〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 2000/11/13 〇〇〇〇           【子 育 て 羅 針 盤】 ★パパコラム★       『あれがない これもないから はじまらない?』                              (第8号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  物事をはじめるとき,「一からはじめる」と言います。1からはじめて2, 3・・と数えることからの類推でしょう。川辺に立っていると,魚が泳いでい るのが見えます。何匹いるかなと数えます。魚がいるから数えられます。もし いなかったら数えることはできません。物事が始まりません。  子どもたちが「○○が無かったから」と言い訳することがあります。遊びで も,すべての材料が揃っていないと,はじめられないと思っています。ゲーム 機がないと遊べなくなっています。無ければ代わりになるものを探し出してく るという発想がありません。  近くのコンビニに食パンを買いにやりますと,「売り切れて無かった」と手 ぶらで帰ってきます。「他のパンはなかったの?」とたずねると,「あった」 と言います。別のお店に廻ってみるとか,別のパンを買ってくるとか,臨機応 変に対応することができません。  言われたことしかできないと叱っては,しつけを放棄することになります。 ここからがしつけの始まりなのです。無かったらどうすればいいのかを教えて やらなければなりません。考えるというしつけです。これが創造性の発端です。 「必要は発明の母」という言葉は,無いものにどう対応するかという問題を考 えるから創造が生まれるという意味です。  一からはじめるのは簡単です。すでに材料は揃っているからです。物事は0 からはじめるところに真髄があり,そこにこそ歓びが埋まっています。見ず知 らずの二人が縁あって結ばれ,無からはじめた暮らしによって夫婦になり,や がて子どもを生み出します。無から命を生み出す歓びがあります。  ところが現在は,すべてを揃えた上で結婚し,余裕ができたら出産を考えま す。環境が整っていないから子どもは産まないという発想があります。一から はじめようとしているから,始まりません。暮らしや人生を無から創造しよう としていないので,結婚しているという喜びもなく,破綻を待つだけです。0 からはじめてみればいいのです。そこで「考える人」になれますし,楽な道で はないからこそ人生の歴史を自分で書き上げることができます。そんな人が増 えれば社会はよい方に変わっていくはずです。  昔は「この人とだったら一緒に苦労できる」と0から結婚していたので,少 しのことでも幸せになれました。今は「この人とだったら幸せになれる」と1 から結婚しているので,少しのことでも不幸になります。どちらが幸せなので しょうか? 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 2000/11/13 〇〇〇〇           【子 育 て 羅 針 盤】 ★子育ち12章★        『ありがとう 素直に言える 子どもたち?』                              《第8章》 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  ■はじめに  第7章では,「力」とは外に向けて出すときに現れると書きました。  自分のために使う学力は,生きた力にはなりえません。  なぜなら,いわゆる知識をただため込んでいるに過ぎないからです。  子どもは成長するにつれて,一般の大人社会につながってきます。  社会人として育たなくてはなりません。  そのためにしつけておかなければならないことは何でしょうか?  道を踏み外した子どもたちには,罪の意識がないように見受けられます。  近所の人は,「あんないい子が!」と驚いています。  どうして平然と悪さをしでかしてしまうようになったのでしょうか?  大事なしつけを怠ってきたためです。  素直でいい子というイメージを再確認する必要がありそうです。  社会生活上で最も大切なキーワードを探すのが,この章のテーマです。  ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 【質問8:あなたのお子さんは,力を生かそうとしていますか?】  《「力を生かす」ということについて説明が必要ですね!》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○優秀な子がアブナイことをしでかすのは,どうしてでしょうか?     たとえ話からはじめましょう。大学で船のエンジンについて学んだ優    秀な技師が,船を高能率で運転しています。技能をフルに発揮していま    した。でも,その船は海賊船でした。技能は正しく使われなければ意味    がありません。毒ガスを作った優秀な若者もいましたね。     専門家になることの弱点は,力を発揮することにだけ関心が向いて,    力を生かすことが疎かになることです。それぞれのエキスパートが集ま    って仕事をする場合,自分の力が何に使われているのかが見えにくくな    ります。与えられた役割だけ果たしていればいいという狭い世界に閉じ    こもるからです。     力を生かすためには,どんなことを意識しておけばいいのでしょうか?    賢いことはいいことですが,ずるがしこいことはいけませんね。なぜで    しょうか? 映画のなかで,フィリップ・マーロウという探偵が「強く    なければ生きていられない,優しくなければ生きている資格がない」と    語りました。確かにそうなのですが,それを子どもたちにどのように伝    えていったらいいのでしょうか? そのことを考えてみましょう。  ・・・力を生かすことは,人が生きていく資格に関わることです。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○毎日どのようなルールを意識して暮らしていますか?     皆さんは法律の勉強をしたことがありますか? 社会生活上で「して    はいけないこと」が書いてある刑法など読んだことのある人は少ないで    しょう。それなのにみんな平気で暮らしています。法律など無縁なもの    としていて,大丈夫ですか? どうして法律を知らなくても暮らせるの    でしょう。     法による禁止事項は行動の赤信号です。犯せば罰せられます。ところ    が,普通は行動の黄色信号で停止しています。「人に迷惑を掛けないよ    うに」という信号です。だから,法を知らなくても暮らしていけるので    す。もし人の迷惑が見えなくなったり無視したりすると,そのときは法    に触れるようになります。     人に迷惑をかけないように暮らそうとしても,少しの迷惑はかけてし    まいます。そこで「済みません」と謝罪をしたり,「ありがとう」と感    謝をします。お互い様という暮らしが営まれていきます。そこで子ども    にも,「アリガトウは?」と,しっかりとしつけます。アリガトウが言    える素直ないい子が育っていきます。ここまではいいのですが,・・・。     問題が二つ出てきます。一つは「迷惑を掛けなければ」という甘えで    す。知った人の誰にも迷惑をかけていないという逃げ道を見つけてしま    います。その逃げ道はやがて迷惑を考えないわがまま道になります。バ    スのなかで騒ぐ子どもを放置する親も,人の迷惑に対する感度が鈍って    います。マナーやエチケットという言葉が置き去りにされています。お    そらくみんなのひんしゅくを買うことで,袋小路に迷い込み立ち往生す    ることでしょう。  ・・・迷惑をかけないルールは必要ですが,十分ではありません。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○鼠小僧はどうして義賊と呼ばれたのでしょうか?     もう一つの問題を例題を使って考えてみましょう。江戸時代に鼠小僧    と呼ばれた盗人がいて,大店から金を盗み,貧乏な長屋の住人にばらま    いていました。みんなよろこんで義賊とたたえていたそうです。このこ    とから大事なポイントが見つかります。     世の中は「ギブ・アンド・テイク」で動いていますね。そのことはよ    く知られていますが,大事なことはギブが先であって,「テイク・アン    ド・ギブ」と順序を逆にしてはいけないということです。鼠小僧はテイ    クした後にギブしています。普通の泥棒はテイク(取る)するだけです    が,鼠小僧はギブ(与える)しているので,義賊と呼ばれたのです。で    もやはりテイクを先にしているので泥棒にかわりはありません。テイク    を先にするのは闇のルールです。     子どもたちの非行,例えば,万引き,自転車盗,恐喝,おやじ狩り,    窃盗などは,いずれも盗ること,取ること,つまりテイクする行動です。    闇のルールに従っています。その上,そのことに対して間違っていると    か,悪いといった意識が希薄です。実は,そのように育てられてきたか    らです。その秘密は,鼠小僧が盗んで帰る際に言い捨てる「アリガトウ」    という言葉にあります。次に続きます・・・。  ・・・鼠小僧も素直に「アリガトウ」と言っています。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○美しい言葉には刺があるかもしれません?     アリガトウは最も美しい日本語だと言われています。だから,アリガ    トウと言える子どもは素直ないい子なのです。しかし,この言葉は美し    いが故に棘を潜めています。その棘は「受け取る(テイク)」ときの言    葉だということです。     子どもは親や周りの大人からあれこれ世話を受けて育ちます。その都    度「アリガトウ」の言葉をしつけられ,素直に育ちます。あれこれ欲し    いものが出てきても,ただおねだりするだけで待っていることしかでき    ません。やがてテイクできる獲物を親以外に探すようになります。テイ    クすることしか知らないので,店や他人から取ろうとします。そうすれ    ばアリガトウと言えるからです。     かつて,豊かさが実感できないという言い方がされたことがあります。    欲しいものはおよそ手に入って,これ以上欲しいものがないのに,豊か    である実感がわかないということのようでした。ものの豊かさは受け取    る豊かさ,アリガトウという豊かさです。テイクには際限がないから当    然です。大人も子どももアリガトウに縛られている世情は不健全です。  ・・・アリガトウは,テイクするときの言葉です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○ものの豊かさより,心の豊かさに!     人間関係は二人の人から成ります。アリガトウは待っている言葉です    から,関係が作れません。いきなりアリガトウはあり得ません。知らな    い他人が行き会ったとき,ドウゾと譲る人がいるから,アリガトウと関    係が成立します。ギブアンドテイクを思い出してください。「ギブする    ときドウゾ」と言い,「テイクするときアリガトウ」となります。     英語でプリーズとは,相手を喜ばせるという意味があります。ドウゾ    と相手に与えることが先です。これが表社会のルールなのです。自分が    できることを相手にドウゾと提供すること,それが「力を生かす」とい    うことです。繰り返しますが,テイクするために用いられる力は,闇の    力です。     子どもには,アリガトウとドウゾをセットにして教え,ドウゾが先な    んだとしつけなければなりません。ドウゾと言える子は非行と無縁にな    ります。本当にいい子とは,ドウゾが使える子どもです。ドウゾという    言葉は,優しく思いやりのある子どもにしつける魔法の言葉です。同時    に,人に向けて自分から働きかけることができますから,自発性や積極    性にもつながっていきます。     ものの豊かさがアリガトウの豊かさなら,心の豊かさはドウゾの豊か    さです。イギリスには「牛乳を飲む人よりも,届ける人が健康になる」    という俚諺があるそうです。人にドウゾと行動することが,ひいては自    分の幸せへの道になります。どちらの豊かさがお望みですか?  ・・・ドウゾが表社会のキーワードだと思い出しましょう。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○ドウゾのしつけは?     子どもにドウゾをしつけることは難しくありません。ドウゾという立    場に置いてやればいいのです。そのために,親や大人がアリガトウの立    場にいて,子どものドウゾをひたすら待てばいいのです。子どもがタマ    にでも手伝ってくれたら,そのときを逃さず,「アリガトウ」と笑顔で    言ってやるのです。     非行に落ち込んだ子どもは,親から「アリガトウ」と言ってもらった    ことがないと語ります。大人がアリガトウと言えば,子どもは自然にド    ウゾと言えて,その喜びを体験できます。ママが喜んでくれたというこ    とほど,子どもをやる気にさせることはありません。     注意してほしいのは,親が「しなさい」と命じてさせたら,アリガト    ウと言えないことです。アリガトウは待つ言葉であることを忘れないで    ください。子どもが持っている力を「ママに向けて使って!」と,受け    取り手になってあげることが大切です。それが基本的な「生きた力」の    発揮法だからです。  ・・・親がアリガトウと言うことが,子どもへのドウゾのしつけです。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《力を生かすとは,ドウゾと引き出されているかということです》  ○親は保護者として子どもにドウゾという立場にいます。そのことが,子ど もをアリガトウしか言えない子どもに育てます。親が子どもに手伝ってもらう ようにし向けて,アリガトウと育てれば,子どもは本当にいい子に育つはずで す。昔はそうやって育てていたのですから,できないはずはありません。  【質問8:あなたのお子さんは,力を生かそうとしていますか?】    ●答は?・・・もちろん「イエス」ですね!? ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ★編集後記★  お届けした「子育て羅針盤」第8号はいかがでしたか。  回を追う毎に,文章が長めになってきました。いろんなことをお伝えしたい ので,つい冗長になります。反省しています。今回は子どもたちの現状の中で 最もお話ししておきたかったことでしたので,ご容赦下さい。次回からは,少 しセーブしようと思っています。  皆様のご感想やご意見が聞けたらと思っていますので,メールを送って下さ るか,下記にご案内している「掲示板」に書き込んでくださるようにお願いし ます。 ◎第8号から購読されている方へ  第7号を発行(11月06日正午)後に購読登録をされた方は,恐れ入りま すが配信協力先,もしくは下記の発行者URLからバックナンバーをコピーし てくださるようにお願いいたします。 ☆予告☆  次号では  【質問9:あなたのお子さんは,自分の弱さを認めていますか?】 について考えます。お楽しみに! ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ※ご案内※  ●リビング北九州紙に4年間掲載されたコラム「パパな毎日」や,   子育てに関する考察テキスト,調査結果などをホームページ「徒然窓」      http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/   に掲載しています。予習ができますので,のぞいてみてください。  ●また皆様の場として掲示板を設けました。ドウゾ積極的にご利用下さい。    http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/bearbbs/index.html  ●講演依頼を希望される方は,メールでお問い合わせ下さい。 ※お願い※  もし,この「子育て羅針盤」がお気に召したら,是非あなたのメル友のお一 人に登録をお勧めして下さい(登録は下記URL)。一人でもたくさんのママやパ パに読んでいただいて,みんなで子育てを考えるきっかけにしていただければ と願っております。子育てを自分でチェックできる素敵なママやパパになって ほしいとはじめたメールマガジンです。  皆様が育てていくマガジンであるように,応援をよろしく・・・。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ○タイトル:『子育て羅針盤』 [KOSODATERASINBAN] 〇発行責任:モリのクマさん ○発行期日:2000年9月25日より,毎週月曜日 ○連絡mail:mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp 〇URL=http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/MailMag/MMannai.html     (こちらからも,このメールマガジンの登録解除ができます) 〇転載許可:クマさんまでメールのご一報下さい。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 〇配信協力:  ・インターネットの本屋さん『まぐまぐ』=http://www.mag2.com/    登録・解除:http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm  ・メルマ***『melma!』=http://www.melma.com/    登録・解除:http://www.melma.com/mag/37/m00019737/     BBS:http://bbs.melma.com/cgi-bin/forum/m00019737/  ・読者と発行者を結ぶ架け橋『Pubzine』=http://www.pubzine.com/    登録・解除:http://www.pubzine.com/detail.asp?id=9104  ・無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』=http://melten.com/    登録・解除:http://melten.com/m/2166.html 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇