２０１５年６月号　第３５２号

　―　新しい一手　―

■将棋のプロとコンピューターが戦う電王戦というのがあります。

■この将棋電王戦で、永瀬拓矢六段がコンピューターに勝利しました。

■大阪・本成寺の石田恒安師は将棋界のご出身で、先日お会いした時に「この電王戦は素晴らしかった」と仰っていました。

■この勝負はコンピューターの反則負けだったそうです。

■過去に棋士が指した実際の対局を手順どおりに記録した「棋譜」がすべてインプットされているコンピューターは、プロの棋士が考え付く手はすべて詰め込んであります。

■だから相手がどんな手を指してきても、膨大なデータの中から最善の一手を瞬時に探し出してきます。だからいくらプロでもなかなか太刀打ちできないのが定説でした。

■それを永瀬六段は、今までになかった奇手によって、コンピューターを混乱させるような「王手」によって勝利しました。

■これは世相をも表しているようです。

■コンピューター的発想で生きている人間への、まさに「王手」です。

■想定内、想定外などの言葉がニュースで溢れ、ちょっと行き詰ると「もう他には道がない」と諦めてしまう。

■過去にないものだから「ない」と考えるか、過去にないものだから「価値がある」と考えるか。

■香風寺創立30周年を迎えるにあたり、前例という「定石」だけではない「新しい一手」も考えていく必要があると考えます。

■そのためにも福岡御導師を見習い、柔軟な発想ができるように日々の生活の工夫に心がけたいと思います。