[ RETURN ]


◆◇◆ 思い出の歌 ◆◇◆

(鮎) 今日も、琴梨と学校帰りに大通公園を散歩。
最近の私達のお気に入りなんだ。

琴梨は、高校に入って最初に出来た友達。
実は入学前に街で会ったことがあって、その時からこの子可愛い!って
思っていたんだけど、まさか高校でクラスまで一緒になれるなんてね?

琴梨は、ちょっとポ〜っとしてるところがあるけど、料理がとっても上手なんだ。
こないだの土曜日も琴梨の家に行って晩ご飯ごちそうになったんだけど。
本格的で、もう見た目も味付けも最高なんだ。
それに、素材や健康面までこだわっていて『もう結婚して!』って感じ。

普通、私くらいの女の子って、お菓子づくりとか、ちょっとしたお弁当なんかは
「彼のために」って感じで頑張ったりするんだけど、琴梨の場合
そういう感じじゃなくて本当に「料理が好き」なんだよね。

レパートリーも、お菓子や喫茶の簡単なモノから、本格的な和食、イタ飯、フレンチ、
中華等々何でもコイ!って感じ。
それでいつも新しい料理の事とか考えていて、ちょっとおばさんくさいけど、
スーパーのチラシなんかも隅々までチェックするのは基本みたい。

あのね、私の家、実は「澤登」っていうお寿司屋なんだ。
お父さんとお母さんでやっているんだけど、私もたまに手伝ったりするんだ。
ほら、だから新鮮な食材とか食べ物の話でも共通の話題もあって、
もう今ではすっかりの仲良し。
それに琴梨は、どんな話でも真剣に聞いてくれて、一生懸命答えてくれるから、
今まで誰にも話さなかったことも、つい話しちゃうんだよね。
私の一番の親友なんだ。

琴梨とは、仲良しついでに部活も一緒。
ちなみにテニス部。
私が琴梨を引っ張って入部させたんだけど、でも今では琴梨の方が熱心な感じ。
何かに熱中すると「とことん」って性格みたい(笑)
だから上達も早くて、ライバル出現って感じかな?
あとは・・・  )

・・ちゃん、鮎ちゃん、ねぇ、聞いてる? 」
えっ、あ、琴梨、何? 」
鮎ちゃん、また鼻歌なんか歌って、聞いてないんだからぁ。
今度できたお菓子屋さんのことだよ。
美味しいって評判だから、土曜日の放課後、食べに行かない?って
話してたのに。 」
ごめんごめん、ちょっと考え事しててさ。
そ、あそこのケーキ美味しいってね?
もちろん、行くよ!
楽しみだなぁ。
ふん〜、ふぅ〜ん、ん〜♪ 」
じゃ、土曜日で決まりね!
ところで、鮎ちゃん。
いつもその歌、口ずさんでいるよね?
なにかとっても優しい感じがして私好きなんだけど、なんて曲なの? 」
あ、コレ?
私の思いでの曲(^^) 」
へー、思いでの曲なんだぁ。
良い曲だよね、誰の歌?
私、今度CD探してみようかな? 」
ありがとう、琴梨。
良い曲って言ってくれて。
でも、この曲CDとかは出てないんだ。
これはお兄ちゃんの曲なの。 」
鮎ちゃん、お兄さんっていたっけ? 」
あ、お兄ちゃんって言っても、小さい頃、近所に住んでいた2つ年上の人。
いつも遊んでくれて、励ましてくれて、とっても優しかったんだ。
・・・琴梨だから白状するけど、実は私の初恋の相手。
片思いだったけどね(^^; 」
ふーん、そうなんだぁ。
鮎ちゃん、好きな人いたんだ。 」
でも、小さい時の話だよ。
そういう琴梨はどうなの?
好きな人とかいないの? 」
うーん...いないなぁ。
私ってそういうの考えたことないかも? 」
そうだよねぇ。
琴梨は、お子さまだし、それに食いしん坊だから、
いつも食べ物のことで頭いっぱいだもんね(笑) 」
ひっどーい!
そんなんじゃないもん。 」
ゴメンゴメン(苦笑)

それでね、そのお兄ちゃんなんだけど...
お兄ちゃん、歌が大好きでね、私が歌うと喜んで良く褒めてくれたんだ。
そのせいもあるのかな? 私、歌が大好きなのは。
私の夢『歌手』になりたいって思ったのもこの頃なんだ。 」

「鮎ちゃん、歌好きだもんね?
私、鮎ちゃんの声、良く通って好きだよ。 」
ありがとう、琴梨。
今まで『歌手になりたい!』って話すと、みんなにバカにされるから
いつからか誰にも言わなくなっちゃった。
でも、琴梨には話して良かったなって思ってる。 」
みんな、鮎ちゃんと一度カラオケ行ってみれば良いんだよ。
絶対、上手だし、私もああ歌えたらなぁって、うらやましいもん。 」
でも琴梨はその分、料理が上手じゃん?
私、それすっごく羨ましい。
だから小料理屋の夢だって、きっとかなうと思うよ。
私とか、常連さんになったりしてね?(笑)

で、さっきの歌は、その大好きなお兄ちゃんが良く、口ずさんでいた歌なんだ。
お兄ちゃんのオリジナルで、だから曲名も歌詞も無くて。
いま思うとこの歌は、いじめられっ子だった私を元気づけるために
お兄ちゃんが作ってくれたプレゼントじゃないかな?って気がするんだ。 」

うん、きっとそうだよ。
それで優しい感じがするんだよ。 」
ありがとう。
でね、私この曲に歌詞を付けようかと頑張ってるんだ。
川原が作詞なんて笑っちゃうかもだけど、
私が元気づけられたこの曲が、落ち込んでいる他の人を勇気づけて、
優しい気持ちになれば良いなって。
そして、その曲がまた他の誰かに勇気を与えて...って(笑)
あのね、琴梨、実はもう、少し考えているんだ。
まだ途中だけど、聞いてくれる? 」
うん、もちろん
そうなんだぁ、夢かなうと良いね? 」
うん!
えっとね、じゃ


風が揺れているよ...
     :
     :
     :

                             」


[ RETURN ]