老人が出てくるドキュメンタリーのテーマなんて大体決まっている。「じーさん達が
こんなに頑張ってるんだからもっと若い私達も頑張らなきゃ。」ってくるのが相場でしょう。
子供と老人が主人公の作品はずるいと思ってる。私は。絶対感動するように作ってる
でしょ。ああ、なんてこの人達はひたむきに頑張ってるんだ、って。えらいなぁ、って。
映画だけじゃなくて「はじめてのお使い」でも同じような感じだけど。
でも、この映画は全然違う。おじいちゃんがんばったね、なんて全然思わない。若い人は
もっと頑張んなさい、でもない。もちろん「老人力自慢」でもない(笑)。
ドキュメンタリーで主役はおじーさまおばーさまでセクシーでかっこよくて、せつない映画。
ヌードも出てこなければ甘いロマンスもなければショーン・コネリー(セクシーじーさんの
代表選手)も出てこない。でもしっとりと酔えちゃう映画。
歌もね、すご〜く艶っぽくて。何回鳥肌が立ったことか…。彼らの奏でる音、1つ1つに
彼らの喜怒哀楽が滲んでて。今もサントラ聴いてまた感動してるところなんだけど。
たくさんメンバーがいる中で印象に残るのが「キューバのナット・キング・コール」こと
イブライム・フェレール(笑顔がいい)。パナマ帽と葉巻が最高にきまってるコンパイ・
セグンド。それに「キューバ音楽史上3本の指に入る」らしいルベーン・ゴンザレス。
私のお気に入りはコンパイ・セグンド。だってかっこいいんだもん。私はいつからじーさん
趣味になったのか…。う〜む。
好きな場面は、やっぱりカーネギーホールでのコンサートだろうな。「チャン・チャン」
の大合唱の後の惜しみないスタンディング・オベーション。映画が終わっちゃうことが
残念で仕方がなかった。もう、彼らのの体力が続く限りず〜っと演奏してて!って思ってた。
終わるのが残念、なんて久しく味わっていない気持ち。ビデオ出たら買っちゃおうかなぁ。
あと、ルベーンがピアノ弾いている回りで女の子(新体操選手の卵かな)が囲んでいる
シーンも。なんか微笑ましい。
イブライムがマンハッタンを歩いているシーンがなぜかものすごくせつなくてちょっと
うるうるっときてしまった。なんでだろ。わかんないけど泣いちゃった。
映画観終わってしばらくしてから思ったことは「老人力」なんて自慢するもんじゃないで
しょう…、ということでした。ねぇ。赤瀬川さん。