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◆◇◆ ・・理由 ◆◇◆

動けなかった。
あなたが助けてくれなかったら、ここに寝ているのは私の方。

もう、あの時のことは大丈夫、と思っていたのに。

私には3つ年が離れた弟がいたの。

報告好きな弟で、いつも「お姉ちゃん、あのね...」って
慕ってくれて、だから何処に行くにもいっしょだった。

私がいつものように弟と公園で遊んでいた時のこと。

ほんの一瞬だったわ。
ボールを追いかけ道路に出た瞬間、弟はオートバイと・・・。

ひき逃げだった。
一瞬のことで何が起こったか分からなくて、泣き叫ぶだけの私。
倒れて弱々しく「お姉ちゃん、痛いよ・・・」って。
それが最後、話しかけても二度と目を開けてくれなくて。

何もしてあげられなかった私が嫌で、
単純かもしれないけど、それから医者を目指したの・・・

ねぇ、私の声、聞こえてる?
お願い、早く目を開けて。


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