみるとまるで社会派ドラマのようでありますが、実際にはブラックユーモア溢れるギャグアニメです。アメリカではPTAがその内容のあまりの下品さに大変な抗議をおこし社会問題にもなったそうで、日本でも今回のWOWOWでの放映はR指定(15歳未満視聴禁止)となっています。
ただ、扱われるテーマはあくまで社会派で、それを今時のクールな小学生が淡々と能天気に乗り越えていく様は一見不謹慎かもしれませんが、その実とても丁寧に描かれる心理描写や説得力のある登場人物たちの行動原理は、決して子供たちに見せることを禁止するような番組ではないと思えます。
ブラックなユーモアを楽しめる方なら、膝を叩いて笑えること間違い無しのアニメです。
これだけは有料放送です。WOWOWに加入して見てください。


どのアニメも、現在やっているアニメの中では「トランスフォーマー・ビーストウォーズメタルス」に次ぐ地位を争うほどの面白さです。機会があったら、是非一度見てみて下さい。


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