オリオン座の巻




オリオン座は知らないひとがいないほど有名な、冬の夜空を代表する星座です。
ベテルギュースとリゲルという2個の1等星を縦長長方形の対角に配置し、その中央にはほぼ等間隔、等光 度の3個の星(三ツ星)がおかれている姿は、星座を知らなくても印象に残るものでしょう。現に古墳の内 壁にも描かれていたことを記憶されている人も多いと思いますが、当時の日本人が「オリオン座」として描 いたわけではありません。

オリオンは海の神ポセイドンの「種」を大地に埋めて10月後に誕生した巨人で、生まれつき容姿と体力に 恵まれていた上、ポセイドンからさまざまな超能力を与えられていました。そのため天上の女神たちの間で も超人気者だったといいます。

星座絵では、右上の角を振り立てる牡牛座に、ししの皮の盾と棍棒で立ち向かい、牡牛の後ろでおびえる プレアデス姉妹を救おうとしている勇者のように描かれています。
しかし、牡牛座の牛は最高神ゼウスが美しい娘エウロパ(ヨーロッパの語源)をさらいにいったときの化身 ですから、棒で殴ったりしたら知らないではすまないとんでもないことになってしまいます。

実は、この星座の配置、美しいプレアデス姉妹をナンパしようとして追いかけるオリオン(森の中を7年も 追いかけまわしたんですって!とんでもないやつ!)を、ゼウスが見かねて牡牛に変身して間に割って入り、 追い払おうとしている図と見るのが正解なのです。
左手の「盾」だと言われている星列を結んでみたら「洋弓」のようになりました。もともとは案外 弓を持った猟師の姿だったのかもしれません。

この星座には、先ほどもあげたとおり2個の1等星があるという、星座自体の豪華さのうえに、「オリオン座の大星雲」 (=M42 左の写真)という巨大スターが居座っていますから、他の星や星雲などは案外知られていないもの が多いようです。



まとまらない散開星団=NGC2169
ベテルギュースの北東、こん棒を持って振り上げた腕のひじのあたりにある、オリオン座のなかでは数少ない星団のひとつです。
この星団の特徴は「まとまっていない」こと。見方のよってはひらがなの「い」の字のように左右に分かれているようにも、 あるいは真ん中が抜けた輪っかのようにも見えるような星の分布をしています。


オリオンの「保安官バッチ」
オリオン座の左上の1等星は赤い色をしたベテルギュースと言います。このベテルギュースの右下1.5度のところに52番星という 二重星があります。この星から真南にちょうどベテルギュースまでと同じ位離れて小さな二重星の記号があると思います。
この二重星が、写真のいちばん左側の星です。「保安官バッチ」はこの二重星を含めた大小5個の星でできています。
写真では他にも暗い星が見えていますが、肉眼ではこの五角形がとても印象的に見えます。では、なぜ五角形が保安官バッチかといえば、 きっと西部劇に夢中になった世代でないと思い浮かばないかもしれませんね。



ウルトラマンのふるさと!?=M78星雲
「ウルトラマンのふるさと、M78星雲を見せてあげよう」と言うと、「えっ、ほんとにあるの?ウルトラマンいるの?」 と言うのが夢のある良い子。「あるわけねえジャン」と端から信じないのが普通の子。でも、ほんとにある んです、M78!。それもこのオリオン座に。
左の写真がそれですが、分かりにくいかもしれませんが星にまとわりついている雲のようなものです。
本体は左側のふたつの星を取り巻く雲ですが、右の赤っぽい星のまわりも取り巻いています。望遠鏡で見ると 左側のふたつの星が、ちょうどウルトラマンの目、周囲の雲が頭に当たります。写真でもなんとなく右下に視線を向けて いるウルトラマンの顔(仮面ライダー=アマゾネスにも見える…)がわかると思います。
ζ星から北にしばらく行った所にある、星がなくてポッカリと穴のあいたような空域のなかに浮かんでいます。



見やすいのに見てもらえない星雲=IC435
同じく左の写真で、ζ星の左に写っている星雲がIC435。(申し遅れましたがζ星は「三ツ星」のいちばん左側の星です)
空の澄んだ場所なら口径10pくらいの望遠鏡で見ることができる、比較的明るい星雲です。にもかかわらず オリオン座大星雲を見た後、この星雲には目もくれないで行ってしまう人が多いのは、最初から「見えない」と思いこまれて いるからなのでしょう。
写真でも左右に分かれているように見えていますが、肉眼やアップした写真で見ると、この分けている黒い筋がさらに枝分かれして、 ちょうど葉っぱの葉脈か鳥の羽根のように見えてきます。



見えにくいのに見やすいと誤解されている二重星=ζ
前項で紹介したIC435の目標としてふれた三ツ星の一番左の星ζ星ですが、こちらも綺麗な二重星なのですが、 やはり見過ごされてしまいやすい星のひとつでしょう。
といいますのも、離角が2”ほどありますのでそれほど見にくく思えないのですが、ニ等星という明るさと、冬の空気の乱れのために なかなか別れて見える機会が多くありません。その上、ちょっと眺めると少し離れたところに小さな星があって、 それが相棒だと誤解してしまうことも多いようです。ところが実はζ星は、ギュッとくっついて離れない超仲良しの ペアだということを知っていただきたいと思います。
そしてこれからしばらくは、この星を起点にすると探しやすい星雲や星たちのご紹介です。



見えにくいのに名前ばかりが知られている=馬頭星雲
暗黒星雲って聞いた事ありますよね?。この馬頭星雲はその最も有名なもののひとつでしょう。
左の写真の赤い星雲に食い込んだ黒い影がそれで、もう少しアップして写すと「馬の首」に見えてきます。
この星雲(の輪郭)を肉眼で見るのはなかなか困難で、「50cmでは分からなかった」という報告を聞いた事があります。
ζ星のすぐ南にひろがっています。


見やすいのに見てもらえない多重星=σ
次は、見やすいのになかなか見てもらえない星たちのご紹介。
このσ星は、上のζ星右下に光っている明るい星なのですが、近くの馬頭星雲を見に来るお客様はいても なかなかこちらに目を向けてくれるお客さんはいないようです。
でも、写真をご覧になればおわかりのとおり、中心のσ星はナント4重星!(ホントは5重星なのだそうですが、 わずか0.3"しか離れていないので普通の望遠鏡ではまったく歯がたたない)。夏の星座「や座」のミニチュアのような星の並びの 羽にあたる所には、もうひと組3重星があって、矢の先端の星とあわせて8つの星の並びを楽しむことができます。



リゲルの陰になって見てもらえない4重星=τ
リゲルはオリオンを飾るふたつの1等星のひとつ。傍らに小さなお供の星を従えていることでも有名です。
このリゲルの北東(向かって左上)に光っているのがτ(タウ)星です。
この星、ちょっと見ると明るい主星をはさむように左右対称にふたつの小さな星があるのが分かります。 ところがさらに注意してみると、その一方の星が、実はふたつの星なのです。以上占めて4重星!というわけです。
青白色の巨星リゲルと小さな伴星との対比も見事ですが、τ星のヒミツっぽい見え方もなかなか楽しいものです。 (写真に撮ると差が大きく見えますが、実際の見え方とはずいぶん異なります)



双子座から探した方が早い「お猿の顔」星雲
オリオン座の北のはずれ。振り上げたこん棒の真ん中くらいのところにあります。写真を薄目を開けるようにして眺めていると、左側を向いた孫悟空のようなお猿の顔が見えてくると思います。微笑んでいるような耳まで裂けた(と言ってもサルの顔ですからそんなに不気味ではないです)長い口元も見えますでしょうか?
外国の愛称も「モンキー・フェイス」。日本では呼びにくいので単純に「モンキー星雲」と呼んでいるようです。
冬の星雲星団の中では人気者のひとつですが、実際この星雲を肉眼で見るのは先にご紹介した馬頭星雲と同様至難の技でしょう。でも、写真だと結構良く写りますからお験しになってください。
探し方はオリオン座からより、双子座の足元から探した方が早いと思います。






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