1サンボとは
 「サンボ」という単語を聞いていかなるモノであるかすぐに連想できる人は少ないでしょう。サンボ(SAMBO)とは「武器なき自己防衛」という意味のロシア語を略したものであり、そこからわかるように格闘技なのです。
 サンボの誕生は旧ソ連時代であり、多民族国家であるソ連が民族統合をはかるために、国内に数多く存在する民族格闘技の利点を統合し誕生したものなのです。
 そしていかなる格闘技であるかというと「柔道とレスリングを合体させたようなもの」と自分はいつも説明しています。簡単に説明するならば、柔道のような投げ技を使い相手を倒し、押さえ込んだり、関節技を仕掛けたりします。レスリングという単語をいれた理由は寝技が行われる時間が柔道よりも長く、すぐに「立て」といわれない点があるからです。
 もし初めてサンボをご覧になる機会があったとします、そのときはきっと「柔道と何処が違うの」という感想をもたれることでしょう。正直いいまして柔道に酷似しています。柔道が強ければサンボも強いでしょうが、ここではサンボ独自の魅力を少しでも紹介していくつもりです。
※ サンボの歴史に興味をもたれた方は、ベースボールマガジン社から出版されている、「増補版・これがサンボだ!」を入手が楽なことをかんがえてお勧めします。


2ルール説明
 サンボのルールを説明しますが、柔道のルールを思い描いていただければだいたい間違いはないと思います。

@ 階級について
 格闘技ゆえに体重別に試合が行われます。年齢でも20歳以下のエスポワールクラスと20歳以上のシニアクラスにわかれています。

A 試合時間およびマット
 エスポワールは5分、シニアは6分となっています。
 試合場となるマットの規定を簡単に説明すると、直径9mの円の内側の全円周に幅1mの帯びを縁取りしたものの上で試合を行います。

B サンボ競技の服装
 上半身は薄い柔道着のようなものを着ます。サンボ着は赤と青の2色あり、自分が試合をするときのコーナーの色に合わせたものを着用します。下半身も赤か青のスパッツとされています。足はサンボシューズかレスリングシューズを着用しなければいけません、素足は不可とされています。

 ※サンボシューズとは
 靴というより足袋に近いものです、くるぶしの少し上まで布があり、ひも靴のような形をしています。初めて見たときには「コレの何処がシューズなんだ」と思わず叫びたくなるようなものでした。

C試合の勝負判定
 ≪一本勝ち≫
●自分の態勢を崩さずに相手をきれいになげたときなのですが、投げたほうが両足で立った状態でなくてはなりません。ヒザなどがついていた場合は一本にはなりません。
● 相手の足、腕の関節を取ったとき。
 以上の場合一本となり試合は終了します。また、試合中において、両者のポイントに12ポイントの差がでたとき(テクニカル一本勝ち)、その試合は一本と同じ扱いとなり終了します。

 ≪4ポイント≫
● 相手をきれいに投げたが、自分の態勢が崩れているとき。(投げたときマットに手やヒザをついたりすること。例えるなら、巴投げや横捨て身等)
●投げ技から押さえ込みに入り、20秒間押さえ込むとき。
 押さえ込みの場合、柔道と違い押さえ込んでくる相手の体に足をからめていても、胸と胸 を密着させると押さえ込みとなります。

 ≪2ポイント≫
●態勢を崩さずに投げ、相手が尻もちをついたり、胸・腹からおちる。 
●押さえ込み10秒。 

 ≪1ポイント≫
●投げた人の態勢が崩れ、相手が尻、胸・腹から落ちるとき。
 試合時間内に一本勝ちがない場合はポイントが高い方が判定勝となります。同点の場合は点の高いポイントを数多く獲得したものが勝ちとなり、それも同じ時は最後にポイントを獲得した方が勝ちとなります。


3行事
 日本サンボ連盟なるものが存在しており、大会は定期的に開催されております。参加者も毎年増えていますが、地味な競技ゆえに観客はほとんどなく、会場には選手・関係者ぐらいしかいません。日本での大会はほとんど東京で行われています。

≪全日本選手権≫
 毎年6月の後半ぐらいに開催されています。この大会での優勝者が世界選手権のキップを手に入れます。

≪関東選抜選手権大会≫
 毎年11月ぐらいに開催されます。関東居住者に限られています。

≪全日本学生選手権大会≫
 毎年これも11月に開催されますが、上記2大会と比べるとかなりレベルが低い大会です。

≪フレッシュマンズ・カップ≫
 毎年3月に開催されています。文字どうり新人のための大会ですが、「サンボ」の初心者の大会なのでなかには柔道5段の人など、とんでもない人が参加するときもあります。

≪世界選手権大会≫
 96年は日本で開催されていました。

≪アジア選手権大会≫
 なぜかロシアが参加しています(いわゆる極東地域に在住の選手のみの参加らしいですが)。

≪トライアルマッチ≫
 道場どうしの交流戦のようなもので、トーナメントではなく相手を決めて一人2、3試合行います。

≪初心者講習会≫
 年に2,3回開かれています、初心者にサンボのルール・技を説明し、より多くの人達にサンボを紹介するために行われています。無料でおこなわれています。東京で行われていますが新潟などから来てくれる方もいました。

  ※大会などが行われるときの会場設定、後片付けなどは大会の参加者でおこなわれます、このときは初心者だろうがチャンピオンだろうが関係なしに全員でなされています。この情景を初めて見たときは、とても新鮮なかんじがしました、みんなで大会を成功させていこう、マイナーな競技ではあるがこれから広めていこう、という意気込みの現れではないでしょうか。


4サンボ技とは

 ≪立ち技≫
 柔道と比べると立ち技においては、組み手の幅が広いといわれています。帯より上は何処を掴んでも、何秒掴んでも反則にはならないのです。次に関節技において足関節が認められていますので直接、足関節に入る態勢にもっていける投げ技が開発されている部分も独自のものかと思われます。他に帯をつかんでの攻撃もサンボ特有の投げ技につながっていきます。
 ロシア人などは日本人と比べると同じ階級でもパワーの違いがけた違いだそうで、それゆえ豪快な投げ技(グレコロマ―ンのような投げ技)を使ったりしてくるようです。日本人が投げ技の体制に入っても、そのケタ違いのパワーで返されたりするそうです。

 ≪寝技≫
 サンボでは絞め技は反則です、それゆえ亀の態勢は有効な防御方法のひとつされています。したがって練習においてはいかに亀の態勢から、関節技や押さえ込みにはいるかが主なメニューのひとつとなっており、亀の態勢から関節技へ移行するセオリーはかなり習いました。あと寝技において絞め技の危険がないことから、不利な態勢になると、すぐにうつ伏せになります、ゆえに攻めるときは如何にうまく相手の上に乗るかが非常に重要なことなのではないでしょうか。


5関節技体験記
 サンボをはじめる人の大部分は関節技に興味がある人でしょう、もちろん私もそうです、それゆえこの章においては少し熱を入れて書きます。
 正直にいうならば、関節技を文章で表現することは不可能に近いと思われます、それゆえ多少知識のある人を対象としていくつもりですが、全く知らない人にも読んでもらいたいので、「痛み」を中心テーマにしてきます、どんなかんじでどれほどの痛みがあるのかを表現していきます。ちなみにサンボでは、絞め技・ヒールホールド・足首を捻る技は反則となっています。

 《アキレス腱固め》
@ どんな技か
 一般的な説明をすると、手首の硬い骨の部分で相手のアキレス腱を圧迫する技であり、その際、圧迫させることに夢中になり相手の体に自分の足をからませて動きを封じ込めることを忘れてしまいがちになりますが、コレをしないと相手が暴れると簡単にポイントがずれてしまい不充分なものとなってしまいます。
 ある本によれば、サンボで足関節が存在する理由のひとつに広大なシベリアの大地においては歩けないということは死を意味すものであるからだとされています。
A どんな痛みか
 痛みには2種類あります。ひとつはアキレス腱よりやや上の部分を圧迫するものであり、筋肉が潰されるような痛みがはしります。もう一つは足の甲を痛めるものです、自分の手首を相手の踵のすぐ上で圧迫しやや捻るようにして絞るやり方です。このやり方での痛みは、足首を捻られた時に感じるものと似ています。足首を捻ることは反則なのですが、こうした場合の微妙な捻りは判別不可能なのでやむ終えないものとなっておます。ちなみに耐えていると足の甲のあたりから「バキ、ベキベキ」というような骨の音が鳴ります、そうなると痛める場所はアキレス腱というより甲の骨となります。甲を痛めると治りが遅いので、なるべく我慢はやめようかと思います。
Bおまけ 
 アキレスを極めるコツとしては忍耐が重要なものとなります。怪力の持ち主か実力者意外では、自分が技をかければ大抵の場合はかけ返されます、それゆえ我慢大会になります。「もう、ダメだ。」と思ったら負け、痛くても、苦しくても我慢したほうが勝ちとなることもあります。
 それから痛みに慣れるということが重要なのです。かけられた瞬間に「これなら大丈夫だ」と思えば、切り替えしたりできるのですが大丈夫の範囲を知っておかないと技をかけられた瞬間に驚いて、「まいった」をしてしまいます。要するに慣れなんですが。

  《ヒザ十字固め》
@どんな技か
 アキレス腱固めとともにサンボを代表する関節技です、単純にいえば、自分の股に相手の足を挟みこんで伸ばして極めるものです。挟む部分としてはヒザのすぐ上のあたりとされています。ヒザ十字において重要なことは、「股の絞め」であり、挟んだだけで相手が痛がるくらいでなければきまりません。足を伸ばすことはたいして重要なことではないのですが、あせっているとついつい、そちらの方に気が向いてしまいがちです。
Aどんな痛みか
 やはり、足が「挟まれている」というような痛みがはしりますが、ある程度どのような痛みかを知っていれば即座に「まいった」をするような技ではないと思えます。股のクラッチを緩めればそれなりに耐えることが出来ますが、その場合ヒザ十字をかけている方はその後アキレス腱固めに移行するのが手順となっており我慢していれば安心というわけではありません。

 《ヒザ固め》  
@どんな技か
 もっとも単純なかけ方としては、自分の手首の硬い骨の部分を相手のふくらはぎと太腿の間に挟み両方の筋肉を潰すという方法です、正座をしている足のふくらはぎと太腿の間に手首をこじ入れるような感じとなります。
 この技の入り方は非常に数多く存在しています。手首の変わりに自分の足首を挟みこんだり、拳で直接ふくらはぎを「グリグリ」と痛めつけたりもします。
Aどんな痛みか 
 この技は自分で自分にかけることができるのでおためしになってはいかがでしょうか。実際これをかけられると筋肉が潰される猛烈な痛みがはしりますが、骨折・捻挫などの大きな怪我につながる心配はまずありません、2,3日歩くのに不自由するくらいなので耐えられるだけ耐えて脱出方法を探すことができます。しかしながら、耐えているときは大変なものです息を止めて全力疾走しているようなものです。

 《クロス・ヒールホールド》
@ どんな技か
 これこそサンボならではの技といえるものですが、どのようにして説明したら良いのやら困るところです、とにかく無理を承知で簡単に説明します。相手の足を交差させ相手の足のスネの硬い部分でアキレス腱を圧迫するという技です、それゆえ相手がアキレスをかけてきた時にこちらの足を固定するために足を交差させクラッチしている時に返し技としてもつかえます。
 もっと詳しくしく説明したいのですが文章力不足により不可能なのでここまでとさせてもらいます。ちなみに、これは正真正銘のアキレス腱固めなのですが、「リングス」という格闘技団体が命名してから日本ではこのように呼ばれています。
A どんな痛みか
 痛みの感覚はアキレス腱固めの筋肉が潰されるような痛さのモノと同じですが自分の足で自分のアキレスを圧迫していることから、最初のうちはどの部分が痛いのかよくわかりません
がとにかく痛いのです。自分の経験からいうと、アキレス腱固めに使う力より少ない力でより激しい痛みを与えることができると思われます。極めるまでが複雑なので慣れないと、かけようとしている間に相手に普通のアキレスをきめられてしまうことがよくありますが、慣れた人がこの技をを使うと恐ろしいことになります。よくこの技にたいして「なぜ、わざわざ足を重ねるの?普通にアキレスかければいいではないか」という声を聞きますが、前述のように破壊力が数段違うことと、両足を捕らえているので逃げづらいという点があるのです。

  《腕ひしぎ逆十字固め》
 この技は柔道などでおなじみの関節技でありサンボ特有の技ではありませんが、もっとも有名なものであるので説明します。
@ どんな技か
 相手に対して十字のかたちになります。自分の両足で相手の顔・胴を固定し股で相手の腕を挟みこみ、肘の可動範囲以上に腕を伸ばして主に肘を破壊します。
 相手が腕をクラッチして防御した場合、これを切るのは非常に苦労します、道着を掴んでのクラッチは素手のよりもはるかに切りづらいのです。クラッチは「スパァッ」と切るというより、じわじわと攻めて「ズボッ」とワインのコルク栓を抜くような感じで切る方が有効です。
 クラッチを切るという作業は物凄く大変なものです。サンボを始める前に想像していたものより100倍大変でした。たいして力のない普通のひとは瞬発力より持久力が大切なのではないでしょうか。フルパワーを持続できる持久力なので恐ろしいくらいの体力と精神力が必要なようです。
A どんな痛みか
 この技は耐えられません。背筋を使って腕一本を折るようなかたちなのでヘタすれば大変なことになる危険な技であると思われます。痛みがはしる前に「まいった」をするほうが利巧なのではないでしょうか。

《トド攻撃…》
 おまけです、もちろんサンボ独自の技ではありません。現役時代の前田日明が対戦相手の上に乗っかり呼吸をさせないという嫌がらせをしているのを観て、糸井重里氏が命名しました。
 コレは最高に苦しいです、自分より重い人がミゾオチなどを中心として体重をかけてきようものなら、苦しくて苦しくて、ロクに息もできません。そして苦しんでいる間に関節を簡単に取られてしまうのです。ヘタに関節技を覚えるより相手への乗り方、押さえ込みを研究するほうが、寝技では上達するのがはやいのではないでしょうか。




読後、サンボや関節技に興味が湧いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

でも、見よう見まねの関節技は大変危険ですので、「試してみよう」なんて思ってはいけませんよ。

どうしても「やってみたい」という方は、会議室等でコカールさんに連絡を取って、直接教えていただいて下さい(笑)

コカールさん、面白いお話をありがとうございました!

もっと上手に編集できれば良かったんですが、すみません、てなしもはそういう事が上手く出来ないんです(^^;


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