「クッキー・フォーチュン」

「アメリカ南部の人々が楽しく暮らしていましたとさ」という話しではないです。

自殺を「恥ずべきこと」と思って事実を隠そうとした上流階級の体質を真面目に糾弾して いるわけでもない(もちろんそう言う批判の姿勢はあると思うけどさ)です。

そういう深刻な問題に直面した人達のあたふたぶりを笑いながら軽やかに描けちゃってる。 なんかものすごーくシニカルな映画だなぁ、と思った。

でもこうやって描けたからこそおもしろいのよ、この映画。これがただただ心暖まる 南部の人々の日常の話しを延々と続けられたら最初の30分でアウトだし、まじめーに 社会派ドラマにしちゃったらそこらに転がっているハリウッド的な映画になるだけだし。

ここら辺がアルトマンの腕の違い、なのかな。

しかも、キャストが良すぎ。クッキー役のパトリシアー・ニール、エマ役のリヴ・タイラー、 コーラ役のジュリアン・ムーア、ウィリス役のチャールズ・S・ダットン、カミール役の グレン・クローズ・・・。あ、クリス・オドネル忘れてた(笑)。その他の人々もみんな 役にはまっててここまで違和感のない配役ってすごいよ。

私はパトリシア・ニールでハマった。大女優ですよ。この人がいいおばあちゃんでね〜。 こんなおばあちゃんを早々に自殺させちゃうアルトマンが憎いね。でもこれがなかったら ジーンとくるものもないし、なんていったってグレン・クローズの抑え目バカ演技が 出てこないわけだし(誉めてるんですよ、これは)。

なんか素直に楽しめる映画でした。クッキーの自殺を悲しみ、リヴの奔放さ(でも可愛ら しい)に微笑み、ウィリアムが無実の罪を着せられたことにむかついて、コーラ(役の 名前ですよ)ですっきりした気分を味わう。そしてカミール、ざまあみやがれ。

この映画は深読みなんてしないで、そのまま受け取ってそのまま笑ったり、涙を流したり。 そういう映画だと思う。早くのってしまった人の勝ちです。

この映画のキャッチコピーが「人の数だけ秘密がある」っていうやつだったんだけど、 これも納得。いろいろあるもんですね。人には。暴き方がちょいと乱暴だったかも しれないけど。でもいいや。

私が一番好きなシーンは・・・。自動販売機をコーラが押すシーン、かな。このさりげ なさがいいです。