かに座の巻







かに座は、星占いで使っている星座なので知らない人は少ないと思います。
5000年も前からあるという古い星座だそうです。ギリシャ神話では化け物の巨大カニとなっています(巨大といっても英雄ヘラクレスに踏みつぶされたとき、気づいてももらえなかったくらいですから、まあウミガメくらいの大きさ?)。
星座の真ん中にはM44=プレセペ星団(写真左)という、肉眼でも見える超大物星団(星の集まり)がどっかりと座っていますから、そのほかはすっかりかすんでしまっています。




なんとなくかわいい三角形=Σ1245
星座のいちばん南のはずれ、うみへび座との境界近くにあるこの星は、むしろうみへびの頭からたどる方が近道です。
薄い黄色に感じるこの二重星は、写真でもだるま状に写っているとおり、わずかに明るさの違うペアです。
そして、この二重星を底辺の中央に置いた三角形が、またなんとも印象的。さらによく見ると直角の頂点に光る星も、小さな小さなお伴を連れた二重星でした。




かくれた大物スター=M67
星雲星団のガイドブックでプレセペ星団を紹介しないものはないのですが、こちらM67は、「M=メシエ(メシエさんという天文学者が作った、彗星と紛らわしい星雲星団のリスト。数字はその登録番号)」の称号を持つ立派な星団にもかかわらず、時々選考からもれてしまうかわいそうな星団です。

でも、望遠鏡で見るプレセペ星団はよほど低い倍率でないと視野からはみ出してしまう上、星の間隔も広がってまばらになってしまいます。
これに比べM67の方は、倍率を上げればそれだけ星が見えてくるような気がするほど、たくさんの細かな星をバックに、明るい星がちりばめられていて、そのすがたが、視野いっぱいに広がっているようすは見ていて飽きません。

特におもしろいと思うのは、月のある明るい夜空の時。星団のうち明るい星だけが浮き立って見えるんです。そしてジ〜ッと見ていると、後ろの暗い星が雲のように見えてきて、ほら、積もった雪が太陽に照らされてきらきら七色に光る!あんなに派手ではないけれど、そんなイメージの美しさがあります。

【訪ね方】α星の東2度のところにあります。明るい星団なので双眼鏡ならα星を視野に入れればいっしょに見えると思います




「淡麗」あるいは「清楚」な美しさの二重星=ι1(できるだけ大口径で!) 「全天最美の重星」とよばれる超有名なペアがいくつかあります(「最」なのになぜかいくつもある!)。 白鳥座β=アルビレオ、アンドロメダ座γ、りょうけん座α星=コール・カロリなどがそれです。
ι1を知った今、これらの星を見ると、なんだかドギツイ厚化粧をしているように見えてしまいます。
その色はうすい黄色(レモンイエロー?)とうすい水色。わからないくらいの薄化粧をした浴衣掛けの女性を見るような、日本人(すこし古い)好みの清潔感あふれる美しさ!。むしゃくしゃすることがあった日の夜など、この星を見ると胸がすうっとしてなぐさめられる気がします。一目惚れですね。これって。

【訪ね方】M44をはさんでα星の反対側にあります。



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