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生後認知された非嫡出子の日本国籍の取得(最高裁判決 平成14年11月22日)
1)判決主旨
出生時に父又は母が日本国民であるとき子に日本国籍を付与す ると定めた国籍法2条1号は、法の下の平等を定めた憲法14 条1項に違反しない。
2)事実関係の概要と上告理由
− 事実関係
法律上の婚姻関係のない日本人父と外国人母との間に生まれ た子が、出生の3年余り後に日本人父から認知(生後認知) された。これをもって、この子が出生時に溯って日本国籍を 取得したと主張した。
− 上告理由
国籍法2条1号の適用において、認知の遡及効を否定してい るのは、嫡出子と非嫡出子、また、非嫡出子でも胎児認知さ れた子と生後認知された子の間で、日本国籍の取得について 不当な差別をするものであり憲法14条に違反する。
3)判決理由
− 憲法14条1項に定める法の下の平等は、絶対的な平等を保 障したものではなく、合理的理由のない差別を禁止するとい う趣旨である。
− 国籍法2条1号は、日本国籍の生来的な取得について、父母 両系血統主義を採用したものであるが、単なる血統を絶対視 するものではなく、子の出生時に日本人の父又は母と法律上 の親子関係があることをもって日本国籍を付与するという趣 旨である。
− 生来的な国籍の取得は、できる限り子の出生時に確定的に決 定されることが望ましく、出生後に認知されるか否かは出生 時点では未確定である。
− 国籍法2条1号が、子が日本人父から生後認知されたことを もって出生時に溯って法律上の父子関係が存在したものとは 認めず、生後認知だけでは日本国籍の生来的な取得を認めな いとしていることには合理的根拠がある。
4)裁判官の補足意見
日本人を親とする非嫡出子でありながら、日本人を母とする 子は、法律上の母子関係が出生によって生じることにより当然 に日本国籍を取得するが、一方、日本人を父とする子は、胎児 認知された場合は別として、生後認知されただけでは日本国籍 を取得できず、国籍法3条により父母の婚姻も要件とされてい る。
すなわち、生後認知された子は、両親がその後婚姻しなけれ ば、帰化手続によらなければ日本国籍を取得できないという差 別を受けることになる。この差別に十分な合理性があるという のは困難であり、国籍法3条の父母の婚姻を要件とする部分は 憲法14条1項に反する疑いが濃いと考える。
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