□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2003/04/07]            【子 育 て 羅 針 盤】                               (第131号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  友たる者は,推察と沈黙に熟達した者でなければならない。                           ・・・・・ニーチェ  親たる者は,推察と沈黙に熟達した者でなければならない。                      ・・・・・H.モリのクマさん ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★ママの?★              『指しゃぶり?』                               (第01号) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  いつまでも指しゃぶりが無くならないお子さんがいます。よく言われている のは,親の愛情が不足しているからということです。ママにすれば,愛情が不 足しているはずはないと心外に思われることでしょう。もう少し正確に表現し なければなりません。愛情が不足しているのではなくて,有り余る愛情が子ど もに伝わっていないということです。  愛情表現が大事なのです。夫婦の間でも,お互いに愛情があってもちゃんと 表現しないと伝わりませんよね。子どもに伝えようとする気配りが必要です。 子どもが寂しいとか,痛いとか,不快とか,負の気持ちにはまったときには, ママがちゃんとそばにいてくれる,分かってくれる,聞いてくれるということ です。いて欲しいときにいてくれる,その安心をもたらしてくれると,愛され ていると確信します。  指しゃぶりは,愛情不足のせいだけでもありません。眠るときタオルの端を しゃぶる子どももいるように,口の感覚を刺激していることもあります。生き ていることを感じる本能的な官能の現れです。子どもの興味や関心が広がって, 気持ちを外向きにする楽しみを覚えていけば,自然に治まっていきます。最も 幼い性的な仕草と考えてみてください。  指しゃぶりそのものを止めさせようとして無理な叱責をすると,発散できな いままにストレスがたまって,おねしょなどに転化することがあります。子ど もは自分の気持ちを落ち着かせるために指しゃぶりをしているのですから,焦 らずにそのままにしておきます。そうしなくてもいいように,別の方向に楽し みを誘導することを考えてください。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★親の役割12講★         『モノねだる 子どものねらい 親の胸』                             《第11-01講》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ■つれづれ・・・  皆さんは,学校というところをどのように思っていらっしゃいますか? 勉 強するところ,ですか? 大人の立場は教える立場ですから,学校は教えると ころです。子どもは教えられる立場になり,学校とは習うところになります。 学校は勉強するところ,それが通念です。  学校という呼称は,学ぶところと言っています。子どもが学ぶところであり, 子どもが主役になるところなのです。教習所ではないと言えば,少し分かって いただけますか。詰め込み教育になってしまったのは,大人が教え,子どもが 習うという上意下達の形が定着したせいです。学ぶという視点の欠落がありま した。  生涯教育としてはじまった活動は,今では生涯学習に変わっています。環境 が教育を必要としている時代は終わり,学習が求められる時代に発展して来た ということです。読み書きそろばんという基本は教わらなければなりませんが, それを習得した後は学ばなければなりません。知識を覚えているうちは教育で あり,知識を使うようになって学習に移行できます。環境が成熟したというこ とです。  義務教育だから子どもは学校に行かなければならない,もしそう思っていた としたら誤解です。昔貧しい時代に,子どもは労働力であり,学校には行かせ てもらえませんでした。子どもの学ぶ権利が奪われていたのです。そこで,子 どもを学校に行かせる義務が親に課されました。義務教育とは,親の義務なの です。子どもは学ぶ権利を持っています。  確かに最初は教育を受けなければなりません。掛け算は教わります。しかし, いつまでも教わる立場にいては学びを知らないままになります。総合学習や体 験学習を通して“学び方”を習得しなければなりません。学校は,文字通りに 学ぶところになろうともがいているのです。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  【質問11-01:お子さんの主張を認めていますね?】      ・・・・・「主張を認める」という意味を確かめておきましょう。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○甘やかし?     親は子どもが機嫌良く過ごしていれば心和むものです。子どもの笑顔    は家庭を明るくしてくれます。ご機嫌を取り結ぶために,喜ばせようと    します。好きなおかずを用意してやったり,欲しがるものを与えたりし    ます。よかれと思う心根は親心ですが,ついついやりすぎてしまうこと    があります。甘やかしてしまうのです。     甘やかすといえば,子どもの要求を際限なく受け入れることだと思わ    れています。子どもを甘やかすことはいけないと知っていますから,要    求を何でも聞き届けることのないようにしているでしょう。そのような    甘やかしは自覚できるのでブレーキをかけることもできますが,無意識    のうちに甘やかしてしまうこともあります。     子どもが明らかに要求をする前に聞き届けてしまう場合です。無意識    の甘やかしです。要求を受け入れているわけではないので,甘やかして    いるとは思わないのです。子どもの要求を先取りしているだけで,基本    的には甘やかしになります。子どもにすれば要求する必要が無いのです。    親子ともに甘えを感じることはありません。     子どもは,赤ちゃんのときには要求することができません。ただ泣く    だけです。何が欲しいのか,ママは懸命に察してあげようとします。や    がて,ママは子どもが何を求めているのか,すっかりお見通しになりま    す。泣かれる前に手を打つことができるようになり,穏やかな暮らしに    なります。その先回りが習い性になって,子どもが大きくなっても続け    ていきます。     子どもの成長に合わせて,親も成長していきます。その成長とは,保    護者から養育者になることです。子どもは成長することによって,自分    の主張を持つようになります。主張することが生きる力の発露だからで    す。子どもの主張をきちんと受け止めてやる役割,それは必ずしも聞き    届けることではなく,主張という行為を受け止めるという役割を親は持    っています。     子どものために親はいろんなことをしてやろうと願うものです。要求    をするということは,裏返せば不満があるということになります。不満    を持たせないようにしようという親の優しさは,子どもが自分は何が欲    しいのかということを分からない状況に追い込んでいきます。庇うので    はなく,共に主張をし合うことで,本当の親子になれるのかもしれませ    んね。             ・・・《言いたいことをちゃんと言わせましょう》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○聞き分け?     聞き分けのない子はきらいです。ママに叱られています。子どもは親    の言うことを聞かないことがあります。拒否する,反抗するのも子ども    の主張になります。もっとも親にとっては,扱いに苦慮する主張です。    思い通りにならないのですから,わがまま言わないの,と封じ込めたく    なります。     自己主張という言い方があります。自己を主張するということですが,    はっきりと考えておくポイントは誰が主張するかということです。自己    を主張するのは,もう一人の自分です。なぜなら,言葉を操るのはもう    一人の自分だからです。お腹が痛いとき,どこが痛いのか,どのように    痛いのか,他人に分かるように主張しようとするのはもう一人の自分で    す。     自己主張は自分の思いを相手にぶつけることです。しかし,それは始    まりに過ぎません。相手からも主張が返ってくるからです。お互いの主    張を付き合わせて,妥協点を探す手続きが繰り返されることで,実現に    向けて話を進めることができます。いわゆる,駆け引きが必要になりま    す。とてもまどろっこしいことであり,たいていは物別れになります。    出直す必要が出てきます。     自分の主張と相手の主張を摺り合わせるのは,もう一人の自分です。    相手の言い分をどこまで受け入れるか,その代わりにこちらの言い分を    どこまで通すか,両方の立場を考えることのできるのはもう一人の自分    です。自分の主張だけを丸ごと通そうとするごり押しは,わがままとい    うことになります。相手の主張を無視することで問答無用に陥ります。     もう一人の子どもは未熟ですから,交渉に負けないためには,自分の    主張を押し通そうとすることで精一杯です。親が応酬してくる主張を分    かる余裕がありません。そこでついつい,聞き分けのない子になってし    まいます。聞き分けるというのは,自分と相手の主張を半々に分けるこ    とだからです。相手を立てながら自分も立てることで,両者が手を打つ    ことができます。     もう一人の子どもは,主張を通すための理屈付けを覚えていきます。    「皆が持っている,そうしている・・・」と主張してきます。これは意    外と大人に効き目があります。大人の方に聞き分ける力を求めることに    なります。大人は詰まると,屁理屈であるとか,よそはよそ,と交渉を    打ちきろうとします。そこで逃げては,大人が廃ります。         ・・・《聞き分けのよい子は,聞き分けのよい親の子です》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○おねだり?     子どもは親に対する気持ちの訴えを,モノに託して主張してくること    があります。表向きはモノをねだるという形になります。それほど切実    に欲しいとは持っていなくても,あれを買って,これを買ってと要求し    てきます。自分の言い分を聞き入れてくれるか,試している場合があり    ます。買ってやっても,すぐに飽きて放り出しているモノが増えてきた    ら注意してください。     自分の方を見て欲しい,そのためにモノをねだるという交渉に引き込    もうとしているだけです。モノを買うかどうかについては,親は結構真    剣に向きあってくれるからです。それが続くと,親の方もまたかという    気になり,いい加減に受け答えするようになります。そこで,子どもは    より要求をエスカレートしてきます。     衝突が起こります。子どもは親の気持ちが分からなくなります。自分    の方を向いていない,見捨てられたと勘違いすれば,自棄になって悪さ    をしでかし,こうなったのは親のせいだと詰め寄ろうとします。それも    自分の方を向いて欲しいという,それだけのためです。必ずしも一本道    ではありませんが,そんな苦しい道が口を開けて待っていることだけは,    知っておいてください。     豊かな時代には,意識しないままにモノで気持ちを表すことに慣れて    いきます。恋心は高価なプレゼントで表す,連れ合いへの感謝の気持ち    はスイートテンダイヤモンドで表す,その流れで親の愛情もモノを買っ    てやれば表わせることになってはいないでしょうか? それが当たり前    の時代になっているので,仕方のないことではあるのですが・・・。     自分の愛車に汚れた手で触った我が子を叱るパパを,子どもはどう思    っているでしょう? お手伝いをしていて皿を割ってしまった我が子に,    お皿の値段を理由に説教するママを,子どもはどう思っているでしょう?    モノの方を大事にしている親に,親の心を感じるでしょうか?     いまどきモノ抜きに戻すことは不可能ですが,親の対応の仕方を工夫    すれば,モノに頼ることはかなり減らすことができるはずです。手をか    けてやることです。面倒だと思うようなことを,わざわざしてやること    です。それも押しつけるのではなく,さりげなく。手を抜こうとするか    ら,モノに頼ることになります。子どもも,余計な要求をする必要がな    くなります。          ・・・《手間をケチるからおねだりが増えてしまいます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《主張を認めるとは,もう一人の子どもを認めることです。》 ※個性化を実現する方策は,主張することです。自分の主張ができなければ, 個性を作り上げることはできませんし,周りの人に認めてもらうこともできま せん。自分だけの個性化がわがままに堕落するのは,正当な主張をしようとし ないからです。  必ずしも主張が丸ごと認められる必要はありません。主張していることを分 かってもらえれば,主張の第一の目的は達成されているからです。社会性が育 っていないといわれる背景には,分かってもらおうとする努力をしていないと いう分析があります。どうせ何を言っても聞いてはもらえないというしらけで す。逃げていては始まりません。主張する子どもを受け止めてやらなければな らなかったのです。  【質問11-01:お子さんの主張を認めていますね?】    ●答は?・・・もちろん,「イエス」ですよね! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  お届けした「子育て羅針盤」第131号は,いかがでしたか?  第11版の始まりです。ささやかなモデルチェンジをして,心持ち短くなり ました。語り口は変えていませんので,それほど違和感は感じられなかったこ とでしょう。この版では,このスタイルを通します。  新学期が始まります。講義に向かうとき,今年はどんな学生さんに会えるか なという期待があります。毎年若い学生さんと過ごしているせいか,自分の歳 を見失います。今年度は,どんな我が子に会えるかな,ママもそんな期待を持 ってみてはいかがでしょう? ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ※ご案内※  ●モリのクマさんのホームページは ・・・「徒然窓」=      http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/   です。「子育て羅針盤」の「バックナンバー」,〜「掲示板」,     週刊「今週のコラム」,「子育ち12章(Ver.1〜9)」,     「子育て心温計」などの受賞論文,養育アンケート調査結果,     社会教育・ボランティア組織活動の指導者用テキスト〜    などを掲載しています。 ・・・是非訪ねてみて下さい。・・・  ●大小問わずPTAや家庭教育学級などでの《講演》のご依頼も承ります。   関心をお持ちの方は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。   プロフィールをお知りになりたい方は上記のHPを参照してください。   なお,クマさんの本拠地は福岡市近郊です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆  次号では,  【質問11-02:お子さんのわがままを抑えていますね?】 について考えます。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ○タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ○発行期日:2000年09月25日より,毎週月曜日正午 〇発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに) ○著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp  〇転載許可:必ず事前に,モリのクマさんまでメールのご一報を下さい。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 〇配信の協力を頂いている発行支援システム  ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/    登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm  ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/    登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/  ◆読者と発行者を結ぶ架け橋『Pubzine』= http://www.pubzine.com/    登録・解除= http://www.pubzine.com/detail.asp?id=9104  ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/    登録・解除= http://melten.com/m/2166.html  ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○