ヴィノテーク1992年3月号に掲載されたワイン会の様子です。

VINOTHEQUE PLAZA

ポムロールはメルロに限る

1992年1月26日、日曜日、正午、「マジカル・ミステリー・クラブ第19回の例会」が行われた。
テーマはポムロール特集。

まず白ワイン3種でウォーミング・アップ。
最後に登場したピエール・モレイのバタール・モンラッシェ1988には誰もが感服。
白ワインにもこんな複雑な香りもあるのかと改めて感動させられた。
もちろんまだ若く、4〜5年先に楽しみたいワインである。
睡眠不足で今まで寝ていた常連のH氏(1月号P.17の3番目に登場した人)もようやく目を覚まし、赤ワインへと移った。

いきなりブラインドである。
濃い赤紫色から若いグッド・ヴィンテージであることが想像できる。
土、フルーツ、ヴァニラなどの複雑な香りと濃縮された果実味があった。
今飲んでもうまい。正体を明かすと『CH.オー・トロショー1988』。
ペトリュスとトロタノワの中間に存在し、最近日本に紹介されたワインである。
文献によると100歳を超える葡萄樹も植えてあるとのこと。メルロ100%。
☆☆(☆☆)

次は、今注目のシャトーであるCH.ラ・フルール・ド・ゲイ1982
CH.ラ・クロワ・ド・ゲイの古い葡萄樹のメルロ100%。
すべて新樽で造られ、この1982年が最初のヴィンテージである。
オレンジ色の縁、薄くて茎っぽい味。早く熟成したワインであった。
☆☆☆

このワインと比較試飲したのが同じヴィンテージのCH.ル・パン1982
暗いルビー色。
静かにグラスを鼻に近付けるや否や、いきなり果実香とヴァニラ香が一緒に襲いかかって来た。
「凄い!」思わず声が出る。
豊かで、大きく、厚みがあり、甘みがあり、飲み頃。
パーフェクトに近い。
昨年、この会でCH.ル・パンのヴァーティカル・テイスティング(1981〜1987)が行われたが、唯一集められなかったのがこの1982年であった。
幸い、シカゴ・オークションより180ドルで手に入れることができ、こうしてテイスティングできた人たちはなんて幸せ者なんでしょうか。
☆☆☆(☆)

CH.ル・パン1982をグラスに半分残したままワインは次へと移った。
ここで古酒が登場した。
シャトー・ルジェ1943である。
ポムロールの古酒を探すのはペトリュスを除いて困難であるが、このCH.ルジェの古酒は比較的容易に見つけることができ、
しかも手頃な価格で手に入れることができる。
古酒を飲みながら、その古めかしいボトルを観察するのもなかなか乙なものである。
赤ワインにしては珍しく透明の瓶である。
若干緑色を帯びている。
『ラムネ』の瓶の色である。
液面はコルクより数センチの高さまであった。
おそらくリコルクされているものと思われたが、コルクにはその記載がなかった。
まだまだ健全な色をしており、エレガントな味わい。
確かに若いニュアンスがあり、新しい血が混じっているようである。
ここでH氏は怒鳴る。「今日のルジェは1947に代えるべきだった。」
☆☆☆

次は、CH.ラ・フルール・ペトリュス1970とCH.プランス1970である。
ラ・フルール・ペトリュスは少々鋭角なところが気になったが、繊細でなかなかチャーミングである。
土壌の関係からなのか『鉄』のような味もあった。
この年のラ・フルール・ペトリュスはメルロが50%ど例年(80%)より少ない。
メルロの好きな者にはちと寂しい気がする。
☆☆☆

意外と健闘し、静かに晩熟期を過ぎ『紅茶』のようになり始めていたのがCH.プランス1970であった。
瓶詰は英国のCorney&Barrow社。
☆☆☆

最後にCH.ペトリュス1974とブラインド・テイスティング。
雨の多かった1947年のペトリュスは軽く、植物のようで、本来のあの雄大な姿はみられなかった。
1973年のような優雅なレヴェルには残念ながら達していない。
☆☆

最後のブラインドはCH.レグリーズ・クリネの1974年。
当然銘柄を当てる者などいなかった。
あまり喜ばせてもらえないワインだなあと思いつつ、ル・パン1982年のグラスに戻った。
☆Avoid

締めくくりにCH.ド・ファルグ1985で幕はおりた。

陽気なカベルネ・ソーヴィニヨンに比べてやさしく威厳のあるメルロ。
やはりポムロールはメルロに限る。

<MR.POMEROL>

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