いるか座の巻




いるか座は夏と秋の境目を泳ぐ星座です。
夏の星座は白鳥座やわし座、さそり座、射手座などがその代表ですが、それらの間隙を埋めるように 琴座や盾座、矢座、とかげ座、子馬座、そしてこのいるか座など小さな星座が作られています。 そして北半球で第2の光度を誇るベガのある琴座は別格として、他のどれもが比較的暗い星々で構成されて いることも共通しています。ただその中でいるか座と矢座は、一度覚えると忘れないような印象的な 星の並びをしていますので、けっこう目立つ存在ではあります。

この星座になっているイルカ、もちろんあの海にいるイルカなのですが、星座のお話の中では、あの 琴座に関係しています。
琴座の琴は、ヘルメスが作りアポロンの手に渡りオルペウスに授けられますが、そのため新しい神 ディオニソスに支配されるようになってからも、オルペウスはアポロンを崇拝しつづけ、ついには ディオニソスに殺されてしまいます。そのあと竪琴に殺したオルペウスの首をのせて川に流したのですが、 それが川を下り海に出て、流れ着いた島の住人であるアリオンの手に渡ります。アリオンもオルペウス 同様すばらしい歌い手で、川の流れも止まり、狼も捕った子羊を放したといわれます。
このアリオンがシチリア島で歌ったお礼に沢山の宝物をもらって帰る船の中で、宝物を狙った水夫達に 殺されそうになります。その時、アリオンは「最後の願いに」と竪琴を引きながら海に飛び込みましたが 、これを助け、陸まで運んだのがこのイルカだったといわれています。

それでは、この星座のすみっこで見つけたたちをご紹介しましょう。



天文少年を育てた新星=1967
位置は星座の北のはずれになりますが、実はもう普通には見ることができません。1967年に突如出現 した新星、つまり星が爆発して見え始めたものです。もっとも輝いたときには4〜5等級になったでしょ うか?そのころはやり始めていた天体写真の良い対象になりました。また完全に姿を消すまで数年間かか ったと記憶しています。
中学高校生の天文少年が爆発的に増え、またそのジャンルも「新彗星の捜索」から「天体写真」に比重が 移り始めた時代の忘れられない(個人的に)天文現象でした。


いるかの口先に輝く二重星=γ星
γ星はイルカの頭部を形作る菱形の先端の星です。この星は黄色と水色の美しい色の組み合わせの二重星です。 色の組み合わせが美しい二重星としては、お隣の白鳥座のくちばしに輝いているβ星=アルビレオが有名ですが、 こちらは、それよりやや色の薄いペア。明るさも4等星ですからそれほどではありません。でも、この かわいい海の人気者の小さな星座を飾るにはちょうど良い感じに思えます。アリオンを銀河の岸辺まで無事に 運んで、お礼に宝石をひとつもらった。そんな感じでしょうか。





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