古今和歌集 巻第十六 

哀傷歌

作品854

惟喬親王の「父の侍りけむ時によめりけむ歌ども」
とこひければ、書きて送りける奥に、
よみて書けりける              とものり

ことならば言の葉さへも消えななむ
見れば涙のたきまさりけり


訳>
惟喬親王が
「あなたの父上がご在世中にお詠みになられた歌などを見せてください」
と依頼なさったので、書いて差し上げたが、
その詠草の最後に詠んで書きつけた歌

同じ消え失せるのだったら、
この父の作品も父と一緒に消えてなくなってもらいたいものでした。
この形見を見ていると、早瀬のような涙が増してくる一方です。

作成:(真紀 友則)