古今和歌集 巻第十七 

雑歌上

作品876

方違へに人の家にまかれりける時に、
主の衣を着せたりけるを、
朝に返すとてよみける   紀 友則

蝉の羽の夜の衣はうすけれど
移り香濃くも匂ひぬるかな


訳>
方違えのためによその家にやっかいになりにいった時に、
主人の着物を貸してくれたので、
翌朝返しがてら詠んだ歌

この夜の着物は蝉の羽のように薄いものですが、
香がみごとにたきしめてありましたので、
私の下着にそれがすっかり移って、
いい香りを放っています。

作成:(真紀 友則)