お酒に関する豆知識


◆酒造りについて 造り方によるお酒の酒類などを紹介します
◆酒類の製造工程図 酒造りは大きく7段階に分かれている
◆お酒の特定名称について 原材料や造り方の違いにより分類しています
◆お酒の味について お酒の味を酸度と日本酒度のバランスで説明しています
酸度/日本酒度により銘柄を選ぶ表の参考例があります
◆香味によるお酒の分類 香味による4つのタイプの分類です
自分だけの利き酒表の作り方が参考になります
◆利き酒のしかた 利き酒をしてみましょう
◆酒造好適米とは 酒造りに使われる米とは


酒造りについて
◆寒造り
日本酒は寒い季節に造られたものほどおいしいとされている。11月ごろから翌年3月ごろまでの寒の時期に1年分の酒を造ることを寒造りという。酒は腐敗しやすいため、元来、1年中醸造して販売されていたが、江戸時代に米価安定のために、米の端境期(はざかいき)にあたる9月・10月ごろの酒造が禁止された。それ以後は寒造りが習慣化し、寒のうちに造った酒が1年を通して販売されるようになった。また寒造りの酒が夏を越して完熟し、風味が増すことを「秋上がり」という。
◆速醸(そくじょうもと)
現在の酒造りの主流となっている方法。速醸は「乳酸速醸」の略で、最初から薬品の乳酸を加えて短い日数で造りをする。約週間でが完成する。
◆生(きもと)仕込み
造りの方法のひとつで、江戸時代に完成した昔ながらの手法で、生を使って醸造した酒。蒸米、米麹、仕込み水、酵母を混合した中に、他の有害菌の繁殖を抑えるために乳酸菌を育て、酵母の繁殖を助長する。乳酸菌自身も自分の出した酸によって自滅し、優秀な酵母だけが残る。生は濃厚な清酒の醸造に適し、山卸しという非常にきつい作業を伴う。山卸しとは厳冬期の深夜に蒸米、米麹、仕込み水をすり潰す作業のこと。
◆山廃仕込み
造りの「山卸し」作業を廃止した「山卸し廃止」の略。酒母()を造る段階で通常の2倍の日数をかけてゆっくりと育て、米麹の酵素力により蒸米を分解していく。ふくらみとコクがありキレとさばけのよい酒ができあがる。山廃造りには原料米に柔らかさが求められる。
◆仕込み水
酒の味を左右するのが米と水。リンやカリウムの多い硬水で仕込むと辛口の酒に、軟水で仕込むと甘口の酒になりやすい。有名な仕込み水として灘の「宮水」(硬水)、伏見の「伏水」(軟水)などがある。
◆三段仕込み
仕込みの掛米(を造るときに加える蒸米のこと)は培養酵母の許容量に合わせ、一度に入れずに分けて加えるが、確実に醗酵させるために3回に分けて仕込むことが多い。これを三段仕込みという。投入する掛米の量は、1回目(初添え)を1とすると2回目(仲添え)はその倍、3回目(留添え)は3倍というように量を増やし、1日に1回ずつ加えていく。初添えと仲添えの間には「踊り」と呼ばれる1日の休養期間がある。
◆四段仕込み
甘口の酒を造るための手法で、通常3回に分けて仕込む麹や掛米を、4回に分けて仕込む。4回目の仕込みは第四留と呼ばれる。
◆六段仕込み
三段仕込みの倍の手間をかけて追加工程を増やし、6回の仕込みを行う方法。四・五・六段の仕込みには掛米に餅米を加え、旨味が増すようにして、甘口の酒に仕上げる。
◆焙炒造り
通常の酒造りでは原料米を蒸すが、熱風で瞬間処理した白米で造った酒。熱風処理により原料米の蛋白質が変性し、酒中のアミノ酸、脂質の少ないすっきりとした清酒になる。
◆貴醸酒
仕込み水の代わりに酒を使って醗酵させた酒。甘口で、冷で飲むとおいしい。
◆新酒
搾りたての全く熟成させていない酒。新鮮で味は荒削り。12月から2月ごろに限り一般に出回る。
◆古酒
3年以上長期間低温で熟成させた酒。芳醇な風味がでる。味は中国の老酒(らおちゅう)に似ている。色は熟成の度合いにより、黄金色から褐色に近い色のものまである。古酒のなかでも5年以上ねかせたものを「秘蔵酒」、10年以上の熟成期間をおいたものは「大古酒」という。
◆濁酒・どぶろく
醪(もろみ)の状態のままで蒸米や米麹の形がそのまま残っている酒。古くからの神事のときに限りごく少量の醸造が許可されている。
◆にごり酒
醪(もろみ)の状態のままの酒が「濁酒」「どぶろく」。にごり酒は醪となった段階で蒸米や米麹の粒を細かく砕いて、目の荒い布で漉(こ)して火入れして造った清酒のこと。形状はどぶろくに似ている。とくに火入れしていないにごり酒は酵母や酵素が生きているので「活性清酒」という。


酒類の製造工程図
酒類の製造工程図

@精米
酒づくりの第一歩。精米歩合は飯米が90%〜92%なのに対し、普通酒の醸造用白米は70%〜75%。特定名称の酒となるとさらに削る部分が増す。
A洗米
精白した米を洗い、ぬかを落とし、約20時間水に浸す。寒作りの酒にとっては辛い作業の一つだが、最近は機械化されているところが多い。
B蒸米
酒米は高温の蒸気を吹きつけて蒸し米に。蒸し加減は杜氏の腕のみせどころ。ひねり餅という、蒸し米の一部をとり、手でまるく伸ばして、具合をみるのも独特な手法。
C麹づくり
蒸し米に麹菌を入れ、床揉みして、湿度、温度を保ち繁殖させる。28度前後の室という清潔な室内で行なわれる。
Dもと造り
酒母づくり工程。現在は速醸もとが主流。麹、蒸し米、水を混ぜ、さらに一定の乳酸を加えて10日間ほどでつくる。生(き)もとや山廃もとなど、昔ながらの手作りを守っている酒蔵もある。
E仕込み
麹ともとにさらに蒸し米、水を加える工程。麹の酵素が米の澱粉を糖に変え、同時に酒母がアルコール発酵を行う。普通は原料を三回に分けて仕込み(三段仕込み)、もろみが出るようにする。もろみはタンクなどに入れられ、発酵。この時の泡の出来具合が酒独特の味と香りをもたらす。期間は約15〜20日。
F圧搾
発酵が終わったらもろみを搾り、酒と酒粕に分ける工程。原酒はこの段階で、この後一度ろ過し、殺菌のため火入れし、再びタンクに戻して貯蔵。熟成後に瓶詰となる。


お酒の特定名称について
平成2年4月より、清酒のうち一定の製法品質の条件を満たしているものは吟醸酒、純米酒、本醸造酒など特定名称の用語を表示できるようになった。特定名称酒以外の酒は普通酒ということになる。

特定名称酒は、原料米に農産物検査法3等以上を使用し、醸造用アルコールを添加する場合は白米の重量の10%以内であることが決められている。

吟醸酒は、良質の酒造好適米を高度に精白し、普通の発酵温度より低温でゆっくりと仕込まれる。果実のようにフルーティな香りとすっきりした上品な風味がある。

純米酒は、醸造用アルコールや糖類は一切使わず、米と米麹と水だけで造られる。これは日本古来の製法で、米の味がそのまま生きており、芳醇で濃厚な味わいがある。

本醸造酒は、醸造用アルコールの使用量を白米1トンにつき116.4リットル以下と制限されており、糖類は一切使わない。

精米歩合は、玄米に対する重量の割合。磨いた後の白米がどれだけ残っているかを表している。高度に磨くほど澱粉質以外のものが取り除かれ、より洗練された酒になる。

◆清酒の製法品質表示基準◆
  特定名称 使用原料 精米歩合 香味等の要件


純米大吟醸酒 米、米こうじ 50%以下 杜氏の力量が問われる酒で「清酒の華」と呼ばれている。すっきりとした飲みやすさ。
大吟醸酒 米、米こうじ、醸造アルコール 50%以下 吟醸酒の中でも色沢、香り、味わいが特に良い。

純米吟醸酒 米、米こうじ 60%以下 喉ごしのいい、香り高い酒。吟醸づくり。
吟醸酒 米、米こうじ、醸造アルコール 60%以下 リンゴやバナナなどのフルーティな香り。なめらかで冷で飲むのに適する。醸造用アルコールの添加は少量。

特別純米酒 米、米こうじ 60%以下又は製造方法(要説明表示) コクと酸味が強い。
純米酒 米、米こうじ 70%以下 コクと酸味が強いのが特徴。濃厚な、いかにも日本酒らしい味わいがある。


特別本醸造酒 米、米こうじ、醸造アルコール 60%以下又は特別な製造方法(要説明表示) 「特別本醸造酒」「本醸造吟醸酒」は精米歩合が60%以下、「本醸造大吟醸酒」は50%以下。高精白米になるほど値段や味に差が生じてくる。
本醸造酒 米、米こうじ、醸造アルコール 70%以下 添加する醸造用アルコールは純粋なアルコール分に換算して四分の一以下である。「本仕込み」または「本造り」ともいう。


お酒の味について
酒の味についてよく甘口とか辛口という表現を用いるが、酒の味は大まかにいって糖分の量と酸味の量のバランスによって決まる。
清酒の糖分は一般に日本酒度で表される。日本酒度は水に対する酒の比重を日本酒度計という比重計で計ったもので、糖分が多ければ重く、糖分が少なければ軽くなる。つまり日本酒時計がたくさん沈むと、糖分の少ない辛口でプラス。あまり沈まないと、糖分の多い甘口でマイナスの表示になる。その数値が多くなればより辛口、より甘口になる。
ただ人間の酒に対する味覚は、日本酒度(糖度)だけでは決まらない。舌にまとわりつく感じや後味の具合などが大きく影響する。とくに酸味の量は酒の軽さ重さの決め手となる。酸度は1.4程度を平均とするが、酸度が多ければより濃醇な口当りになり、酸度が少なければより淡麗の味わいになる。味覚面では酸度が多ければ甘目に、酸度が少なければ辛目に感じるように働く。例えば、吟醸酒は一般に糖類が少なく日本酒度はプラスとなるが、酸度は低いため口当りは甘く感じられるものが多い。逆に、日本酒度がプラスでも酸味などが多ければ辛目に感じる。
つまり、「甘、辛、酸、苦、渋」の五味のバランスにより酒の味は決まってくるわけだ。このほか、飲む温度、肴との相性、飲む人の体調や嗜好、雰囲気によっても味覚は変わってくる。この微妙さが酒の味わいをより深いものにしているのである。

お酒の味のグラフ


下のような表をご自分で作成していって、おおよその好みの酸度/日本酒度の組み合わせで銘柄を選んでいったらいかがでしょうか。
2.0





1.9





1.8





1.7 酔鯨 純米吟醸(高知)


加賀の月(石川)
1.6 酔鯨 純米大吟醸(高知)




1.5





1.4

菊水 無冠帝(新潟) 純米大吟醸 延年(愛知)
大七 純米きもと(福島)
1.3

古都千年 吟醸酒
井筒屋伊兵衛



1.2
古都千年 純米大吟醸



1.1





1.0





0.9
越路吹雪(新潟)



酸度/日本酒度 +7 +6 +5 +4 +3 +2


香味によるお酒の分類
この表の4つの分類を知っていると、好みの酒のタイプや料理に合わせた選択がしやすくなり、日本酒の世界が大きく広がります。
この表は、専門家による数多くの利き酒を行い、そのデータをもとに「香り」と「味」を軸にして整理したものです。

香りが高い





【薫酒くんしゅ(香りの高いタイプ)

◆果実や花、樹木などの香りを放ち、清々しく華やかな香りが特徴。
◆味わいは爽やかで、苦味や旨味は少ない。後味はなめらかで、余韻が少ない。吟醸や大吟醸に多い。
◆魚介や野菜などの素材の味を生かした料理に向く。風味の強い料理は避ける。

洋風料理/白身魚のムース 魚介類のグラタン クリームシチュー
和風料理/鮎の塩焼き 山菜の天ぷら ひらめの昆布じめ
中華風料理/棒々鶏 蟹爪の揚げ物 八宝菜 春巻
  【熟酒じゅくしゅ(熟成タイプ)

◆スパイスやナッツ、きのこなどの力強い複雑な熟成香が特徴。
◆甘味に深い酸味がプラスされ、重厚な味わいをもっている。酒の色も濃い。何年か寝かせた古酒に多い。
◆脂肪分の多い濃厚な味の料理に向く。生の魚介などには向かない。

洋風料理/ラムのステーキ ビーフシチュー 鴨のロースト
和風料理/うなぎの蒲焼 鯉の甘煮 豚の角煮
中華風料理/牛のオイスターソース ペキンダック しゅうまい 甘酢あんかけ



 
【爽酒そうしゅ(軽快でなめらかなタイプ)

◆おだやかでひかえめな香り、果実香をわずかに感じる。
◆湧き水のごとく清涼感のある味わいに、ほのかな甘さとフレッシュな酸味がある。生酒に多く、本醸造酒や純米酒にもみられるタイプ。
◆軽い味つけの料理に合う。脂っこい料理には向かない。

洋風料理/シーフードサラダ ポテトサラダ ロールキャベツ マカロニグラタン プレーンオムレツ
和風料理/ニジ鱒の塩焼き 茶碗蒸 生カキ ふろふき大根 湯豆腐
中華風料理/海老のしゅうまい 春雨サラダ イカの炒め物 蟹玉
【醇酒じゅんしゅ(コクのあるタイプ)

◆果実や花の香りは少なく、樹木などの落ち着いた香り。
◆味わいは最初に甘味を強く感じ、次に適度な酸味、いやみのない苦味へと変化する。純米酒に多い。
◆味にコクのある料理に合う。淡白な料理には向かない。

洋風料理/ビーフステーキ 仔牛のカツレツ フライドチキン
和風料理/とんかつ 筑前煮 鯖の味噌煮 焼き鳥(タレ) すきやき カレイの唐揚げ
中華風料理/焼き餃子 酢豚 麻婆豆腐
香りが低い
上の表を参考にして、ご自身でいろいろな銘柄を下の座標に埋めていったらいかがでしょうか。
ご自分だけの利き酒表が出来上がると思います。

香りが高い





【薫酒(香りの高いタイプ)   【熟酒(熟成タイプ)



 
  酔鯨 純米大吟醸(高知)            
               
               
               
【爽酒(軽快でなめらかなタイプ) 【醇酒(コクのあるタイプ)
               
               
            大七 純米きもと(福島)  
               
香りが低い


利き酒のしかた
ふだん何気なく飲んでいるお酒でも、利き酒をしてみるとお酒の意外な個性が見えてきます。このお酒にこんな香りがあったのか、意外な甘さがあるな、すっきりした後味が感じられるなどなど、日本酒の色、香り、味がより鮮明に浮かび上がってきます。箱の背面、挿し紙等に書かれている解説がより理解できるようになります。

さて、利き酒の方法ですが、利き酒には白に藍の二本線が入った蛇の目猪口を使います。これがなければ、白の湯飲みでも良いでしょう。というわけで、次のような手順で行います。

1)まず猪口に冷やの酒を注ぎ、色を見ます。普通は水のような無色透明ですが、炭素ろ過をしていない吟醸酒などの場合は、わずかに自然の色を持っています。古酒(酒造りについてを参照)は別として極端な色が付いているときは、劣化している可能性があります。

2)次に立ち香をかぎます。猪口を動かさずに立ち上る香りをかいだら、軽く猪口を回して更に香りを確認します。そうしたら、酒を口に含み、舌の上全体にころがしてから、空気を吸って酒と混ぜ、空気を鼻から出します。こうすると含み香がはっきりと感じられるようになります。酒は吐き出します。

3)最後に酒を口に含み、今度は舌全体で味をみます。酒をまた吐き出し、吐き出した後の余韻もチェックします。


酒造好適米とは
清酒の原料である米は、酒造工程上、麹にする麹米、もと(酒母)を造るための酒母米、もろみ造りに使う掛け米の3つに分けられる。この中で出来上がった酒の味を大きく左右するのは、使用量からすれば4分の1弱にすぎない麹米である。一般に酒米という場合、その酒の麹を造る麹米を指している。

酒造りには主食用米である一般玄米と醸造用玄米が使われる。醸造用玄米は1等から3等に格付けされている。その基準に満たない場合、一般米と同じ検査を受けることになるが、醸造用玄米の3等の基準値は一般米の1等にあたり、主食米よりも厳しい基準となっている。吟醸酒、純米酒、本醸造酒には一般米の3等以上に該当する米が使われる。

「酒米は大粒心白を以って最上となす」といわれている。食用米の93%程度の精白度に比べ、酒米は75〜40%という高い精白を行なう。このため、十分な精米に耐えるよう粒は大きい方がよいわけだ。心白とは米の中心部が不透明な白色であることを指す。心白はその部分のでんぷんの詰まり方が疎であるため乱反射を起こして白く見える。これは水分や蒸気の出入りが容易であり、麹菌が菌糸を伸ばしやすく、結果として糖化力の強い麹が造られることになる。こうした米を業界では酒造好適米と呼んでいる。

酒造好適米としては昔から、摂津米(大阪・三島郡、豊能郡)、播州米(兵庫・河辺郡、加東郡)、備前米(岡山・赤磐郡、和気郡)などの米産地が知られている。銘柄では山田錦、五百万石、雄町、高嶺錦、八反などが有名である。とくに山田錦は吟醸酒の原料米として高い人気があり、ひっぱりだこである。

この他、よい酒造米の条件にタンパク質と脂肪の含有量の少ないことがある。含有量が多いと酒の雑味が増し、喉ごしの悪い酒になる。これらの成分は米の外側部分に多く含まれており、より多く精白すれば雑味の少ないすっきりした味に仕上がるわけである。