〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 2000/11/20 〇〇〇〇           【子 育 て 羅 針 盤】 ★パパコラム★        『ぐれてやる 息巻く子どもに 惚けてやる!』                               (第9号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  連れ合いは一年に一度程度しか出てこないゴキブリを見ると,逃げて廻りな がら私を呼びます。その声を背中に聞きながら,ついゴキブリを追いかけて叩 いてしまいます。好きになれないとはいえ,ちょっぴり気が咎めます。野生の 動物を観察するテレビ番組を見ることがありますが,猛獣が草食動物を襲う場 面になると,連れ合いは目を逸らします。  蝶がクモの巣にかかってもがいています。かわいそうにと思いますね。男の 子と一緒にそれを見ていたお母さんが,蝶をクモの巣から離して逃がしてやり ました。すると男の子が「クモがかわいそう」と言いました。せっかくの獲物 を取り上げられたというわけです。自然を愛するということは,自然を受け入 れることですから,余計な手を出してはいけなかったのでしょう。  弱肉強食という自然を残酷と思うのは,人間の見方です。その優しさが人間 らしさなのでしょう。襲われる小動物は群のなかでも弱いものであり,増えす ぎることへの歯止めになると考えて,気休めにすることはできます。それでも すっきりはしません。  猛獣は獲物をまず失神させます。それが強者としての作法かもしれません。 意識があるまま噛みつかれたら,それこそ残酷です。そこに少しの救いがあり ます。  ところで,連れ合いは惚けたくないと言っています。確かに周りの家族に迷 惑をかけるので,ポックリ逝きたくなります。長くはイヤですが,直前には惚 けた方がいいかなと思っています。今日のことを忘れ,昨日のことを忘れるよ うになり,時間の観念が失われていくようです。ということは,明日のことも 考えられなくなり,やがてくる終わりも感じなくなるということです。そうだ としたら,苦しみや恐怖から解放されるのではないかと期待できるからです。  案外惚けるのは失神と同じ効用があるのではないでしょうか。それは自然の 温かさだと感じています。不安や恐怖は,これから起こるであろうことを想像 することから生まれます。どうなるか考えなければ,煙のように消えてしまい ます。今日のことしか考えないことを極楽とんぼと言いますが,確かに不安は ないので気分は極楽です。  子どもに将来のことを考えてあれこれ心配をぶつけるのなら,大人は自分の 将来である老後の心配をすべきです。そのために老人から学ばなければなりま せん。勉強は子どもの特権ではないのです。 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 2000/11/20 〇〇〇〇           【子 育 て 羅 針 盤】 ★子育ち12章★        『ネアカな子 演じてるのも 疲れます』                               《第9章》 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  ■はじめに  第7,8章では,何が育つかといえば,それは生きた能力だと考えました。  母親がアリガトウを言えば,子どもは正しい力の使い方を学びます。  させるのではなく,してもらうようにすればいいのです。  親にとっては子どもはいくつになっても子どもです。  よその子と比べると,我が子はいつまでも幼く見えてしまいます。  そこに親としてのあせりが忍び込みます。  「そんなこともできないの」とつい言ってしまいます。  多くの場合,それは大人だからこそ簡単なことを忘れています。  弱いところばかりに目を向けると,ダメな子と見えてきます。  子どもはやがて「どうせ」と開き直っていくようになります。  幼い頃はいい子だったのにという親の悲哀が現れてきます。  まっすぐに育とうとする意欲を持たせることが,この章のテーマです。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 【質問9:あなたのお子さんは,自分の弱さを認めていますか?】  《「弱さを認める」という意義について説明が必要ですね!》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○明るく元気な子でなければいけませんか?     ネクラな姉がネアカな妹を刺した事件がありました。姉はネクラでは    生きられないと周りから言われ続けていました。自分がネクラに見える    のはそばにネアカな妹がいるからと思いこみ,妹さえいなくなればと追    いつめられていきました。自分の存在を脅かす妹を消すことで,圧迫を    回避しようとしたのです。     ネクラなどとは相対的なもので,たとえネアカでももっとネアカな者    のそばに行けば,ネクラに見えてしまいます。その上,ネクラであって    何がいけないのでしょうか? 人に可愛がられないとか,人との関係が    結びにくいといった心配があるのでしょうが,それほど気に病むほどの    ことではありません。     教室の前に「明るく元気な子」と大書してあります。ネクラで弱い子    は毎日それをどんな思いで見ているのでしょうか? 明るく元気でない    子は仲間ではないといった雰囲気がある中で,登校する気持ちに水を差    されていきます。保健室なら登校できます。なぜなら,そこは弱い子だ    から温かく迎えてくれる場所だからです。     簡単になれそうもないことを無理強いすることは間違っています。ネ    クラであっても弱くてもいいんだと,徹底的に認めてやるのが家庭です。    学校は元気な子とそうでない子達がどうすれば仲良くやっていけるかを    学ぶ所です。決して弱い子を元気にする病院ではありませんし,まして    や仲間はずれにするようなあくどいことなどもってのほかです。  ・・・明るく元気な子というイメージには,陰湿な暴力性が潜んでいます。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○みんなが同じように育たなければいけませんか?     ヒロシ君が算数のテストで80点でした。答案を見てママが「お隣の    カズミちゃんは?」と尋ねました。「90点」と答えると,すかさず    「ダメじゃないの,もっとしっかりしなくちゃ」とにらまれてしまいま    す。「でも,タカシ君は60点だったよ」と小さな声でつぶやいたとき    です。ママは「人のことなどどうでもいいの」と追い打ちです。     班学習で担当分ができなかったとき,みんなが迷惑すると責められま    す。自分のことは責任を持ちなさいというわけです。みんなが決めたこ    とが絶対的な束縛になって締め付けてきます。その息苦しさから,学校    への道は遠のいていきます。班学習とは各自が単に公平に分担するとい    うことではなくて,班全体として何事かをやり遂げる協力が目的です。    得手不得手のある仲間が集まってお互いをカバーし合うということです。     自分のことは自分ですべきという束縛が強すぎると,何でも自分でで    きなければならなくなります。みんな同じに育つということは,個性を    殺すことです。一人ひとりが持ち味を出すことが個性なら,そこには得    手不得手や,強さ弱さが必然として現れるはずです。弱い人がいるから    こそ,個性を発揮できる場が用意されます。お互い様という関係です。  ・・・同じであることは,弱さを負の価値に追いつめてしまいます。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○少子化によって失われたことは,どんなことなのでしょうか?     少子化になると子どもには兄弟や姉妹がいなくなります。やがていと    こやおじおばもいなくなりそうです。きょうだいも三人以上でないと集    団としての育ちができません。二人だとケンカした場合,互いにそっぽ    を向いていれば済みます。三人以上だと,三人目が仲を取り持とうとし    て,収まるようになります。兄や姉が弟妹たちを「いい加減にしたら」    となだめる役を果たすように育ちます。この仲裁慣れが大切です。     クラスでいじめなどが起こります。昔の多子時代には,クラスの3割    程度が家では兄姉でした。悪ふざけがあっても,「その辺でいいだろう」    という兄姉としての仲裁をし,他の兄姉も同調するので,いじめになる    前でやめさせることができていました。今は,兄姉が育っていないので,    止め役をかってでる子どもが現れず,歯止めがかかりません。     子ども集団の基本はきょうだい関係です。弟がお兄ちゃんについて回    って,よその子との縦関係が結ばれていきます。今はきょうだいがいな    いから,縦関係の持ち方を知りません。縦の関係を持つことの重要さは,    弱いものとのつきあい方を学ぶことです。弟や妹がついてくると,それ    なりにかばってやらなければなりませんし,遊びでもハンディを与えな    ければなりません。免除したり,肩代わりをしてやったり,いろんなや    り方を考えます。     この縦関係を通して,子どもは年上の子に比べて自分たちが弱いこと    を知り,年下の子に対しては強いことを自然に納得します。弱くてもそ    れなりにつきあっていけること,強いものが弱いものをかばってやらね    ばならない優しさを身につけていきます。きょうだいのいない今の子は,    同じ年の子どもとだけつきあっているので,強さも弱さも自覚できませ    ん。年上の子との大きな差ではなく,同じ年の子との小さな差異にとら    われています。50円玉や100円玉は,10000円札に比べたら同    じようなものという弱さの自覚が失われています。  ・・・少子化は強さ弱さの自覚と,共に過ごす社会性を失わせました。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○いじめられるような弱い子どもだから死んでいくのでしょうか?     悲しいことですが,子どもたちの自殺が治まりません。原因はイジメ    や恐喝など,人を追いつめていく悪行です。もちろん悪い手は厳しく制    止しなければなりません。しかしそれだけでは十分ではありません。イ    ジメ以外にも子どもを追いつめることがあります。自分の弱さを死によ    ってしか逃れられないとしたら,それは育ちを否定することになります。     たとえいじめられても死の直前ぎりぎりのところで思いとどまってい    る子どもがたくさんいるはずです。いじめられたらみんながみんな自殺    するわけではないのです。何があっても生き続けようとする気持ちを持    っているからです。     親は子どもに「生きる力」を持たせようと育てています。生きる力の    中身については前章で述べておきましたが,それはあくまでも生きる上    でのテクニックに過ぎません。生きる目的,あるいは生きる喜びを持た    せてやらなければ十分ではないのです。生きる喜びが悩みに勝っている    限り,死は決して選ばれることはありません。もう一人の自分が生きる    喜びを抱き,自分の持っている生きる力を発揮するとき,もう一人の自    分は自分を生かし続けます。自殺とは,もう一人の自分があきらめてし    まって,自分を殺そうとすることなのです。育てているのはもう一人の    子どもだということを再確認しておきましょう。  ・・・生きるとは,もう一人の自分の生きる喜びに支えられています。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○人は弱かったら,生きていてはいけないのでしょうか?     人の一生は弱い赤ちゃんにはじまり,年老いて弱くなって終わります。    社会生活は強くなければ務まらないというのが一般的なイメージです。    ですから,子どもは学校に,お年寄りは施設にとちょっと脇にどけてお    くようになります。手が掛かるから子どもは要らないという気分に流さ    れ子どもは激減し孤独を押しつけられ,長寿になって年寄りが増えて大    変だという声をお年寄りは肩身の狭い思いで聞いています。     弱い者が気兼ねをしない社会が心豊かな社会ですが,実際には心貧し    い社会ができようとしています。それが子育てに反映しかかって,子ど    もを育てなくしています。弱くてはいけない,弱さをマイナス価値と断    罪する非情さの前では,子どもはひとたまりもありません。自衛手段と    して,子どもは自分の弱さを否定して自惚れてしまい幼児のままで育ち    を停止したり,弱さを拒否して自暴自棄になり社会に反逆しています。     自分の弱さから目を背けたら,人の弱さが見えなくなり,暴君になり    ます。優しさは自分の弱さを知っているからこそ発揮できます。弱いか    らこそ弱い者同士で社会を営んで生きてきたのがヒト社会です。自分が    弱いと自覚してはじめて,育ちへの意欲が生まれます。自分は強い大人    だと思ったときに,成長は止まります。未熟さを容認することが自己実    現のスタートラインです。ソクラテスの語った自分の無知を知れという    言葉も同じ意味です。     生きる喜びや意欲は,「自分は今弱いんだ」ということを容認した上    で,助け助けられる温かさを感じ取り,弱くてもできることがあるとい    う存在感を実感し,明日になったらもっといいことがあるという期待を    持つことです。  ・・・弱いという自覚があるからこそ,生きる喜びが持てるのです。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《弱さを認めるから,自分を肯定することができます》  ○親は「そんなことでどうするの」と子どもを追いつめることがあります。 もう一人の子どもはやがてそんな弱い自分を見捨てるようになります。ママに も認めてもらえない自分に嫌気がさしてきます。もう止めたと育ちをあきらめ ます。「弱くてもママは好きだよ」と言われたら,子どもは育とうとします。  【質問9:あなたのお子さんは,自分の弱さを認めていますか?】    ●答は?・・・もちろん「イエス」ですね!? ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ★編集後記★  お届けした「子育て羅針盤」第9号はいかがでしたか。  皆様のご感想やご意見をお聞きしたいと思っていますので,メールを送って 下さるか,下記にご案内している「掲示板」に書き込んでくださるようにお願 いします。 ◎第9号から購読されている方へ  第8号を発行(11月13日正午)後に購読登録をされた方は,配信協力先, もしくは下記の発行者URLにあるバックナンバーを参照してくださるように お願いいたします。 ☆予告☆  次号では  【質問10:あなたのお子さんは,明日を楽しみにしていますか?】 について考えます。お楽しみに! ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ※ご案内※  ●リビング北九州紙に4年間掲載されたコラム「パパな毎日」や,   子育てに関する考察テキスト,調査結果などをホームページ「徒然窓」      http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/   に掲載しています。予習ができますので,のぞいてみてください。  ●また皆様の場として掲示板を設けました。ドウゾ積極的にご利用下さい。    http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/bearbbs/index.html  ●講演依頼を希望される方は,メールでお問い合わせ下さい。 ※お願い※  この「子育て羅針盤」がお気に召したら,是非あなたのメル友のお一人に登 録をお勧めして下さい(登録は下記URL)。一人でもたくさんのママやパパに読 んでいただいて,みんなで子育てを考えるきっかけにしていただければと願っ ております。子育てを自分でチェックできる素敵なママやパパになってほしい とはじめたメールマガジンです。  皆様が育てていくマガジンであるために,応援をよろしく・・・。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ○タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] 〇発行責任:モリのクマさん ○発行期日:2000年9月25日より,毎週月曜日 ○連絡mail:mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp 〇URL=http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/MailMag/MMannai.html    (このメールマガジンの登録解除やバックナンバー参照サイトです) 〇転載許可:クマさんまでメールのご一報下さい。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 〇配信協力:  ・インターネットの本屋さん『まぐまぐ』=http://www.mag2.com/    登録・解除:http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm  ・メルマ***『melma!』=http://www.melma.com/    登録・解除:http://www.melma.com/mag/37/m00019737/     BBS:http://bbs.melma.com/cgi-bin/forum/m00019737/  ・読者と発行者を結ぶ架け橋『Pubzine』=http://www.pubzine.com/    登録・解除:http://www.pubzine.com/detail.asp?id=9104  ・無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』=http://melten.com/    登録・解除:http://melten.com/m/2166.html 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇