〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 2000/11/06 〇〇〇〇           【子 育 て 羅 針 盤】 ★パパコラム★        『なにごとも 努力次第と 責められる』                             (第7号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  台所から連れ合いの呼ぶ声が聞こえてきます。行ってみると「これ開けて」 と容器が差し出されます。すっと開けると「どうして」と言いながら受け取り ます。力がないのは女性だからと思っていましたが,女性の中でも力を借りて いるようなので,瞬発力がかなり弱いのでしょう。  奥さんたちが夫の存在感を実感するときはふたが開かないとき,という話を 耳にしたことがあります。我が家は典型的なケースのようで,喜ぶべきかどう か迷っています。無いものを補い合うのが夫婦ですから,なけなしの力でも役 に立っているのなら,幸せなカップルなのでしょう。  世の中にはいろんな力があります。シドニーに参集したオリンピックの選手 は力を競い合いました。一見すると筋力の競技ですが,散見すると知力も侮れ ないようです。いわゆる作戦が必要になります。もちろん薬物の力はフェアで はありません。その上に勝負運が被さっています。運命の女神の気まぐれが勝 敗を分けることもあるようです。人力には限界があるということでしょう。  努力という言葉が好きな人がいます。ある目標に向かって努力することは素 晴らしいことです。そのためにとかく努力が求められます。うまくいかないと 努力が足りないと責められます。しんどいことですね。「努力しろ 言う人な ぜか 失敗者」という中学生の句があります。努力が報われるかどうかは最終 的には運が左右します。それにもかかわらず,失敗の憂き目にあった人は報わ れなかったのは努力が足りなかったからと反省しているからでしょう。努力の 過信です。努力だけがすべてではないのですが。  目標と目的の違いが努力に関わっています。努力目標と言いますが,努力目 的とは言いません。目標は人事の範疇ですが,目的は運が関与しています。矢 で的を射抜こうとするとき,弓に番えた矢は的から外れた中空の目標をねらい ます。放たれた矢は風任せで飛び,目的の的に近づきます。この間は人はどう しようもありません。当たるかどうかは運任せです。人が努力できるのは目標 までです。  野球のバッターはヒットを打つ目的でピッチャーの投げた玉にバットを振り ます。しかし,3割打てればよい方です。バッターの努力目標は3割打者なの です。10割は努力のはるかならち外にあります。  力に頼るのもほどほどにしないと,無駄な努力をすることになります。それ が現実感覚です。何かあれば大人も子どもも「がんばれ」と言います。励まし ているのでしょうが,言われる方にすればこれ以上がんばりようがない所まで 努力しているときには,腹立たしくなるでしょう。気をつけてください。 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 2000/11/06 〇〇〇〇           【子 育 て 羅 針 盤】 ★子育ち12章★         『学んでも 力にならない なぜだろう』                             《第7章》 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  ■はじめに  第5,6章では,「もう一人の子ども」が育っていると書きました。  そう考えると,子育てのいろんな問題が見えてくるからです。  そのことをもう少し覚えておいて下さい。  子どもには健やかに育って欲しいですね。  何が育って欲しいですか?  思いやりのある優しい子どもですか?  最近よく耳にする生きる力が備わってくれたらいいのですが,  それがいったいどんな力なのかよく分かりません。  とりあえずは将来に向けて学力をつけてもらうしかないのかも?  子どもはいろんな力を身に付けていきます。  歩く力,話す力,聞く力,書く力,読む力,作る力,考える力・・・  その「力」とはどういうものか考えるのが,この章のテーマです。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 【質問7:あなたのお子さんは,力とは何かを知っていますか?】  《「力」ということの意味について説明が必要ですね!》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○金の力とは,どのように生まれるのでしょうか?     力として最も身につまされるのは,金の力です。通貨は通過するだけ    です。力の例題として考えてみましょう。お金は有るところから無いと    ころに動くときに,力が発生します。お金持ちとはお金を使う人のこと    で,溜め込んでいる人はただのケチにすぎません。水も流れるときに力    を生みます。つまり,力とは使うときにしか現れません。出し惜しみを    すれば無力なのです。     知力は知識を他に向けて使うときに現れる力です。自分のために使う    のは力とは言いません。簡単に言ってしまえば,役に立てるときに力が    出てきます。能力の能はできるという意味ですから,行動可能性が引き    出された状態が能力が発揮されたということになります。  ・・・力とは他に向けて何事かを為そうとしたときに生まれるものです。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  〇子どもの力の育ちは,どのように見たらいいのでしょうか?     赤ちゃんが育っていくにつれて,「ハイハイができるようになった」,    「伝い歩きができるようになった」,「立って歩くことができるように    なった」と,「できること」を親は喜びます。やがて言葉を覚えて喋り    だすと,「こんなことを言えるようになった」と,親は成長を実感して    いきます。     前章で,もう一人の子どもは言葉を母乳として成長すると言っておき    ましたが,話せるのはもう一人の子どもの育ちなのです。言葉を覚えて    さまざまなことを知るようになります。つまり知力が身についてきたと    考えられます。     ここで育ちの見方について注意をしなければなりません。赤ちゃんの    時は子どもの能力を見ていますが,おしゃべりについてはもう一人の子    どもの知力を見ているということです。どういうことかというと,知っ    ていることとできることは違うということです。     思いやりの話を知っていても,それを実行できなければ能力とは言え    ないのです。もう一人の子どもは知っていますが,それを実行できるの    は子どもなのです。両方の成長が揃わなければ無意味です。     もう少し説明をしておきましょう。ママがキュウリを薄く切っていま    す。もう一人の子どもはキュウリを包丁で切ればいいことを知っていま    す。ところがやってみるとそう簡単ではありません。パパが釘を打って    います。金槌で叩けばいいと知っていても,いざやってみると釘は曲が    ってしまって打ち込めません。     知っていることは必要ですが,それだけでは十分ではないのです。自    分のできる力にするためには体験するという大切な育ちをしなければな    りません。これが現実感を育み,もう一人の自分の肥大化を抑制してく    れるのです。  ・・・子どもの育ちは「できるようになった」時が本物です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  〇力は,精一杯出せばいいのでしょうか?     少子化のために家庭で子どもたちの相手は大人ばかりです。パパと遊    ぶのが好きな子どもたちは,思いっきりぶつかっていきます。パパは強    さを見せようとがんばっていますが,子どもはしつっこく食い下がるも    のですからさすがにくたびれてしまいます。ほほえましいのですが,親    としての遊び方は少し工夫した方がいいでしょう。     元気のいい子は思いっきり父親にぶつかっていきます。それでも父親    はびくともしません。「パパはすごーい」と思います。そのことは大切    な親子の触れ合いなのですが,そのままだと困ったことが起こりかねま    せん。子どもが友達に同じようにぶつかっていくと,相手の子どもはた    まらず押し倒され怪我をするかもしれません。乱暴な子というイメージ    を持たれてしまいます。相手を見て力を加減することを教えておかなけ    ればなりません。     おじいちゃんがいて相手をするとしたら,どうするでしょう? おじ    いちゃんは数度目には,「○○ちゃんは強いな。負けた負けた」と言っ    て降参します。本当におじいちゃんはしんどいのかもしれませんが,実    のところは子どもに力の加減を教えているのです。力を入れすぎると相    手は転ぶことを体験させています。何気ない光景ですが,核家族で失わ    れた子育てなのです。     無い物ねだりをしてもしようがありません。パパの出番は,子どもが    ムキになってきたら負けてみせることです。そのことで子どもに「パパ    は弱い」と思われることはありません。パパは相手が子どもだったら受    けられないというところで,親のしつけとして負けなければならないの    です。パパに勝ったという体験は子どもに強いという気持ちを与え,力    を加減することを覚えさせます。  ・・・力の加減を経験しないと,力の発揮が暴力にすり替わります。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○学力は,どうすれば身に付くのでしょうか?     かなり前に「新しい学力観」という言葉が登場しました。「新しい」    という意味は何でしょうか? 従来,学力は「知って覚えるもの」とい    うイメージが持たれていました。いわゆる入試対策の知育偏重です。自    分による自分のための勉強が学力であるという考え方です。学力は学ぶ    力と書きますが,何を学ぶのかという点が欠落していました。     一言に能力と言いますが,その具体的な内容があいまいです。能力の    中身は例えば,知力,徳力,体力と分けてやれば見えてきます。もう一    人の自分が知力を,自分が体力を,そして一緒になって徳力を備えたと    きに,できるという行動可能性が「してあげられる」という能力にまと    まります。こう考えてくると,新しい学力観とは,知る学力+使える学    力=できる学力を目指すものだということになります。     ただ単に知ることは教えられれば済みます。万引きはいけないことと    子どもでも知っています。こうした知力をどのように使えばいいのか,    それは体験を通して学ばなければなりません。学力とは使い道を学ぶこ    となのです。能力は教えられるものではなく,自ら学ばねば獲得できな    いものです。このできるという能力を,最近は「生きる力」と称してい    ます。     学力について,もう少し具体的に見てみましょう。学校で授業を受け    て知識を得ます。ところで,子どもたちには理解の程度に差が現れます。    いまいち内容を飲み込めないうちに時間切れになります。そのときから    学びが始まります。分かった子がよく分からなかった子どもに教えるの    です。理解したことを友達に自分の言葉で教えてあげることが学力です。    授業という受け身から友達に教えるという働きかけによって,覚えたこ    とが使われて,できる学力に完成されます。この学び方は私たちがかつ    てしていたことであり,家庭でも兄が弟に教えていました。     学校とは学ぶところと書きますが,いつの間にか授業を受けるところ    と錯覚しています。それが学びを分からなくしてしてしまいました。使    い方を学んでいないのです。学びを取り戻しませんか?  ・・・使わない学力は学力ではありません。ただの守知奴?です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《力とは,他に対してしてあげられることを意味しています》  ○今どきの子どもには,「友達に教えたら損する」という気持ちがあるのか もしれません。お金を貯め込んで人のためには使わない人をケチと世間では言 いますが,そんな自分勝手なケチな子どもが育っているとしたら,先行きは不 安ですね。この点については,次回に触れることにします。  【質問7:あなたのお子さんは,力とは何かを知っていますか?】    ●答は?・・・どちらかと言えば「イエス」ですね!? ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ★編集後記★  お届けした「子育て羅針盤」第7号はいかがでしたか。  子育ち12章も,いよいよ後半に入ってきました。12回で完結しますので, 今しばらくご購読をお願いします。予定では12月11日(月)で終了します が,冬休み前の18日には「まとめ」の号をお届けしようと思っています。  皆様の感想が聞けたらと思っていますので,メールを送って下さるか,下記 にご案内している「掲示板」に書き込んでくださるようにお願いします。 ◎第7号から購読されている方へ  第6号を発行(10月30日正午)後に購読登録をされた方は,恐れ入りま すが配信協力先,もしくは下記の発行者URLからバックナンバーをコピーし てくださるようにお願いいたします。 ☆予告☆  次号では  【質問8:あなたのお子さんは,力を生かそうとしていますか?】 について考えます。お楽しみに! ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ※ご案内※  ●リビング北九州紙に4年間掲載されたコラム「パパな毎日」や,  子育てに関する考察テキスト,調査結果などをホームページ「徒然窓」      http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/  に掲載しています。予習ができますので,のぞいてみてください。  ●また皆様の場として掲示板を設けました。ドウゾ積極的にご利用下さい。    http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/bearbbs/index.html  ●講演依頼を希望される方は,メールでお問い合わせ下さい。 ※お願い※  もし,この「子育て羅針盤」がお気に召したら,是非あなたのメル友にも登 録をお勧めして下さい(登録は下記URL)。一人でもたくさんのママやパパに読 んでいただいて,みんなで子育てを考えるきっかけにしていただければと願っ ております。子育てを自分でチェックできる素敵なママやパパになってほしい とはじめたメールマガジンです。  皆様が育てていくマガジンであるように,応援をよろしく・・・。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ○タイトル:『子育て羅針盤』 [KOSODATERASINBAN] 〇発行責任:モリのクマさん ○発行期日:2000年9月25日より,毎週月曜日 ○連絡mail:mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp 〇URL=http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/MailMag/MMannai.html     (こちらからも,このメールマガジンの登録解除ができます) 〇転載許可:クマさんまでメールのご一報下さい。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 〇配信協力:  ・インターネットの本屋さん『まぐまぐ』=http://www.mag2.com/    登録・解除:http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm  ・メルマ***『melma!』=http://www.melma.com/    登録・解除:http://www.melma.com/mag/37/m00019737/     BBS:http://bbs.melma.com/cgi-bin/forum/m00019737/  ・読者と発行者を結ぶ架け橋『Pubzine』=http://www.pubzine.com/    登録・解除:http://www.pubzine.com/detail.asp?id=9104  ・無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』=http://melten.com/    登録・解除:http://melten.com/m/2166.html 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇