人気馬を斬る
競馬の世界には人気馬とそうでない馬の2種類があります
人気馬とは、その馬の真の実力とは関係なく、またその馬の調子の変動とは関係なく人気(=馬券の中心)になる馬のことです
誰が人気馬と決めるのかと言えば、大概は予想紙を始めとする競馬マスコミでしょう
我々競馬ファンはマスコミによって、”人気馬=確実に馬券になる馬”との幻想を持たされている、要は踊らされていることが多いのです
そこで、マスコミがいかにいい加減なものであるかを、人気馬が絶対的な人気を裏切ったレースなどを取り上げて検証してみましょう
その1 ナリタブライアンの天皇賞(秋)
『ナリタブライアン』といえば、競馬ファンなら誰でも知っている名馬です
4歳クラシック3冠を簡単に成し遂げ、この馬に勝てる馬は当分いないだろうと言われていました
あれは、ナリタブライアンが5歳の秋の天皇賞に出走してきた時のことでした
股関節の故障で春シーズンを休養し、秋の緒戦が天皇賞にぶっつけで本番だったのです
いくら名馬とは言え、故障休養明けならば多少の不安説が出るのが普通ですが、このときは全くなかったのです
調教師もマスコミも、好調子であり、間違いなく勝てると言っていましたし、人気も当然のように一本かぶりになっていました
ところが、当日のパドックのナリタブライアンは、違う馬に見えました
馬体に張りがなく痩せているようで、気合もなく厩務員に引かれるように周回しているのです
あの、周りを威圧するような気合で力強く歩いていた面影は全くなく、みすぼらしいと言ったほうがいいくらいでした、これは私だけの感想ではなく、付近で見ていた人達も同じような感想を持ったようでした
レースの結果は皆さんご存知のとおり、好位で追走しながら直線バタバタとなり着外に沈んだのでした
レース後のマスコミはとって付けたように馬の出来が本物でなかったなどと書いていましたが、素人でも判るようなひどい状態の馬を、間近で見ていたマスコミが好調子だなどと書くデタラメさの反省は全然していません
命の次に大切な金を賭けているファンを馬鹿にしていますね
その2 ナリタブライアンの高松宮杯
ナリタブライアンがスプリンターの舞台である高松宮杯に出ると聞いて何かの間違いではないかと思ったファンも多かったはず
2千以上の中距離から長距離戦を戦ってきた馬が、いきなり1,200戦に出るなんて非常識と言われながら何故か出てしまったのでした
おまけに鞍上には武豊を持ってくるなんて、人気にならないほうがおかしい
結果はスタートダッシュがつかず後方に置かれ、3コーナーから追込んできたものの勝馬から離された4着が精一杯でした
やっぱり中距離戦とペースが違って戸惑ったのでしょう
しかし、短距離戦もこなせると思って馬券を買った人達にはいい迷惑でした
その3 グラスワンダーの日経賞
これもひどい話でしたね
去年の有馬記念を勝って3カ月ぶりの出走だったグラスワンダーは4コーナーを回って後はズブズブと沈む一方
重賞も勝てないような弱いメンバー相手に大惨敗で、グランプリ3連覇が泣くようなシーンでした
ついでに私の馬券も大惨敗
この時の敗因は多分重目残りでしょう
中間の調教の動きが重く、重目残りが心配されていながら、マスコミも調教師も勝つのはこの馬しかいないという
確かに他のメンバーがいかにも軽く、多少調子が悪くても勝てそうと思えてしまうのだから不思議ですね
この時はパドックをテレビ中継で見ていたのですが、歩くたびに腹回りからお尻にかけて、肉がタプタプしているのが判るほど重かったのです
これを見てFテレビの解説者は「多少重目ですけど大丈夫でしょう」などと無責任な解説をしていました
やっぱり能力が違っても調子が悪けりゃどうしようもない
その4 キングヘイローのフェブラリーS
芝のマイル路線で好成績を上げていたキングヘイローがダートのフェブラリーSに出てきた時も驚きましたね
デビュー以来芝でしか走っておらずダート適性があるのか大いに疑問でしたが結局は馬群の中で泥をかぶって嫌気を出して全くレースにならず大惨敗
ダートでも大丈夫と太鼓判を押していた調教師、予想紙はどんな根拠があって言っていたのだろうか
その5 スペシャルウィークの京都大賞典
昨年惜しまれつつ引退したあのスペシャルウィークが惨敗したのが京都大章典でした
春の天皇賞以来の出走も前評判は上々、調教の動きが春とは違って納得がいかなくても完璧だなどと書く新聞もあり、私は半信半疑で見ていましたが4コーナーを回って後は後退するだけ、全くらしさが見えませんでした
やっぱり休み明けで馬の出来が良くなかったのでしょう
その6 ラガーレグルスの皐月賞
先日の皐月賞、馬券を買って楽しみにテレビ中継を見ていたらゲートから出ずに終わってしまった馬がいました
その名はラガーレグルス、そう言えば府中の共同通信杯も大出遅れというよりゲートから出なかった前科持ちでしたね
こういう癖がある馬を人気馬にしてはいけなかったのです
GTの3番人気馬が一歩も走らずに終わってしまうなんて、これはやらずぶったくりというのでしょうか
このように、誰もがその時代の最強と認める名馬でも、いとも簡単に人気を裏切るのが競馬です。
それも、レース中のアクシデントなどの不可抗力によるものであれば納得できるが、体調不良を隠したり、適性を無視したレースを使うという管理する人間に問題があるケースについては、とても納得できるものではありません
本来そういった点を監視するのがマスコミの責任だと思うが、無責任なマスコミにそれを求めても無駄でしょう
そこで、21世紀の賢い競馬ファンは、無責任なマスコミが流す情報のうちから、意図的に操作されていない部分だけを参考にして、自分なりの予想スタイルを作り上げなければなりません
ところで、条件戦などの能力差のないメンバーで行われるレースでは、もともと人気馬になれる馬などいないはずなのに、何故か単勝100円台の支持を集める馬が出てきます
僕の経験から言えば、こういう馬が勝つのは3回に1回程度のはず、「人気があるから馬券になる」ではなく「人気になっても馬券にならない」確率のほうが断然高いのです
ただし、上位に来る馬はそれなりに馬券の売れている馬であることがほとんどなので、むやみに人気薄の馬を買っても馬券は当たりません
逆に、人気がある馬ばかり追いかけていても、収支をプラスにすることは難しく、この辺りの兼ね合いが馬券道の奥深さなのかもしれません
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