〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 2000/10/16 〇〇〇〇             【子 育 て 羅 針 盤】 ★パパコラム★         『夕焼けを 見上げる君の ほお赤く』                              (第4号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  講演をするときには,取り上げる話題についてコツがあります。「美談を語 るな」ということです。美談を語れば語るほど聴衆の気持ちは離れていくから です。だからといって醜い話をしても悪寒を招くだけです。  大多数の人は美しくもなく醜くもない,それなりの平凡な暮らしをしていま す。ほんの一杯の美酒があれば十分です。ですから,美談を次々に押しつけら れると疲れてきて,しまいには嫌みに感じてしまいます。それはごく素直な気 持ちです。  大変素敵な女性がいました。語り合えば飽きることなく知性あふれた話題が 続き,仕事もばりばりこなしていました。ある男性と親密になり結婚に向けて お付き合いをしていました。あるとき二人で夕焼けをながめていました。 「きれいな夕焼けだね」と語りかけられたとき,「○○の描いた夕焼けの色は ・・」と続けていきました。それからしばらくして二人は別れ,男性は別の女 性と結婚しました。  男性はつきあっていて今ひとつピンと来なかった理由,なぜかしら疲れる訳 が分かったからです。夕焼けの美しさを語るのではなく,夕焼けを美しいと共 感できることが大切だったのです。つきあっていて楽しいタイプと,一緒にい るとほっとするタイプは違います。もちろん,男性が結婚した女性は夕焼けを 共感できる人でした。  美しさを造り出そうとすると大変です。それは多分不自然だからなのでしょ う。同じように美談とはそうしようと思ってしたことではないはずです。ごく 自然に発生したはずです。できすぎた美談に胡散臭さを感じるのは,仕組まれ たというにおいのせいです。美談を語って聞かせようとする話者には,美談を 目標にして努力してほしいという願いがあります。しかし,聴衆は「それはま がい物ではないか?」と,直感的に感じ取っています。  美しさを絵に見ている女性は美を知性的に考えています。自らの感性が後回 しになっています。確かに絵は美の素晴らしい仲介物であり,作者は美の発見 者です。それでも目の前に広がる夕焼けは絵の夕焼けの原風景なのです。感性 が素直に受け止めさえすればいいのです。その素直さがあれば,人はお互いに ほっとするはずです。  道ばたの草花に目を留めて「美しい」と心で感じる人が,美しい人でしょう。 美しさを見つけられる人です。美しさは追い求めるものではなくて,見つける ものだからです。 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 2000/10/16 〇〇〇〇            【子 育 て 羅 針 盤】 ★子育ち12章★         『大好きな かあさんいつも ほほえんで』                              《第4章》 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  ■はじめに  第3章では,育ちにとって言葉が大切であることについてふれました。  普段何気なく使っている言葉ですが,それが育ちの主食なのです。  ご飯を食べずにお菓子ばっかりでは不健康ですね。  同じように,おもしろいギャグ言葉だけでは心貧しくなります。  人はちょっとした一言で傷ついたり,励まされたりします。  親から子どもへ,子どもから親へ,思いのすれ違いが起こります。  どうしてなのでしょうか? どうすればいいのでしょうか?  親は子どもに親心を押しつけてはいませんか?  親の経験のない子どもに,親心など分かりようがありません。  お年寄りの気持ちが想像できないのと同じです。  親子の心が通い合うような言葉づかいがあるはずです。  まず,親が美しい言葉づかいをしてみせなければなりません。  ・・・それが今回のテーマです。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 【質問4:あなたのお子さんは,美しい言葉づかいをしていますか?】  《「美しい言葉づかい」という言葉について説明が必要ですね!》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○なんべん言ったら分かるの?     玄関の靴を脱ぎっぱなしにする子どもに,ママはいい加減うんざりし    ています。「いつもきちんとしなさいとあれほど言っているのに,言う    ことを聞かないんだから」と泣きたくなります。似たようなことはたく    さんあるでしょう。一所懸命にしつけているつもりですが,しつけられ    てくれません。しまいにはわざと逆らっているのではないかと落ち込ん    だりします。     「きちんとする」ことがどういうことか,具体的に教えなければ子ど    もには分かりません。幼児であれば,例えば玄関に靴の形を書いてやっ    て,それにそろえるように指示してやるとできるようになります。きち    んとという言葉は曖昧なので,親が何度伝えたつもりでも,子どもに意    味は伝わりません。     因みに後片づけのできる子は概して成績がよいと言われることがあり    ます。  ・・・伝えたと伝わったの違いは,具体的であるかどうかです。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○人のことはどうでもいいの!     妹がお兄ちゃんのいたずらを言いつけにやってきます。「ママー,お    兄ちゃんがね,塀に落書きしているよ」。「またいたずらしてるの。し    ようのないお兄ちゃんね。後で叱っておきましょうね」。そう答えなが    ら,ママはちょっぴり心配です。仲良く遊んでいるのに,妹は何かとい    えば,お兄ちゃんの悪さを告げ口してきます。イヤな性格に育っている    のではないかと気がかりで,人のことなど構わないようにしてほしいと    内心では思っています。     ママは妹をもっと見つめてやるべきです。「兄を後で叱っておこう」    と言ったときの妹の表情です。うれしそうにしているでしょうか? そ    うではないはずです。試しに「そう。でもあなたはしなかったのね。偉    いね」と言ってやると,きっと喜ぶはずです。自分もまねして落書きが    してみたかったけれども,してはいけないと我慢していたのです。その    健気さを分かってもらえれば,兄のことなどどうでもよいはずです。     子どもは自分の気持ちを上手に表現できません。表立つ行動を語るこ    としかできません。しなかったことは形がありませんから,話せないの    です。もちろん,しなかった気持ちも伝えられません。言外に隠された    子どもの気持ちを,聞き取ってやる聞き耳が求められます。妹は決して    イヤな性格などではないので,安心していいでしょう。ママのお眼鏡違    いなのです。  ・・・伝えたと伝わったの違いは,気持ちを聞き取るかどうかです。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○ワアー きれい!     ママと一緒に歩いている子どもが,道ばたに咲いている花を見て立ち    止まっています。「何をぐずぐずしているの,早くいらっしゃい」と急    かせます。心が育つ大切なチャンスを逃そうとしています。心の育ちは    心が動いているときにきっちりと定着させなければなりません。     子どもは風景の中から花を見つけだして何かを感じています。そのと    きに,ママが「きれい花ね!」と言葉を掛けてほしいのです。そうすれ    ば,子どもは今感じている気持ちを「きれい」と表現出来ることを覚え,    意識することができます。同時に,「きれい」の一言でママと共感出来    る,つまり心が通いあうことを確認します。     心を教えるということは,相応しい言葉による表現を教えることです。    今どきの若者が心の動きのすべてを「すご〜い」の一言でしか表現でき    ないようですが,言葉の貧しさは心の貧しさにつながります。  ・・・花の美しさを何通りの言葉で表現できますか? ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○美しさの秘密?     人は花を見て何故美しいと思うのでしょうか? 普段はそんなことは    考えたことも無いでしょう。美しいから美しいと感じているだけですよ    ね。     植物は昆虫に向けた「受粉を手伝って」というサインを花に託してい    ます。そのサインを感じ取る本能が人にも残っているようです。花の語    り掛けが聞こえてくるのです。もちろん聞く気にならなければ聞こえま    せんが。     生きることへの関わりが生きているものの本性です。花によって世代    を交代させようとする植物の生きる姿に,人は生物として共感出来るの    です。その生への喜びの感情を「美しさ」と人は定義してきました。     因みに,チョウチョは「菜の花に飽いたら桜にとまれ」といった受粉    を混乱させるような不人情(?)な飛び方はしないそうです。  ・・・美しさとは,生きる喜びへの共感に名付けられた言葉です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○なぜだろう? ママの顔を見たら逆らいたくなる!     連れだって歩きながら,それぞれが携帯電話で別の人とお話ししてい    る風景は不思議です。自転車を携帯片手にながら運転する若者も増えて    きました。会っているときに話せばいいのにと思いますが,電話の方が    話しやすいそうです。なぜなんでしょう?     人と向き合うと疲れるようです。自分を語ることは得意ですが,話を    相手にあわせて転がしていくのは苦手なためのようです。それに電話だ    と取り繕いが簡単にできます。話をやめたいときも,どうにでも理由を    付けられます。相手には見えていないのですから。     コミュニケーションは言葉を使います。言葉が文字になり,記号化さ    れ,情報化が進んでいき,携帯電話になりました。しかしそれは主食で    あるご飯やパンと同じであり,食事ではありません。言葉を発する人の    表情や態度というオカズが揃ってはじめてコミュニケーションという情    報の食事になります。     ママがきわめて優しい言葉をかけながら冷たさをたたえた表情をして    いると,子どもは戸惑いを感じます。それが続くと情緒不安定になり,    やがて心の病気にかかっていくそうです。タテマエの言葉とホンネの表    情を見分けます。「あなたには手を取られたくない」,「あなたには面    倒掛けられる」といった否定的な気持ちは,表情になって発信されます。    子どもはそれを母親からの受動的な攻撃と読み取ります。     ママは大変だなと思っていても,次から次に追い立てるようなママの    不機嫌な顔を見ていると,子どもは防衛本能からつい逆らわざるを得な    くなります。そうするようにママがし向けているのです。子どもの行動    は親の鏡とみなすことができます。  ・・・美しい会話は,言葉と表情とがぴったりと一致したものです。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  〇うれしいときは?     親は子どもが幸せであるとき,子どもにいいことがあったときは,と    てもうれしい顔になるものです。自分のことではないけれど幸せな気持    ちになることができます。人が社会的動物であると言われるのは「共存    原則」を持っているからです。喜怒哀楽を共感する能力です。この共感    力を眠らせてはなりません。     地方から都会に出稼ぎに出ていたお父さんが,年末に帰郷する日が明    日です。家には小学2年生の女の子がいました。「明日,お父さんが帰    ってくるね。お父さんに何をお話しする?」,「分からない」,「どう    して?」,「だっていっぱいあるから」。あくる日,駅に出迎えに行き    ました。「お父さんがもうすぐ帰ってくるよ。お父さんの姿が見えたら,    何て言う?」・・。     女の子は駅の出口を見ながらしばらく考えていましたが,「笑う」と    ひとこと言いました。大人なら「お帰りなさい」と迎えるでしょう。で    も,その子は笑顔を見せると言ったのです。笑顔は人を迎え入れる最高    のサインです。心を思いっきり開いて・・。  ・・・笑顔がなぜ美しいのか,最高のおもてなしだからです! ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《美しい言葉づかいとは,気持ちが通い合い共感することです》  ○言葉のしつけは体験をベースにして共感を表現していけば,ごく自然にで きるはずです。うまくいかないときは,自分の体験を押しつけているときです。  【質問4:あなたのお子さんは,美しい言葉づかいをしていますか?】    ●答は?・・・もちろん「イエス」ですね!? ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ★編集後記★  お届けした「子育て羅針盤」第4号はいかがでしたか。 話題を飛び石状に並べていくスタイルを採っていますので,読み取りにくい面 があるかもしれません。ただ,発行者は,行間を大きく開けることで皆さんに 隙間を埋めて頂くことを期待しています。ご一緒に考えようというつもりなの です。あなたの飛び石がどちらにつながっていったか,よろしかったら教えて ください。 ◎第4号から購読されている方へ  第3号を発行(10月9日正午)後に購読登録をされた方は,恐れ入ります が配信協力先,もしくは下記の発行者URLからバックナンバーをコピーして くださるようにお願いいたします。 ☆予告☆  次号では  【質問5:あなたのお子さんは,自分で決めていますか?】 について考えます。お楽しみに! ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ※案内※  リビング北九州に4年間掲載されたコラム「パパな毎日」や,  子育てに関するテキスト,調査結果などをホームページ「徒然窓」      http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/  に掲載しています。予習ができますので,のぞいてみてください。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ○タイトル:『子育て羅針盤』 [KOSODATERASINBAN] 〇発行責任:モリのクマさん ○発行期日:2000年9月25日より,毎週月曜日 ○連絡mail:mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp 〇URL=http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/MailMag/MMannai.html     (こちらからも,このメールマガジンの登録解除ができます) 〇転載許可:クマさんまでメールのご一報下さい。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 〇配信協力:  ・インターネットの本屋さん『まぐまぐ』=http://www.mag2.com/     解除:http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm  ・メルマ***『melma!』=http://www.melma.com/     解除:http://www.melma.com/mag/37/m00019737/     BBS:http://bbs.melma.com/cgi-bin/forum/m00019737/  ・読者と発行者を結ぶ架け橋『Pubzine』=http://www.pubzine.com/     解除:http://www.pubzine.com/detail.asp?id=9104  ・無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』=http://melten.com/     解除:http://melten.com/m/2166.html 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇