2000年5月号

01)地域型シンクタンクの可能性
02)なんにもないから なんでも出来る=蕪栗沼方式=
03)ほら吹き大会
04)ふつうが一番=山村遊学で感じること
05)まちづくり政策フォーラムニュース
06)都市農村計画研究会第4回シンポジウム報告
07)研究会報告
08)編集部だより



01)
地域型シンクタンクの可能性
まちづくり政策フォールム代表理事 増田 聡

盛んになりつつあるボランタリー活動や市民活動が、個人的な想いの実現や異議申し立てから、政策
提言・市民事業へと発展していくためには、活動の継続性や効率的なマネジメントを確保した上で、 政策提言の能力を高めていく必要があります。しかし現状では、そのための事前評価(現状把握と問 題抽出=ニーズ・アセスメント)からプランニング(代替的な対応策の策定・選択)、事後評価にいたる 検討を市民セクター自らが十分には担い得ない状況にあります。日本のシンクタンクでは、機構的・ 財政的にも官庁や企業などに依存するケースが多いため、地域の市民活動を支援し、エンパワーメ ントしていく装置として「地域型シンクタンク」が構想されています(NPO政策研究所[1999] 『コミュニ ティ・シンクタンク研究中間報告書』、http://www.jca.apc.org/npa/comtak2.html )。まちづくり政策フォ ーラムでも、そのような機能を充実していくべきと考えています。
○まちづくりのためのアクション・リサーチの場
コミュニティ心理学や臨床社会学、教育学等の分野で、「アクション・リサーチ」という方法が改めて注 目されています。元々は1940年代に導入された概念で、「今、この場所で起こっている問題を緊急に 解決すること」と、「そのような問題を経験している個人や組織、コミュニティ等が構成している社会シ ステムを科学的に理解すること」という2つの要請を一体のものとして捉えて、実践と理論の間の緊張 関係を保ちながら両者の統合を目指すというアプローチです(言語教育を扱った文献の翻訳ですが、
http://home.hiroshima-u.ac.jp/katoken/translation.htmが参考になります)。実験室的・仮説検証型の 研究スタイルの限界を感じた研究者が、実際のサービス提供者やコミュニティー・メンバーとともに活 動し、そこから得られたデータを通じて、活動の結果がもたらした変革を解釈・研究をすることを目指 しています。心理学・社会学の領域では「リサーチ(分析や評価)→アクション」という力点のシフトがあ るのに対して、元々、居住・生活環境の改善からスタートした「まちづくり」の領域では、「アクション(個 別対応)→リサーチ」という方向を考える必要があるのかもしれません。

○変革のためのコミュニケ−ションと参加の場
行政等の組織が市民参加に心から共鳴するのをためらう理由は、時間・金銭・労力等の資源を無駄 にしたくないという考えにあるようです。その結果、選択肢の数をあらかじめ制限し、いつでも実施に移 せる段階になって初めて同意を得やすい人たちにのみに参加を求めるという方略が採用されてきまし た。しかし実際には、自分たち自身で変化を創り出したという感覚が重要です。ただ、すべての人がこ のような運動やプロジェクトに参加したいはず、あるいはすべきであると考えるのには無理があります。 参加しない人を非難するのは簡単ですが、関与しないことを選択する権利も尊重する必要がありま す。結局、このような活動に携わっているのは少数で、その活動の影響を受ける集団や一般住民を代 表していないとすれば、残念ながらそこで出された解決策は実行可能ではないし、受け入れられるも のにはなりません。「できるだけ具体的な提案を、そのような変革が必要な理由ともに、易しい言葉で 多くの人たちに伝える」能力が重要となります。「コミュニティにイノベーションを普及させようとしてい る人は、ときには優雅な敗者になることを学ぶ必要がある(Fairweather&Davidson[1986])」という示唆 も忘れてはなりません。
また、コミュニティのなかのグループ間で、土地利用といった資源の利用を巡る対立があったり、当事 者が持っている価値基準や権限、関心の強弱の違いのために、コンフリクトの解決が難しい状況が続 く場合があります。このような対立の解消を目指す中で、新しいプラスの変革が生まれる可能性も生 まれるはずです(コミュニティ調停プログラムや、まちづくり条例の制定など)。

○相互コンサルテーションの場
コンサルテーションの理論では、「コンサルテーションとは、他者(クライアント)に対してサービスを提 供する責任を有する個人やチーム(コンサルティ)が、彼らのクライアントに対して、よりよいサービスを 提供するための助けとなるような特定の専門的知識を持つと思われる他の者(コンサルタント)に、自 発的に相談をする過程」と定義されています。元々、教育サービスを生徒(=クライアント)に提供する 教師(=コンサルティ)が、教育心理学者(コンサルタント)に相談するというようなケースを想定してい るわけですが、「まちづくり」の現場を見ると、福祉や教育のようにサービス提供の目標と対象が明確 な場合を除くと、専門家の介入という図式は必ずしも適合的とは言えません。「まちづくり」の専門家 自体も職能として確立していないこと、多くの計画づくりの現場で行政サービスの提供者=コンサル ティと専門家=コンサルタントが中心で、サービス利用者=クライアントの視点が欠けていること等を 考えれば、多様な関心で「まちづくり」に関わっている諸集団や個人がアイデアや資源を共有し、相互 にコンサルタント−コンサルティ関係を結べ、あるいはクライアントとしての立場からの発言を行えるよ うなネットワークが必要と考えられます。

計画づくりの現場においてプランナーは、アドバイザー、権利擁護者(advocates)、あるいは意思決定 者として参加することが想定されています。彼ら自身の倫理規定を定めている American Institute of Certified Planners(1991改訂)「Code of Ethics and Professional Conduct(http://www.planning.org/ abtaicp/conduct.html)」では、公衆(パブリック)と、依頼主あるいは雇用者とのそれぞれに対するプラ ンナーの責任について記述しています。行政内外を問わず、このような活動に関心のあり方は、参考 にしてみて下さい。


02)
なんにもないから なんでも出来る=蕪栗沼方式=
ひたかみ編集部

田尻町は、仙台市の北方約50km、古川市の北東に位置し、東西15.3km、南北9.5kmの広がりを持った 自然豊かな町である。町の6割が水田等の農用地で、古くから良質を誇る田尻米を中心として肉用 牛の生産や、近年は多くの農産加工品が出されており、農業を基幹産業とした緑豊かな農村地帯で ある。
編集部がはじめて蕪栗沼を訪れたのは、昨年12月。「水辺里山空間研究会」のシンポジウムに向け て、パネリスト依頼のためだった。その時、蕪栗ぬまっこくらぶの幕田晶子さんに蕪栗沼を案内してい ただいた。
「国内有数のマガンの越冬地である蕪栗沼」と言う説明に、失礼ながら、すぐ近くの伊豆沼の白鳥達 の風景を見慣れている者にとっては、華々しさがなく、物足りなく感じた。しかし、その沼に、町、小学 校、学術研究者、農業関係者、そして、NPOが絡んでいることを知り、大いに興味、関心を抱いた。そ して、「蕪栗沼水辺の楽校プロジェクト」の会議に出席する機会をいただき、今年秋に開催される CEPA(アジア地域における湿地教育普及啓発国際ワークショップ)国際会議にも、「水辺里山空間研 究会」のメンバーがスタッフとして参加することとなった。外部のものを柔軟に受け入れ、組織拡大を 展開する蕪栗方式は、連携、パートナーシップを追及する地域づくり関係者にとって、非常に参考に なる。これまでの経過を追ってみることとする。

鳥と人とどちらが大切か
蕪栗沼は、田尻町の北端、旧迫川の自然遊水池。蕪栗沼の周囲は白鳥地区とともに、もとは広大な 大湿地が広がっていたが、開墾で徐々に狭まり、蕪栗沼だけが残った。もとは、低湿地だった周囲の 水田は、たびたび大水害に見舞われ、1970年度には、治水を目的に県の遊水地事業が始まった。
1972年ごろには、沼を掘削する計画が持ち上がったが、「沼は、縄文、弥生時代の土器が発掘される 歴史的な文化財産だ」と、当時の峯浦町長が訴え、その時点での計画はなくなった。
その後、学術研究者、自然保護団体などが、豊かな湿地にしか生息しないガン類が30,000羽以上、 生態系の頂点に立つワシタカ類が18種、また絶滅の恐れがあるレッドデータブック記載種の鳥類33 種、植物5種、魚類2種が記録されている沼の価値に注目し、1983年には、法的規制が検討される が、「鳥と人とどちらが大切か」の農業関係者の声に押され、鳥獣保護区指定などに向けた機運は逃 す。農業関係者にとっては、ガンは、稲穂をついばむなどの食害をもたらす「害鳥」なのである。

2人の出会い
1996年、再度、全面掘削計画が表面化されたのを契機に、自然保護団体などの反対運動が高まっ た。この時、計画にいち早く反対し、沼の保全を訴えていた“日本雁を保護する会”会長の呉地正行さ んは、遊水地事業のため撤退を求められていた沼の東側・白鳥地区の耕作者代表だった千葉俊明さ んと知り合う。2人の出会いは、地元住民や学術研究者らを巻き込み、その後の保護活動の母体とな る「蕪栗沼探検実行委員会」の結成につながる。「地域の人が主体となって沼を守っていきたい」と考 える呉地さんに、千葉さんも賛同し、蕪栗沼の自然環境を保全したうえで、遊水地機能も果たし、か つ農業関係者を含む地域住民に恩恵をもたらす方法の模索が始まった。

1996年5月「第1回蕪栗沼探検隊の集い」が開催され、自然、水質、土木工学及び環境問題の専門 家、地元の農家と自治体関係者、議員など約40名余りが参加した。また、これと前後して、参議院環 境特別委員会で、建設省が「沼全体を大幅に掘り下げる工事実施の予定はない」と答弁し、事業主 体の宮城県も「全面浚渫の必要がない」という見解をはじめて示した。
それぞれの場で
その後田尻町では、蕪栗沼の環境保全と農業の共生を目指して、NPOによる自然体験活動に対する 取り組みが行われている。
「日本雁を保護する会」と地元のNGOである「国際田園研究所」は地元の小学生とその両親を対象に 「蕪栗沼親子探検隊」を毎年開催。さらに蕪栗沼の自然を紹介した巡回パネル展示、シンポジウム等 の開催により、次第に地域住民の関心が高まっていった。

1997年2月には宮城県河川課主催の「蕪栗沼遊水地懇談会」ができ、地元、自然保護、学術、農業、 町及び県(河川及び環境保全)の関係者が参加。2000年3月を目標に制定される蕪栗沼維持管理計 画を議論。第2回目の懇談会には「日本雁を保護する会」が作成した要望や希望も含めた「蕪栗沼管 理計画(案)」を提出し、その実現が待ち望まれている。

そして、企業や教育機関も関心を持つようになってきた。企業による「水田農業とガンの共生」活動へ の助成や、空中撮影への無償協力、宮城教育大学実践教育研究センターによる蕪栗沼の自然を活 用した環境教育の実践、さらに監視カメラを県が設置するなど、湿地環境保全への取り組みは輪を 広げている。
また、地元の小学校においては、クラブ活動の一環として蕪栗沼探検隊や学年PTA行事として子ど も自然観察会や環境教室、バードウォッチング等が開催されている。

1998年、次世代の子どもたちが蕪栗沼というかけがえのない「宝」を伝えていくことを主たる目的とし て、地元住民を中心に「蕪栗ぬまっこくらぶ」を結成。沼の生物相の調査や、農業との共生に向けたさ まざまな具体的取り組みを行いながら、蕪栗沼の管理計画案や、沼を活用したまちづくりの提案など も行っている。

地元での認知
・農家との共存
1997年11月には、沼に隣接する白鳥地区水田の耕作撤退問題が解決した。それにより、50haの水田 が沼に復元されることになり、沼の面積が1.5倍になった。こうして、白鳥地区の湿地復元により蕪栗沼 は、野鳥生息地としてや、多種の植物が分布するなど、湿地の自然度はさらに高まった。
農家も、鳥か、人かという対立の関係から、遊水地計画を受け入れる姿勢となった。無農薬や、有機 農法による農作物を消費者が望む近年、農家にとって、地域全体の自然環境が良くなることは、環 境保全米等への取り組みを強くアピールできるからだ。
1998年から99年にかけての冬期からは、蕪栗沼の水鳥を分散させ、水鳥と共生させた米作りを行う試 みが、地元農家の協力を得て開始された。沼から7〜8km離れた水田8haに冬期間湛水し、湿田状態 にしたところ、最大で200羽を越えるハクチョウ類が利用するようになり、ガン類もその周辺に定着、湛 水水田を利用する群れがみられるようになった。こうして、「農業と水鳥との共生」に向けての第1歩が 踏み出されたのである。

国、県、町もこの取り組みに対してより強い関心を示すようになり、水辺を自然体験や自然学習の場と して活用する「水辺の楽校プロジェクト」に町が取り組むことを決め、具体的な検討を開始した。各方 面の視察も相次ぎ、治水関係者のみならず、農水省構造改善局の「生態系に配慮した圃場整備手 法検討会」、日米渡り鳥条約会議社参加者、そして宮城県知事の視察などが行われた。

最近では、農業自体が環境を作りだしているという観点から、町としても、農家に対して環境保全型 農業を啓発している。

また、「たじり穂波公社」の果たす役割も大きい。
たじり穂波公社は、1998年3月に制定された田尻町農業振興ビジョンにおいて、町の基幹産業である 農業を盛りたてるために農業開発公社設立の必要性がうたわれたのを受け、田尻町、みどりの農協、 農業者関係、商工業者関係、一般住民が出資し、同年10月に設立し、1999年4月から事業を開始し ている。
公社では、グリーンツーリズム事業の一環として町内外の消費者を対象に、田植え・稲刈りツアー、 手作りソーセージ体験、アイスクリーム作りなど各種体験ツアーを企画、実施している。
これからの時代は、行政だけではなく、住民が主体的にまちづくりに取り組むべきと考えるたじり穂波 公社は積極的に、NPOとの協働に取り組んでいる。
「Theかぶくりサークル」

蕪栗ぬまっこクラブでは循環型まちづくりのイメージ図として「Theかぶくりサークル」を提案している。
1「地域を構成するさまざまな主体の参画によるまちづくり」
地元住民、町の主幹産業である稲作を担う農業関係者、子どもたちと教育関係者、それらを統括す る地元自治体やコーディネーターとしての公社、企業(地元中小、大手)、議員(国・県・町)、NPO(蕪栗 ぬまっこくらぶ他)等のあらゆる主体が「蕪栗沼」を地域の宝として認定し、それを活かしたまちづくり に何らかの形で参画することを基本としている。
2「これら主体間のネットワーク化」
蕪栗沼という材料を各主体が各々の得意分野を活かして「商品化」し、さらに関係主体との間でその メリットを共有し、一方でデメリットを補完しあう。このような「円環と調和」こそがバランスのとれたまち づくりを目指すうえで重要と考えている。また、こうしたさまざまな主体が一堂に会して蕪栗沼につい て話し合う場として「蕪栗沼遊水池懇談会」が宮城県河川課によって設けられている。
3「国内・世界に対する活動の積極的アピールとネットワークの構築」
沼の生き物の観察と農村文化の体験をセットにしたグリーンツーリズムを行ったり、国内外からの視察 要請に積極的に応じるようにしている。また、1999年5月にコスタリカで開催された第7回ラムサール条 約締結会議において、蕪栗沼での地元住民が中心となった湿地保全の取り組みを紹介し、国際的に も高い評価を得ることが出来た。
4「将来目標を掲げた取り組み」
10年後や100年後の町をイメージし、その実現のために必要なことは何か、既に実行したことと今後す べきことはなにかを抽出する。そして、実行時期に合わせて優先順位を決めて計画を立案し、それを 着実に実行していくことが大切であると考えている。
蕪栗沼に関わる大半の人がその自然価値について、共通した認識を持つ必要があり、その価値を活 かした活動を各団体相互に連携を強化しながら、協調して自然体験の取り組みが期待されるところ である。
(蕪栗ぬまっこクラブ 香川裕之記)
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何もないから、なんでも出来る
蕪栗沼の魅力は、その歴史的背景、自然的資源だけにとどまらない。
今回は、“蕪栗沼”をめぐる動きと、蕪栗ぬまっこくらぶによる新しい考え方を紹介したが、何度か取材 に伺い、多くの人たちにお話をいただいたうちに、田尻町の魅力は、蕪栗沼だけにとどまらず、人々の 思い、希望が、必ず実現できる懐の広さにあるという思いを強くした。直売所を開いている農家の奥さ ん達、自宅の蔵を改造してレストランにした農家、など、元気な人たちと出会えた。聞くと、町で は、“海外研修”を10数年行っており、町の人たちにも、広い視野で考えられる素地づくりが出来てい たことがわかった。
蕪栗沼の魅力とはなにか。それは、それぞれの人がやりたいことを実現できることだろう。特別に大儀 名分を振りかざすことなく、自分の生活をもうちょっとよくしたい、そう願う人の希望が叶うところにある と思う。
今後は食害被害補償制度の整備し農業と渡り鳥との共生を目指すこと、そこにくらす人々の物語を付 加価値として他の地域との差別化を図り有利に農業生産物の販売や特産品の開発を行うことが期待 される。
これからも、田尻町の動きを大いに参考にしていきたいと思う。 文責 芦立

<取材協力>
田尻町
たじり穂波公社
蕪栗ぬまっこクラブ



03)
ほら吹き大会 水口正之

いつも楽しい通信を送ってくださる北海道滝川市の水口さん。
4月には、「ほら吹き大会」を開催したという情報をいただいた。編集部では、水口さんに電話で近況を 伺った。

♪こんにちは、水口さん。ほら吹き大会って、どんなことをしたんですか?
☆滝川市議会議場を会場に、「第19回世界ほら吹き大会」を開いたんだね。道内の他、青森や、静岡 からも参加し、傍聴席にむかって、大ボラを吹いてもらったんだよ。7分の制限時間内に「私はクレオ パトラの35代目だが美人も型崩れしてきた」「増毛町産の日本酒を塗ったら毛が生えた」なんて、奇 想天外な話が次々と飛び出たよ。優勝したのは「私はかぐや姫で、2000年に月と地球の友好条約を締 結します。虹やオーロラで橋を架け『ハネムーン・オン・ザ・ムーン』という新婚用のパック旅行を作りま す。」と大ボラを吹いた小樽の女性だったね。

♪おもしろそう!そんなことを考えたきっかけは?
☆この頃、世の中って、まじめがいいこと!って風潮が強くて、遊び心が少ないような気がするんだよ ね。制度ばかりが先立ってしまって、人間が本来持っている柔軟さ、したたかさが失われていくような 気がする。なんでもいいから、地域の人が関われるようなことって必要だと思うし、いろんな人が、気 軽に関わって欲しいんだよね。だから、4月をほら吹き月間って称してさ、『〜すべき』という呪縛から逃 れて、他愛の無いほらでも吹いてみませんかって投げ掛けてみたかったんだ。それに会場を、市議会 議場にしたのも『みそ』。普段は、議場に足を運ぶ機会なんてないじゃない?超満員の議場に、市長も 「年に1回でもこのようにたくさん傍聴にきて欲しい」って言ってたよ。

♪「ほら吹き月間」も終わって、今は、どんなことをしているの?
☆『リンカーンフォーラム』を北海道でもやるよ。

♪『リンカーンフォーラム?』
☆そう。今度の選挙の候補者達の公開討論会だよ。東京を皮切りに全国126ヶ所で開催されるんだ。 北海道の13選挙区のうち、9ヶ所での開催が決まっている。そのうち2ヶ所を、担当している。なかな か、候補者の日程が合わず大変なんだ。

♪次から次へと、いろんなことをやってますね。
☆そうだね。やっぱり地域を楽しくする風って必要だと思うんだ。そして、その風が吹いてこないとき は、自分から起こしていかなくちゃね。



04)
ふつうが一番=山村遊学で感じること=
船木智子

“ビー・アイ"は仙台にある子どものための創造表現空間です。
“ビー・アイ"は「自分であれ」という意味ですが、自分であることを実感するために、自分をとりまく「自 然・人・もの・ことば」とちゃんと「出会う」こと、「感じる」ことを大事にしています。なぜなら小さい時に、 それらとどう出会ったか、どう心をあわせたかで、その人の感性や思考の根っこができるからです。
さて“ビー・アイ"では、'93年から『山村遊学』(山形県金山町中田地区との交流)を続けています。そこ では、ホームステイをしながら、金山町の自然・人と出会い、山里のくらしを体験しながら、知恵・工夫 に気づいたり、学んだりしています。
『山村遊学』で子どもたちが何よりも楽しみにしていることは、“おじさん・おばさんといること・遊ぶこ と"。金山・中田のおじさんおばさんは、子どもたちと一緒に楽しみを共有して遊べる達人であり、彼ら の気持ちを大事にする名人なのです。子どもたちはそれぞれに自分だけが、おじさん・おばさんと体 験したことをうれしそうに自慢します。「おじさんとお風呂に入ってしゃべったのが楽しかった」『おじさん の“秘密の場所"でリスを見たんだ」「おばさんにぎゅっと抱きしめられたのがうれしかった」と。子どもた ちの心に深く残ったものは、特別に用意されたプログラムではありません。おじさん・おばさんのふつう の暮らしの中で体験したことです。各所で催されている「村と町の○○交流」というとあれもこれもと特 別に用意されたプログラムがたくさん並んでいるのをよく目にします。が、作業だけが先行して、気持 ちと気持ちの交流までされているのかな?と思います。交流する地域のふつうの暮らしと出会うこと、く らしている人と気持ちを重ねることが大事なのではないかと思います。(当たり前ですが)
また、金山・中田のおじさん・おばさんにとっても。子どもたちに自分たちのふつうの暮らしを体験して もらうことは、自分たちの暮らしを見直すきっかけになると思います。子どもたちが、自分たちと一緒に 自分たちの暮らしの中で、楽しんでいたりすれば、「自分たちの暮らしやそれを取り巻く地域もなかな か良いもんだ」と思えるからです。現にそう感じている方はたくさんおられます。「自分たちのすむ地域 は、なかなか良いもんだ。」と思う人が増えてくれば、そこの町は、元気になると思います。
おじいちゃん・おばあちゃんの家に行くように、これからも中田地区の方々と、ごくふつうに訪れ、お付き 合いしていきたいと思います。その方がいい交流が長く続くような機がします。



05)
まちづくり政策フォーラムニュース

まちづくり政策フォーラムでは、行政・住民との連携、協力による計画づくりの推進、そのための人材 育成、調査研究、政策提言など、各地のまちづくりのお手伝いをしています。
現在は、下記の総合計画策定に携わっています。

●<宮城県白石市>
策定作業のプロセスでワークショップ形式のまちづくり会議を実施、3月中旬から下旬にかけて市内 18会場で開催し、677名の市民が参加。地区ごとに班に分かれて、自分たちの地区の自慢できるとこ ろや改善したいところなどについて意見交換を行いました。これらの結果概要は「まちづくりフォーラ ム」(5月28日於:白石市中央公民会館)で紹介されます。また、第2回まちづくり会議は7月初旬に開催 されます。

●<宮城県加美郡宮崎町>
現在、町職員プロジェクトチームによって、現状の評価や課題の洗い出し、今後のまちづくりについて の検討を行っています。7月からはワークショップ形式の住民会議が始まります。


●法人特別会員、賛助会員の皆様へ
現在、隔月で開催中の都市農村計画研究会主催のシンポジウムの内容(テープ起こし済み)が必要な 方はお申し出ください。
第1回(1999.10.16)環境からみた土地利用
第2回(1999.12.19)住民主体のまちづくり
第3回(2000.2.19)イギリスの農地利用、環境保全型への転換
第4回(2000.4.22)土地の利用と所有制度●<新年度始まる>
平成12年度に入り早2カ月。各プロジェクトや、研究会が始動しています。今年度は、フィールドワーク を取り入れて展開していきます。

●<研修生受け入れる>
企業から、研修生として櫻井高志さんがスタッフに加わりました。どうぞよろしくお願いします。(自己 紹介は、編集部便りに・・・)

●<『リデュース・ハーフ』1/2キャンペーンネットワークに参加しています。>
『リデュース・ハーフ』キャンペーンとは、仙台市の実質的な「ゴミ減量」を実現させようというもの。第1 期キャンペーン期間は4月22日から12月31日まで。環境NGOの合同ミーティングや、市民公開講座等 を実施します。詳しくは、当フォーラムまで。



06)
都市農村計画研究会 第4回シンポジウム報告

櫻の花満開の4月22日、第4回「21世紀の都市と農村の土地利用を方向づけるシンポジウム」を、蕃 山21の会の代表である石田真夫氏を講師に、『土地の利用と所有制度〜蕃山の事例をめぐって〜』 と題して開催した。開発や公共事業に絡んだ事例をもとに、「自然環境」という視点で土地利用や所 有の制度を組み建て直す論点を引きだそうというもの。

事例:蕃山の開発と自然保護
当時、蕃山は、植生も動物の生態も同じでありながら、県の緑地環境保全地域に西半分は指定さ れ、東半分は指定されていなかった。そこに目をつけた開発業者に対して、開発のあり方を誘導する ような法的な規制が何も無い状態だったという。
そこで、蕃山の保全を目的にした「蕃山21の会」は、業者に対抗して、会員のうち60名が蕃山の樹木 を1本ずつ買うという「立ち木トラスト」を実行。「木だけの登記の方法はないが、大審院の判例で、木 だけを買って自分の名札をつければ、第三者に対抗できるというのがあった。たとえ、地主が土地を 売ると言っても立ち木の所有者が売らないと言えば、開発は出来ないわけです。」と石田氏は語る。つ まり、土地所有権に、立ち木所有権で対抗したのである。こうして開発は中止。
さらに、市民への訴えと特別天然記念物であるカモシカの棲息調査等の活動が実を結び、平成9年 には都市緑地保全地区の指定を受けて、確実に保全の目的が果たされた。

また、石田氏は林道西向・中村線の事例(:公共事業の判断基準を市側に示す提言活動)、脱スパイ クタイヤの事例(:行政・タイヤメーカーとの交渉を通じた経済封鎖)等、自然保護団体の代表として 環境問題に市民がどう関わり実践するかの運動戦略だけでなく、弁護士として、システムをつくる側 としての論点も提示した。

その後、都市農村計画研究会の三浦氏が、仙台市の緑地の減少をデータで解説。それも踏まえて、 会場からの意見を折り込んだ議論が展開された。
以下は、論点の一部である。
・価値観の対立があるときに、公共性をどう評価するか。
・環境権、自然共有権をどのように考えていくのか。
・人間も自然の一部と捉えた時、人間に絶対的な土地所有権を認めるのはおかしい。しかし、土地を 国家所有にしたときの弊害をどう考えるのか、単に環境権だけの問題としていいのか、その実効性を 保持する主体は誰なのか。
・土地所有権そのものも、例えば借地借家法でいう借地権に近いような権利として再構成できる可能 性はないのか。

そのほか、参加者からの「環境は公共財だという視点で、私権の制限が必要だ。財産権を規制するに は具体的な運用基準となる法制度を整備すべき。」という意見に対して、「法律改正は難しいが、地方 が条例という法的手段をどの程度工夫して使うかによって、国が変わる可能性もある。」とも。条例の 内容もさることながら、公共の概念をどう根づかせるか、根づくプロセスでは、どんな切り口の目標で 合意形成していけばいいのかが問われてくるのだろう。
コーディネーターの新川氏(まちづくり政策フォーラム理事)は、「運動論の推進と共に、所有権の争い に対して、自然や環境という視点での共通した最低限度の基準・ルールづくりも一緒に進めていかな ければいけない。その運動戦略の事例として、蕃山や脱スパイク等のお話からヒントをたくさんいただ いた。」と、場をしめくくった。
(報告者 安部)



07)
研究会報告
<水辺里山空間研究会>(水辺空間研究会から改称)

今年度は、地域で里山学校プロジェクトを展開し、グラウンドワークの下地をつくっていきます。
第1回は8月に“秋保里山学校"を仙台市青葉区秋保野尻地区、二瓶さんのコテージにて開校します。 自然を身近に感じるきっかけづくりを目指し、地域限定の時間割や教材を用いて、秋保ならではの自 然を体験します。さらに、学校終了後には、里山学校で得た情報などをもとにワークショップを開催 し、秋保ならではのガイドマップを作成する予定です。
また、学校での活動とガイドマップの作成を通して、参加者である小学生とその親をはじめ、スタッフ にも様々な分野、年齢、地域の方に関わってもらい、多様な交流を図ります。
第1回実行委員会を去る5月16日に開催し、秋保地区、行政、自然保護団体の方など多くの方々に出 席していただきました。今後、実行委員会では里山学校の柱となる時間割の作成に取り掛かります が、まずは時間割に必要な題材を探すために、直接開催場所を視察することとなりました。
秋保里山学校にご関心がある方は、是非、お問い合わせください。<アースワークス研究会>
アースワークス研究会では、都市と農村の交流によって、遊休農地や後継者の問題解決と、お互いの ニーズがうまくかみ合い、お互いがプラスになるような方向を探るために、今回は仙台市太白区坪沼 で農業を営んでいる佐藤功さん宅を訪れました。そして、佐藤さんに農村の現状や交流に対する考え をお聞きしました。
米の流通、農作業の手伝い、農家民宿などについて、これからの交流の具体的な形を探る話題が中 心となったが、現状ではまだまだ問題を含んでいることを再確認しました。
転作や減反による遊休地の利用法として、市民農園型と希望作物の買い取りを前提に、農家に一切 を依頼する契約型の問題点やその可能性についても話し合いました。いずれにしても、農家側と都市 の利用者側双方が、気楽に安心してかかわるためには、NPOなどの調整機関が必要なのかもしれな い。(報告者 櫻井高志)



08)
編集部だより

はじめまして。櫻井高志です。
4月から研修生として当フォーラムで働くことになりました櫻井高志と申します。よろしくお願いします。 フォーラムに来てから1カ月余り立ち、最初は右往左往しておりましたが、ようやく雰囲気にも慣れ、充 実した日々を送れるようになりました。勝手ながら、ここで簡単に自己紹介をさせていただきます。
出身は三重県。仙台の大学に入学し、学部、大学院と天文学を専攻し、無事卒業。在学中、海外に 興味を持ち、国際交流や個人旅行でアジア圏の国々(特に東南アジア)を訪問。その後、建設コンサ ルタント会社に採用され、現在に至ります。25歳。男。
このような、変ったプロフィールの持ち主で、当然まちづくりに関してはド素人です。みなさんから寄せ られるひたかみの感想を読んでは、大いに感心し、且つ勉強させていただいている毎日です。今後、 ひたかみを通して、または直にみなさんにお会いできるのを楽しみにしておりますので、その節はどう ぞよろしくお願いいたします。水辺里山空間研究会では、仙台の自然ふしぎ発見おもしろガイドを発 行。市内小学校、関係諸機関には送付済みです。ただいま、好評配付中。ご希望の方は研究会まで お問い合わせください。ホームページが開設されました
まちづくり政策フォーラムにもついにホームページが誕生しました。
事業案内、関係者の紹介など、私たちの活動をより広く発信していきます。もちろん「ひたかみ」も読 めます。これから内容をいっそう充実させ、有意義な情報をたくさん皆様にお届けする予定ですので、 是非ご覧になって下さい。掲示板は皆様のページですので書き込みをお待ちしています。
URLはhttp://www5a.biglobe.ne.jp/~machi-fo