第3回放送分    2000年1月30日 21:11

What's up?
今週も始まりました興味の無い人にとっては迷惑この上ないこの番組。
みなさんの苦情などは無視して、ひたすらDJまちやの個人的な趣味を押し付けます。

そろそろ彼が癌でこの世を去ってから20年経とうとしている。早いものだ。
ドレッドヘアを振り乱して、人類愛を唱える彼。エリック・プランクトンがカバーしたから
世界的に有名になったとか、ラスタファリズムを世界に広めたとか、「黒いボブ・ディラン」
なんて呼ばれていたとか、そんなことは僕にとっては全然興味ない。

彼がまるで命を削るように歌にかける情熱が好きだ。鬼気せまるその歌声と、
何かが取り付いてるんじゃないかと思うくらい激しいステージパフォーマンス、
彼の「One Love」という曲を聴いたときには
「この人、本当に歌で世界を平和にしようと思ってるんじゃないか」と思った。

英国軍人を父に、ジャマイカ貧民を母に持つ彼は、幼い時から裕福な世界と
極貧の世界の2つの世界に引き裂かれて暮らしていた。「父が住む世界はとても裕福だ。
でも、母が住む世界は恐ろしく悲惨な世界だ。同じ人間が住む世界なのに、どうしてこんなに違うんだ?」
そんな小さな疑問を抱いていたことは簡単に想像できる。混血児である彼はいじめられッ子だったらしい。
生まれてからすぐに父親が居なくなり、母親の手だけで育てられた彼。
イギリスの植民地支配から解放されたが、わずかな自由と引き換えに、
よりひどい貧困、差別、暴力に支配された世界で育った彼。

「自分は誰?」
「自分はなぜここにいるの?」
「なぜみんな争うの?」

彼が歌い続けた理由はこの辺にあるんじゃないかと思う。
彼は自分のルーツを人類の起源の地と言えるアフリカに求めた。
エチオピアの皇帝「ハイレセラシエ」を崇める宗教「ラスタファリズム」に傾倒するようにもなった。
ちなみに「ラスタ」という言葉は、セラシエの皇太子時代の名前ラス・タファリ・マコネンに由来し、
黒人の皇帝の即位を予言したマーカスという人物が、セラシエをJAH(現人神)として崇拝する
教義から生まれている。ラスタの特長ともいえるドレッドヘアと鬚は、「自然に伸びてくるモノを切る必要はない。
髪の毛1本1本にも神が宿るのだ。」という教義に基づいている。
しかし当時、ラスタファリズムというのはジャマイカでも少数派であった。
肉を食べてはいけない等の戒律の厳しいこの宗教に人々が見向きもしなかったのは頷ける話である。

「Catch A Fire」でデビューを飾った頃は、体制に対する不満、貧困に対する怒り、
権利の主張などをストレートに歌にし、キングストンの若者の支持を得た。
その後、「Exodus」から徐々に宗教や人種を超えたメッセージを込めた物を歌うようになる。
「Live!」以降、ジャマイカのスターから世界のスターに変わって行った彼。
自分が歌うことでジャマイカの現状を世界の人々に知らせ、自分が歌うことでジャマイカの人々を
勇気付けることができると信じつづけた彼。

「一つの愛、一つの心。団結すれば幸福になれる。平和に必要なのは、お金でも武器でもなく愛。」
と歌いきる彼。ここまで人類愛を真剣に歌にたくす歌手を他には知らない。
自分のために歌ってるのでもなく、恋人のために歌ってるのでもない。
争いのない平和な世の中を実現したいがために歌う彼。
彼の音楽がレゲエであったことや、ラスタファリズムを信じていたことなど、僕にとっては全く関係ない。
逆にいえば、「彼=レゲエ=ラスタ」という図式は浅はかに思えてならない。
少しでも平和な世の中が、少しでも平等な世の中が実現することを願いつづけた姿勢こそが彼そのものだと思う。

Discography:

Catch A Fire
Burnin'
Natty Dread
Live!
Rastaman Vibration
Exodus
Babylon By Bus
Kaya
Survival
Uprising
Confrontation
Legend
Rebel Music


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