ケフェウス座の巻


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ケフェウスは古代エチオピア(といっても神代の頃の)の王様で、良い政治をした優しく賢い王様だった ということになっています。
でも、こういう人に限って必ず何かよけいな苦労をしょっているもので、彼の場合は王妃(奥様)カシオ ペアがそれでした。
なにせ、彼女が娘アンドロメダの美しさを自慢しすぎたあまりに、海の神の怒りをかい、国土を荒らされ た上に、可愛い娘のアンドロメダまで化け鯨のいけにえに差し出さなければならなくなったわけですから。
でも、この王様、物語の中ではほとんど出番のない超脇役。なのに、 星座の世界では、片足を北極星に固定され、一年中天空を振り回され、「頭を冷やせ」ということなので しょうか、上半身を天の川に入れられている。挙句の果てに、時々地平線に頭をゴンゴンとぶつけられ ているという正に踏んだりけったりの罰を受けております。妻の不祥事は夫の責任、その結果国が荒れた のは王様の責任・・・・。そうはいっても、それってなんだか気の毒ですよね〜。

この星座は、明るい星が少ないため、物語の中の存在同様、あまり目立つ星座ではありません。
でも、天の川にかかる星座なので、星も多く、天の川の中に浮かぶように散らばっている星雲や星団もた くさんあるので、実際のところ、なかなか見ごたえのある星域なのです。


赤さ比べ=ガーネットスターと変光星S

この星座の中で一番有名な星は、たぶん「ガーネットスター」と呼ばれるμ星でしょう。なにせ「赤さ」ランキング 全天第1位の栄冠を握ってはなさい星ですから。
でも、写真を撮ったりしていると時々とても赤く写る星に気がつきます。ここでご紹介する変光星Sは、 表紙の写真を撮影した時偶然気がついたものです。
写真で並べたふたつの星は、同じコマからトリミングし、背景の色をそろえた以外、色の調整はしていま せん。
実際、双眼鏡や望遠鏡で覗いても、S星は、暗い分ほんとうに赤く感じられます。


応援団もにぎやかな二重星=δ(デルタ)星

ケフェウス王がかぶる王冠に相当する部分にある小さな二等辺三角形。デルタ星はこの三角形の鋭角の頂点に輝いています。
明るくて見やすい二重星で、よく見ると明るい方が黄色っぽく、暗い方が水色っぽく見えると思います。もちろん、お隣の白鳥座 のアルビレオやアンドロメダ座のガンマ星ほど強い色の違いではありませんが、その柔らかな色の対比を楽しんでください。
そして、ここは外れとはいえ夏の天の川の流れの中。このデルタ星の近くにもたくさんの星が光っているのが分かります。 それほど明るい星ではありませんので、なるべく低い倍率でデルタ星と一緒に眺めると楽しいでしょう。


雲の中心の3重星=I1396中心部

最初にご紹介したガーネットスターの近く、先ほどの二等辺三角形の短編を挟んでデルタ星の対称の位置あたりに、大きな星雲の印があると思います。
でも、この星雲赤い色をしているのですが、淡すぎて写真でやっと写る位なので「見る」のはちょっと難しそう。ところが星図をよく見ると その中心のあたりに星団の記号が書かれているのが分かります。と言うことでこの中心の正体を確かめようと望遠鏡で覗いてみると、 やや暗い星が明るい星を挟むように配置された三重星のように見えます。さらに大きな口径でこの星を見ると少しにじんだように見え、 星雲の一部が見えているような気がします。


地味〜な散開星団=NGC7160

この星団はガーネットスターから2度ほど北の方にいったところにあるν(ニュー)星の北北東2度ほどのところにあります。 ケフェウス王の首の付け根あたりといったところでしょうか。
写真をご覧になれば分かるとおり、星の数が10個あるかないかといった少なさと、細長い星の分布が特徴です。
天の川の中にはたくさんの散開星団の記号が記されていますが、このような星数の少ないものも結構たくさんあります。たくさんの 星が密集した星団も見応えがありますが、個人的にはこういった小家族的な星団がお気に入りです。


このほか、ケフェウス王の膝にあたるγ星も明るく見やすい二重星ですし、星図に記されている重星記号の付いた星は、 たいてい見やすい重星である場合が多く、冒頭書いたとおりこの星座は、存在が地味な割に見所の多い、穴場的な星座といえます。



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