作品内には、人類統一政府が2つ登場します。正確には3つですが、名前は2つです。
まず、人類が地球にしか住んでいなかったころの国家連合体の延長線上にあると思われる「銀河連邦」が存在しました。
次に、宇宙船技術の発達と、1発で惑星を破壊する力を持ったジオイド弾の発明によって引き起こされた「汎銀河戦争」の中から、ナガト帝とスーパーコンピュータ「ライガー1」によって打ち立てられた「銀河帝国」が現れます。
そして、長く続いた帝国の支配の腐敗の中から芽吹いた活動団体「SOE」を前身とし、「ライガー1」と惑星コンピュータ「ドラム」との壮絶な相打ちによって秩序が失われてしまった宇宙に新しい秩序をもたらすための機関としての「銀河連邦」が生まれました。

もちろんどの組織も、実際には完全なる人類統一政府ではなく、友好関係があるにしろ同時代に傘下ではない自治体が存在していたりもしました。超人ロックの世界でも、人類はそう簡単には統一政府を作ることが出来なかったようです。
しかしながら、この作品を大河歴史マンガと捉えるのならば、その根底としての仮想人類史としてこの「連邦→帝国→連邦」という流れは押さえておくのが妥当であると思われます。
この大きな流れを認識すればこそ、ロックという一個人がどれほど大きく歴史に干渉したのかという視点が生まれ、そしてそのダイナミズムを僕らは楽しむことが出来るのです。
ロックは、どうやらノンポリらしく、「連邦を守るため」とか「帝国を守るため」というような戦いはしませんでした。彼の行動の多くは、連邦に勤める友人の依頼によってのものであったり、多くの人間の命を救うためのものであったり、目の前で一人の人間が殺されたことによる怒りによってのものだったりしました。
しかし、結果として彼は第一次銀河連邦の崩壊を見届け、銀河帝国の設立に結果的に手を貸し、帝国の崩壊の時にも、その現場にいました。そういった彼自身がかかわってしまった歴史的事件も沢山ありましたし、彼がかかわった人物の子孫が、後に大きな歴史的活動を行ったという事象もあります。
基本的にこの作品はコミックス1冊分で一つの物語が完結するように作られていますが、その背後には1000年以上におよぶ年表が横たわり、一つの人類史を描いているのです。

時にスーパーヒーローであり、時に狂言回しであり、時に脇役であるロック・ザ・スーパーマンは、この作品の主人公でありながら、作品の描いている人類史の観察者であるという側面を持っています。
いつか彼の旅に終わりが来るのでしょうか。そして、ロックとは、何者なのでしょうか。
その答えを探すのが、超人ロック研究の真の目的です。しかし、失礼かもしれませんが、それは作者である聖悠樹でもわからないことなのではないかと、僕には思えてなりません。


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