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子ども達の教育環境を守る会だより.75
2004年11月17日
隣地高層マンションの20mを超える部分の撤去を求めた民事裁判で、東京高等裁判所は地裁判決を覆しました。 多くの事実誤認、根拠のない憶測や矛盾点が目立つ一方的な判断で、到底納得できるものではありません。桐朋学園をはじめとする原告は、司法の場での公正な判断を願い、11月8日(月)最高裁判所へ上告しました。
● 民事訴訟 東京高裁 控訴審判決
10月27日(水)、大藤裁判長は欠席、裁判長代理によって判決主文が読み上げられました。
高裁は、「景観利益」を認め大学通りに面するマンション東棟の20mを超える部分の撤去を命じた地裁判決を取り消し、原告ら(桐朋学園・市民)の訴えを全て棄却しました。
地域の特性を生かしたまちづくりが活発になり、景観に対する認識が社会的にも高まってきたことから、それを法的に支援する「景観法」が本年6月に制定され、12月の施行を目前とした今回の東京高裁の判断は、「良好な景観の形成・保全等は、行政が住民参加のもとに、専門的、総合的な見地に立脚して調和のとれた施策を推進することによって行われるべきもの」として、個々の地域の住民の権利・利益とは認められないというものでした。地裁が認めた、良好な景観の保全に長年の努力を重ねている住民の利益 良好な景観を自ら維持する義務を負うとともにその維持を相互に求める利益(景観利益)を全面的に否定した、まったく時代の流れに逆行する判決です。また、70年以上にもわたる学校や市民の方々の不断の努力、国立市の景観条例や一連の景観への取り組み等をすべて無視し、一方的に大企業の経済活動を擁護した、大変に偏った判断です。東京地裁判決と東京高裁判決のおもな相違点を以降にまとめました。
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地裁判決と高裁判決の相違点
(判決文より抜粋:カッコ内の数字は当該頁)
一審・東京地裁判決2002年12月18日 宮岡章裁判長
二審・東京高裁判決2004年10月27日 大藤敏裁判長
景観による利益に関して
☆東京地裁(一審)
(20頁)都市景観による付加価値は、自然的景観を享受したり、歴史的建造物による利益を他人が享受するのとは異なり、特定の地域内の地権者らが、地権者相互の十分な理解と結束及び自己犠牲を伴う長期間の継続的な努力によって自ら作り出し、自らこれを享受するところにその特殊性がある。そして、このような都市景観による付加価値を維持するためには、当該地域内の地権者全員が前記の基準を遵守する必要がある。
当該地域内の地権者らによる土地利用の自己規制の継続により、相当の期間保持され、社会通念上もその特定の景観が良好なものと認められ、地権者らの所有する土地に付加価値を生み出した場合には、この景観利益は法的保護に値し、これを侵害する行為は、一定の場合には不法行為に該当すると解するべきである。
(20頁)☆東京高裁(二審)
(25頁)良好な景観を享受する利益は、海や山等の純粋な自然景観であっても、人の手の加わった景観であっても変わりなく、土地の所有や土地との関わりにはなんの関係もない。
都市景観といってもそれ自体多義的なものであり、その形成要因も、地域によって多様なものがあると考えられ、一定地域の地権者らが相互に自己の土地所有権に制限を加えて形成していくことが一般的特質であるとはいえない。
(22頁)
大学通りの景観形成について
☆東京地裁(一審)
(53頁)地権者らは、70年以上にわたり、公法上の規制の有無にかかわりなく自己の所有権の行使に一定の制約を課し、相互の自制と努力により大学通り及びその周辺の良好な景観を保持してきたものであり、今日、大学通りがこれほどまでに有名になり、その景観が高く評価されるとともに、一般の市民や歩行者らの心を和ませるものとなったのも、これら周辺地権者らの不断の努力の成果によるものである。
☆東京高裁(二審)
(21頁)大学通りの景観は、大正14年の箱根土地鰍フ開発構想を基本として、昭和9年ころからの国立町会等による街路樹の植栽等の住民の活動、公道の舗装、歩道の整備及び都市計画法に基づく用途地域の指定による沿道の建築物の高さ制限等によって形成されてきたものである。大学通りの地権者らがその形成、維持に協力したことはあったとしても、専ら地権者らによって自主的に形成、維持されてきたものとは認められない。
この地域においては、かねてから、環境及び景観保護を目的とした運動が盛んに展開されてきたが、それぞれの運動の主体となる住民の同一性、継続性は明らかではなく、その成果が専ら原告らに帰属すると解すべき根拠も明らかではない。
(21頁)
事業者の姿勢・対応について
☆東京地裁(一審)
(49頁)当初近隣住民に対する説明会を予定しておらず、個別訪問して近隣説明書を手交もしくは投函するという手法を採用していたこと、近隣説明書に景観保護を訴える近隣住民を敵視する過激な文言をことさら記載していたこと、国立市からの説明会開催要請についても当初は拒否し、事前審査願いの受理が拒否されてやむなく説明会を実施したことが認められる。
大学通りの景観を守ろうとする行政や住民らを敵視する姿勢をとり続ける一方で、本件土地に高層建築物を建てることによりそれまで保持されてきた本件景観が破壊されることを十分認識しながら、自らは、本件景観の美しさを最大限にアピールし、本件景観を前面に押し出したパンフレットを用いるなどしてマンションを販売したことは、いかに私企業といえども、その社会的使命を忘れて自己の利益の追求のみに走る行為であるとの非難を免れないといわざるを得ない。
(52頁)☆東京高裁(二審)
(42頁)当初説明会開催要求に応じなかったのは、近隣住民らの反対運動を必要以上に警戒したことによるものであると考えられる。
本件建物が大学通りの景観を破壊すると認識していたのであれば、自ら本件建物のセールスポイントを失い、企業の社会的イメージを損なうことになるのであり、企業としてそのような矛盾した行動をとることはあり得ず、明和地所としては、本件建物は大学通りと調和するものであって、景観を破壊するものではないという認識であったことは明らかである。
(32頁)明和地所がとった対応は、高額で取得した本件土地を企業として最大限有効活用し経済的利益を得ようとしたものであって、企業の経済活動としてはやむを得ない側面があったといわざるを得ない。
(44頁)
被害回避の努力について
☆東京地裁(一審)
(50〜51頁)明和地所が、当初から、大学通りの景観の形成と維持に歳月を重ねてきた地域及び住民の軌跡を正当に評価し、行政の指導の意図を真摯に受け止め、周辺住民らとも真面目に協議をし、ねばり強く計画の検討を重ねる意思を有していたならば、ある程度大規模なマンションであっても、大学通りの景観と相当程度調和し、近隣地権者らの景観利益を受忍限度を超えて侵害することのない建物の規模及び形状を模索することは可能であったはずである。それにもかかわらず、被告明和地所は、公法上の規制に適合している限り協議の必要はないとの考えに基づいて本件建物の建築を強行したのであり、何ら実質的な被害回避の努力をしなかったというべきである。
☆東京高裁(二審)
(43頁)行政指導は、強制ではなく、あくまでも相手方の任意の協力を前提として行われるものであり、国立市の一連の行政指導に対する非協力的な態度が、社会通念上正義の観念に反するものといえるような特段の事情は認められない。
明和地所と国立市及び本件建物の建築に反対する住民らとの対立は、当初から激しいものであった。国立市及び住民側は、あくまで大学通りの景観を守る立場から、本件建物の高さを20m以下に抑制することに腐心する余り一切妥協せず、本件土地が第二種中高層住居専用地域にあることを前提として買い受けた明和地所の立場を配慮する柔軟な姿勢をまったく示さなかった。
(43〜44頁)本件建物の建築過程において、地区計画の決定及び建築制限条例の制定がされず、国立市及び建築に反対する住民らが、高さ20m制限のみに拘泥しないで、明和地所と粘り強い協議・交渉を重ねていれば、高さの問題に限らず、本件建物全体の仕様について、住民側の要望を踏まえた明和地所の対応が期待できたのではないかとも考えられる。
(44頁)
裁判所の結論として
☆東京地裁(一審)
(53頁)明和地所は、公法上の規制がないことに目を付け、住民や行政らの反対にも耳を貸すことなく、建築を開始し、周囲の環境を無視し、景観と全く調和しない本件棟を完成させ、しかも周辺地権者らが築いてきた景観利益を逆に売り物として、本件建物の販売に踏み切ったものであり、本件建物が公法上は違法建築物ではないこと、18階建てから14階建てにするなど計画を変更したことを考慮しても、本件建物を建築したことは原告のうち3名の景観利益を受忍限度を超えて侵害するものであり、不法行為に当たる。
本件建物のうち、少なくとも、大学通りに面した棟について高さ20mを超える部分を撤去しない限り、受忍限度を超える侵害が継続することになり、金銭賠償の方法によりその被害を救済することはできない。よって、本件棟のうち、地盤面から高さ20mを超える部分については、その撤去を命じる必要がある。
(54頁)☆東京高裁(二審)
(35頁)本件土地の取得の経緯は、企業の取引行為としてその社会的相当性及び合理性に疑いを抱かせるようなものではない。
本件建物の仕様について、明和地所の対応に不十分な点があったとしても、本件建物の建築が社会的相当性を欠く違法なものであるということはできない。
(45頁)本件建物の建築により、原告らにつき、社会生活上受忍すべき限度を超える権利・利益の被害が生じるとは認められない。
(30頁)原告らが大学通りの景観について個別具体的な権利・利益を有するものとは認められないから景観被害を認めることはできない。
(29頁)
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