□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2001/04/30]            【子 育 て 羅 針 盤】                               (第31号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  庭に出るとジャスミンの香りに包まれます。庭木のてっぺんに白い花がうね るように咲いています。陽の当たるところをよく知っていて,年々そのうねり は伸びていきます。一枝というのか分かりませんが,連れ合いが切ってきて花 瓶にさすと,香りが部屋中を走り回っています。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育てtips★             『サルと類人猿』                               (第17号) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  今でも,チンパンジーをサルだと思っている人は多い。ゴリラまで大きなサ ルだという。そんな粗雑な呼び方では困ります。サル(モンキー)と類人猿 (エイブ)は全く別の種類の動物である。  一口にいうと,「サルは獣だ。しかし類人猿は私たちの親類だ」ということ だ。サルは何百種類もあるが,類人猿はオランウータン,チンパンジー,ゴリ ラ,テナガザルの四種しかない。  では,そのサルと類人猿を分ける特徴とはいったい何か? サルは頬袋があ り,しりだこがあるが,類人猿にはない。サルはしっぽがあるが,類人猿には 尾が全くない。さらに類人猿は手の方が足より長く,盲腸に虫垂がある。サル にはそんなものはない。だから私たちと類人猿だけが虫垂炎に罹りうる。むろ ん体型は直立型で知能が高い。サルは類人猿とはこんなに違っている。              「動物おもしろ百科」:実吉 達郎著・三笠書房 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★パパ・ママ12章★       『我がママは わがまま気まま するがまま』                              《第3-05章》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ■はじめに  育つのは誰かと問いかけて,「もう一人の子ども」が育つと答えました。  物心がついてくるときに,もう一人の子どもが産まれてきます。  叱られたときにらみ返してくる目の向こうに,もう一人の子どもがいます。  自制するということは,もう一人の自分が自分の激情を制することです。  つい「我を忘れる」ことがありますが,もう一人の自分がサボっています。  「我に返る」ことが自分を救いますが,もう一人の自分がガンバってます。  子どもは育つのに一所懸命ですから,自分のことしか眼中にありません。  それがママにはわがままと感じられて,無理矢理押さえ込もうとします。  しつけという親に課された大義名分が,ママの背中を押してくるからです。  「自分を大切に」というスローガンを鵜呑みにすれば,無軌道になります。  いつでも人はバランスを保たなければ,転けて泥まみれになります。  「自分さえ意識」と「自分たち意識」とのバランスがしつけの目標です。  わがままであることはいけないと考えるあまり,消去しようとします。  大切なことはわがままという野獣に首輪をつけることなのです。  わがままを飼い慣らすことのできるもう一人の子どもを育てましょう。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  【質問3-05:あなたは,お子さんのわがままが気になりませんか?】  《「わがまま」という内容について,説明が必要ですね!》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○可愛くない?     ママは子どもが思い通りにならないと可愛くないと思います。反抗さ    れるとかっとなって声のトーンが跳ね上がります。ママにすればわざと    嫌がらせをされているような感じがするかもしれませんが,子どもには    そんなつもりはありません。子どもはどうしてママがそんなに怒るのか    不思議です。     少子化の中では,ほとんどの子どもが一人っ子状態です。周りの大人    たちには一人の子どものわがままなど大したことではなく,かえって可    愛く見えて,ついつい見過ごしていきます。そのツケがママに廻ってい    きます。     一人の時には,誰でもわがままです。鬼の居ぬ間の洗濯は,わがまま    ができる解放感です。わがままをしてはいけないのは,人と共同生活を    するときです。ママは子どもと一緒に暮らす時間が多いので,どうして    も子どもとママのわがままがたくさん衝突することになります。     ママが仕事を終えてほっとしたいのに,子どもが「ママ,お腹がすい    た」,「ママ,ジュースこぼした」,「ママ,オモチャ出して」と余計    な用事を持ち込んできます。ママの都合などお構いなしです。夜になっ    て帰宅したパパまでがあれこれと相乗りして来るようになると,ママは    キレます。     子どものわがままは少しなら可愛いのですが,親の許容量を超えるほ    どに肥大すると憎らしくなってきます。そうならないようにするために    は,甘えを徐々に取り除いておく必要があります。だからといって子ど    もの要求を拒否することではありません。自分のことは自分でできるよ    うに,手助けをしてやるのです。オモチャは自分で出せるところに箱に    入れておく,手の届くところに置いたおやつのそばに可愛い時計を置い    て,「3時の印」で食べるように教えるなどの工夫です。生活様式を子    どもにもできるように見直してみれば,わがままの一部は解消できるは    ずです。          ・・・子どもがわがままを言わないで済むように工夫を。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○素直とわがまま?     小学一年生の息子を持つママがいます。友だちの母親が「よそのこは    わがままだから,一緒に遊ばせたくない」と言っているのを耳にしまし    た。なるほど,その子は聞き分けがよくて親の言うことに素直で従順で    す。遊んでいても「お母さんがイカンと言う」,「お母さんに怒られる」    という言葉が素直に出てきます。     キツネ憑きならぬ,母さん憑きのように,心が母親に牛耳られている    ようで,素直を突き抜けて頼りなげです。一見しっかりしているようで,    足が地に着いていない不安定さを感じさせます。そのわけは,もう一人    の子どもが眠らされているからです。     きちんと手早くことを進めているママには,子どもの自己主張はわが    ままに見えます。いちいち子どもの言うことにつきあっている暇がない    ので,ママの言うとおりにさせる管理型しつけを採用します。会社で上    司の指示にあれこれ意見を返しているとわがままな部下だと評価される    のと同じです。     管理の行き届いた社会はすこぶる効率的ですが,温かくありません。    わがままという自己主張を完全に剥奪されているからです。少しはわが    ままが言える環境でこそ,人は自分らしさを発揮できるものです。            ・・・自分らしさは,他人にはわがままに見えます。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○こわいわがまま?     ある中学のクラスに見るからにツッパッている子がいました。授業参    観の日も態度に現れていました。母親たちは「嫌ネ,あんな子がいるか    ら!」とひそひそと話していました。そのときです。一人の母親がつか    つかとその子の後ろに近づいて,「チャントセンネ」と背中をポンと叩    きました。あっという間のことで,みんなびっくりしました。     その中学生の母親は参観には来ていませんでした。背中を叩いたのは    隣の家の母親でした。家庭の事情を知っており,その子のこともよく知    っています。背中を叩くことで,「ツッパッて見せなくても,おばさん    にはちゃんと分かっているからね」と伝えたのです。そのためかその中    学生は素直な態度に戻ることができました。まず丸ごと受け止めて,そ    れから諭すのが本当の母親です。たとえ,隣の子どもでも。     あんな子がいるからと遠巻きに非難するような雰囲気の中では,ツッ    パッて見せた子どもは逃げ場を閉ざされて,ツッパリ続けるしかなくな    ります。事態は悪い方に動きます。心がおぼれている子どもの足を引っ    張るようなものです。あっさりと受け止めてやれば,ツッパリ風船は    スーッとしぼんでいけます。     過激なわがままであるツッパリも,その見せかけの外見にレッテルを    貼るのではなく,その患部である理由を分かってやることが親たちの務    めです。悪さをするのは許されませんが,ただツッパッている程度なら,    「無理もないと分かっている。でも,負けるな。いつも見守っているか    ら」というメッセージを送ることが親としてのしつけです。                 ・・・見守らずに見張ってはいませんか? ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○わがままだらけですか?     子どもの自己主張とわがままを区別してください。そうはいっても,    どちらも自分の思いを押し出してくることですから見分けにくいでしょ    う。子どもの言っていることが他人に迷惑を掛けることになるならば,    それがわがままです。ママの手を煩わせることについては,多少大目に    見てください。     友だち関係では相手に害を与えるかもしれない振る舞いはしっかりと    釘を差しておきます。例えば,気に入らないことがあるとすぐに手を挙    げるとか,噛みつくとか,蹴るとか,引っ掻くといった行動です。大人    にとってはどうということのない弱いものかも知れませんが,同世代に    とっては危険だからです。     口によるわがままは,友だち関係の中で小さな衝突を経験しながら,    加減を覚えていくことになるでしょう。泣いたり泣かせたりしながら,    育ちはじめたもう一人の子どもが学びますので,その機会を十分に与え    るようにしましょう。ママが適切なアドバイスをしてくれたら,分かり    も早いでしょう。友だちにオモチャを貸さなかったときには,友だちの    気持ちをママが代弁してもう一人の子どもに考えさせるといったことで    す。     もしオモチャを貸してあげていたら黙って見過ごすのではなくて,    「貸してあげたのね。えらいね」ときちんと認めてあげることを忘れな    いでください。大人は間違いを正すことには敏感ですが,正しいことは    当たり前として見逃しやすいものです。子どもにはまだ何が正しいのか    分かっていないので,それをしっかりと意識させる必要があります。わ    がままを治したいと思われるなら,このことはとても大事なことです。             ・・・わがままでなかった時を見つけてください。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○ノック?     誰かが部屋の扉をノックします。「ハイ」と返事をして入り口の方に    振り返ると,目の前に若者が立っています。どうということのない風景    ですね。でも,一瞬ドキンとします。なぜなのでしょうか?     ノックは「ごめんください」という挨拶の省略形です。お訪ねしまし    たという自分の主張です。「ハイ」という返事は訪ねてきたことを認知    しましたという返事です。そこで少しの間があって,「どうぞ」という    声でドアを開けて入るのが通常の礼儀です。この少しの間が大事です。    訪ねていく方は訪問の態勢にありますが,訪ねられる方は不意打ちなの    で,迎え入れる態勢を整える時間が必要になります。それを与えること    が相手への礼儀なのです。     いまでは,ノックは「入ります」という自分の都合だけを押しつける    合図になっています。相手のことなどお構いなしです。だから,ノック    と同時に入っていきますし,迎える方がいきなりのお出迎えに遭遇しド    キンとすることになります。人に無礼なと思わせるとき,たとえ当人に    はそのつもりがないとしても,その行為はわがままな行為になります。          ・・・相手への気配りがないことをわがままと言います。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○アイデンティティ?    エリクソンによる「アイデンティティ人間」の定義は 次の通りです。     1.自分が何者であるかを明確に定義し,価値観を持つ人     2.内的な道徳律と自己コントロールがあり,       自我理想に従って行動する人     3.複数の社会的役割としての自分を秩序づけており,       自己と他者に対して行動に責任を持っている人     もう一人の自分が,自分を知り,自分を導き,社会人として自分を生    かしている,ということです。言い換えれば,もう一人の自分がちゃん    と育つことです。子育てとは,もう一人の子どもを育てることだと言っ    てきた理由は,ここでも見つかりました。     わがままとは,もう一人の自分が未熟なために,自分を導けず,自分    を社会に生かそうとしていないことなのです。自分の裸の主張をもう一    人の自分が社会的な形に装いし直すことができないことです。自分がこ    うしたら,相手はどう感じてどう対応してくるかということを考えるこ    とができるのは,自分と相手を同時に見ることのできるもう一人の自分    です。     ・・・自己同一性とは,もう一人の自分が自分を掌握することです。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《わがままとは,他人をないがしろにする無自覚性です。》  ○近隣関係における三大トラブルは,騒音,ペット,迷惑駐車です。自分の 都合を優先することは権利かもしれませんが,それが近隣に漏れ出たときに, 権利の衝突が起こります。そのことに無頓着な場合,わがままというベールが 被せられ,近隣の堪忍袋がキレルとトラブルに発展します。孤島に住まいして いるのでない限り,気をつけましょう。  【質問3-05:あなたは,お子さんのわがままが気になりませんか?】    ●答は?・・・どちらかと言えば,「ノー」ですよね!? □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  お届けした「子育て羅針盤」第31号は,いかがでしたか?  この号の隠しテーマは,「誰が育つのか?」であり,もう一人の子どもが育 たないと,わがままになるという面をのぞいてみました。  前号で,皆さん方ご自身の仲間の輪を広げていただくためにお友だちにも登 録を勧めてみてくださいとお願いしたところ,さっそく登録者数が動きました。 何よりの励ましと,クマさんはうれしくなっております。今週もどうぞ,お役 に立ててください。 ☆予告☆  次号では,  【質問3-06:あなたは,お子さんの気弱さが心配になりませんか?】 について考えます。お楽しみに! ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ※ご案内※  ●モリのクマさんのホームページ「徒然窓」,      http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/   には,このマガジンの「バックナンバー」,〜「掲示板」や登録解除   コラム「パパな毎日」,「子育ち12章(Ver.1)」の他に,   「子育て心温計」などの受賞論文,養育アンケート調査結果,   組織活動の指導者用テキストなど〜 を掲載しています。   是非訪ねてみて,積極的にご利用下さい。  ●講演のご依頼も承ります。メールで気軽にお問い合わせ下さい。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ○タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ○発行期日:2000年09月25日より,毎週月曜日正午 〇発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに) ○著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp  〇転載許可:必ず事前に,モリのクマさんまでメールのご一報を下さい。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 〇配信の協力を頂いている発行支援システム  ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/    登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm  ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/    登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/  ◆読者と発行者を結ぶ架け橋『Pubzine』= http://www.pubzine.com/    登録・解除= http://www.pubzine.com/detail.asp?id=9104  ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/    登録・解除= http://melten.com/m/2166.html  ※解除される方は,登録された配信先から解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○