□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2003/04/14]            【子 育 て 羅 針 盤】                               (第132号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  結婚はデザートより,スープの方がおいしい定食である。                          ・・・・・オーマリー  養育はデザートより,スープの方がおいしい定食である。                      ・・・・・H.モリのクマさん ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★ママの?★              『赤ちゃん返り?』                               (第02号) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  急に甘えがひどくなりママにべったりとつきまとい,まるで赤ちゃんになっ たように話したり行動することがあります。普通は赤ちゃん返りと呼ばれてい る退行現象です。時期的には3歳前後にみられます。それまではそんなことは なかったので,ママはびっくりします。  その要因は,子どもが不安な気持ちにとらわれてしまうということです。き っかけとしては,弟か妹が生まれてママが自分を見放したと思えるとき,保育 園などの違った環境に放り込まれたと感じるときなどがあります。子どもの立 場や居場所に大きな変化が起こると,どうすればいいのか分からないので不安 になります。  不安を打ち消そうとして,自分のわずかな記憶をたどれば,赤ちゃんのとき の安心状況が思い出されます。そこに逃げ込もうとします。そこしか思い当た らないのです。ですから,赤ちゃん返りを叱るのではなくて,いったんは優し く受け入れてやってください。そうしないと不安は恐れに膨らんでしまい,深 みに追い込むことになります。  自分のこともママにちゃんと受け止めてもらえるということが分かれば,子 どもの不安は減っていき,その分安心できます。赤ちゃんの振りをする必要が なくなりますから,自然にやんでいきます。1,2ヶ月もすれば,すっかり元 に戻るでしょう。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★親の役割12講★          『わがままを 生きる力に 変える親』                             《第11-02講》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ■つれづれ・・・  「あいさつ運動」という活動があります。特に,子どもたちの登校時に先生 や地域の大人たちが,朝の「おはようございます」という声をかけるケースが 多いことでしょう。ことさらにあいさつを取り上げなければならない状況は, 子育て環境の衰退の現れです。  あいさつをするかしないかで,子どもにどれほどの効果が現れるのでしょう か? それが見えてこないから,しないよりはした方がいいとは思えるのです が,運動は盛り上がりに欠けます。子育ては,した方がいいことの積み重ねだ と思ってもらえるといいのですが。  あいさつが自然にできるように育った子どもは,積極性が出てきます。人と の関係は,最初の一言を交わすことによって,大きな心の緊張を解くことがで きます。積極性は緊張のバリアを纏っているときには,封じ込められるもので す。その自分を防護している固い殻に大きな窓を開ける呪文が,あいさつの言 葉です。  あいさつの次は,「ハイ」という返事です。名前を呼ばれたり尋ねられても, うなずくだけとか「ウン」としか返事ができない子どもがいます。気持ちが守 りに入っています。「ハイ」という返事は,真っ直ぐに受け止めようとする態 勢を表しています。これもまた積極性です。  積極性を持って欲しいというのは,親の願いでしょう。それならば,積極性 の形をしつけるべきです。どうすれば積極的になれるか,ただ背中を押せば済 むことではありません。元気のよいあいさつや返事ができる,それが入り口に なります。やがて,人から好感を持って迎えられるはずです。できることを教 え,し向けて,できたらほめてあげる,それが子育てのパターンですよ。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  【質問11-02:お子さんのわがままを抑えていますね?】    ・・・・・「わがままを抑える」という意味を確かめておきましょう。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○わがまま?     子どもはママの思い通りになりません。言うことを聞きません。反抗    されると,ママはキーッとなります。でも,反抗期は必ず現れるもので,    成長の一環だと知っているので,渋々ですが我慢しなければなりません。    ストレスが溜まりますね。     ところで,反抗とわがままは区別しておかなければなりません。ママ    が靴下を履かせてやろうとすると,「自分でする」と言って,四苦八苦    しています。かわいい反抗です。買い物についてきて,見つけたお菓子    を欲しいといって駄々をこねています。困ったわがままです。     反抗とは,自分の能力を発揮しようとする自己主張です。外向きに出    そうとしています。一方で,わがままとは,人の能力を使って自分の欲    望を満たそうとすることです。ものやことを人から奪おうとする自分勝    手な振る舞いです。ですから,わがままは周りの人には迷惑になり,反    社会的なのです。     この自分勝手な行動は生きていく本能に基づきます。赤ちゃんはわが    ままそのものです。なりふり構わず生き抜かなければなりません。大人    はそれを察しているから,わがままを許して,ときには可愛いと感じま    す。親としての愛情を呼び起こしますが,それは赤ちゃんのわがままを    受け入れるようにしなければならない自然の摂理でしょう。     育ちを考える場合,二つの向きという分類をするといいでしょう。バ    ランスのとれた育ちというとき,相反する二つのものが必要です。プラ    スとマイナスがあるからバランスが実現します。わがままについて考え    るとき,自分の欲求実現をプラスとすれば,欲求我慢がマイナスとなり    ます。ここでバランスということを持ち出したのにはわけがあります。    一つはわがままを抑えるには我慢が必要だということです。この我慢に    ついては次に述べることにします。     知っておいて欲しいことは,わがままを否定してしまうことはいけな    いということです。わがままは人が生きる欲望であり,熱く燃えたぎっ    ています。熱いから,そのままでは人に火傷を負わせます。だから,我    慢という覆いを掛けておかなければなりませんが,消してしまうと元も    子もなくなります。わがままを無くそうとすると無気力になります。わ    がままを無くすのではなくて,バランスよく抑え込むのが育ちです。       ・・・《子どもの持って生まれたものに悪いものはありません》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○我慢?     欲求が野放図に放出されると収拾がつきません。社会生活に相応しい    形式に洗練される必要があります。基本的にはTPOを弁えることです。    今欲しいというのを,ちょっと待とうね。時間をずらすという我慢があ    ります。ここでしたいというのを,お家に帰ってからね。場所を移すと    いう我慢など。     幼いときには,ママが誘導してやります。欲求が満たされることを前    提にすれば,楽しみを先送りする我慢は受け入れやすくなります。ママ    も我慢するからと付き添ってやることもいいでしょう。この場合,ママ    が言い聞かせることになります。誰に向かって言い聞かせるのでしょう?     言い聞かせる相手は,もう一人の子どもです。自分に向かって,もう    ちょっと待とうと自制するのはもう一人の子どもだからです。ママに言    われるから待つということから一歩進んで,自分で待とうと決めるよう    に導いてやります。人に抑え込まれるのは気持ちよくありませんし,そ    れは我慢にはなりません。自分で決めるから我慢なのです。ですから,    一緒に待とうねという誘いが必要になります。     もちろん無理な欲求を持ち出すこともあります。昔の子どもがお月様    を取ってくれとせがんだように不可能なこと,妹が欲しいといったおい    それと適えられないことなどは,あきらめさせなければなりません。世    の中にはできないことがあるということを教えておかなければなりませ    ん。そこでも,ママにもできないと言ってやれば,諦めやすくなります。     我慢のしつけで難しい局面が残っています。たとえば,よそのイヌを    可愛いから連れて帰りたいというような許されないこと,パパの車を運    転したいというような無謀なこと,欲しかったから黙って持ってくると    いうような犯罪的なことなどは,子どもにもできることだけに,それを    封じるしつけは日常的な繰り返しになります。     社会生活上の禁止形式であるようなきまりやルールを受け入れるとい    う我慢のしつけです。してはいけないと認めることがつらい我慢になり    ます。ものを欲しがることがいけないのではなくて,欲しくても勝手に    手にしてはいけないというきまりをもう一人の自分が自分に言い聞かせ    る,その自分との葛藤に耐えることが我慢なのです。   ・・・《我慢とはわがままな自分をもう一人の自分が抑え込む辛さです》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○モラル?     社会生活にはさまざまな規制があります。普通には法が定められ,違    反すると罰則があります。罰に対する恐れが法規制を守る強制力として    機能しています。子どもにはお巡りさんに連れて行かれるという脅しに    なります。大きくはその恐れによって法が守られていることを認めてお    くべきです。     しかしながら,法の網はすり抜けることができます。見つからなけれ    ば,ちょっとぐらいなら,という欲求の吹き出しを許してしまいます。    ポイ捨てぐらい誰でもしているといった言い訳を臆面もなく持ち出す弱    さがあります。万引きぐらいと勝手に罪のバーゲンをしたり,援助交際    のどこが悪いと売春・買春の塗り替えをしたり,姑息な手を繰り出して    きます。法による罰の力だけではわがままの炎を抑え込むことはできま    せん。     人は日常生活の中でいちいち法を意識して暮らしているわけではあり    ません。道徳・モラルという社会的な規範を身につけているからです。    そのエッセンスは「相手の立場を思いやる」という一点です。自分のわ    がままが相手の立場に及ぼす悪影響を察することがモラルの発動です。    もう一人の自分が相手の立場に思いを重ねることで,自分の欲求を抑え    ようとすることが我慢になります。     もう一人の子どもを育て,相手の立場になったときの思いを理解させ,    自分に言い聞かせるようにし向ける,それがわがままを抑える内蔵され    た自己プログラムです。法のように外部から押しつけられる規制に対し    ては,もう一人の自分は逃れようとする悪知恵を働かせたくなります。    育ちとしては逆行してしまい,わがままを助長するだけで,いわゆる悪    の道に誘います。     ママが相手の立場になってみせて,相手がどんなに悲しいか,嫌な思    いをするか,悔しいか,腹が立つか,語ってやりましょう。咲いている    花を折ったときに,「お花さん痛い痛いって泣いてるよ」って言って聞    かせていますね。それでいいのです。「ママも悲しいな」,そう付け加    えてくださいね。     人間と動物の違いは,もう一人の自分がいるかいないかです。そのも    う一人の自分が他者の思いを自分に向けて投げかけることができるから,    人は大きな社会生活を実現できています。本能としてのわがままを上手    に統御するもう一人の自分がいるからこそ,皆が欲求を満たすことがで    きて,仲良く生きていけるのです。       ・・・《モラルとは自己完結してわがままを統御することです》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《わがままを抑えるとは,わがままを実現することです。》 ※自己主張による反抗とわがままを混同しないこと,わがままを壊滅しないこ とを述べてきました。通念に反するという印象を持たれたことでしょう。これ を機会にご自分でもう一度,お子さんとのいろんな局面を思い出して考えてみ てください。  子どもたちを無気力や無関心,無責任などのないないづくしに追い込んでし まったのはなぜなのかを考えると,生きる炎を消してしまったからと思わざる を得ません。大人はそんなつもりはなかったのですが,結果としてミスリード したことははっきりしています。やりすぎたことを反省する必要がありそうで す。  【質問11-02:お子さんのわがままを抑えていますね?】    ●答は?・・・もちろん,「イエス」ですよね! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  お届けした「子育て羅針盤」第132号は,いかがでしたか?  先週は小中高大の学校で入学式のラッシュでしたね。それぞれに新しいステ ップに踏み出そうとする緊張感がうかがえたことでしょう。見守る親としては, それぞれの育ちがうれしい瞬間です。そのうれしさを忘れないでくださいね。 うれしいと笑顔になりますから。  8日に近くの五差路にやっと直通の横断歩道が設置されました。道の歩道が 片側しかなく,交差点では反対側にしか横断歩道がなくてコの字に渡らなけれ ばならない状況でした。長年申請していても設置できなかったので,一週間の 登下校時の交通量調査を皆で実施して,データを揃えて再申請しました。一年 後に実現しました。子どもたちを守ろうとする大人の意欲が伝わるような形に 表わせば,大きな力になります。よかった! ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ※ご案内※  ●モリのクマさんのホームページは ・・・「徒然窓」=      http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/   です。「子育て羅針盤」の「バックナンバー」,〜「掲示板」,     週刊「今週のコラム」,「子育ち12章(Ver.1〜9)」,     「子育て心温計」などの受賞論文,養育アンケート調査結果,     社会教育・ボランティア組織活動の指導者用テキスト〜    などを掲載しています。 ・・・是非訪ねてみて下さい。・・・  ●大小問わずPTAや家庭教育学級などでの《講演》のご依頼も承ります。   関心をお持ちの方は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。   プロフィールをお知りになりたい方は上記のHPを参照してください。   なお,クマさんの本拠地は福岡市近郊です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆  次号では,  【質問11-03:お子さんの甘えを認めていますね?】 について考えます。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ○タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ○発行期日:2000年09月25日より,毎週月曜日正午 〇発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに) ○著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp  〇転載許可:必ず事前に,モリのクマさんまでメールのご一報を下さい。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 〇配信の協力を頂いている発行支援システム  ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/    登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm  ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/    登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/  ◆読者と発行者を結ぶ架け橋『Pubzine』= http://www.pubzine.com/    登録・解除= http://www.pubzine.com/detail.asp?id=9104  ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/    登録・解除= http://melten.com/m/2166.html  ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○