□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2001/05/28]            【子 育 て 羅 針 盤】                               (第35号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  はじめての土地で講演するために出かけるとき,近場は車を使います。道路 地図を頼りに走りますが,ときおり不安になることがあります。会場の施設が 小高いところにあるとき,登り道になります。地図で平らな道順を想定してい るのに,いきなり目の前に登り道が現れると,一瞬迷います。上下の走行は頭 を混乱させます。ご案内の節には一言を。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育てtips★            『わがままと自己主張』                               (第21号) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  旅先の宿で夕食を親と一緒に食べたいと言って泣く幼児は,イギリスではわ がままだが日本ではそうではない。それは大人と子どもの時間を明確に分ける イギリスの子育てのあり方と,幼少時は親のそばにおくことをよしとする日本 の子育てのあり方との違いを反映している。  自分がいま使っている玩具を貸してと言われて貸すことのできない幼児は, 日本ではわがままだがアメリカではそうではない。アメリカで幼児を育てた日 本人の若い母親は,子どもが自分のお気に入りの玩具を友だちに貸せなくても それはごく自然なことだと,アメリカ人の幼稚園の先生に言われて非常に驚い たと記している。  子育てやしつけの文化比較をすると,幼児のわがままも文化によって親や保 育者の受けとめ方が異なるということに気付く。文化によって,幼児の同じ行 動がわがままであると受け取られたり,正当な自己主張であると認められたり することがあるのであれば,わがままと自己主張の線引きは難しい。幼児のわ がままは,その国の文化の社会化の方向性や対人関係の価値からの逸脱行為が 何であるかによって規定されることが多いからである。       「イギリスのいい子 日本のいい子」:佐藤 淑子著・中公新書 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★パパ・ママ12章★         『育児する ママの意気地が 空回り』                              《第3-09章》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ■はじめに  闇に舞う蛍の光,色鮮やかに装う鳥の羽根などは目を楽しませます。  その化粧は全部に備わっているのではなく,雄だけですね。  異性に選んでもらわなければならない立場の弱さがあります。  弱いものは弱いものなりに健気に生きようとしています。  弱いからこそ意気地を示そうとするのです。  決して強くなることが意気地のあることではありません。  幼稚園や学校に行けない子は意気地のない子でしょうか?  いじめられても親に言えない子は意気地なしでしょうか?  虫を怖がり触れない子どもは意気地がないのでしょうか?  どの子もみんな,自分を守ろうと精一杯生きています。  大人から見れば,何の解決にもつながらない無駄なことかもしれません。  有意義なことをしようとしないのは,その仕方をまだ知らないだけです。  子どもはいつも自分の弱さと直面し格闘しています。  その最中にはなかなか大人の思っているような結果は出てきません。  意気地という気持ちが形になるまでには時間がかかるものです。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  【質問3-09:あなたは,お子さんの意気地無さが気になりませんか?】  《「意気地無さ」という内容について,説明が必要ですね!》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○叱る意気地?     病院の待合室で大きな声で話したり,走り回っている子どもがいます。    母親らしい人は一応注意をしますが,子どもは聞きません。それも無理    がありません。お隣の方とのおしゃべりの合間に注意しているのですか    ら。止めさせるべき時はきちんと止めさせるケジメがついていません。    叱る意気地がないと思われます。     親が言っても聞かない子どもを,誰が注意できるでしょうか? 見か    ねて下手に注意でもしたら,「自分の子に要らぬ世話」とにらまれます。    それほど子どもが可愛いのなら,他人に後ろ指をさされないようにしつ    けた方が賢明ですし,お互いにハッピーです。     「あなたが騒ぐから,あのおじさんに叱られたでしょ。おとなしくし    なさい」。おじさんは敵役にされてしまいますが,それで静かにしてく    れるのなら,「まあ,いいか」とあきらめます。でも,このママはちょ    っと勘違いをしているかもしれません。おじさんは子どもに注意したの    であって,決してママのしつけがなっていないと非難しているのではな    いのに,ママは自分が叱られたと受け取ってしまったようです。     本当は自分に代わって叱ってくれたおじさんに,「ありがとうござい    ました」とお礼の一つも言えたら,素敵なママになれるでしょう。そう    いう意気地を子どもに見せてあげてはいただけませんか?          ・・・気の乗らないことをするときに意気地が必要です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○意気地ある日々?     子どもは自分から大きくなりたいという気持ちがないと育てません。    もう一人の子どもがそう決意するように導かねばなりません。ところで,    肝心の導き手であるママが《一日が暮れりゃ寝るだけ明日が来る》とか,    《昨日生き今日も生きてる明日も多分》という具合に日々を送ってはい    ませんか? それが子どもたちに伝染しているようですよ。     大人になると毎日が同じ日です。一日,一週間は平凡に過ぎていきま    す。一方で,「明日が来なければいいのに」と願ったりすることもあり    ます。でも,明日はお構いなしにやってきます。     「明日が来る」と思えば,自分の明日に無頓着になったり,追い立て    られるようになったりします。「明日を迎える」と考えれば,気持ちが    楽になります。主体性とはどんと来いと意気地を示す態度のことです。    明日を楽しみにできたとき,大人は充実感を味わい,子どもは育ち続け    ます。             ・・・意気地無く待つだけでは何も得られません。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○先の心配?     死に神は後ろからやってきます。何か恐ろしいと感じたときに背筋が    ぶるっと震えるのが,その証拠です。紋付きには背中に家紋を染め上げ    ます。あれは背中から取り憑こうとする不幸に,「こちらは表ですよ」    と家紋を見せてごまかすためなのです。     ムーミンの友だちに「無駄だ,無駄だ」と口癖のように語るおじさん    がいました。どうせ人間は死ぬんだから何をやっても無駄だということ    らしいです。子どもには将来のことを心配してあれこれ指導をしていま    すが,大人自身は自分の将来である死ぬことから逃げています。考えな    いようにしています。だって,それを考えたら生きられません。     死に神がどこまで迫っているのか分からないから,安穏と生きられる    のが私たち凡人でしょう。でも,逃げているだけではつまらないですね。    明日に向けて自分の可能性を求めていくことが,唯一の救いになるでし    ょう。自分は懸命に生きているという意気地があれば,不安を軽減でき    るでしょう。同時に,子どもに対して「そんなことでどうするの?」と    将来を不安がらせる言い方をしなくて済むようになることでしょう。              ・・・先の心配をしすぎない意気地も大切です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○アナログ人間?     今の生活において,自分の行動に少しでも不自由があると「もう許せ    ない」と大仰に騒ぎ立てる風潮があると指摘する人がいます。単純には    言い切れないと思う反面,確かに個人的な場面では当たっている節もあ    ります。特にディジタル世代では "all or nothing" 的な思考が強く    感じられます。     子どもは要求がかなえられれば喜び,かなえられないと泣きわめき騒    ぎ立てます。まさに1か0です。この振れの激しさにママは振り回され    ます。我慢するということは1でも0でもない「0.5」の状態です。    普通にいえば白黒ではなくて,灰色の状態です。どちらともつかない不    安定な状態に立てることが意気地のあるということなのです。     いったん灰色の状態に止まっていられるから,何とかしようと考える    ことができます。意気地がないと,あきらめるか,人を責めたてること    しかできません。耐性が無いと言われるのは,この中途半端な状態に入    ることができないことです。100点でなければ意味が無いと子どもを    責め立てていては,ママには耐性がないと言われますよ。人はアナログ    世界に生きています。                ・・・意気地とは耐えることと見つけたり。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○絶対という魔物?     論理療法という心のプログラムがあります。いじめられているとき,    もう一人の自分が「自分は絶対に嫌われている」とか,「誰も自分を好    きになってくれない」と考えてしまいます。この断定的な否定の言葉に    囚われると,つらくなり,出口が見えなくなり,やがて「もうだめだ」    と絶望に至り,あげくは死にたいというところまで陥ることがあります。    ママも子育てに疲れたとき,「誰も自分のことを理解してくれない」と    思ったりしませんか?     論理の筋道を正しくすれば救われます。「多分嫌われているかもしれ    ない」と考え直すのです。大きく言えば人生観を柔軟にするのです。そ    うすれば,結論が変わり,急には無理でしょうが,だんだんと明るい気    持ちに向かうことができます。「ママだけには嫌われていない」と信じ    させてやることです。     「こんなに苦労しているのに,連れ合いはちっとも分かってくれない」    と言いたくなる気持ちは分かります。でもそう考えると相手を責めるだ    けに終わりますし,自分の不遇を悲しむだけになります。「もしかした    ら分かってくれていないのでは?」と考えれば,分かってもらおうと努    力できるはずです。いや,絶対に分からせてやるという意気地が出てく    るかも? 子どもに求めている意気地も同じではないですか?                ・・・適当に考えると道は開けるものです。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○意気地ある用心?     若者はついついいい気になって派手な行動を取りたがるものです。特    に男の子は女の子の前ではカッコヨクしたがります。まっとうなことで    格好良くできれば,それはそれで結構なことです。ママによく思われた    いと,おだてられて懸命に働くパパはカッコイイでしょう?     ところで,見境のない格好良さが不幸を招きます。悪事については問    答無用ですが,危険を冒すカッコヨサも困ります。勇気を勘違いしてい    るからです。怖がるときは堂々と怖がることの出来る人が,真に勇気の    ある人のはずです。無謀というカッコヨサを避けて,退避というカッコ    ワルサを受け入れる意気地を持つことが,勇気ある人の条件です。     リスクという言葉は危険度という意味だと思われていますが,少し違    います。「リスク=ハザード×接触」とでも表せばいいでしょう。危険    なものにどれほど近づくかということです。リスクとは不用心の度合い    なのです。ハイリスクは用心していないこと,ローリスクとは用心して    いることです。簡単に言えば,君子危うきに近寄らずです。     どんなことでも論理上,安全性は証明したり保証できるものではあり    ません。何が起こるかは予見不可能なのです。だからこそ,用心が肝要    です。その用心をしている人を意気地なしと断ずることは,人が生きる    上で身につけなければならないリスク管理を否定することになります。                ・・・用心の欠けた挑戦が無謀になります。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《意気地無さは,見た目やいい加減に言える言葉ではありません。》  ○おじいちゃんやおばあちゃんがパパやママの小さいころの話をしてくれる   と,子どもは喜びます。普段はあれこれ偉そうなことを言っているけど,   パパもママも結構ダメなところがいっぱいあったんだと安心します。それ   は今の自分でいいんだという安心です。だって,いつもママから今のまま   ではいけないと言われて傷ついているからです。子どもが知りたいことは,   ダメな子どもがどうしたら今のパパやママにようになれたかという秘密で   す。育児の秘密は意気地の秘密かもしれませんね。  【質問3-09:あなたは,お子さんの意気地無さが気になりませんか?】    ●答は?・・・どちらかと言えば,「ノー」ですよね!? □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  お届けした「子育て羅針盤」第35号は,いかがでしたか?  この章では,「なぜ育つのか?」について考えています。弱い人間が生きて いくためには,生きようという意気地が必要です。それが子どもの場合には育 とうとする健気さでもあります。いじめられてもとにかく生きようとする意気 地があれば・・・。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ※ご案内※  ●モリのクマさんのホームページ「徒然窓」,      http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/   には,このマガジンの「バックナンバー」,〜「掲示板」や登録解除   コラム「パパな毎日」,「子育ち12章(Ver.1,2)」の他に,   「子育て心温計」などの受賞論文,養育アンケート調査結果,   組織活動の指導者用テキストなど〜 を掲載しています。   是非訪ねてみて,積極的にご利用下さい。  ●PTAや家庭教育学級などでの講演のご依頼も承ります。   メールで気軽にお問い合わせ下さい。   プロフィールは上記のHPを参照してください。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆  次号では,  【質問3-10:あなたは,お子さんのひ弱さが気になりませんか?】 について考えます。お楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ○タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ○発行期日:2000年09月25日より,毎週月曜日正午 〇発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに) ○著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp  〇転載許可:必ず事前に,モリのクマさんまでメールのご一報を下さい。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 〇配信の協力を頂いている発行支援システム  ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/    登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm  ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/    登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/  ◆読者と発行者を結ぶ架け橋『Pubzine』= http://www.pubzine.com/    登録・解除= http://www.pubzine.com/detail.asp?id=9104  ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/    登録・解除= http://melten.com/m/2166.html  ※解除される方は,登録された配信先から解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○