このマンガ、ご存知の方にはもはや説明の必要はございませんでしょう。世紀末の日本のマンガ文化が生んだ奇跡の名著です。
このマンガを売るために、大袈裟なプロモーションは必要とされません。プロレス魂を持つ人間ならば、何かのきっかけで引き寄せられ、必ず手に取る一冊です。
以前に単行本化された際に、一度すべて読んでいたのですが、今回出版社が変わって復刻され、それをまた知人に借りたので、再び熱中して読みました。

プロレスに熱を上げる男達の狂態を、その熱さもおかしみも悲哀もひっくるめて詰込んで、その純度たるや富士山の地下水ほどに高まっているこのマンガが、プロレスファン以外に理解されないのは当然です。ゆえに、このマンガは、人に奨めるべきでないと言い切ります。プロレスの面白さを説明するマンガではないので、プロレスファンでない人が読んでも楽しめはしないでしょうし、これを楽しめる人は、自然に自分からこの作品にたどり着いているはずです。それだけの重力がこの作品にはあります。

長くは語りません。
優れた作品の前に、謙虚に沈黙できる幸福を、僕は満喫しようと思います。


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