□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2002/12/09]            【子 育 て 羅 針 盤】                               (第114号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  人生は単純ではないし,人の生き方も単純ではない。                          ・・・・・山本周五郎  子育ちは単純ではないし,親の子育ても単純ではない。                      ・・・・・H.モリのクマさん ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★ママの?★        『ママはなぜ田舎の家が落ち着くのでしょう?』                               (第46号) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  家族で旅行に出かけたとき,ママは木でできたお家に行くと,落ち着くわね ってパパに話しています。マンションのような石でできたお家の方が強くて安 心できるのに,どうしてなのかな?  都会のコンクリートジャングルは機能的で便利な暮らしをもたらしてくれま す。でも,生理的には木の世界の方がストレスがなく,快適に暮らせるようで す。懐かしさという気持ちの他に,木の感触や木目の美しさもありますが,見 落とせないものは音なのです。  コンクリートと防音ガラスで外の音を遮断している部屋は,静かで快適なよ うですが,じつは,それがストレスのもとになっています。人の脳波はイライ ラしているときは高い周波数の波になり,これを低くすればイライラもなくな ります。そのためには20キロヘルツ以上の超高音を聞かせることです。  実際には人の耳には聞こえない音ですが,脳では感じ取って,脳波の周波数 が高い方から低い方に移って,落ち着いてきます。自然界にある音から,コン クリートの壁は20キロヘルツ以上の音を遮断します。木造だと遮音性が低い から,いろいろな音が聞こえ,自然にストレスが解消されていきます。  外の音がうるさいと遮音することで,人が自然から逃げていると逆に緊張し てしまうのです。木という生物と共生することがなにより安定するのは,生き 物として当然なのです。近隣の騒音トラブルは人がストレスを抱えているから 起こりやすくなっているのかもしれません。ママは大丈夫かな? ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育てチェック12条★          『なぜだろう 思う楽しさ ある育ち』                              《第9-10講》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ■はじめに  学校週五日制が完全実施に入って,にわかに子どもたちの学力不足が意識さ れるようになりました。大学などで教壇に立っていると,学べない学生の蔓延 はかなり以前から実感していたことです。ことさら新しい事態などではなく, 放置できない状況になってしまったということに過ぎません。  私語をする学生を注意しても,5分ももちません。リビングでテレビを見て いる感覚です。先生は勝手にしゃべっていると思っています。面白いことが飛 び出さない教育テレビの視聴率が数%であることと全く同じなのです。学びの 楽しさ,学びの面白さに対する感性がほとんど未開拓です。学びに対しては, CMを喜ぶ赤ん坊同然です。  面白くおかしく教えてもらうことを期待しているようです。「ここは試験に 出るから覚えておきなさい」,先生がそう言わなかったから試験が不合格にな ったと詰め寄ってくる学生がいましたが,そんな甘えを求める学生は十年以上 前に現れていました。今はその甘えすら見せず,試験ができなくても,みんな ができないからと安心しています。  学びを知らない子どもたち,巣立っていった若者がそろそろ職場で中堅に差 し掛かっている現在,企業の活力が衰えているのは当然の結果です。中堅がし っかり自己能力を発揮してきたからこの国は豊かになったのですが,今は落ち 目に向かっています。景気を動かしているマンパワーが活力を持っていないの ですから,心配です。  そんなことはない,懸命に頑張っていると言われるかもしれません。人それ ぞれに頑張っていることでしょう。でも,頑張り方が的を得ていないのです。 無駄な努力とは言いませんが,確かな結果の出る道に沿っていないのです。大 人になるとは自分で考えることです。世間の風潮に従ってもそれは無駄足です。 風潮になった知恵は既に賞味期限が切れた知恵だからです。自分で考える,そ れが学びですが,学びをしたことがないと時代を動かすようなことを考えるこ となどできない相談です。  仕事の現場で一人ひとりが小さな知恵を持ち寄ることが活力です。そんなこ とは人に任せておけばいい,自分は関係ない,そう思って多くの人が逃げてい るから,世の中は沈滞していきます。ゆとりの教育という言葉が誤解されてい ます。自分で考えるという学びの癖をつけるための猶予が本来の趣旨ですが, 学習時間を減らして自由時間が増えると早とちりをしています。これから,子 どもを考える人に育てるにはどうしたらいいか,考えてみましょう? 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         ・・・《育ちたいとは,大人になりたいという願いです》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○学ぶ力?     学ぶということで最も直接的な話題は試験でしょう。大学の入学試験    でとても気になる傾向が現れています。志望している学科で必要な科目    を避けて,点の取れそうな科目を選択する受験者はかなり前から少なく    ありませんでした。入学後の授業が分からず,教える方が高校までダウ    ンさせなければならず無駄な時間を費やされます。     試験では,問題の意味が読みとれないものが増えてきましたが,受験    する資格もありません。さらに問題を完全に解き終えたものは一問もな    く,全て部分点で合格になっています。受験テクニックなのでしょうが,    学びとしては全く意味がありません。少なくともこれは解ける,それが    力です。中途半端では,何もできないのと同じです。     育ちとはできることを一つ一つ積み上げていくことです。親としてそ    れは分かっていますが,子どもはあれこれやりっ放しで,最後までちゃ    んとやり通すことをしていないようにみえて心配です。この最後までと    いうことを考え直してください。親は2階まで届くことを最後と思って    いますが,階段を一段上がることでいいのです。例えば,試験で全問正    解して100点を取ることがちゃんとやり通すことではなくて,一問で    もできていれば着実に上っていると思うことです。     全体の点数を上げることも大切ですが,できた問題があることの方を    大事に考えてください。それがちゃんと育つということです。子どもは    あれこれ首を突っ込みながら,今日はこれの階段を一段,明日はあれの    階段を一段,いろんな階段を一段ずつ上っていきます。どの2階にもな    かなか届きませんが,それでも確実に上っているのです。     今日はこれができた。あれはできなかったけど,明日はできるかもし    れない。先は遠いけど,一つ一つ。一年前と比べてごらんなさい。ずい    ぶんできることが増えているはずです。「パパだって小さい頃はできな    くて泣いたんだぞ」,そんな話が子どもに勇気を与えますし,なにより    育ちという道を信じる気持ちに導きます。育ちの段取りが何となく実感    できるからです。     スモールステップという言葉があります。小さな階段です。子どもの    歩幅にあった育ちの階段です。大人が苦もなく上る階段でも,子どもに    は這って一段ずつよじ登らなくてはなりません。子どもの力に適うステ    ップを用意してやってください。ただし,ちょっとだけ難しい階段を!   ・・・《学ぶ力とは,小さなことでもできる力にしようとする意志です》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○弁える?     もう一人の子どもの育ちとは,物事を弁えていく能力の獲得です。自    分にできる力を持たせようとする子育ちが生きる力に適っているかを検    証するためには,行動能力の行使がもたらす帰結を推察する能力が必要    です。簡単にいえば,こうしたらこうなるという予測をする力です。     ビンをコンクリートの壁に向かって投げたら割れる。割れたら面白い。    だから投げて遊ぶ。これでは,予測が不十分です。割れた破片が人を傷    つけることを考えていません。危険だということを推察できたら,遊び    を止めることができるはずです。竹藪で竹を切り出すとき,斜めに切っ    た切り口は危険だから先をつぶしておくことは当然の気配りです。     好きになった娘さんをつけ回す。直接は何も手出しをしていない。そ    っとつけ回して何がわるい,自分に正直に生きているだけ? そんなス    トーカー行為も,相手に及ぼす意味を読みとる力が育っていないことか    ら発生します。社会に生きる上で不可欠なことは,人は自分の思い通り    には考え感じてはくれない別人なのだという認識,だからあらゆる可能    性を想定する必要があるという洞察です。     他者に対する弁えばかりではありません。夜更かしをする。翌朝はぼ    んやりしている。午前中の授業は寝ぼけていてよく分からない。勉強に    ついていけなくなる。学校が面白くなくなって夜更かしに逃げる。こう    して落ちこぼれスパイラルにはまっていく? ボタンを掛け違うと,自    分自身の物事さえ望ましくない方向に動いていきます。     子どもはあらゆる可能性を持っていると言われます。そこでは何を選    ぶかという自己責任があるはずです。育ちという積み上げプロセスでは,    一つの育ちが次の育ちの選択範囲を限定していきます。例えば,前にも    お話ししておきましたが,乱暴な言葉を選んでしまった育ちは,その後    の育ちを乱暴なものに限定していき,優しさへの育ちは切り離されてい    くのです。     もう一人の子どもが幼いうちは親が良いものを選んでやり,育ってく    るにつれて良いものを選択するために必要な洞察力を培うようにし向け    てやらなければなりません。よい体験わるい体験をする中で,こうした    からこうなったという知恵を育むことができます。体験学習の意味は自    ら考える力を育むことと言われていますが,もっと直截に言えば,原因    と結果という物事の流れ,つながりを見極める知恵を具体例を通して学    ぶことなのです。この一連の流れの一つ一つが意識化されたとき,段取    りという認識ができるようになります。  ・・・《弁えるとは,人や物事のつながりを順を追って見極めることです》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○分かる?     子どもたちはパソコンを取りあえず使っているうちに大して苦労をせ    ずに覚えていきます。大人はまずマニュアルを読むことから始めるので,    なかなか習熟できません。この取り組み方の違いはなぜでしょう? 大    人は理屈から入ろうとしています。つまり,こうしたらこうなるという    段取りが分かっていないと始められなくなっているのが大人なのです。     何かを始めるときは下準備が必要です。IT教室でも,ここをこうし    たらこうなりますという説明を聞きます。手順という段取りを習うので    す。行き当たりばったりでは壊れるかもしれないという不安があります。    段取りを知ることで,安心してマウスをクリックできます。     パソコンをやっているうちに何となく覚える,それは使い方までです。    与えられたソフト以上のことはできません。自分流にするためにはプロ    グラムをいじらなければなりませんが,そこには命令のシステムを段取    りに沿って構築する作業が不可欠です。何らかの機能を持ったものを設    計しようとすれば,部品を理解し組み合わせを工夫し順序よく稼働させ    ねばならないのです。     機械装置とのコミュニケーションだけではなくて,人とのコミュニケ    ーションでも同じです。言葉という部品を一つの意味を持った文章にす    るためには,順序よく並べることが肝要です。読むことはできても,書    くことは段取りを考える力がなければ実現できません。起承転結もまた    大きな段取りです。スピーチや挨拶などを聞いていると,この人は一体    何を言いたいのだろうと思うことがあります。言葉や文章に段取りが施    されていないからです。     理科系離れが危惧されています。それは基本的に論理の世界です。こ    うすればこうなる,その連続の世界です。そんなことを考えるのはめん    どくさい,うざったいと逃げている若者が多いのです。直感的な世界に    育っているためです。言葉の貧困がその主な要因ですが,言葉をつなぎ,    文章をつなぎ,思考を積み上げていくことに慣れていないからです。理    科系離れは,段取りを基本とする考える力の衰退を表しています。     格好いいという感性の世界の他に,なるほどそうかという理性の世界    があります。この理性の世界が大人の社会の核です。子どもたちが「な    るほどそうか」と段取りを分かる世界に楽しみを持てないと,先行きの    不安が膨らんでくると同時に,人生を切り開くという手だても失うこと    になります。希望とは何とかできるのではないかという自らの考える力    への信頼から生まれるものです。          ・・・《分かったわね,それは段取りを教えることです》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○前提?     段取りにおける最も初歩的なものは,前提です。うちの子には音楽の    才能があるという言い方は,前提をさしています。前提を確認しておく    ことも段取りに沿って物事は実現できるという考え方です。子どもにど    んな前提が備わっているか,それを見極めるために親はあれこれやらせ    ているのです。     贅沢に暮らしていると人の苦しみや哀しみが分からないと言えるのも,    人は体験したことしか実感できないという理屈の前提が壊れているから    です。豊かな暮らしをしていると豊かさが実感できないと言うのは,人    は違いに遭遇したときにはじめて自らを理解するという理屈の前提に着    目しているのです。辛いときに掛けてくれた情けの有り難さ,困ってい    るときに助けてくれた親切のうれしさ,あるいは失ってはじめて分かる    幸せ,いろいろありますね。     日常が平凡だから,ちょっとしたことが楽しく感じられます。この子    が突然事故で死んでしまったら,そんなことは考えたくないですね。そ    れでも,事故のニュースを我が身に重ねたら,この子がいてくれるだけ    でよかったと再確認できるでしょう。事故の親への同情は本物に少し近    づくことができます。うちの子でなくてよかった,単純にそう思うだけ    ではなく,もう一つ気持ちを当事者に移してみることも,自分を知る前    提になります。     おもちゃを片づけるようにしつけたかったら,おもちゃを入れる箱を    用意することが前提を満たすことです。玄関の靴を揃えさせたかったら,    靴の形を床に描いておいてやることも一つの前提です。言葉を教えたか    ったら絵本を一緒に読み聞かせしてやることです。勉強させたかったら    雰囲気を大人が作って巻き込むことです。孟母三遷の故事は環境という    前提の大事さを教えているのです。     草花やお米を植えて育てる体験も肥料や水やりの世話をすることで,    生きることの前提を学び,自分の育ちの段取りを考える例題になります。    人も同じように食物を食べ水を飲んで育っていると実感できることが大    事です。パパとするキャッチボールも,毎日しているうちにだんだんと    上手になります。できるようになるためには,毎日の練習という前提が    必要です。     今の子どもたちが結果だけを求めて,練習を嫌がっているのは,前提    が不可欠ということを教えられていないせいです。何かが欲しいときに    は買ってくればすぐに手に入るというのではなくて,ママの手作りをじ    っくりと楽しみに待つという経験が不足しています。ママの炊事の手伝    いをしていた子どもは,美味しいものができるプロセスに参加できたか    ら,自然に面倒な前提を苦にしなくなり,かえってできあがりを楽しみ    にするように育っていました。     暮らしはいろんな前提の上に成り立っています。子どもを暮らしから    切り離したことで,雑用と呼ばれている前提を子どもから取り上げてし    まったのです。汚れたものは洗濯をする,それが清潔さをしつける前提    だということを忘れないでください。        ・・・《必要な前提が満たされない限り,何も始まりません》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○どうして?     ラムネのビンの中にビー玉が入っています。子どもはどうすれば取り    出せるか考えるでしょう。神社の狛犬がカッと開いた口に玉をくわえて    います。取り出せないか引っ張ってみたこともあるでしょう。取り出そ    うとすると,必然的にどうして入れたのだろうと疑問が湧いてきます。    製作作業の段取りに目が向くことになります。     子どもたちはなぞなぞが好きです。目をつぶらないと見えないものな    〜に? それは夢。何?という疑問は初歩的です。どうして眠ると夢を    見るのか?という疑問は高度です。子どもから尋ねられる何という質問    は答えられますが,どうしてという質問には詰まってしまうことが多い    はずです。どうして?は理由を尋ねており,こうだからこうなるという    因果関係を含む論理だからです。     2+3は5と覚えてしまうのが,何という質問の答えです。これは単    なる記憶型の学習です。2+3はどうして5になるのか,それが計算の    仕組みを理解する学習です。2+3と5は同じになるという足すことの    意味が分かれば,応用が利くようになります。同じ結果を得るにしても,    何という勉強と,どうしてという勉強で,大きな差が出てしまいます。     人を叩いたらなぜいけないのか? 人にバカと言ったらどうしていけ    ないのか? お店の品物を勝手に持ってきたらなぜいけないのか? 子    どもが分からなければならない仕組みがたくさんあります。もちろん,    いけないことと覚え込ませることで初期のしつけはできますが,次の段    階にはどうしてかというわけを納得させておかなければなりません。万    引きはいけないと分かっていても実行してしまうのは,納得していない    からです。しつけには,知る,分かる,納得するという段取りがありま    す。     社会の仕組み,知識の構造,暮らしの知恵など,生きる上で必要なこ    とはほとんど言葉で説明することができます。ということは,理解でき    るように整理されているということです。もちろん全てではありません    が,それはこれから言葉を産み出していけばいいことです。もう一人の    子どもが,どうしてと考える力を使って基本的な段取りを見つけ,それ    を納得し,実行できるように自らを育てていこうとする,それが子育ち    への意欲の意味です。     なぜ子どもは育とうとするのか? それは生きること自体がなぜ,ど    うしてという人にのみ与えられている分かろうとする意欲を駆り立てる    テーマだからでしょう。一つ一つの疑問が解き明かされていく知的な喜    び,底辺にはそういう熱情が潜んでいます。何も高邁な考察のことでは    なくて,例えば,どうして自分はあの人が好きになったのだろうとか,    どうしてあの山に登ろうとしているのかとか,気になることが普段の暮    らしにたくさんあるという意味です。子どもがどのようにその課題に出    会うのか,どのように取り組んでいくのか,それは次の条でお話しする    ことにします。         ・・・《育ちは自分を納得したい思いに動かされています》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《段取りを教えるとは,いろんな面でのつながりに気付かせることです。》 ※屁理屈をこねてくる子どもにいらつくことがあるかもしれません。理屈では そうだけど,実際はそう甘くはないよと言うのが大人の常です。「でも,だっ て,どうせ」という理屈をひっくり返す言葉があることは,理屈とは一筋縄で はいかないからです。  たとえそうであっても,それは理屈を成り立たせている前提を違えているか らです。机上の空論と言われるのは,現実という前提を組み込んでいないもの をさします。子どもと大人の前提が違うことは仕方がありません。生きている 世界が違うのですから。子どもなりの理屈をどのように修正すればいいか,焦 らずに少しずつ手がけてください。そうしないと,考えない子どもにしつけて しまいます。  【質問9-10:子どもに段取りを教えていますか?】    ●答は?・・・どちらかと言えば,「イエス」ですよね!? □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  お届けした「子育て羅針盤」第114号は,いかがでしたか?  短い文章の中にいろんなことを詰め込みすぎたために,読みづらくなったよ うです。説明不足が随所にあるような気がしています。分かりづらいところは 読み飛ばしてください。最近考えることから逃げている若者につきあわされて いるイラツキがつい混じり込んでしまったようです。  インフルエンザで休校になった中学校が出てきました。お子さんの風邪対策 を十二分になさって下さいね。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ※ご案内※  ●モリのクマさんのホームページは ・・・「徒然窓」=      http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/   です。「子育て羅針盤」の「バックナンバー」,〜「掲示板」,     週刊「今週のコラム」,「子育ち12章(Ver.1,2,3,4,5,6,7,8)」,     「子育て心温計」などの受賞論文,養育アンケート調査結果,     社会教育・ボランティア組織活動の指導者用テキスト〜    などを掲載しています。 ・・・是非訪ねてみて下さい。・・・  ●大小問わずPTAや家庭教育学級などでの《講演》のご依頼も承ります。   関心をお持ちの方は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。   プロフィールをお知りになりたい方は上記のHPを参照してください。   なお,クマさんの本拠地は福岡市近郊です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆  次号では,  【質問9-11:子どもに失敗を許していますか?】 について考えます。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ○タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ○発行期日:2000年09月25日より,毎週月曜日正午 〇発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに) ○著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp  〇転載許可:必ず事前に,モリのクマさんまでメールのご一報を下さい。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 〇配信の協力を頂いている発行支援システム  ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/    登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm  ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/    登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/  ◆読者と発行者を結ぶ架け橋『Pubzine』= http://www.pubzine.com/    登録・解除= http://www.pubzine.com/detail.asp?id=9104  ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/    登録・解除= http://melten.com/m/2166.html  ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○