2002年3月号

01)提言 参加から協働への転換を
    これからの「まちづくり」のために
02)事例報告1 まちづくりツールとしてのロールプレイ入門
03)事例報告2 ため池整備手法検討業務-ため池整備の手法を模索
04)研究会動向
・調査研究と政策提言など
05)プチファーマー大募集他



01)
提言 参加から協働への転換を
これからの「まちづくり」のために  新川達郎(まちづくり政策フォーラム)

1. 「まちづくり」の新しい方向を考える

1−1 地方分権とまちづくり
地方分権社会に向けての動きが、不十分ながらも始まった。地域の自己決定と自己責任を基礎として、個性的で活力のある地域社会を作り上げようという方向について、一定のコンセンサスが得られようとしている。しかしそうした好ましい表現も、結局はそれが実体を持たなければ、何の意味もないのである。分権型のまちづくりを実質のあるものに変えていく重要な鍵は、「参加」から「協働」への転換にあると考えている。「協働」は、パートナーシップと言われながら、広く使われ多くの社会的期待が集まっている用語である。しかしこの用語もこれまでと同様に使い捨てにされる岐路に立とうとしているように思われる。従来型の住民参加を組替える役割を果たす「協働」をいかに実現していくのかが課題となる。

1−2 住民参加の品質は維持されているか
住民参加は、これまでややもすれば、自治体行政の政策決定過程への参加として考えられることが多かった。しかもその参加は、しばしば、行政のアリバイ作りや隠れ蓑として機能することもあった。それは論外であるとしても、住民の側も行政の側も、参加の果実を共有することが少なかった。せいぜい、それぞれの満足感、それも多くは空虚な満足感が残るだけであった。そして、双方に、疲労感や負担感を残しつつ、加えてなお、参加の重荷を義務として感じさせるようなものも多かった。こうした住民参加を続けていては、参加の衰退すら予想されないわけではない。実質のある、しかも持続可能な住民参加を構想しなければならない。

1−3 形だけの「住民参加」からいかに脱却するか
住民参加の形を整えることはやさしい。しかしそれに実体を与えることはきわめて難しい。この課題に挑戦するためには、参加の持つ意味を脱構築し、その構造転換をしていくしかない。つまり、従来の参加のフレームあるいはその基本的な思考方法を変えていくことである。参加は、実際のところ、自らの場を離れて別のところに参入し、そこに部外者としてかかわることを意味する。しかしそうではなく、主体間の相互関係として、これを捉え、そのかかわりの中から生まれるものとして、参加を再定義する必要がある。

1−4 住民参加のまちづくり
おそらく従来の参加は、どのように言葉をごまかそうとしても、特定の主体への従属や組み込み、あるいはせいぜい吸収を意味することになる。従来の「まちづくり」が、結局のところ、誰のためのまちづくりであったのかが問われ続け、誰のためでもないものしか出来て来なかった悪しき先例に学べば、この点は自明のことであろう。こうした「参加」は、学習過程としてあるいはその後は反面教師としては意味があったかもしれないが、もはやわれわれには無用のものなのである。

2 協働の「まちづくり」を

2−1 「協働」を問う
これまでにも「協働」のまちづくりがなかったわけではない。住民と行政の協働による「まちづくり」は、さまざまな住民参加形態をとりながら進められてきた。こうした協働は、実質的に下請けとなるような委託契約を場合によっては含んでいたのである。実際、こうした協働を実現するとされてきたのは、共同事業、委託、あるいは補助などであった。ともかく、住民、NPO、企業、そして行政などを構成主体とする役割分担と主体間の協力や連携が、協働の一般的形式であるとされてきた。しかしながら、この段階にとどまっていたのでは、かつて住民自治や住民参加がたどったのと同じ道をたどるであろう。住民自治や参加を発展させなかったのと同じ、形式的充足による現状固定のメカニズムが働くことになる。

2−2 住民、企業、行政の協働の条件
 住民と行政の協働による「まちづくり」が共同本来の意味を発揮していくためには、その基本的前提条件として、住民と行政の「対等」関係、相互の立場の理解と尊重、協働活動の透明性公開性、明確な役割分担、終期の明示、そして相互評価を必要とする。もちろんこうした条件は、住民と住民、住民と企業(事業者)との協働、あるいは企業と行政との協働など、多様な組み合わせであればあるほど重要となってくる。
そうした条件を実際に実現していくためには、結果や形としての協働の成果に着目することでは不十分である。協働がいかに作り上げられたのかという手続きや手順が重要であるし、その過程で達成されたものが、大きな価値をもつ。協働は、まず「協働のプロセスづくり」から始めなければならない。

2−3 協働のプロセスづくり
協働のプロセスにおいては、その準備段階における「協議」から始まり、相互のコミュニケーションの確立、情報の共有(資源条件の確認)を経て、それぞれが役割分担と行動計画の明示および意思決定を行い行動に移す。そして、協働の成果の明確化を行いながら、最終的には、その協働の検証作業(協働による評価)を行うことになる。この検証と評価に基づいて、協働のあり方を修正し、新たなより優れた協働の実現に向かうことが肝要なのである。このプロセスづくりが、まちづくりにおける住民・行政協働の基礎となるはずである。

3 「協働」と「まちづくり」再考

ここに提案する「協働」と「まちづくり」との関係は、その本質において共通する要素と相互補完的な要素を内包している。「協働」と「まちづくり」は、本質的に人間活動や暮らしのプロセスとして意味をもつものであって、それらを断面で切り取った「協働の組み合わせ」や「空間としてのまち」では、部分的であり、場合によっては無意味である。また、「まちづくり」の本質が、地域社会において人々が暮らしつづけること、それも可能な限り、よりよく暮らしつづけることにあるとすれば、それは、人と人との協働を前提とするのであり、自立的な主体相互間の互酬性こそが「協働」であり、それによって「まちづくり」が成立しうるのである。いまや「協働」による「まちづくり」ではなく、「協働」としての「まちづくり」を進める段階に来ているといえよう。



02)
まちづくりツールとしてのロールプレイ入門
土地利用調整を事例に 増田聡、鈴木孝男



●公開ミーティングの開催
仙台市郊外における無秩序な開発を見直し、これからの土地利用のあり方を探るために、1月26日(土)に仙台市商工会議所大会議室で仙台市と土地利用調整システム検討委員会(委員長・小林重敬横浜国立大学)主催により「仙台市土地利用調整システムに関わる公開ミーティング」が開かれました。当日は、100名を超える市民が参加しました。公開ミーティングの企画と当日運営は、市担当部局(企画調整課)のNPOとパートナーシップで取り組みたいという意向から、都市農村計画研究会が受託することになったものです。


●公開ミーティングのテーマ
今回の重要なテーマは「土地利用調整」で、多くの市民は言葉を聞いただけではなかなか具体的にイメージできないと思います。土地をどう使うのか、どれくらいの高さの建物を建てるのか、どんな人たちがどのくらいの密度で住んだり働いたりするのかというのが、いわゆる土地利用の考え方です。土地を何に使ったら良いのか、どのくらいの強さで使ったらよいのか、ということを巡って調整をしていこうというのが今回のテーマです。


●ロールプレイとは?
一般市民に馴染みにくい「土地利用調整」という問題を体験的に理解してもらうため、「ロールプレイ」という話し合い方法を取り入れました。ロールプレイとは、簡単に訳すと「ロール:役割」+「プレイ:演じる」、つまり「役割劇」という意味になります。取り上げるテーマに合った場面を設定し、参加者が様々な役割を負いながら、模擬的に演じることによって、テーマの背景や状況について理解を深めていこうとするものです。今回は、仙台市の仮想的な開発事例を題材として、
1.デベロッパーである「開発者」のチーム
2.環境や福祉や色々な問題で関心を持っている「市民」のチーム
3.地元に暮らして農業を営んでいたり、そこに住宅をもって住んでいる「地元」のチーム
4.さらにこういう問題を行政的に検討している「市役所」のチームを構成しました。
その4つのチームには、普段の職業からは離れて、それぞれの分野の役割に立っていただき、議論を進めるということになります。つまり、別のものの見方から考えてみるとか、いつもこういうスタンスで見ているけれども、他の立場になると別の側面も見えてくるというようなことを実感しながら、テーマを取り巻く様々な課題や問題点を明らかにしていこうとするものです。


●ロールプレイの目的
また、一般参加者がただ聞き役になってしまうのではなく、できるだけロールプレイ進行を体験してもらうために、土地利用が現場で動いているのを見ている「市民チーム」の一員になってもらいました。その立場になって、随時、質問・コメント等をカードで提出してもらいました。
一方、各ロールプレイのチームメンバーは、コンサルタント、開発業者、県・市職員、農家の方などさまざまな職種の方が参加され、各チーム5〜6名の計23名で構成しました。各チーム間で意見を交わしたり、主張を出し合いながら現行制度の限界、土地利用調整・開発協議をめぐる多様な課題の存在が明らかになるよう、チームリーダーを中心に積極的な問題提起・討議・チーム間交渉を行いました。
最終的には、全参加者が、仙台市における「土地利用調整システムの必要性」を共通に認識し、以下の論点の重要性を理解することを目的としました。

ロールプレイの進行は、はじめに開発者による仮想開発のプレゼンテーションを行い、その考えに対して4チームの代表者が順次意見を発表し、他チームとやりとりをしていきました。一般参加者が何か意見のある場合は、コメントカードを提出していき、会場からの質問や専門的な回答を求められたときなどは適宜検討委員会が発言されました。


●仮想開発事例
今回は、二つの仮想開発事例が発生した場合のシナリオを用意しました。前半は、シナリオ1として「東部田園地区」を、シナリオ2として「西部丘陵地区」を仮想地区として話し合いを進めました。今回提示する2つのシナリオは現実のものではなく、今の情勢を考えていくとこういう開発がありうるかもしれないという仮想の想定です。また、仮想の事例自体の是非ここで問うものではなく、「こういう事例が含んでいる仙台市のまちづくりや都市計画・都市構造の問題をどう考えなければいけないか?」、「その時、開発者、市民、行政がどういう立場からそういう問題を巡って議論し自主的な調整に入っていけるか」という課題を浮き彫りにしていくのが狙いです。
2つのシナリオのうち、「東部田園地区」を事例として内容を紹介します。


●シナリオ1
 <東部田園地区の農地転用・宅地開発事例>
(1)各チームのキャラクター
 ○開発者 (地元不動産会社・JA) :開発推進による地域活性化
 ○市役所 (農政部局) :農業振興・農地保全と集落整備
(都市計画部局) :開発審査・コンパクトシティ・住環境整備
(建設部局)他 :インフラ整備
 ○地元住民(農業者) :厳しい営農環境(専業/兼業、営農意欲・後継者…)
  (居住者) :生活環境に不満(新旧住民、持ち家/借家世帯…)
 ○NPO・コア市民 :まちづくり、都市農村交流、干潟保全…
 ○市民 (当日参加者) :農業園芸センター利用者、都市住民、地下鉄利用者…
 ○検討委員会(学識委員) :第3者機関(調整役)、専門分野からのサポート・判断
       (役職委員) :各チームのアドバイザー(役職に応じて)


(2)東部田園地区
市街化調整区域・農振白地地区に位置する東部の集落地区が、歴史的・構造的な問題(農業生産面や生活環境面)を抱えていることを明らかにした上で、現行制度上は許可されうる土地利用転(農地の宅地化)が、仙台市の掲げる「コンパクトシティ」の考え方と矛盾する可能性がある点を争点とします。さらに、市街化調整区域における一律の規制から、地元農業者・地元(新旧)住民の立場にたって、地域活性化のための「里づくり(集落地区)計画」へと発展的に展開させていく可能性を意識づけます。

(3)開発想定
5ha以上の住宅団地を、既存集落と一体的に開発します。都市住民との交流を視野に入れ、農家レストラン、宿泊施設、市民農園、菜園付住宅、農業公園も整備します。当該開発の立地場所は、幹線道路・IC、地下鉄東西線駅(ターミナル)予定地にも近く、開発ポテンシャルの高い地域であります。

(4)開発者の主張
これまでも個別の農地転用について相談にのってきました。同種の団地開発や、既存宅地制度による個別の建築活動も周辺で行われており、このまま放置して資材・残土置き場等が無計画に広がるより、高齢化を迎えつつある農家の意向をふまえ、団地開発による地域活性化(新たな住民の誘致・都市住民との交流・農家経営の安定等)を図ります。

(5)市の意向
一部、道路整備が進められているが市街化調整区域であり、コンパクトシティ実現のためにも当該開発は避けたいです。住環境が悪化する恐れもありますが、法的には規制できません。既存集落地区であり、農振白地地区になっていますが、営農意欲が落ちてきている農家も散在しています。


●話し合いの結果
参加者はアドリブを交えつつも基本的にシナリオに沿って発言していくわけですが、シナリオを超えて非常に多様な課題を見出すことができたと思いました。その話し合いの模様を、シナリオ1東部田園地区の仮想開発だけですが、簡単に紹介したのが図○です。
(図・写真)


●終わりに
都市農村計画研究会では、昨年12月から当日の1月26日までに現地踏査、既存資料の収集、シナリオ検討のための打ち合わせを何度も繰り返しました。シナリオがいくら仮想といっても、ある程度現実的にイメージできなければ、参加者は話し合いにくく抽象的な言葉が飛び交うだけに終わってしまいかねません。かといって、具体的に想定し過ぎても、個別の問題に収束してしまいがちで、環境や交通問題などの市全域に関わる総括的な話し合いができなくなる可能性が高いです。また、せっかく作成したシナリオ通りに進行しないことも視野に入れなければならないし、全くシナリオ通りに展開しても面白くなくなります。シナリオづくりは、大変な作業だったという印象がとくに残りましたが、ここで得られた成果を研究会として今後どう生かしていくかが課題で、追ってひたかみで報告したいと考えています。



03)
ため池整備手法検討業務 <ため池整備の手法を模索>

この業務は、宮城県産業経済部農地整備課から、今後のため池整備手法のあり方を模索するために受託したものである。
昨今、ため池整備事業は、農業用水の供給や治水能力を高めるだけのものから、人が自然に触れ、気軽に水に親しめるようにと、その役割の幅が拡大している。それに伴って、より多くの人が利用できるように、また、より環境に配慮するという方向にため池整備手法も進化しつつある。
しかし、「本当に必要な整備なのか」「環境への配慮をどう考えるか」等の議論において、整備側の意向が優先し、ものづくりの論理が先行していたと言える。その結果、管理運営面等の課題が残され、従来の方法とは違った視点や手法を見出す必要性が高まってきた。
そこで、宮城県加美郡小野田町の田谷地沼をモデル地区とし、「現地調査〜ヒアリング調査〜3回のワークショップ」という一連の流れに以下の3つの要素を入れて実施を試みた。
(1) ため池が地域の共有財産であることの意識づけを行うこと。
(2) 住民が関わる上での動機づけ、または今後の動きへつながるきっかけになること。
(3) 地域住民=事業者=行政が一体となって「整備側」と「活用側」の立場を共有し、コンセンサス法でのプロセスを体験すること。

進め方としては、現地調査やヒアリング調査を通じて?田谷地沼を取り巻く環境の把握→?田谷地沼での地域住民の取り組みや関り方の把握→?地域における保全と活用の方針やキーマンの把握を行い、ワークショップで話し合う前提条件を整理した上でワークショップを開催。3回の流れで?保全と活用に向けた考え方と行動指針を打ち出す→?整備内容とのすり合わせ、アイデアの評価、調整→?拠点や活動の見直し、検討、調整というステップを踏んで、参加者それぞれの立場や価値観の違いを活かし、平等な支持と同意に基づく決定を行うというもの。

<状況を読み取る>
まずは、現地調査やヒアリング調査を通して諸状況を把握した。
田谷地沼は、山地高原的景観地を形成しているだけでなく、動物相、植物相のいずれもが極めて豊富なところである。小野田町は、昭和60年代から数回の学術調査を実施し、平成6年には基本整備の検討委員会を発足させてた。拠点となる「荒沢自然館」を整備する等、その取り組みは、状況を読み取る上で重要だった。また、沼を基点として、小学生の課外授業やクロスカントリー等のイベント開催等、地道な活動を続けている地域住民がいることもわかった。
整備においては、担当である「宮城県古川産業振興事務所」が事前に環境調査を実施し、沼の自然に配慮して計画。すでに、町との調整を図りながら一部工事を開始していた。
このように状況がわかってくると、参加対象が絞られ、ワークショップを組み立てる上での材料も明確になってくる。

<ワークショップの準備>
ワークショップ参加者としては、小学生の課外授業やクロスカントリー等の活動や、沼の自然を愛し保全したいと思っている地域住民の方々。また、考える糸口を増やして意見が偏らないようにするため、地域住民以外の方々にも参加してもらうようにした。
しかし、参加を呼び掛ける時点で、すでに進行中である整備に対して「住民参加のワークショップという既成事実をつくるための表面的な話し合いではないか」という声や「今更、話し合ってもしかたがないのではないか。何のために話し合うのか。」といった声が上がっていた。
そこで、「ワークショップで何を達成し、その結果をどう活かそうとしているか」を明確にする必要があった。また、今回の話し合いの主旨が、整備計画についての意見交換ではなく、さまざまな立場や価値観の人たちと共に考え、話し合い、調整するプロセスを体験することであり、そのプロセスから“田谷地沼独自のスタンス”や“整備のあり方を探る上での視点”を浮き彫りにしていくといった成果イメージを示す資料も用意した。


<ワークショップのプロセスから生まれたもの>
第1回ワークショップでは、前提条件等の情報や問題を参加者全員で共有した後、田谷地沼の自然環境を主観的、客観的に整理した。ここでは、田谷地沼の豊富な自然をどこまで「活用」し、どこまで「保全」するかという独自のガイドラインを形作ることが要点だった。そのガイドラインによって、「田谷地沼を自然観察の場として開放する」というスタンスが導かれた。また、自然観察の場としての開放=誘客ならば、当然、整備が必要であり、その意義を確認することができた。

第2回ワークショップでは、第1回で打ち出された「田谷地沼スタンス」を基軸に、進行中の整備とすり合わせた。それは、田谷地沼をどんな「自然観察の場」としていくのか、どんな人たちに訪れてほしいのか等、スタンス自体の具体性が問われることであった。また、現在進行中の整備の「環境への配慮は、田谷地沼にとって妥当なのか」を問い直すことでもあった。どんなに素晴らしい整備であっても、活用する人たち等の「納得」を生むものでなければ、「使われない」状態を招くだけである。事前の調整を痛感する会となった。

第3回ワークショップでは、前回の話し合いを受けて、施工面・景観面・利用面・活動面・安全面・管理面・環境保全面等のさまざまな視点から検討を深めた。さらに、「田谷地沼スタンス」とすりあわせ、意見調整した。このようにして得られた整備に対する意見は、整備の最終決定権をもつ宮城県・宮城県古川産業振興事務所・小野田町建設課へ、より良い整備のための一助として「提案」することになった。
さて、ここで出てきた課題が、「整備では足りない部分をどう補うのか」である。すると、参加者の間に「自分たちの問題だ」という意識が高まり、発言に責任を担っていこうとする姿勢が自然発生していったようだ。「整備をすることで、さまざまな人たちの出入りが予想される。当然、自然に対して知識のない人も訪れて、自然を荒らす可能性が出てくるだろう。それをどうするか。」「沼の拠点である荒沢自然館でフォローできないか。」「ため池レンジャーを配置して、自然のことを学びながら楽しめるような体制をつくったらどうだろう。」「レンジャーは○○さん(参加者)がいいね。」という具合だ。
こうして、ソフト面での考え方や方向性がまとまると同時に、活動〜運営していく主体の必要性が語られるようになっていった。第3回目終了時には、参加者の中から「ソフト面を担う任意グループを結成したい。」という考えが出るまでに至った。

<田谷地沼におけるため池整備手法の考察>
一連の流れから、ため池整備に有効な視点や手法の手がかりが浮き彫りになった。
(1)整備への認識に対して
・ワークショップの中で、「どこに・どんな整備を・なぜするのか」という説明だけでなく、説明を前提とした活用側とのすりあわせがあったことで、整備に対する認識も深まった。
・田谷地沼独自の「保全」と「活用」に対するガイドライン=ルールを確立したことによって、どんな整備が望ましいかが明確になった。
(2)参加者の主体性に対して
・沼の情報や問題を共有していく中で、地域の共有財産であるという認識が深まっていった。
・地域住民=事業者=行政が共に話し合い、それぞれの納得を得る体感をした。決して、十分なコンセンサスが行われたというわけではないが、プロセスを共有し、それぞれの立場や価値観に基づく意見を交換することで、一方の思惑だけを通すのではなく、全体としてどうするかを考えようとする姿勢が生まれていった。

報告書には、手法だけでなく、今後のため池整備のあり方を提案することになっている。
また、ワークショップ終了後に、参加者の数人が中心になって、話し合ったソフト面を具体的に展開していく活動グループを誕生させた。2月1日、「小野田町森の文化研究会」として発足し、今後はNPO法人として申請する予定だという連絡が入ったことも付記する。
(報告者 安部優估)



04)
■■研究会

<都市農村計画研究会>
○研究会の開催 6回
今まで、研究会で取り組んできた「アーバンフリンジの土地利用」等々、膨大な調査研究・活動成果・シンポジウム結果の総括をするため、経過を整理し、冊子にとりまとめるための準備をした。
○フォーラムの開催
「仙台市土地利用調整システム公開ミーティング」
 02/1/26.開催
仙台市土地利用調整システムの検討において、その動きの一端を担う市民参画型公開ミーティングを担当した。ロールプレーという手法を取り入れ、市民・生産者・開発セクター、行政の各立場を体験し、課題を浮き彫りにした上で、今後の制度設計に向けた多様な課題の抽出を行うことができた。また、調整システム構築の必要性を明確にし、その導入に対する合意形成の端緒となったと言える。

<交通を考える研究部会>
○部会開催 7回
当初の「誰でもがわかるバスマップの作成」は、作成費の調達が難しく、ホームページ上でのマップ展開に、その方向を切り替えた。現在、作業中。

<農村里山地域の土地利用を考える研究部会>
○勉強会開催
・「グローバル社会と農村コミュニティ」   01/7/7.
中山間地等直接支払制度についての勉強会を開催。現状での課題や制度のあらましについて学んだ上で、広く参加者の意見を吸い上げることができた。中山間地問題は、農業問題としてだけでなく、コミュニティの問題として捉えていく必要性があることを再認識できた。

<水辺里山空間研究会>
○秋保里山学校開催協力 01/8/11.〜12.
○協力団体例会出席
・あきう6000定例会出席 01/4/10.
・むささび小屋定例会出席 01/4/16.
会員同士が、それぞれの立場からの情報の受発信や意見交換等、メーリングリストでの情報交換を主とした。また、昨年度に地元の関係諸団体の協力を得て開催した「秋保里山学校」が、地域づくりグループ「あきう6000」(前回の協力団体)により開催された。まちづくり政策フォーラムは、準備面での協力と当日参加を果たした。

<アースワークス研究会>
○研究会開催 2回
坪沼地域でのユニット拡大路線が可能かどうかを模索。また、「坪沼ビジョン」が示され、コミュニティビジネスとしての可能性を探った。
○コーディネート
菊地邸:林の資源活用・アイデア提供に関するコーディネートを行った。研究会で菊地邸の林の視察を行い、趣旨を確認した上で、資源活用についてのアイデアを募った結果、子どもの遊育推進活動を行っている「童舎」(子どものゆめ基金助成事業・助成対象団体)とつなぐことができた。
○プチファームの実施

●畑で一服 4回
●農作業   01/4/7.〜(作付け〜農作業随時)
●イベントの開催
・収穫祭の開催         01/9/16.
・プチファームの忘年会     01/12/23.
●イベントの参加
・地球環境保全ワークショップ  01/6/16.
・仙台市環境局主催:環境国際会議に一環として「生ごみリサイクル・環境社会実験」参加 01/5/〜 02/2/
・東北大学学園祭事務局主催:東北大学園祭出展
01/11/3.〜4.
2年目のプチファームは、14区画+共同区画を総勢34人のメンバーで実施。坪沼地域でのユニット拡大は、地域状況を踏まえて徐々に考えていく。プチファーマー(畑会員)の一人が、他地区で新たなプチファームを展開し、飛び火型のユニット拡大が実現しつつある。また、日本財団からの助成を受けて管理機(トラクター)を導入、企業からは物置を寄付していただく等、整備面が充実してきた。

<情報の受発信とその交流>

●季刊誌「ひたかみ」の発行
年4回発行(通算92号〜95号)
●まちづくり政策フォーラムニュースの発行
毎月発行(vol.12〜vol.24)



05)
2002年度 プチファーマー大募集!

畑仕事・・・してみたい人、
安全な野菜を・・・作ってみたい人、
大募集です!
アースワークス研究会は、農村、農業の新たな可能性を探るために都市と農村の資源交流による相互補完システムを整備、コーディネイトしようという研究会です。平成12年度から、仙台市太白区坪沼地区において、プチファーム(小単位ユニット式市民農園)の実現に向けて研究中です。

実際には、農業をやってみたい、畑仕事をしてみたいと思う、プチファーマー達が集い、それぞれの区画で、思いおもいの、野菜を栽培・収穫しています。

2001年度は、14組、総勢30名ほどの参加者が、農作業を体験しました。

あなたも、プチファーマーに、なってみませんか?募集要項
場所/仙台市太白区坪沼地区
区画/50平方メートル
会費/6,000円/年額
募集組数/5組

先着順に受け付けます。


畑の利用可能時期は4月から翌年3月の一年間です。
畑作業についての、農業技術インストラクターによる指導=畑で一服=が、適時行われます。

また収穫祭(秋野菜を使った里山パエリアなど・・・)や忘年会(豆腐づくり体験)など、畑でとれたものをみんなで食する「楽しみ」もあります。
E-mailを使った情報交換
「○○さんチの、ナスが食べ頃だよー」
「しばらく、行けそうもないので、欲しい方、ご自由にお取りください!」・・・
なんて、会話を、メーリングリスト(E-mailの回覧板の様なものです)で、随時、交わしています。
もちろん、農作業のワンポイントアドバイスなど、耳より情報も、たっぷり!

?プチファーム ハンドブック?
平成12年度の、私たちの活動の様子を、冊子にまとめました。
1部300円です。
見応え十分です。


第7回 東北地区
グリーンツーリズム・フィールドスタッフ・ミーティング
(TGFM)東京大会に参加して
鹿島台町 伊藤 紳

TGFMには、一昨年の宮城若柳大会から参加していますが、今年も2月16日、17日の両日に開催されたTGFM東京大会に参加してきました。
今回はグリーン・ツーリズム推進シンポジウム(16日)とツーリズム学びNetシンポジウム(17日)との合同開催ということで、参加者の枠も全国に広がり、規模の大きなものになりました。
TGFMは16日のシンポジウム開催後の夕方、合同交流会の前に行われ、TGFM主宰者である東洋大学青木教授の開会プレゼンテーションでは、昨年のTGFM青森相馬大会の大会宣言の再確認がなされました。
前回の宣言での大きなテーマの一つとして、「農家レストラン」や「農家民宿」開業に伴う法律の「規制緩和」がありました。
事実、今春開業する若柳町グリーン・ツーリズム研究会メンバーの「農家民宿」においても、保健所などから認可を受けるに当たっては、非常に高い敷居として、さまざまな法律が立ちはだかりました。
この話題については秋田県立大学短期大学部の山崎教授からコメントがあり、大分県や秋田県では「農村文化体験料」という形での取り扱いや県独自の法規制緩和条例の検討など具体的な検討が始まっているほか、教授ご自身もかや葺き屋根の家屋を民宿にしようと現場で試行錯誤を繰り返しているそうです。
交流会では、グリーン・ツーリズムの実践者、指導者を養成する3つの大学「九州ツーリズム大学」、「北海道ツーリズム大学」、「南信州あぐり大学院」そして新たに大学を開校しようとしている岩手県遠野市から自己紹介の後、それぞれに交流しました。
岩手県遠野市、(財)都市農山漁村交流活性化機構、各大学、熊本小国町、山形朝日村のかたがたと交流できましたが、第5回TGFM宮城若柳大会で、私たちとともにスタッフをつとめた当時の学生たち(熊本県小国町の九州ツーリズム大学関係の学生が多かった)も数多く参加してくれていました。彼らと話したり名刺交換しましたが、ある者は一流企業に就職し、あるいは大学に残って博士を目指し、または今も九州に残ってツーリズム大学と関わっているなど、それぞれに活躍しているようでした。
ツーリズム大学の卒業生には、農政局関係者、通信関係者などもおられるので、日本の中枢システムにグリーン・ツーリズムを理解している人々がいるというだけで非常に大きな力になると思われますし、日本のグリーン・ツーリズムの将来は明るいのではないかと勇気づけられました。
本当に「グリーン・ツーリズムパワー恐るべし!」です。

今回は他の行事との合同開催のため、議論を深めることはできず、物足りなさを感じましたが、16日のシンポジウムでは日本テレビ放映中の「DASH村」スタッフの力を借りて、グリーン・ツーリズムの概略や農業の多面的機能の持つ可能性を一般の人々に知らしめたことは大きいと感じました。
先日発足した全国グリーン・ツーリズム協議会や(財)都市農山漁村交流活性化機構にはこういった一般へのPRをまかせ、TGFMでは我々実践者同志の交流や情報交換をすすめて、それぞれに研鑽を積むことが重要ではないかと強く感じました。第7回 東北地区
グリーンツーリズム・フィールドスタッフ・ミーティング
(TGFM)東京大会に参加して
鹿島台町 伊藤 紳


■SURF
(仙台都市総研機構)
平成14年度市民研究員募集
(研究テーマ:地域商店街と地域コミュミティの活性化に関する調査研究)3/1
■あぐりぽうと
(かづのアグリポートセンター)
魅力ある農村づくりを目指し、茶屋を経営3/15
■あいづばんげ
(福島県)
糸桜里の湯入館者100万人達成
2/1
■過疎情報
「自然と愛とエネルギー、九頭竜源流の郷」づくりを目指して(福井県和泉村の随想)2/17
■ボンエルフ
地域の自然と共生した郊外生活を提案するまちづくりが進むベリータウン「もねの里」の紹介
2/17
■環環学学
(仙台市環境局)
ごみ減量の切り口から地域の個性を活かしたまちづくりに関わりたい『シンプルエコネット』の紹介
2/1
■きんもくせい
(市民まちづくり支援ネットワーク)次号(3月号)で終刊いたします。3年間の御愛読に感謝いたします。2/27
■広報わくや
(宮城県涌谷町)まちづくりをテーマに話し合う町民会議第5回が開催された。3/1
■しもきた
(青森県)
まちづくり倶楽部主催「下北半島市町村合併に関するまちづくり公開討論会」に150人集まる。3/5

■ながい
(山形県長井市)
住民主導で地域おこしをしてきた伊佐沢地区が農村アメニティコンクールで農林水産大臣賞の特別優秀賞を受賞。(市長のホット・トークより)3/5
■ひがしゆり
(秋田県東由利町)
地域活性の起爆剤に〜2月20日第2回分館長主事会議が行われた。
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■備北新聞
(備北新聞社)
阿新広域・市町村合併に関する住民意識調査結果
関心度75%、前向き51%3/15
■ふるかわ
(宮城県古川市)
4月1日から地域振興課の新設等市役所の組織機構がかわります。
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 千葉静子さん(宮城県・若柳町)
「ひたかみ」ありがとうございました。11月号の事例報告、南方町、岩泉町は訪れたことのある皆さんでしたので、近況がうかがえて楽しく読ませていただきました。岩泉町の「アトリエ野の花」は、10年前に伺い、坂本さんの暖かくて大きなハートに感銘を受けました。今も、あの頃と同じように、地域を取り込み、仲間と一緒に、夢を一つ一つ実現している様子。本当に素晴らしいの一言です。また、遊びに行きたくなりました。
ところで、7月のそば打ちにきていただいて、ありがとうございました。「ひたかみ」にも取り上げていただき、客観的に見てもらい、日頃、私達(グリーンツーリズム研究会)が感じていることが、外の目からも同じように見えるのだと感心もしました。若柳の良さ、「らしさ」。

また、自分の目線、場所など、この地にどっぷりだと、なかなか見つけることができません。どうぞ、時々遊びに来てください。外の目を私達にぶつけてくれたら有難いのですが・・・。今後ともよろしくお願いします。
私の民宿の件ですが、2月1日のオープンに向けて、倉座敷を少し改造しています。農家民宿で5人定員のささやかな民宿ですが、保健所、消防署・・・と、なかなか難しいですよ。面倒です。めげそうです。でも、これも勉強なんでしょうね。農水省からいくら奨められても、お金もかかるし、許可申請の前にくじけそうです。(お金があれば、すべてクリアですが)自分の持ち物を活かすことが、これ程、大変なこととは思いませんでした。あせらず、前進です。どうぞ、応援してくださいね。国体の民泊は、良い経験でした。勉強になりました。
近いうちに、ぜひ、おいでください。

 徳吉英一郎さん(岩手県・遠野市)
提言:「一体、農業者=農山村は、誰とどんな付き合いをしようとしているのか、ちゃんと考えなさいね。諦めたり、ふてくされたりせずに・・・。」そんな声が聞こえてきました。
編集部へのメッセージ:きめ細やかな現場の取材がうれしいです。
 栗和田幸夫さん(宮城県・仙台市)
提言:農林業を守れるか否かは、都市の根幹に関係する大問題である。日本の農業が、どんどんダメになってきている理由がよくわかった。また、これを打開するビジネスモデル構築の具体例として、事例報告1:板倉農産の独創的手法は、今後の農のあり方をいろいろと考えさせられた。
 原田憲一さん(山形県)
平成13年11月2日、山形新聞に掲載された原田さんの執筆記事「衝突は崩壊でしかない」をいただきました。
記事は、去る10月11日の「ニューヨーク自爆テロの後に残るものは何か」から「文明交流圏」について書かれ、「文明間の対話には、媒介(調停者)が必要であり、“和”と“結び”すなわち協調による創造という哲学を持つ日本人は、諸文明の媒介として世界平和に大きく貢献できるのだという指摘の重みを改めて噛みしめたのである。」と記されていました。


水口様(北海道・滝川市)
北海道B&B協会のひろた様より、「北海道B&B交流受入ホスト募集・どこでも出前説明会」のご案内をいただきました!

北海道B&B協会は、北海道発の新しい都市と農村・地域の交流プログラムを開発実施している民間非営利のネットワーク機関です。
2001年度までは、道内を中心に活動してきましたが、2002年は道外のみなさまへのPRを重点に、より交流を広く深くしていきたいと思っています。会場と参加してくださる方(2人以上集まれば)があれば、道内・道外どこへでも行きます。
B&B交流ホストをやってみたい方、都市と農村に興味のある方、どうぞお気軽にお問い合わせください。

北海道B&B
詳しくは・・・http://www.bandb.co.jp
北海道B&B協会(担当:ひろた)
電話/FAX 0125-78-3890

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編集部だより
まちづくり政策フォーラムも、無事に法人化しての2年目を終えることができました。
これも、みなさんのお蔭です!
今回の「ひたかみ」では、今年度のまちフォの活動を紹介・報告しましたが、中には「へぇ〜っ、こんなことやってたんだあ。」とご覧になったものもあるのでは? お蔭様で、この1年に活動の幅もグンと広がりました。それに伴い、より多くの方々にお手伝いいただいたことになります。本当に「感謝」です。

今年度は、まちフォがコーディネートした受託事業の中で、2つの自主グループが立ち上がりました。
『ため池整備手法検討業務』から「小野田町森の文化研究会」と『泉区昆虫マップ作成事業』から「続むしむし探検隊」です。
春=新年度に向けて活動を開始するとか・・・。
なんだか楽しみです。