たて座の巻



たて座は「盾座」と書くとおり、いくさで使う盾の星座です。
でも、この星座は、ギリシャ神話に登場する人物のものではなく、1683年にトルコ軍がウィーンの都に攻め 込んだとき、これを撃退したポーランド国王ジョン・ソビエスキーをたたえて、1690年にヘベリウスと いう天文学者が作った新しい星座です。
ヘベリウスが「星空のいちばん豪華な部分を切り取って献上した」というほど、ヨーロッパで見える天 の川のいちばん濃い部分(たぶん。天の川がいちばん濃いのは、いて座の部分ですが緯度の高いヨーロ ッパからは見えにくい?)を占める星座です。
そんな、天の川のこのあたりは、「スモール・スター・クラウド」とも呼 ばれていて、天の川の「観光地」のひとつ。
この巻の写真の結び方は、星座を結ぶというより、この星座の範囲を示そうとしています。実際、ヘベ リウスさんがどんな盾を思い描いていたのか、どうしても浮かんできません。
また、星座の位置も、星占いで有名ないて座と、七夕の牽牛星があることで知られるわし座にはさまれ た所にあるので、そんな所に独立した星座があるなんてあんがい忘れられているのではないでしょうか。 まして、天の川を見る機会すらまれになってしまったわれわれ現代人にとって、「天空のいちばん豪華 な部分」など、そこに想像することすらできなくなっていますよね。
それでも、望遠鏡を使えばそこはそれ、みどころはもりだくさん!


天空の高山植物「 ソライワカガミ」=M11
M11は、散開星団という数百個の星の集団なのですが、そのなかでも星の数が多くしかも密集していて 見ごたえがあることで知られた星団です。
ところで高山植物の「イワカガミ」、ご存知ですか?濃いピンクや白い色の花で、おもしろいかたちをし た高山植物なのですが、図鑑などで調べてみてくださいね。
この星団を、そのイワカガミに見て「ソラ(空)イワカガミ」と名づけたのは、特にお願いしてリンクさせていただいている  ふうら美術館 のオーナーの泉井さん。
同じくらいの粒の細かな星がまあるく散らばって、それを数本のの黒い筋がいくつかに分断しています。 星団の中に1個と少し離れた所に2個、明るい星があってしゃれたワンポイントになっています。(写真)
口径の小さな望遠鏡では、星団全体の姿がイワカガミの花を横から見たかたちに、大きな口径ではイワカ ガミの細かく裂けた花びらの先に、岩からこぼれた清水の水滴がついて輝いている様子が、たしかに 浮かんできます。


赤い変光星=S
M11の南1.5度ほどのところに「S」と書かれた変光星の記号があります。
M11を見たついでにチョット覗いて見て濃い赤い色(と言っても橙色系なんですが)を楽しんでください。


お伴は小さな 赤い星=δ(デルタ)
もうひとつ赤い星のご紹介。
Sから西へ進むとε星、その南西の星がこのδ星です。δ星自身は青みがかった白い星ですが、よく見ると 少し離れて小さな赤い星があるのがおわかりになると思います(ずっと暗い小さな星です)。 Sとはまた違った赤い輝きをδ星の青白い輝きと一緒に味わってください。



お次は レモン色の星=無名
次は、マイナースターを紹介する当HPにふさわしい「無名」のお星様です。
デルタ星から今度は南東に進むとM26という星団があります。これはほんとに小さな星の集まりですが、 それを南に下がっていくと二重星の記号が二つ並んで続いています。
南側の星には「Σ2273」という名前があるのですが(この二重星はほんの少し明るさと色の違う星 のペアですよ〜)北側の星には名前がありません。
この星がご紹介したい「レモン色」のお星様。
この重星は分離してみることができないのですが、きっと二つの星の色が混ざってこんな色になっ ているのではないかと想像しています。


透明な球状星団=NGC6712
さて、ここでいったん先ほどのδ星の戻りまして、今度は東に2〜3度進みますと球状星団の記号があって「6712」と 書かれていると思います。
球状星団は、おむすびのようにギュッと固まった星の集団で、ふつう中心が明るい(集光してる)のが特徴です。 でも、こちらの球状星団はその中心がほとんど分からず、全体がふわ〜っとした感じで浮かんでいます。それでこんな名前をつけてみました。



小さな「アルビレオ」=Σ2313
アルビレオは白鳥座のくちばしに輝く「全天最美」の二重星のひとつですが、こちらのΣ2313は、 その豪華さとは比べ物にならない小さな二重星。でも、目を凝らして、よくその色を観察すると明るい ほうが濃い黄色、暗いほうが薄い青。そう、そっくりとは言いませんが色の対比は似ています(と、思いたいのですが・・・・)
星座の北西のはずれ、天の川からも少し外れたところで小さく光っています。(見てあげてください!)





もくじ 表紙