小さな街の書店の、自分の背丈を越える書架に居並ぶ書物の群れを眺めてみます。
そこにある、文庫、雑誌、マンガ、新書、エッセイ、絵本、その総ての中のおそらく1%も自分は読んでいません。
情報は、手に届くところにいくらでもあり、こちらが消費する以上のスピードで供給されます。
新聞、TV、インターネット等から伝わって来るそれらは、無意識下で自分を構成する要素になりながら、そのほとんどは初見以降、再び意識に上ることなく破棄され続けます。

必要なのは、情報を分別し、整理し、実際に行使する能力です。
読書体験は、それらの能力を鍛えてくれます。
本の外の世界が定めるだけで、本自体には、良も悪もありません。読んだ自分自身がその価値を定めるのです。
それを繰り返すことで、自分の心の形が定まっていくのです。
この成長は、死ぬまで続きます。

「小説の話」というコーナーではありますが、取り扱うのは世に溢れる文字コンテンツ全般のつもりです。
ブンガクに偏るつもりも毛頭ありません。
このコーナーが、「こどものくに」設立当初から予定されていた企画の、最後の一つです。

これから先、自分が何をしていくのか、不安で一杯です。


紹介タイトル

「シェルブリット」 (幾原邦彦・永野護共著、株式会社角川書店、1999)(10月2日)

「伊豆の踊り子」 (川端康成著、1926)(10月3日)

「巷説百物語」より、「小豆洗い」 (京極夏彦著、株式会社角川書店、1999)(10月4日)

「変身」 (カフカ著、1912)(10月5日)

「海が聞こえる」「海が聞こえる2アイがあるから」(共に文庫版) (氷室冴子著、株式会社徳間書店、1999)(10月6日)

「金閣寺」 (三島由紀夫著、1956)(10月7日)


back