第7回日本水環境学会シンポジウム
「風景から水環境保全を考える」


主催   :日本水環境学会・身近な生活環境研究委員会
会名   :第7回 日本水環境学会シンポジウム
期日   :2004年9月13日(月)pm1:30〜5:00
会場   :早稲田大学理工学部 A会場(52-201)
研究集会:55号館第三会議室(pm5:00〜6:00)
            (東京都新宿区大久保3-4-1)


☆アルバム☆


(座長:風間ふたば(山梨大院・医工))

13:00〜13:40   いま、なぜ風景か(主旨説明)
○土山ふみ(名古屋市環科研) 
13:40〜14:20   水環境と風景
○桜井善雄(応用生態学研究所)
14:20〜14:50   風景の歴史的推移−河川を中心に−
○北村眞一(山梨大院 医工学総研)

(座長:風間真理(東京都環境局)

14:55〜15:20   水辺の生きもののいる風景−野川から−
○平井正風(野川ほたる村)
15:20〜15:45   カエルがいる田んぼの風景
○秋山幸也(相模原市立博物館)
15:45〜16:15   農村・里山景観と生物多様性の保全
○百瀬浩(中央農業総合研究センター)


(座長:風間ふたば(山梨大・工)、土山ふみ(名古屋市環科研))
16:15〜17:00   総合討論





 講演要旨

1.今、なぜ風景か(主旨説明) 土山 ふみ(名古屋市環境科学研究所)
  日本の身近な水辺の喪失とその風景の変貌が、生き物の危機との関連で問題とされるようになって久しい。しかし、今も 昔ながらの美しい水辺の風景の変貌はとどまることがなく、生き物の保全に配慮したとされる改修工事が景観を著しく損ない、周囲の環境との調和を欠く事例は極めて多い。
  「生き物」の保全については、「生物多様性条約」の締結や、昨年 環境基準に「生態毒性」としての基準が新たに追加されたように、法的にも守るべきものとして認知された「概念」となった。しかし、「風景」(狭義では、景観・ランドスケ−プ)については、本年6月「景観緑三法」が成立し、守るべき「概念」として認知されるようになったが、水環境保全の現場で論議されることは、まだまだ少ない。その一因には「風景」に関する科学が不足していることが考えられる。
  風景を通して水環境を考える視点は、水環境というものを分野別あるいは要素別でなく総合的に考える視点であり、バランスのとれた総合的な保全対策を行う上で、欠かせない視点である。
  ここでは、「風景」が「生き物」と並ぶような概念、即ち保全すべき「キ−ワ−ド」として広く認知されるため、「風景」を科学の光で照らし、今後さらに風景(景観)保全に向けての論議が深まってゆくことをめざす。



2.水環境と風景 桜井善雄(応用生態学研究所)
  水環境については、これまでその要素である水質、底質、物理的特性(水温、水位。流量、流速及びそれらの変動)、生物群集とその環境指標特性などについて多くの研究が行われ、顕著な成果をあげてきた。しかし、それらの総合的な結果としての人の目に映る水域の景観については、これを水環境保全を考える一つの分野としてとらえて、その内容やそれを環境保全に生かすための理論的な研究はあまり行われてこなかった。この講演ではそのような方向へのてがかりについて述べる。



3.風景の歴史的推移−河川を中心に− 北村眞一(山梨大院 医学工学総合研究部・教育部)
  内容は,河川の風景(景観)の変化とその理由とします.風景保全は水環境の保全と背景をおなじくしているものと思われます.
  江戸末期から明治以降の近代化(西欧の産業革命の導入)で,河川舟運のための低水工事から,防災の高水工事(明治40年,43年の風水害,伊勢湾台風など),産業振興から河川総合開発のダム建設,重厚長大産業の田園地帯への立地など様々に変化して来ましたが,都市内では大火や震災,戦災などで,水辺の公園化,市街地の街路整備,イベントを契機にオリンピックと首都高:日本橋,建築物の不燃化など劇的に変化しました.また技術の進化,超高層,ダム技術など建設技術の発達,国土政策(全国総合開発計画),不況時の失業対策,ウルグアイラウンドの内需拡大,バブル経済,近自然思想の導入など,多種多様なことが起因していると言われています.



4.水辺の生きもののいる風景−野川から− 平井正風(野川ほたる村:NGO)
  野川周辺の風景と水辺の生きものをスライドで見ていただき、風景を構成している環境要素と生きものの関係について述べたいと思います。



5.カエルがいる田んぼの風景 秋山幸也(相模原市博物館)
  宿命的に水と関わり合いながら生きる両生類、カエル。水と陸の両方が無ければ生きていけない彼らの生活を追いながら、生命活動の中で水環境が果たす役割を紹介する。また、カエルのすむ田んぼの風景が、私たちの感性に呼びかけていることの「意味」を探り、風景の中にある機能性や必然性の大切さを考えてみたい。



6.農村・里山景観と生物多様性の保全 百瀬浩(中央農業総合研究センター)
  近年、農村の後継者不足や里山の管理放棄等により、これまで循環的に維持されてきた農村・里山の自然が荒廃し、そこに住む生物の多様性の低下が危惧される状況が指摘されている。農村・里山の生物多様性保全を考える上では、一般に景観スケールと呼ばれる広域的な視野に立った環境の把握と、そこに住む生物の有機的なつながりを理解することが必要である。本講演では、里山生態系の上位種であるサシバ、オオタカ等の猛禽類の生息状況と、生息環境、餌生物などの研究を紹介し、農村・里山の生物多様性保全について考えてみたい。



   

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